できていたはずのことが、
普段なら何も問題なくできるはずのことが、
どうしてもできない。
期待されているのは、
分かっている。
何とかしようと、
必死でやっている。
井川の内面でうるさい自己批評。
必死に戦った、悩めるエースの姿だったと思う。
一度失敗して、
二度目の送りバント。
打席に入るか入らないか、
もうそのタイミングで送りバントの構えをしていた井川。
「早過ぎる構え」
決めなければならない。
なんとしても、決めなければならない。
気持ちが溢れていた。
決めて当たり前だろ?
この試合、ラクに勝って当たり前だろ?
もう、逆転されたくない。
あんな思い二度としたくないだろ!!
なぁオレ、ちゃんと決めろよ!!
なぁオレ、ここで決めたら、もう逆転されないだろ!!
その思いが、また筋肉を硬直させる。
一球目、見逃し、ストライク。
二球目、ファール、ツーストライク。
何やってんだ、オレ。何やってんだ、オレ。
うるさい自己批評と戦う姿、
早過ぎる構えの井川。
三球目。
バントした打球は・・・
阿部の前に。
送りバント成功。
送りバント成功!!
簡単なことほど難しい。
うるさい自己批評の呪縛から、ほんの少し解放された井川。
そして、ワンアウト、2塁3塁。
赤星。
悩めるエースの気持ちを、無駄にはしない。
センター前、タイムリーヒット。
11点目。
「井川、勝とうな」
逆転されることは、なくなった。
調子が上がらない井川。
ノックアウトされた中日戦よりも、
今日のほうが遥かに悪かった井川。
球児や杉山と違って、狙われれば打たれる程度のまっすぐしかいかない。
でも、とにかくマウンドは守った悩めるエース。
ダブルプレーに助けられた形に見えるかも知れないが、
当然のことだが、誰も併殺打を打とうとするわけない。
併殺を狙ったコースに、その球を投げれていたから。
調子が上がらない中、よく粘って投げた。
大差なんだから、完投しろよ、なんて思わない。
7回1失点。
ドラゴンズを3たてしてきた、ジャイアンツ相手。
十分な結果だろう。
生みの苦しみ。
スランプだった打者が、
一つのポテンヒット、
一つの内野安打から甦るケースはよくあること。
今日のピッチングは、そのポテンヒット。
体内から溢れたアドレナリンが、
大きな体を突き動かし、
彼が、雄叫びを上げる姿を、
ぼくたちは、忘れられないでいる。
今日が、あの姿へのきっかけのなってくれれば、
ラッキーな内野安打になってくれれば。
井川がまた、エースという名にふさわしい躍動を、
甲子園のマウンドで見せてくれそうな気がする。
次回、最終天王山。
井川よ、吠えてくれないか!!
ぼくたちが忘れられないでいる、あなたのあの姿を。
愛ゆえに苦言を呈した、
その5万人が見守る、
甲子園のマウンドで。
その姿を見せてほしい。
「早過ぎる構え」
大差の中で、
悩めるエースは。
必死だったんだ。
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