2005年09月14日

だから赤星は走らなかった

5回。

タイムリーヒットの後、
赤星は、走らなかった。

投手、ミアディッチ。

前の盗塁機会で、悠々と盗塁を決めた相手。
モーションの大きなミアディッチ。
思うように投げれなくてイライラしていたミアディッチ。

走れば必ず成功する。
盗塁の個数が一つ稼げる。

でも赤星は、走らなかった。

フリーパスの場面で盗塁することのリスク。
感じたのだろうと思った。


ドラゴンズバッテリー対赤星。

谷繁は、恐ろしいほどの形相で赤星を刺しに来る。
たとえばワンアウトで1塁に赤星という場面。

ピッチャー、川上。キャッチャー谷繁。
執拗な牽制球。
打者の鳥谷よりも、ランナーの赤星を中心に配球を組み立てるバッテリー。
そして、そこが甲子園ならば、

5万人が一塁ランナーを見ている場面。

赤星は、そういう場面でセーフになってきた男。
そして、これからもそういう場面でセーフになる必要がある男。

近い将来、そういう場面の相手は、
ソフトバンクの城島。

僅少差の中盤、終盤で、
赤星が城島からもぎ取るセカンドベース。
勝負を決するスチールである可能性も非常に高い。

赤星は、そこでセーフになろうとする男。

マウンドには乱調のミアディッチ。
120%の成功が約束された場面。

でも120%の成功が約束された場面なればこそ、
感覚の狂いを招きやすいと判断したのだろう。

赤星がセーフになろうとする場面は、
赤星しかセーフになれない場面。

徹底的にマークされた、その中を突き破ることによって、
チームにもたらされる、
「一つの進塁以上の何か」
赤星はそのことにとても意識的だ。

シーズン終盤になると、とかく個人記録がもてはやされる。
4年連続60盗塁。
物凄い記録だが、それはあくまで目安でしかない。

「走れるけど走らなかった盗塁」

赤星は勇気のある自重の中、4年連続での60盗塁に向かっている。

最も大事な場面で、
絶対に走ってほしいその場面で、
誰もが「走ってくる」と思い、
そして、相手は「走られてはならない」
そう思う場面で、

赤星は盗塁を決めるために、

昨日、赤星は、

一つの盗塁を自重した。


あんなにも小さい人が、
こんなにも凄い1番打者になれるんだ。

日本シリーズ、あるいはプレーオフ、あるいは来週の天王山。
その大事な大事な局面。
ランナー、一塁に赤星。100%盗塁。
そんな場面で、赤星がセーフになる姿を、
そして、その盗塁によってもたらされる
「一つの進塁以上の何か」を、
ぼくは感じたい。

ならば、至福の瞬間はすぐ目の前なんだ。


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posted by コーチ at 09:00| Comment(3) | TrackBack(5) | □ 赤星 憲広 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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