2005年09月16日

岡田野球の真髄

「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」

最近の岡田監督の言葉。
そんなチームを堂々と作りきった、名将の言葉。

強いチームと弱いチーム。
ちなみに現在のジャイアンツは決して弱くない。

清原とローズが完全に離脱させて、
工藤先輩が必死の思いでチームを鼓舞した8月12日以降、
先生が「8月12日は工藤記念日にしよう」と言った(笑)
あのドームでの、巨人阪神戦以降、
ジャイアンツは、昨日の負けを含んでも15勝12敗と3つ貯金している状態。
9月だけ取ってみれば、この阪神戦を迎えるまでは、
実に、7勝2敗と絶好調ですらあった。

そのジャイアンツに、この完勝劇。

ジャイアンツが弱いのではない。
タイガースが強いのである。

じゃあなんで強いのか?

平たく言うと、
「みんな、活躍してるから」

橋本と江草、
野間口と内海。

名前で言えば、後者に分があったはずのネームバリュー。
活躍してるのは前者。

投手がいないのではなく、
いるはずの投手が活躍できなかったから、この差がでてるだけ。

昨年、今ひとつだった下柳。
先発に転向して初めての年の安藤。
期待されながら、打たれだすと止まらなかった杉山。
勝つけど負ける福原。
一年中波に乗れない井川。

本当はあまり抑えに向いてない久保田。
実質ルーキーイヤーの球児。
慣れられてきた感のあったウイリアムス。

そして、阪神ファン以外はまだ名前と顔が一致しないであろう、
橋本、江草、桟原。

シーズン当初から悩み続けている井川を中心にした、この投手陣。
不安要素もたっぷりだったこの投手陣。
しかし、球界随一と言われる投手陣。


投手がたくさん居るのではない。
居る投手が、活躍しているだけ。

そして、彼らが活躍できる土壌を作るのが、
監督の仕事。

「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」

ここに至るまでに、いったいどれだけ多くのことをしてきたか。
“動かない”という動きも含めた、働きかけをどれだけしてきたか。

投手起用の面で言えば、岡田監督はワンポイントでの起用をしない。

2点負けてる試合であれば、橋本に、
2点勝っている試合であれば、球児に、
それぞれ同じように1イニングを任せる。

たとえば、ランナーがたまった場面で、福留や阿部といった左の強打者を迎えるケース。
その場面のみを考えれば、橋本より江草の方が抑えやすいだろうと思う。
しかし、おおむねそういう場面で岡田監督は橋本に任せてきた。
逆もまたしかり。
ある時は江草に任せ、桟原に任せ、
9回は久保田に任せ続けた。

「抑えなければならないのは、現在、この場面だけではない。大局を見て全ての投手がそれぞれレベルアップできるような投手起用」

その結果が磐石のリリーフ陣容。
たくさん投手が居るのではなく、
居る投手が活躍したからの結果。

そして、久保コーチをはじめ、コーチ陣に対する
「やったらあかんことはない。いいと思うことは全部やればええ」
という姿勢。

杉山は岩隈から、
安藤と福原は上原からヒントを得て、より素晴らしい投手になった。
下柳は、矢野と二人三脚、技巧派の限りを極めようとしている。
あと、悩める彼はもう少し(笑)


もちろん活躍している選手が素晴らしいし、
担当のコーチも素晴らしい。
しかし、その土壌を作ったのは間違いなく彼、
岡田彰布に違いない。


攻撃陣に目を移してみる。


1  今岡
2   赤星
3   キンケード
4   金本
5   桧山
6   アリアス
7   鳥谷
8   矢野

何なんだこれは?
誰なんだそれは?というような懐かしい名前も並ぶこの打順。

もちろんこれは2004年の開幕オーダー。
岡田タイガース船出を飾った、いや飾れなかったオーダー。

自分の感覚と2003年に対する遠慮がごちゃまぜになったようなオーダー。
でもその中で譲らなかった、4番金本。

岡田采配の妙は、5番今岡の大当たりは当然絶賛されるだろうが、
2年越しで大輪を咲かした4番、金本。
ぼくはまず、4番金本ありきだと思っている。
カープ時代から凄いバッターだったので、いまいち分かりにくいが、
間違いなく、金本知憲の野球人生の中で、
今が一番凄い打者である。

仮に、メジャーリーガーも含めた全ての日本人選手で日本代表を作ろうとしたならば、
松井にするか、金本にするか、4番を選ぶのに本当に悩んでしまうような、
そんなにも凄い選手。
それが現在の金本。
ヤンキースで4番を打てる人と肩を並べている。

そんな選手を3番において、繋ぎ役をやらせるのは、なんてもったいないんだ。
悪くないけど、もったいない。
優勝イヤー。三塁コーチボックスで岡田コーチは思ってたのだろう。

頭が良くて、気配りも出来、野球をとてもよく知っている金本だからこそ、
繋ぎ役をやるのではなく、
その自身の持つポテンシャルを全て解放してもらいたい。

で、今年の大活躍。
あんな場面で、あんなホームラン。
何本見たことか。

岡田采配の妙は基本的にここ。

その選手ができるだけ活きる配置。
赤星は、赤星の前にランナーがいないほうがいいので1番。
本当は藤本に打ってもらいたかった2番。
赤星が盗塁した後、センター前にレフト前に打てる2番。
現在は、そこでの成長を見込んで鳥谷。
2番の資質を持った3番打者になってほしいということだと思う。
繋ぎ役をやるのが好きなシーツが3番。
揺ぎ無い大黒柱、金本が4番。
チャンスになると自然と眼の色が変わる今岡が5番。
不安定なメンタルが、打点を稼ぎ、勝利に直結する活躍をすることで、
いいほうに出ることを狙ったのかもしれない。だとすればそれも含みで大成功。
6番は、ひとまずおいといて。
あとは、7番矢野、8番藤本、関本。
投手の前を打つ8番、実は重要。
出塁すればピッチャーが送りバントできるし、
ツーアウトからなら、8番が出塁することによって、
ピッチャーまで回って、次の回、一番から攻撃できる。

矢野の負担をできるだけ避けたいということで、8番より7番。
去年は鳥谷の負担を最優先したため開幕当初の考えでは鳥谷が7番で矢野が8番だったか。
開幕時の鳥谷、現状の藤本、関本、問題なく8番をこなせる打者。


で、ひとまずおいといた6番ライト。

もうあまりに定着しすぎて話題にも上らない「併用」だけど、敢えて。

監督は両方使いたい。桧山もスペンサーも、藤本も関本も両方使いたい。
で、両方使いたい時のきっかけとして、右投手、左投手で使い分け。
しかし、右左にこだわっているのではない。
例えば、昨日の試合。相手は右の西村で桧山、藤本がスタメン。
西村が降板して、左の岡島がマウンドでも、
桧山と藤本が相変わらず打席に入る。
(昨日は、シーツが途中交代っていうイレギュラーもありましたが)
でも、基本的にはこのスタンス。
先発投手の右左をきっかけにして、
基本、「この試合は任せました」というスタンス。
投手起用と考え方は同じ。

その結果、
4人ともが一直線上に並んで、誰が出てもそれなりに活躍できる状況。
桧山とスペンサー、藤本と関本。ともにタイプが違うので、
単純に比較できないけど、
チームに対する貢献値は、皆同等に高い。
だから誰が出ても、それなりに勝てる。
スペンサーと関本が出てる試合で、
桧山と藤本だったらなぁと思う試合はない。
逆もしかり。

そして、送りバントをしなかった岡田監督。

チャンスで鳥谷。
チャンスで藤本。

とにかくしっかり打って来いと、打たせた監督。

結果、チャンスで鳥谷、チャンスで藤本。
相手にとって決してラクではないバッターになっていた。

そして鳥谷の後、
言わずもがなの、シーツ、金本、今岡。
どんどんラクではない打者が登場してくる。

藤本の後、
代打、濱中、片岡、桧山、スペンサー、関本、浅井。
そりゃもう、大変な打者が控える。

もちろん、うまくいかなかったこともたくさんあった。
送りバントをしていれば勝てていた試合もたくさんあった。
でも、送りバントをしなかったから、勝てた試合の方が多いから、
現在7.5ゲーム差。
実は首位を独走している状況になったのだろう。

7.5ゲーム差というのは、
セリーグの中ではどのチーム同士の差よりも開いた差である。
2位中日と、3位ヤクルトは現在5.5ゲーム差だ。
4位横浜と5位巨人の差は、3ゲーム差しかない。


「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」


そんなチームは、昨日も決して弱くないジャイアンツに快勝した。

初回、赤星が出塁し、
「先頭バッターが出塁」という意味の100倍くらいの意味を持たせる存在感を出し、
気がつけば2塁までいってしまっている。

鳥谷はカウント0−2から、真ん中の球を振りにいくも、ライトフライ。
当てて進塁打よりも、振って進塁できないほうがいい。
一貫している、後々生きる、結果、進塁打にならなかったバッティング。

そしてシーツはデッドボール。
骨折の疑いもあり、ショックだが・・・
でも、関本がいる。片岡がいる。
日本シリーズへ、大きなドラマの伏線と考えたい。

1アウト1塁2塁。
4番、大黒柱。
警戒しすぎでフォアボール。

満塁。

満塁で、人間業とは思えない打率を誇る5番。

得意の満塁ホームラン。

そして、併用を続けてこられた、優勝イヤーの4番バッターの大アーチ。


「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」


追加点は、また満塁が得意な人の前に、
先頭の赤星倒れるも、
しっかり振っている鳥谷のライト前ヒット。
いつも8番でやっている、粘ってから打つ関本が、8球粘ってセンター前ヒット。
4番は警戒されすぎて、また満塁。

で、満塁が得意な人は警戒されすぎてデッドボール。
押し出し。


「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」


頭部デッドボール以降、必死の思いでアウトコースを打ちにいき続けている矢野のホームラン。


「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」


投げては、下柳がほぼパーフェクトな内容で6回途中まで。

で、球児。
ウイリアムス。
久保田。

矢野が自身1000本安打となるダメ押しのホームランを打ったあと、
ニコリともせず、プロテクターとレガースを装着する背後で、
ニコニコニコニコしている岡田監督の表情が印象的だった。

「こんなチーム、こんなチームを作りたかったんや!!」

自分のイメージが見事なまでに具現化された現状にこぼれる笑顔だった。


理想を挙げればきりがないだろうが、、
100のことが全てうまくいくわけがない。

現実的に考えて、岡田タイガースは非常に理想に近いチーム像だとぼくは思う。

現状の7.5ゲーム差は、
岡田監督と同じことをしても、勝てる状況ではないと判断した落合監督が、
野口を朝倉を山本昌を続けて登録抹消したことも関係していると考える。
落合監督が自身の判断のみでしたことならば、問題ない。
しかし、「岡田監督のあまりにも頑なな野球」の前に、
たじろいでしまったようにも見える。
言い換えれば「岡田が落合を動かした」そんな気もしてしまうのだ。

落合監督は昨日、打順も変更した。
直接繋がっているとは言い切れないが、岩瀬が打たれて負けた。

岡田監督の野球は、

金本が4番で大活躍することによって、
球児が抑える。

繋がってるか繋がってるかよく分からない部分を、
「繋がっているのかも知れない」
そう思わせられる野球だ。

そんな時代が到来したのだ。
ぼくたちは野球というスポーツの変遷、その真っ最中を目撃している。

パイオニアは冷遇を受けやすい。
野茂英雄もそうだったし、
地動説のコペルニクスもそうだった(笑)


岡田彰布の、あそことここが関係したのかよく分からないけど、
関係してそうに思えてしまう野球。

ねじれの位置に、たくさんの架け橋をかけた野球。

その全方位が関係しあって、大きな渦を作り、勝利を生み出す。
そんな新しい野球を作った名将はこう言った。


「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」



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posted by コーチ at 07:27| Comment(9) | TrackBack(3) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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