ぼくは実況のアナウンサーにとても好感を持ちました。
と言うのもそれは、
まだ朝青龍に少しだけ優勝のチャンスが残っている段階での残り三番。
栃東、白鳳が登場して、で、結びが朝青龍対琴欧州っていう取り組み。
ぼくももうドキドキしてテレビに釘付けでした。
そこでね、NHKのアナウンサーが言った言葉。
とても印象的だったんです。
「これからの三番、見逃せません」
ただそれだけを言ったんだ。
本当に「見逃せない」と思ったアナウンサーが「見逃せません」って言った言葉。
何の扇動もない誇張もない言葉。
その言葉にこそぼくはグッと来たんだ。
「そうだよ、見逃せないんだよ」って改めて、画面に集中したんだよ。
それでいいと思うんだ。
派手じゃなくても、煽らなくても、作為的に盛り上げなくても、
感じたことを、感じたままの大きさで、その形のまま表現すればいい。
去年の夏以降かな、
彼の登板日の翌日はかなりの確率でこの言葉が見出しだった。
「背信」
この言葉で、「彼」を「井川」と特定できるほど頻繁に使われていた言葉でした。
自分だったらね、どんな気持ちになるかっていつも思うんです。
繰り返し繰り返し「背信行為だ」「裏切り者だ」って言われたらね。
そんなつもりでやってるわけじゃないのに、
でも、プロだから結果が全てだって当然のことだし、
期待されているからこそ、そう言われるわけで、
それも分かるけど、
辛い。
今年の井川の「変わった井川」の報道を目にして、
とにもかくにも自分の向かうベクトルを「元気」に向けてくれて本当に良かったと思った。
人がリスタートの誓いを立てる際、
向かいやすい方向は大きく二つ。
今年井川が示した「元気に明るく」そしてもう一つが「ストイック」。
出発点が同じなので、
井川の場合は今年の「元気で明るく」と去年までの「ストイック」が、
全く逆方向かというとそうではない。
向かっている方向は「現状を打破したい」という同じ場所であって、
その方法に違いが出ているだけだと思う。
昨年、あれだけ傷を負った井川は、
当然ながら不安定にシーズンを過ごすことになる。
(投球内容ということではなく、メンタリティということ)
「去年と同じだったらどうしよう、もしかしたら自分の全盛期は本当に終わってしまったのか?」
開幕はどうしても拭いきれないであろうこの不安からのスタート。
「いや、終わったはずない。まだまだこれからに決まってるさ」
そう信じようとすることからのスタート。
結果が出てほしいと願う。
楽しく元気に頑張ることが、結果に繋がって、安定を獲得してほしいと本当に思う。
「やっぱりこれで良かったんだ」ってそう思ってほしい。
だってそれでいい。
「楽しく元気に」の揺り戻しで、よりストイックの方向に足を踏み入れないでほしい。
ましてや、
「楽しく元気に」を貫くために「楽しく元気」を「ストイックに完遂する」みたいな、
矛盾を抱えながらの投球ならば、本当に心配だ。
井川はタイガースの選手で言えば今岡に似ていると思う。
その今岡を、昨年、圧倒的にアニキと監督が守って、
今岡はアニキに打点王を取らせてもらった。
その様を見て、ぼくはアニキをより好きになったし、
岡田タイガースのことをより好きになった。
井川に望みたいことは一つ。
矢野に甘えてほしい。
下柳に甘えてほしい。
監督に甘えてほしい。
「甘えれる自分で戦ってほしい」
「今日は打たれちゃいました。ごめんなさい。でも悔しいから次は絶対打たれたくないです」
そう言えるようになってほしい。
ぼくは今年、全ての井川を許したい。
「精一杯戦っている姿」それだけで十分。
スポーツ紙も、もう「背信」なんて書かないでほしい。
そんなつもりで投げてるわけじゃないってみんな知ってるから。
そのままの形で、そのままの大きさで、
それを言葉で、表現しよう。
打たれて負け投手になる日だって絶対にある。
それは開幕戦かも知れないし、去年と同様優勝争いの中の大事な試合かも知れない。
でもその時も、
「一生懸命に投げたけど、打たれた井川が悔しそう」
これで十分。
ぼくは今年、一年中、井川を許したいって思うんだ。
だって頑張る人のことが、ぼくは大好きだから。
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