コーチ
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先生 「うーん。うーん」
コーチ 「どないしたんですか、先生?」
先生 「困ってるんや」
コーチ 「そんな難しい顔して、何に困ってるんですか?」
先生 「狩野のことはな」
コーチ 「はい」
先生 「何王子って呼んだらええんや?」
コーチ 「誰でも王子にする必要ありません」
先生 「いや、でも呼びたいやないか!」
コーチ 「だいたい狩野は王子っぽくないやないですか」
先生 「ハンカチ王子、ハニカミ王子、“王子”の前は“ハ”が付く四文字やな」
コーチ 「話、きいてください」
先生 「分かった!」
コーチ 「何が分かったんですか!?」
先生 「狩野はなぁ」
コーチ 「はい」
先生 「歯並び王子や!」
コーチ 「絶対おかしいです」
先生 「あ! ハナラビ王子!」
コーチ 「表記の問題やありません。見たことないでしょう? 狩野が歯並びキレイなとことか。てか、“王子”と“歯並び”は相容れない言葉です」
先生 「なぁ、コーチ」
コーチ 「どないしたんですか?」
先生 「懐かしいなぁ」
コーチ 「え?」
先生 「この感じ、懐かしいなぁ!」
コーチ 「そ、そうですねぇ。ほんま、久し振りですもんね」
先生 「一シーズン棒に振ったからな」
コーチ 「ハハハ、野球選手みたいですね」
先生 「ということで“野球町の人”再会や」
コーチ 「タイガースの選手ともども諦めずに優勝目指して頑張りましょう」
先生 「オレも膝の半月板の故障をおして、頑張る」
コーチ 「先生、嘘はダメです。アニキに失礼です」
<後半戦初戦。「不在対決」>
先生 「ひとまず昨日の試合は、飛車角落ちとは言わんけど、お互いに角を欠いたところからのスタートやったな」
コーチ「そうですね。タイガースがウィリアムス、ドラゴンズが福留」
先生 「その“不在”をチームとしてどう克服できるかが焦点やった」
コーチ「結果的にそれをどちらも克服できない中での戦いでした」
先生 「タイガースの方は、まず汗王子が3回で降板したんが誤算やったわな」
コーチ「汗王子て(笑)ジャンのことですね」
先生 「ほんで、ドラゴンズは再三、森野とノリのところにチャンスがまわったけど、なかなか得点できひん」
コーチ「そうですね。5回裏、ドラゴンズの攻撃で1アウト満塁でダーウィン対森野、ノリ」
先生 「7回にウィリアムスが居ない5回のダーウィン」
コーチ「対して、3番福留を経由していない5番の森野、6番ノリ」
先生 「軍配はダーウィン」
コーチ「2番井端、3番福留二人で打ちやすくして塁に出て、ウッズ、森野、ノリで得点するのが今年のドラゴンズですから、そのリズムが崩れたことと、“福留不在”という重圧が大きく森野ののしかかっていた感じが大きかったです」
先生 「ダーウィンはもう、送りバント失敗するわ、ピッチャーゴロ取られへんわで、投げるだけでいっぱいいっぱいやったからな。その辺がいいように出たかも知らん」
コーチ「6回もそうでしたね。ピッチャーは江草にかわってました」
先生 「せやな。荒木と井端で二点取られて、ウッズ歩かして満塁の場面で森野」
コーチ「あそこで森野に打たれたら正直負けてたと思うんですけどね、不思議と打たれる気がしなかった」
先生 「森野はオールスターでも打ってるし、決して不調なわけではなかったと思うねん」
コーチ「しかも江草、全然調子よくないし。だけど打たれる気がしなかったのは、あれですよね」
先生 「“福留不在”や」
コーチ「ほんで、問題の7回です。4対3と一点負けてて、ドラゴンズ戦、後半戦の開幕と考えるとジェフがおったら、順番は分かりませんが、7回からジェフか久保田かいってましたよね?」
先生 「せやな。さらに橋本までおらんから、渡辺しかおらんかった」
コーチ「ワンアウト一二塁で代打の切り札立浪」
先生 「苦しい場面で、しかも甘い球やった」
コーチ「打ち損じのレフトフライ」
先生 「これも、福留がいないことで起きた悪い流れを過度に意識しすぎた大ベテランなればこそのミスショットやったな」
コーチ「なるほどね。そんな感じがしますわ」
先生 「前の打席でタイムリー打ってる荒木がそれほど怖く感じないのは、あれやな」
コーチ「井端が遠いんですよね」
先生 「もうすぐ井端、次井端やと、この荒木を出塁させてはいけない指数が100増える」
コーチ「確かに。ドラゴンズは福留不在に終始支配されてしまってた感じがありました」
先生 「タイガースの方も、久保田が失点するし、球児も大ピンチを招くし、ジェフ不在の影響は大きかったけどな」
コーチ「なんか、もう、必死にやってたらなんとかなってしまったっていうような感じでしたね(笑)」
先生 「せや。幸か不幸かタイガースの方がうまくいかないことに慣れてる感じがした。知らん間に打たれ強くなってる」
コーチ「どっちもうまくいかない中の攻防でしたけど、タイガースの方が意識しすぎず、耐え忍んだことが勝利の要因ですかね?」
先生 「せや思う」
<よかったところ>
先生 「でもなんか、話が重くなってもうたから、この辺でよかったところを言うコーナー!」
コーチ「何なんですか?このコーナー。前はこんな展開あんまりなかったですよ」
先生 「“笑い”で始めて“泣き”で締めるんが、コーチの得意のパターンやからな」
コーチ「分析されると恥ずかしいです」
先生 「対して、“しんどい”で始めて“適当”で締めるんがオレのパターンなんや」
コーチ「自信持って言わんといてください」
先生 「というわけで、よかったとこを言うコーナー、まずはベテラン捕手編!」
コーチ「ベテラン捕手編、って一人しかいないでしょう」
先生 「正解です」
コーチ「クイズやったんですか!?」
先生 「矢野が復調してきたな」
コーチ「そうですね。特に、右中間のタイムリーがよかったですね」
先生 「もうなぁ、矢野は何も考えんと思いっきり振ったらええと思うねん」
コーチ「そうですねぇ。彼、すぐに憂鬱になりますからね」
先生 「もう、矢野は全部ダブルプレーでもええから、思いっきり振ってほしい。ほんでうまく当たったら昨日みたいにホームランになったり、右中間にボカーンっていったりする感じ」
コーチ「矢野自身もそんな感じで振ってるような気がしましたよ。全然当たりそうもない空振りもありましたもん」
先生 「それでええんや、そのための7番やからな」
コーチ「8番、坂っていいですよね」
先生 「なんか、塁に出そうな感じがある」
コーチ「矢野が凡退しても、坂が出塁して、ピッチャーまで回して次の回一番からっていうのが積み重なると大きいですもんね」
先生 「オレは坂に出塁率十割を期待してるんや」
コーチ「期待しすぎです(笑)」
先生 「続いてのよかったところは、外国人編!しかも白人編!」
コーチ「先生、これはなんのためのフリなんですか?理解できないです」
先生 「シーツもなんとかなるかもな。ちょっと明かるかったし」
コーチ「二塁打、山井から打ちましたもんね」
先生 「一番苦手なタイプや」
コーチ「キレのいいストレートと、スライダーが武器の右投手」
先生 「甘く来たとはいえ、飛んだコースがよかったとはいえ、初球からいったことをまず評価したいし」
コーチ「ほんでそれがフェアゾーンに飛んだとこ」
先生 「今年、シーツのファールフライ何本見たかわからへんもんな(笑)脱邪飛王子や」
コーチ「ハハハ邪飛ってイヤな響きですよね」
先生 「もう、とにかく打ちに行っても前に飛ばんかったからな」
コーチ「矢野のタイムリーの前のフォアボールも良く選びましたしね」
先生 「あれも前半戦やったら、間違いなく空振りしとった。セオリー通りの配球で三振する王子やったからな」
コーチ「王子の前が長すぎます」
先生 「まぁ復調の兆しってことや!」
コーチ「あと、目立たないところなんですけどね」
先生 「おう」
コーチ「シーツ二塁打、矢野ライトフライでシーツ進塁という、前半戦ではほとんど見られなかったチャンスのシーンで、代打の葛城がフォアボール選んだんですよね」
先生 「あれは大事なシーンやったな」
コーチ「打ちたいやないですか。少ないチャンス。後輩がどんどん台頭してる中、そのまま坂、もしくは庄田、桧山という選択もあった場面で代打で出てるわけですよ」
先生 「凡退したら、また二軍かも知れんしなぁ」
コーチ「そこで我慢してようフォアボールで出ました」
先生 「その後、関本が打って一点入ったし」
コーチ「価値ある四球でしたね」
先生 「ほんで、関本のポテンヒットはな、あと併せて言うと藤本のタイムリーもそうやけど、あれは自分が活躍してない試合で、勝ったときとかにな、二人よう喜んでんねやわ」
コーチ「そうですねぇ、狩野のデビュー戦の時、スタンドにボールもらいにいったん関本でしたしね」
先生 「そういうのがな、そろそろ実を結んでもええ頃かな、と思う。人間には見えないもんが打たしてくれることもあると思うしな」
コーチ「ですね。そろそろ打っていってくれるでしょう!」
先生 「ほんでハナラビ王子や」
コーチ「絶対、その呼び方定着しないですよ」
先生 「狩野は勝負強いなぁ」
コーチ「勇気ありますよね」
先生 「岩瀬のスライダー一本に的を絞ってフルスイングって、それができなかったから今までみんな打てへんかってんで」
コーチ「すごいピッチャーやって敬意を払った上で、一か八かスライダー狙いで、どこ飛ぶかは知らん打法」
先生 「見事なタイムリーやったな」
コーチ「で、問題はですね・・・」
先生 「せやな。タイガースファン全員が思ってることやと思う」
コーチ「彼ですよね」
先生 「憂鬱王子」
コーチ「あ、始めてしっくりきた(笑)」
先生 「今岡はなぁ、たぶん、みんなにごめんなさいって言ってないからあかんねん」
コーチ「打てなくてごめんなさい、ですか?」
先生 「そうじゃなくて、心が弱くてごめんなさい、や」
コーチ「なるほど」
先生 「今岡が打つのうまいのみんな知ってるねん。ほんまに一位通過しよ思ったら、絶対に今岡が打たなあかん。だからな、今岡は試合に出てて当然やねん。だけどな、今岡自身がそのことをうまく消化できてない。打てへんかったらどうしよ? うまくいかへん、おれ、あかんなぁ、ばっかりや。打ってないわけやないねん。実は打率は井端とかわらへんねんで。でも、この存在感の違いはやっぱり弱さや。弱いんは弱いんでかまへん。だけど弱いなりにな、ぼく打ちたいんです!チームに貢献したいんです!広沢さん、ぼくどうやったら打てますか? 金本さん、ぼくどうしたらいいですか? って言うのが自然やと思う。泣いたらええねん。打ちたいんです、って泣いたらええ。ほんで、弱くてごめんなさいって謝ったらな、たぶん、打てる」
コーチ「先生・・・」
先生 「な、なんや?」
コーチ「ちょっと感動するやないですか」
先生 「泣きで締めるんやろ?」
コーチ「そうっすね。久し振りやし」
先生 「ほな、そろそろ締めよか」
コーチ「そうですね。語りつくせませんが今日で終わりやないんでね」
先生 「やけど、あと一つ大事なシーンを忘れとる」
コーチ「最後まで残してたんです」
先生 「そっか、ほんなら、満身創痍の体いっぱいでチームを引っ張る」
コーチ「アニキの大激走に」
二人 「乾杯!!!!」
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