2007年09月29日

岡田監督は本気で日本一を狙っているんだ

二日続けて、甲子園。二日目の昨日はスコアボード上の旗が上に向かって千切れて飛んで行きそうなほどの強風。ウッズやノリがそれを意識して大降りになってくれたらなぁ、とそんなことを思った。

やっぱり現地に行ってこそ分かるたくさんのこと。
ビールで顔を真っ赤にしながら、熱く野球を語るおじさんは、ピンチを迎えたときに「もっと今岡や鳥谷や関本が上園のところに行ってやらなあかん。一人で投げさせてかわいそうやないか」とそのことに強く憤慨していた。ぼくもその通りだと思った。
後ろの座席に座っていた、少し声しゃがれたおばちゃんは、「うちが見に来た試合は24年間で100戦以上になるけど、一度も負けてない」と言っていた。本当かどうかは分からなかったが、本当ならば羨ましいし、そのおばちゃんの強運に是非あやかりたいと思った。

試合終了後ゴミ拾いをする若者の団体だったり、スタンドに占める「ヤンキー比率」「ギャル比率」はやっぱり甲子園が一番高いのかなぁ、とか、そういうことって現地でこそ感じることできる。
けっこう無理して行ったけど、行って良かったなぁ。

5万人も収容する甲子園という場所、そのスタンドを埋めてしまう野球というスポーツ。阪神タイガースというチーム。
阪神ファンの熱量、性質。岡田さんがどれほど支持されているか、いないか、その度合い。そんなことも肌で感じることができた。

5回裏が終わって喫煙所に煙草吸いに行ったら、喫煙所では岡田批判(笑) (5回表、上園に代打で高橋光信出塁を受けて)「なんで上園代えるんや」「てか、それはええけどなんで鳥谷に送りバントささへんのや」「いや、なんでそもそも鳥谷をずっと使うねや」「わしあいつ嫌いや」などなど(笑)

「なぁ、兄ちゃんもそう思うよなぁ」と同意を求められ、「ええ、まぁ」と曖昧な返事をするぼく。

いろんな人たちに、いろんな考え方があって、いろんな思いを持って、みんなが一球一球に集中している。甲子園における応援スタイルの良さは、余り本意ではない岡田さんの選手交代も、代わってしまえばその選手を全力で応援する、その度量の広さというか、まぁ勝ってしまえば「勝ったー!やったー!」で終わってしまう近畿地方が含有する根っからの陽気さというか、基本サバサバしていて優しい大阪商人的な「情」の良い部分。それが全面に出るところが甲子園なのだなぁと思った。

そして甲子園に来ているお客さんは野球を良く知っている。

圧巻は今岡のエラーでノーアウト二塁のピンチを招いた7回表だった。瞬間的に、「今岡アホー」「下手くそー」と野次が飛んだが、それは一瞬にして「久保田頑張れ」に変わっていった。

打席にイビョンギュ。同点狙いの送りバントを二度失敗したイビョンギュ。明らかにセカンドゴロを打って二塁ランナーを進塁させようとしていて、イビョンギュはそれが非常にうまい打者だった。2ストライクに追い込まれてから二度ファールしたイビョンギュ。

甲子園のスタンドは三振を望んでいた。もちろんマウンドの久保田もマスクを被っていた野口も同じ気持ちだっただろうと思う。

「セカンドゴロを打たれてはならない」

必死で進塁打を封じようとするバッテリーを、同じ気持ちで後おしした甲子園。久保田がイビョンギュを三振に仕留めた瞬間。立ち上がっての大歓声だった。

他にも3回表のツーアウトランナーなしで井端を迎えた場面。
井端を迎えるに当たって最高のシチュエーションであることの期待。「井端で切る」が今後の試合展開において良い方向の作用するという予感。女性もたくさんいるわけで、お客さんは野球経験者ばかりではもちろんないと思う。だけども局面局面を肌で感じる力が全体に浸透しているのだと思う。一二塁間のゴロを関本がうまくさばいて井端をアウトにした瞬間の甲子園の雰囲気は「序盤の三者凡退」では全くなく、さながら終盤の大ピンチを凌ぎきった時のようだった。まさに昨日、ジェフがウッズから三振を取って凌いだ8回と同等の拍手が3回の上園にも向けられていた。

それが甲子園なんだ。

試合は、岡田監督がもう必死になって「岡田彰布」と格闘している様が大いに見て取れた試合。うまくいかない面もたくさんあったけど、だけどこれが岡田さんの野球だ。

オーダーは前日と同様、5番サード今岡。6番ライト林。

ドラゴンズ中田攻略へ向けて、初回の鳥谷と赤星の打席は素晴らしかった。ファールファールでなかなかアウトにならない鳥谷。打つポイントを極限まで近くして打撃を行う赤星。「今日の阪神、ラクじゃない」中田がそう感じるには十分な打席を一、二番で。できれば、ここからシーツが出塁してアニキが歩いて、今岡でドカーン!みたいな得点ができれば最高なのだけど、無論そんな贅沢なことを言える状況ではない。シーツは簡単に打ち上げて内野フライ。これが現在、だけどやろうとしていることが見えてきて、確かにその場所へ近づいていると感じた初回の攻撃だった。

3回表は2アウトランナーなしの場面から鳥谷がクリーンヒットで出塁。中日、阪神共に『8番から』の打順となった3回、2アウトから井端を抑えた上園と、ヒットで出塁した鳥谷。僅かなアドバンテージを鳥谷の出塁が奪い取る。ここで赤星の打席が難しいなと思ったのは、やはりシーツの状態が悪いからで、『赤星が繋いで1塁2塁になってシーツが三振。次の回がアニキから』これはとても避けたいケースだった。

ならば鳥谷を一か八か走らせて、成功すれば2アウト2塁で赤星。失敗しても、次の回赤星から、そういう考え方は一般的には道理だと思う。喫煙所でもそういう話題が持ち上がっていた。ただ岡田さんの野球はそれを好まない。シーツが3番に入っている以上、シーツは「よく打つ人」という扱いを断じて動かしてはならない。

そのベンチの思惑を察するかのように、赤星はセーフティバントを試みた。まさしく繋ぎ。シーツが打てる可能性は低い。だけど、シーツが打つ可能性にかけて自分はバントで生きる。結果は失敗に終わったが素晴らしい打席だと思った。もし、サインだったとしても監督のやろうとしていることは非常に一貫していて気持ちが良い。岡田の格闘、応援したくなるじゃないか。

そして翌4回、1点を先制された裏のイニングで、唯一の得点が入ったイニングだ。岡田野球が瞬間的に燃えたイニングだった。

前の回に繋ごうと期待されたシーツが、ヒットで出塁する。人間はやっぱり期待されないよりも、期待された方が良い。ようやくそういうムードになってきたチームを感じて打席に入ったであろうアニキ。だけど相手も負けられないのだ。ドラゴンズはまだ確かに優勝を争っている。スタンドからでははっきりしたコースは確認できなかったが、完璧に攻められたのだろうな、と思った。ダブルプレー。だけど、その後の今岡が素晴らしかった。突如制球を乱すのは今シーズンの中田によく見られる場面で、この場面で今岡が選んだ四球は今岡が奪ったというよりも、中田が与えてしまった、という印象が強かったが、四球目のボールを選んだ今岡が「よし」といった面持ちで、ファーストベースに向かっていった。その姿に大いなる期待をしたのだった。

そして、林クンの弾丸ライナー。

ドラゴンズの1点はまさに「これぞドラゴンズ」という得点だった。荒木がヒットで出塁して、警戒されながらも盗塁を決める。ノーアウト2塁からノリの外野フライで進塁。1アウト3塁で、ウッズが歩き(上園はよく攻めていたけど)、森野の内野ゴロで1点。ヒットは荒木のライト前の1本だけで1点先制してしまった。もちろんこれも見事な繋がり。

しかし、それと両極にあるような「繋がり」こそ、岡田野球の真骨頂。前の回に期待された←ここ重要、シーツが出塁。だけどアニキがダブルプレー。だけど今岡が歩いて、林クンの2ラン。何もしてないけど、二点取ってしまう。その後野口も続いてレフト前。これが、ピッチャーが中田のような凄いピッチャーじゃなければ、一気に大量点もあったイニング。何かが結実し始めた。

うまくいかなかったところも多数あったが、それも岡田さんが岡田さんと格闘しているところがよく見えるようなシーンだった。

喫煙所でも話題だった、代打のみっちゃんが出塁して打席に鳥谷という5回表。赤松を代走に出して、「走るかもよ」という重圧を相手に与えたり、鳥谷にバントさせたり、エンドランやってみたり、それはもちろん正論なのだと思う。だけど、岡田野球はここで、代走も出さずに鳥谷に打たせる野球なのだった。負け続けてぼくも少し忘れてたよ。前の打席でヒット打ってたし、今後クライマックスシリーズを考えても鳥谷が打つか打たないかは本当に大きくチーム力を左右する。だから「打て」。いいじゃないか、いいじゃないか。

結果はセカンドゴロのダブルプレーだったけど、左の方を向いてしっかり打とうとしているところを、谷繁にうまく利用されてのセカンドゴロ。打つポイントを後ろにしているぶん、中田のスライダーが低めに来た場合、少しだけ鳥谷の手首が返ってうまい具合セカンドゴロになる角度でバットと衝突する。中田の投げたボールがもう少し高ければ、セカンドの頭をライナーで越えたはず。本当に紙一重だった。

8回の1アウトから赤星が内野安打で出塁して打席にシーツという場面も然り。この試合だけ勝つんだったら、当然送りバント。だけどシーツはヒッティングだった。結果は「あわや」というレフトフライ。

ふつうに考えればクライマックスシリーズでもう一度、ドラゴンズと対戦する。岡田さんは本気で日本一になろうとしているんだ、そう感じた。この試合を勝つことと、日本一になることを両天秤にかけての試合。8連敗中でそんな余裕があるわけない。だけど必死に格闘して岡田は岡田の野球を貫いた。

本気で日本一になろうとしている3位のチーム。
目が離せない。

そして、甲子園はほんとにみんな藤川球児が大好きだった。
今日も球児が甲子園に抱きしめられて投げることができる試合になりますように。


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posted by コーチ at 13:21| Comment(2) | TrackBack(0) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月28日

安藤が一つ、頷いた。

コーチです。

ここ数日ちょっとどうかというくらいいろいろ急な用事が入りまして、更新が滞りがちです。楽しみにしてくださっている方いらっしゃいましたら、申し訳ございません。

コーチ、忙しいです!!笑

しかし、忙しさにかまけず今日もこれから甲子園へ行ってきます◎

昨日は、試合終了後yuさんとお会いすることができました。

金本選手の話をするyuさんの目がとても印象的で、本当に澄んだ目をされていて、すごく素敵な気持ちになりました。

テレビで見てらっしゃた方は憂鬱な試合だったかも知れませんが、
甲子園で見ているぶんには、なかなかに可能性を感じた試合でもありました。

最も印象的だったシーンは、安藤が荒木に3ラン打たれた後、ノリをなんとなく抑えてしまって迎えた対ウッズの場面。
そこで自分を律するように、一つしっかり頷いたシーン。

もう、川上に2塁打打たれて。荒木にホームラン打たれるとうような考えにくい出来事は、本当に本当にいろいろな理由が重なり合って出てくる一つの現象にすぎないのだと思います。配球うんぬん、安藤のボールうんぬん以上の理由が確かに存在する感じを受けました。

それと真正面から対峙し、自らを律した安藤にチームとしての可能性を感じた昨日。そうだよ、そうやって克服できる日を待つしかない。

それにしても圧巻は中日のノックの時の井端。
先に右手にボール持ってるんじゃないか、って思うほど捕ってから速い。ほれぼれしてしまいました。

そりゃ井端もウッズも森野も凄いんだけど、
今日は勝つぞ!
安藤が「うん」と一つ大きく頷いたように、
みんなが「うん」と頷けば大丈夫、
みんなで「うん」。
甲子園はやっぱり、温かな場所でした。


コーチ


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posted by コーチ at 14:23| Comment(4) | TrackBack(0) | □ 安藤優也 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月26日

大喜びのホームランで勝てますように

甲子園でのジャイアンツ戦三戦目からの七連敗。
ボギーが内海の顔面にデッドボールを当てたところからこうなった。
七つ続けて負けることの理由はもちろんそれだけではないが、きっかかけがあの一球だったことは間違いないと思う。危険球以前、以降。タイガースは全く別のチームになってしまった。

だからボーグルソンを先発させるな、なんてもちろん思わない。
原因を作ったもののみができうることはあると思った。チームメイトに対する謝罪をピッチングで表現すること。「ごめんなさい」を一球一球に込めることができれば、何か兆しが見えるかと思った。

実際、序盤のボギーは非常に良かった。コーナーに丁寧にストレートを投げ込んでいく。受ける矢野も強気の配球でボギーの背中を押した。


人の精神は儚いものだと思う。

佐伯に満塁ホームランを打たれて試合は決したわけだけど、その前の村田に対してカウント1−3になった場面。ここでボギーが何度か矢野のサインに首を振った。矢野が何のサインを出したのか分からなかったが、ボギーが投げた球はスライダーだった。それが外に大きく外れてフォアボール。それで満塁になったのだった。

その球を投じた後、ボギーはバツの悪さを隠すように矢野に対して謝っていて、その直後、佐伯に満塁弾を浴びた。


これだけチームの状態が悪くなると、分かりにくいことが多岐に渡って出てくる。「どうやって1点を防ぐのか」それが極限まで分かりにくくなっている現状。

分かりやすくしなきゃ。
今日、ボギーは首を振ってはいけなかったんだよ。全部矢野さんに任せることでのみ、マウンドにいることを許された日だったはずなんだ。マウンド上でボギーが矢野さんを信じる姿、その姿に矢野さんが応えボギーを助ける姿を、みんなが見て、そこで感じたもの持って打席に入る。それが一番強い姿だったんだ。だけどそれができなかった。だから負けたのはとても分かりやすい。だけどどうやって一点を防ぐかがとても分かりにくくなっている。

もうね、「勝つなら矢野。負けても矢野」徹底していいと思う。
チームとして絶対のルールを決める。ピッチャーは矢野のサインに首を振らない。矢野さんが出したサインは絶対に最善だ、とそう信じてストレートならストレート、変化球なら変化球。矢野さんが構えた場所目がけて投げるだけ。抑えたら矢野さんありがとう、打たれたら矢野さんが悪い。もう、それでいい。

できるだけ分かりやすくする。
「1点を防ぐ」のキーは「矢野と心中」だと思う。
これまでの感謝と信頼。それを全て合わせて全部を矢野に委ねたいな、と思う。

矢野がそれを意気に感じてね、フル回転でリードできたら絶対得点できるはず。


明日、甲子園に行きます。
素晴らしいゲームを期待してます。

信じて、支えて、助け合う。そんな野球が見たいです。
ぼくはスタンドで矢野さんを信じます。

って書きながらそろそろ狩野のような気もしてきたけど(笑)
それならまた春のような気持ちで一から頑張ればいい。

甲子園に戻って、リスタート。
その船出を真正面からこの目に焼き付けにいくよ。
「わっしょい、わっしょい」言えるといいな。

一ファンはスタンドにて、「お帰りなさい、大変でしたね」と思っています。そして、もうこれ以上、アニキに孤独な思いをさせないでほしいと思います。あんなホームラン、もう見たくないよ。ホームランなのに悲しいなんて矛盾してる。

明日は大喜びのホームランで勝てますように。


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posted by コーチ at 22:53| Comment(7) | TrackBack(1) | □ 金本 知憲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月25日

日々のくらし


「お金のためだけ」に仕事をしていると分かりにくくなることがたくさんあります。もちろん生きるためにお金は必要だけど、だけど必要なのはお金だけではない。

「お金のためだけ」にする「仕事」だとすれば、その「仕事」へ向かう道中はただの「移動」となり、「食べるため」に必要な「お金」であって、だけど「お金」のために「食べる」ようにもなってしまいます。もう何のことか分からない。

飽くまで、個人的な主義思想みたいな話です。
ぼくの話。

ぼくはその時その全てをできる限り感じたい。
それが生きる意味だと思っています。ただただ正確に真正面からできうる限りを感じること。

ぼくの仕事はたいてい夜の10時からで、起きるのは夕方です。寝ぼけまなこで、近所の銭湯に行ったりします。思いっきり大きなお風呂につかって、太腿の裏に溜まった疲労を分解してね、朦朧としてきたらお風呂から出ます。銭湯から出ると、いつも歩いてるその通りが全く別の道みたいに見えてきます。まるで旅行にきたみたい。道端に咲いている植物が見えてきたり、細い道をイライラしながら走る車をやり過ごしたり、そんなことをしながら帰ってきて、野球を見ます。

野球を見てるときはもう、大変なことになってて、歓喜と絶望のその繰り返し。勝ったら嬉しいし負けたら悔しいし、泣いたり笑ったり大忙しです。

9時半頃家を出て、原付で店へ向かいます。
もう、完全に野球のことを引きずっています。そのまま風を感じて、雨が降ってたら雨だなぁ、って思って、アクセルを握る自分の手の感触に意識を集中してみたり、楽しくなってきて歌を歌いだしたり、そんなことをしながら店に着きます。

店に着いて挨拶すると、それまで働いていたバイトのみんなが少し笑ってくれます。そしたらぼくも笑います。

一人一人のお店のスタッフに、お客さんに「いっつもありがとう」を表現しようと思います。そうやって夜が明けます。

仕事が終わるのはだいたい朝9時で、帰ってきてからブログを書くことが多いです。うまくまとまる日もあれば、そうでないこともあって、なかなか更新の時間が安定しません。

今日のは好きだなぁと思うこともあれば、今日はうまくかけなかったなぁと思う日もあります。だけどそんなことはどうでも良くて、パソコンがあって、電気が通っていて、そもそも家があって、毎日の暮らしをできることそれ自体に幸せを感じようと思っています。そう思えない日もあるけど、だけど、心のどこかで忘れないではいれてるかな。

そんな暮らしをしていたら、結果的に口座に給料が振り込まれてます。金額は多くないですけど、それを選んでそうやって暮らしています。

そうそう、奥さんは、奥さんの実家の事情で一年くらい前から実家に帰っています。たまにしか会えないからさびしいですが、いろんな事情があります。

「生活の全て」が目的となるような暮らし。
本当にできてるのかどうか分からないけど、頑張るぞ。

出勤時刻はいつもより遅いけど今日もまたこれから仕事です。
外はちょっと雨みたい。


もちろん優勝できることが一番いいけど
「優勝のためだけ」に野球をやっているのではないとも思います。

一つ一つのプレーをみんなが目一杯感じてほしいなぁ、って、
そう思います。


コーチ

posted by コーチ at 01:42| Comment(0) | TrackBack(0) | # 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月24日

こんにちは

こんにちは、コーチです。

仕事から帰ってきて、パソコンの前に座っているのはいつも通りですが、今日はこれから少し出る用事があるので、ちゃんと更新できません。以前うちの店で働いてた女の子が、「人生の岐路」らしいのでちょっと相談に乗ってきます。

いっぱい誉めてあげようと思います。

2時には帰ってきて試合見るぞ◎

中日が負けてくれたことで、ギリギリ首の皮一枚繋がってる感じ。
去年の秋にナゴヤドームで山本昌にノーヒットノーランやられたときと似てたなぁ、昨日。

その翌日、いったい何を見せてくれるのか。
いかなる姿でも真正面から対峙しようと思うのです。

大好きだから、応援する。
それだけですよね。

では、いってきます◎

コーチ
posted by コーチ at 10:02| Comment(0) | TrackBack(0) | ◎管理人より | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月23日

『伝説』が始まる日となれ

先生  「さぁ、ドラマの幕はあけたで」
コーチ 「ですね」
先生  「『事実は小説よりも奇なり』の最終章や!」
コーチ 「ここから10連勝で優勝です!!」
先生  「強がりではなく」
コーチ 「本気で思ってますもんね!」
先生  「オレたちはアホやからな、優勝するとしかどうしても思われへんねや」
コーチ 「踊る阿呆に見る阿呆ですよ」
先生  「同じアホなら、最後まで目一杯応援するアホになりたい。目立たぬように、はしゃがぬように、似合わぬことは無理をせず、最後まで目一杯応援する男になりたい」
コーチ 「引用する曲が、微妙にズレてますよ(笑)」 


先生  「なんで杉山があんなに小さくなってしまうのかってそんなことは杉山の責任ではない、もっと大きなことが理由や」
コーチ 「そうやと思います。ナベ君が打たれたことも然り」
先生  「スワローズ打線の中にガイエルがいなくて、やはりとてつもないつながりを見せたことも然り」
コーチ 「あんまり占いとか信用するほうじゃないですけどね、何かとてつもなく大きな波に飲み込まれている感じがしますね」
先生  「みんな溺れてるんや、やけど関本と葛城が先頭にたって何とかその波に抵抗してきたこの二日間やった」
コーチ 「だけど、泳いでも泳いでも、波はどうしようもないくらい押し寄せてくるんですよね。関本と葛城はほんまに立派です」


先生  「オレ、ヤクルト戦始まる前に、二試合は負けてもいいみたいなことちょっと言ったやん?」
コーチ 「言ってましたね」
先生  「それは『危険球ショック』を克服するには二試合くらい必要やろうと思ったからなわけやけど、ここにきてもそれは変わらへんわ」
コーチ 「ほんまですか?」
先生  「ほんまや、『かわらへん』って言っても心がソワソワせえへんことが何よりの証拠や」
コーチ 「それやったらほんまですね。嘘付くときって、心がソワソワしますもんね」
先生  「今日負けたら、はっきり言って終戦や」
コーチ 「そう思います」
先生  「やけど、くしくも今日、戦いの準備がようやくできたと思うんや」
コーチ 「二試合経過しましたしね」
先生  「大きな波に飲まれるばっかりやった初戦、しかし飲み込まれはしたものの抵抗はできた二戦目」
コーチ 「徐々に来てますよね」
先生  「さぁ、タイガース」
コーチ 「大いなる憂鬱をぶっ飛ばせ!!」
先生  「ドラゴンズにしてもジャイアンツにしても」
コーチ 「はい」
先生  「一番恐れているのは、その大きな憂鬱をぶっ飛ばしてしまったタイガースの姿なんや」
コーチ 「ここに来て野間口が完投したり、サヨナラ勝ちの後、大差で勝ってしまったり、順調すぎるのってけっこう不安ですもんね」
先生  「もともと12ゲーム差に反発しきったタイガースや」
コーチ 「その反発力こそタイガース最強の武器」
先生  「沈んで沈んで、一気に急上昇!!」
コーチ 「さぁ、2007年が『伝説』になるための準備は整いました」
先生  「『伝説』のエンディングに向かって、一気に突っ走るのみ」
コーチ 「太くて強いゴム状のものがグイーンと引っ張られて、その上にタイガースが乗っている。引っ張られて沈んでいるから波に飲み込まれっぱなしです。だけど、そのゴム状のものを支えている深く刺さった杭をみんなで抜くことができれば」
先生  「ゴム状のものは一気に解き放たれ、大いなるエネルギーでタイガースを空へ跳ね上げる」
コーチ 「物凄い勢いで、波を抜け、水しぶきの中見えたのはまぶしい太陽」
先生  「ふと下を見ると、キラキラ光る水面がとてもきれいで」
コーチ 「その水面に反射した道こそ、歩いてゆくべき道」
先生  「さぁ、今日がその日」
コーチ 「『伝説』が始まる日だー!!!」
先生  「そしてオレたちは」
コーチ 「その伝説の証人となるんです!!」

先生  「ゥゥゥォオリャー!!!!!!!」
コーチ 「ゥゥァァリャー!!!!!!!!」

先生  「今日の神宮よ、そんな夜であれ」
コーチ 「そして『伝説』が始まった日だと、呼ばれる夜となってほしい」
先生  「大好きやから」
コーチ 「優勝してほしい」
先生  「オレたちはほんとな」
コーチ 「はい、もう、それだけですからね」


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posted by コーチ at 10:53| Comment(3) | TrackBack(0) | ☆ ペナントレース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月22日

そんな気持ちになれたなら

先生  「さぁ、追い込まれたでぇ!」
コーチ 「ほんまに追い込まれました!」
先生  「タイムリミットは後二試合。少なくとも明日までに立て直さんとさすがに THE ENDや」
コーチ 「ですね」
先生  「しかし!」
コーチ 「はい!」
先生  「結局、ここを撥ね退けることができなければそもそも優勝なんかできないわけで。もう、簡単なこと。我々は撥ね退けることができると信じるしかないわけや」
コーチ 「信じましょう」
先生  「切り替えるってよく使われる言葉やけど、何度も言ってるけど『切り替える』はちょっと違うと思うんや」
コーチ 「はい」
先生  「『切り替える』と現在悪くなっている原因を曖昧にしてしまうからな。ちゃんとその原因のところへ戻ってその気持ちからスタートせなあかん」
コーチ 「原因は明白ですよね」
先生  「ボギーが内海に当てた、あの瞬間や」
コーチ 「わざわざほじくり返さんでも、って思う人もいるかもしれないですけど、あの時に持ってしまった、物凄くイヤな気持ちを見て見ぬふりしてたら、解決しないですからね」
先生  「イヤな気持ちはイヤなまま受け入れて、それを受け入れて不安定になる自分としっかり正対するんや」
コーチ 「物凄い根性とエネルギーいりますけどね、そうすべきやとぼくも思います」
先生  「そして感じやすい自分なればこその弱さと向き合えたならば」
コーチ 「感じやすい自分なればこその強さが見えてくる」
先生  「脳裏に浮かんでくるのは」
コーチ 「アニキが膝の痛みに耐えて、歯を食いしばって何度も何度も走り続けたシーンであって」
先生  「その時に自分は何を感じたかって」
コーチ 「桧山が代打満塁ホームランを打った時、何を感じたか」
先生  「赤星がクロスプレーでホームに突っ込んでいって、しばらく起き上がらなかった時、何を感じたか」
コーチ 「数々の球児とウッズの名勝負に何を感じたか」
先生  「交流戦でロッテに大敗しまくって、どんな気持ちやったか」
コーチ 「それでも今、優勝争いできてるのはどんな気持ちか」
先生  「みっちゃんが泣いた日」
コーチ 「野口が優しかった日」
先生  「狩野のあのサヨナラヒット」
コーチ 「桜井の千葉でのあのヒット」
先生  「数え上げればきりがないけど、もう全部含めて今日、試合をしてるんや、っていうことが見えてくる」
コーチ 「そんな気持ちで野球やってからここまでこれたんですもんね」
先生  「だからそんな気持ちで野球をやって」
コーチ 「そんな気持ちで応援するだけ」
先生  「そんな気持ちになれたなら」
コーチ 「今日はきっと勝てるはずです」
先生  「昨日だって、大きな大きな分厚い膜をな」
コーチ 「一時的に関本が突破しましたもん!」
先生  「大差はついたけど紙一重ゲーム」
コーチ 「全員で、今までの全部で必死こいて歯をくいしばって突破しようとすれば、きっと大丈夫」
先生  「今日もたぶんチグハグなシーンがいっぱい出てくるやろうけど」
コーチ 「だけど、それが現在。それを全部受け入れて、それでも突破しようとすることですもんね」
先生  「グライシンガーを打てなかったことはしゃあないわ。それが現在やとしっかり受け入れて」
コーチ 「それでも川島を打ったんや!って強く思えるだけのことを今年一年かけてやってきたから」
先生  「だからきっと、大丈夫」
コーチ 「そんな野球を、今日見れるはず」
先生  「頑張れタイガース!!」
コーチ 「ぼくたちは、信じてます!!」

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posted by コーチ at 11:25| Comment(2) | TrackBack(2) | □ 関本 健太郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月21日

対グライシンガー

先生  「さぁ、神宮や!」
コーチ 「いよいよですね」
先生  「ジャイアンツ三戦目のショックも一日空いたことで、なんとなく落ち着いたよな」
コーチ 「現場もそうやといいんですけどね」

先生  「で、グライシンガー」
コーチ 「初戦に来るみたいですね」
先生  「で、川島」
コーチ 「二戦目、みたいですね」
先生  「で、石井一久」
コーチ 「三戦目です」

先生  「なー!!!!!(頭、抱える)」
コーチ 「確かに『なー!!』です」
先生  「難しいローテーションと当たってしまったなぁ」
コーチ 「まぁでもそれは仕方ないことですからね、どのピッチャーであっても打つしかない」
先生  「でもな」
コーチ 「はい」
先生  「オレ、思うんやけどな。グライシンガーと川島の二試合ってもちろん打ちにいかなあかん、勝ちにいかなあかんのやけど、もし結果が出なかったときに、その敗戦を受け入れやすいというメリットはあるなぁと思うんや」
コーチ 「弱気な発言のようですけど、ぼくも賛成です」
先生  「対内海の試合で、相当リズムが崩れたんは確かやねん。それを慌てて戻そうとしてよりドツボにはまるほうが怖い」
コーチ 「確かにそうですよね。『データとか関係ない、気持ちや、絶対勝たな』ももちろん大事なんですけど、調子が悪くなった時に前のめりになることは、決していいことばかりではないと思いますもんね」
先生  「ということで、コーチ」
コーチ 「はい」
先生  「白熱の優勝争いやねんけども、やることは実はいつもと一緒で『野球』やん?」
コーチ 「そうですね、うん」
先生  「グライシンガーをふつうに攻略するには何をやったらええんや?」
コーチ 「そうですね。『ふつうに攻略しよう』って一生懸命やる、その上で攻略できたら勝てる、できなかったら負ける。今日の試合はそれでいいですよね。まず、『ふつうに打とうとすること』」
先生  「心を落ち着けて、自分のやってきたことを信じて、まずブンッと振る。そこからよな」
コーチ 「はい、そう思います」
先生  「ところで、早く質問に答えてほしいんやけど」

コーチ 「ああ、グライシンガー攻略の糸口ですよね」
先生  「せや」
コーチ 「もちろん、素晴らしいピッチャーやから、完璧に投げられたら全く打てないのも仕方ないという前提ですけどね」
先生  「おう」
コーチ 「直近の二試合でグライシンガー、それぞれ中日戦で4失点。横浜戦で5失点してます。しかも両方とも一イニングに4点取られてしまっている」
先生  「せやったせやった。特に中日戦は初回に井端から六連打で一気に決めたんやったよな」
コーチ 「でしたね。もちろん、それができれば言うことないですけど、初回と2回は焦ることないと思います。第一打席は対内海戦で崩れてしまったリズムを修正しようと一日かけてみんなやったと思うんで、それをしっかり表現すればいい」
先生  「なるほど、まず自分自身がしっかりせなな、自分のチーム状態を見極めること、その上でそれを受け入れてしっかり振ること、基本やもんな」
コーチ 「そうやと思います」
先生  「で、それを踏まえてどうしていったらいいんや?」
コーチ 「グライシンガーの対戦被打率がね、対右打者が.260 対左打者が.207なんですよ」
先生  「グライシンガーから見れば、左打者の方が抑えやすいんやなぁ」
コーチ 「データ的にはそうですね。たぶん、左バッターの膝元に来るチェンジアップが相当打ちづらいんやと思います」
先生  「右バッターやったらそのコースなんとかファールにできる可能性があるんかもな」
コーチ 「ですね。なので、対策ですが」
先生  「おう」
コーチ 「目標は三回ノックアウトです。グライシンガーの中に『最近、序盤に大量点取られてる』っていうのがあると思うんで、ひとまずそこをつきたい。心がグラグラ、グライシンガーになったら勝機も出ます」
先生  「グラグラグライシンガーな(笑)」
コーチ 「ほな、笑けるほど理想の青写真いきますよ(笑)」
先生  「笑けるほどいっとこ」
コーチ 「まず初回は鳥谷、赤星二人でインサイド低目のチェンジアップを『簡単に振りません、ぼくらは』という意識付けをしたい」
先生  「なるほど」
コーチ 「さらにそのことを念頭に置きつつもカウント1−0や1−1の場面で狙ってる球が来たら、思いっきり振っていきたいです。それで打ち損ねて凡打になっても構わないと思います」
先生  「まずは振ることやもんな」
コーチ 「願わくば赤星が出塁して1アウト1塁でシーツ。ここでのシーツが外の変化球を引っ掛けてボテボテのサードゴロを打ちます」
先生  「速い球を内野フライよりはいいなぁ」
コーチ 「序盤のシーツは最近打てませんからねぇ(笑)」
先生  「ということで、赤星が二塁へ進塁した」
コーチ 「2アウト2塁でアニキ。ここでアニキを警戒したスワローズバッテリーがフォアボールで、桜井」
先生  「調子も上がってきた桜井、期待できる」
コーチ 「際どいコースをファールで逃げる桜井。だけど、最後はインサイドのストレート、いい当たりで二遊間に飛ぶんですけど宮本が好プレーで、無得点」
先生  「リアルリアル」
コーチ 「2回は葛城も鳥谷、赤星と同じようにインサイドのチェンジアップ簡単に振りませんよアピールの中、ストレートに詰まってファーストゴロ」
先生  「うん」
コーチ 「矢野は頑張るけど三振」
先生  「うん、矢野は頑張ってくれたらそれでええ」
コーチ 「で、関本は前のグライシンガーとの対戦の時も相当粘れてるんですよね」
先生  「せやったせやった」
コーチ 「ということで、わりと簡単にストライクとって来ると思うんで、その球を関本がバチーンとレフト前」
先生  「9番まで回って安藤が三振、でええかな」
コーチ 「そんな感じやと思います」
先生  「で、勝負の三回や」
コーチ 「『インサイドのチェンジアップはなかなか振りません』を印象付けておければ、先頭の鳥谷は若いカウントで外の速いボールを中心に待てます。それをレフト線へカーンと2塁打」
先生  「来た来た」
コーチ 「赤星送らずに、フォアボールで出塁。これで、ノーアウト1塁2塁になります」
先生  「そして誰もがダブルプレーのことが気になるシーツは」
コーチ 「けっこうこういう場面になると打つかなと思うんですけど、速いストレート打ち上げてセンターフライ。凄く悔しがる」
先生  「ありそうありそう」
コーチ 「1アウト1塁2塁になって、アニキがライト前へ強い打球、微妙なタイミングも鳥谷が一気にホームまで帰って来て、ホームイン!」
先生  「アニキー!!!ってなるところやな(笑)」
コーチ 「で、1点取られてランナー1塁2塁、序盤の大量点が気になりだして、心がグラグラ、グライシンガーになってくれたところで」
先生  「桜井!!」
コーチ 「レフト線へ凄い当たり!!」
先生  「アニキが一気に大激走で一塁からホームイン!」
コーチ 「さらに葛城がレフト前へ!!」
先生  「桜井がホームイン」
コーチ 「これで4点。3回KOです(笑)」
先生  「ほんま笑けるけど、不可能ではないよな」
コーチ 「やと、思うんですけども。対グライシンガーって負けてる二試合、両方とも大差なんですよね。下柳先輩が乱調やった甲子園と、杉山がユウイチに満塁ホームラン打たれた神宮」
先生  「序盤競れたら、また違ってくるかも知れんしな」
コーチ 「安藤なら大丈夫でしょう!」

先生  「で、もしうまくいかなくても」
コーチ 「今日はグライシンガー凄かったで、終わらせればいい」
先生  「勝負はまだ先、とは言わないけど、今日で全てが決まるわけではないからな」
コーチ 「そう思います」

先生  「ほな、京浜遠征いっぱい勝って、マジック出ますように!!」
コーチ 「頑張れ、タイガース!!!!」


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posted by コーチ at 12:02| Comment(0) | TrackBack(6) | □ 桜井 広大 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月20日

沈黙から大連勝の鍵は桜井

先生  「強さと弱さは紙一重なんよな」
コーチ 「ほんまにそうですね」
先生  「この間、赤星がヒーローインタビューで言ってたやん」
コーチ 「『楽しくてしょうがない』ですよね」
先生  「そう、それ。『楽しくてしょうがない』って、個人的には一番好きやし、強いときは一番強いと思うねん」
コーチ 「二戦目の江草のピッチングとかまさにそんな感じでしたもんね」
先生  「勝利の中に悲愴感がないんよな」
コーチ 「はい」
先生  「ところが」
コーチ 「ええ」

先生  「内海に対して危険球って、もう最悪に良くないことやん」
コーチ 「頭狙ったとは思わないですけど、ぶつけにいってた感じはありましたしね」
先生  「オレはむしろジャンの時よりひどいと思ったわ」
コーチ 「ですねぇ。ジャンの場合は審判も酷かって周りがジャンを潰した感じもありましたから」
先生  「それで精神のバランス崩してな。まぁ、わざとぶつけるんは絶対にあかんことやけど、もはや錯乱状態にも見えたからな。心神耗弱状態みたいな」
コーチ 「もちろん、そうであってもダメなものはダメなんですが、でもボギーの危険球はちょっと救いようがないですよね。なんかクセがバレてる感じはしましたけど、自分が滅多打ちされて、それで切れてもうて、この回で降板やったら相手のピッチャーにぶつけてチームに貢献しよ。ってそのニュアンスがどうしても見えてしまった」
先生  「アメリカ人気質なんかなぁ。。溜息しか出んな。この間のシーツがスンヨプの足踏んだ件もそうやけど、そういう思考回路が備わるような環境で大人になってしまった人を今さら教育するんはほんまに難しい」
コーチ 「そうですね。どこに何が潜んでいるのか分からないですもんね」
先生  「特に久保コーチみたいな基本穏やかで優しい人ならなおさらな」
コーチ 「監督もね、当たり前のことはできるだけ言いたくない人ですからね」
先生  「そういう久保コーチと岡田監督やから強い面もあって、今、磐石のリリーフ王国ができあがっているのも事実やし」
コーチ 「その時に、そのやり方は選手の内側に潜んでいる悪性のものを矯正することがなかなかできない」
先生  「自分が打たれてる日の相手のピッチャーに、しかもエースにぶつけて、ベンチの裏でガム噛みながらニヤッと笑って『グッジョブ』なんて野球は日本にはないんや」
コーチ 「だけど『それは、ない』ってことを説明して、しっかり理解してもらうんはほんまに難しいですよね」

先生  「幸い内海が何事もなくて良かったけどな」
コーチ 「ほんまに、ちょっと顔腫れてて心配しましたけど」
先生  「ほんで、ヨシノブ怒りの3ラン」
コーチ 「ダーウィンは気の毒でしたね。うん。でもまぁヨシノブのホームランはむちゃくちゃ凄かったです」
先生  「怒りが逆風を切り裂いて」
コーチ 「もうそら、なす術ないですよね」

先生  「試合の中でほんまの解決をしようと思ったらな」
コーチ 「はい」
先生  「非常識なことかも知れんけども、監督コーチ選手全員ベンチから出て、横一列に並んで、帽子とって内海に『申し訳ありませんでした』ってしっかり頭下げるとか、そういうことが必要やった」
コーチ 「できないんでしょうけどね、そうすることでボギーの『アメリカ体質』も何か変化が起こるかもしれないし、『ごめんなさい』が一番自然ですよ」

先生  「普段『楽しくて仕方ない』で野球をしている人がこうなった時」
コーチ 「それは、もう楽しかったぶんだけ反動がきますね」
先生  「そもそも真面目な責任感の強い人ばっかりで組まれた打線やもん」
コーチ 「どこかで顔にデッドボールを当てたピッチャー打ったらアカンって思ってしまいます」
先生  「『それは甘い』は違うんよな。そういう『甘さ』があるからこそ、東京ドームの三連戦みたいなあんな凄い試合ができたりするし」
コーチ 「そもそも12ゲーム差を追いついてこれたわけで」
先生  「強さと弱さはもう、ほんまに表裏一体や」

コーチ 「内海のデッドボール以降、アニキがあんな雑になるくらいですからね」
先生  「もちろん優勝争いの最終ステージや。勝ちにいかなあかんねん。甲子園の大観衆、遠くから来てはる人だって少なくないやろ。その人らのためにも打とうとせなあかん。でも心のどっかで何かが引っ掛かる」
コーチ 「最大級のストレスを抱えてしまいました」
先生  「そしたら赤星や関本みたいな、普段はすごく粘っこいバッターも簡単にアウトになってまう」
コーチ 「一点取ったんは、もうそんなこと言ってる場合じゃない自分のことで精一杯の桜井の二塁打がきっかけでした」
先生  「よう打ったよな、うん」
コーチ 「あとは葛城がほんまに立派でした」
先生  「いい表情で打席立ってたなぁ、ファースト守ってたから葛城だけ内海に謝ったんかも知れんな」
コーチ 「内海、基本的にすごくいい人やと思いますし、『あ、大丈夫ですよ』『いやいや、ほんまにごめん』ってやり取りがあったのかも知れません。映像で確認したわけやないから分からないですけど」
先生  「そしたら葛城は少しラクやもんな」
コーチ 「まぁ、それにしても葛城はほんまにいい表情で打席に立ってました」


先生  「そんなわけで、強さと脆さの『脆さ』の部分が思いっきり出た試合やったけど」
コーチ 「良かったところ探しましょうか」
先生  「ひとまず、5番矢野やな。これ、コーチどない思った?」
コーチ 「なるほどなぁ。オーダー見た時はニンマリしました」
先生  「一見不自然やけど、自然やんな」
コーチ 「ですね。桜井と浜ちゃんがどっちもどっちの状態ですから、どっちも使えないけど、どっちかが打ってくれないと厳しい状況で、もう一つの選択肢としたら、藤本をスタメンで使って、シーツをファースト、関本をサードで、葛城をライトに入れるっていうのもあると思うんですけど、やっぱり藤本を途中からっていうところと、関本が8番におるっていう強みは外せない」
先生  「いろいろ複雑に絡み合ってな」
コーチ 「そうですね。アニキの心理状態もありますし、5番に調子の悪い人がおるとアニキが調子崩す傾向があるのも懸念してでしょう。矢野が飛びぬけて調子がいいわけではないにしろ、だけど、『同級生』というものは、アニキの気持ちを少しラクにするんじゃないかな。あとはアニキが出塁した時に、矢野で送って、浜中葛城関本で一点取りに行くって分かりやすいし、確率も比較的高いですからね」
先生  「苦渋の選択やったやろうけど、道理よな」
コーチ 「ああいう試合になってしまって、打順は関係なくなっちゃいましたけどね」

先生  「で、桜井が打ったんは明るい材料やな」
コーチ 「そうですね。相手も内海やし、何よりあのムードの中よく打ちましたよね」
先生  「次から自然に桜井を5番に戻せるのは良かった」
コーチ 「あとはもう、完全に沈黙できたことをプラスに変えるしかないですよ」
先生  「せやな。凄い悪いことした、どうしていいか分からんで右往左往してしまったんを」
コーチ 「凄い悪いことしたけど、優勝したいから頑張る!!」
先生  「シーズン最終章に来て、またどん底のチーム状態が来た」
コーチ 「この間のどん底はナゴヤドーム辺りでしたよね」
先生  「せや。長期ロードの最後にナゴヤドームで中日に負け越して、甲子園戻ってきて広島相手に引き分けて、負けた」
コーチ 「だけど広島第三戦で、勝ってからそのまま10連勝」
先生  「きっかけは、黒田から桜井が打ったバックスクリーンへの物凄いホームランやった」
コーチ 「だから、次の神宮で苦戦するかもしれないですけど、三戦目くらいに」
先生  「桜井が爆発して」
コーチ 「で、ちょうど残り試合も10ゲームくらいだから」
先生  「その後、全勝して一気に優勝」
コーチ 「そうなりますように」

先生  「正直、甲子園で胴上げしてほしかったけど、今日の負けで相当苦しくなったからな」
コーチ 「そうですね。中日も逆転勝ちましたし、井端は2安打1四球でした。活躍してます、えらいことです(苦笑)」
先生  「中日より早く日程が終わるから、やっぱりその結果待ちじゃなくてな」
コーチ 「はい」
先生  「勝って決めれるように、最終戦までにマジック1で迎える試合を作りたい」
コーチ 「ですね」
先生  「そのために、神宮で、できるだけ早く桜井が爆発して、そっから大連勝で優勝や!!」
コーチ 「もう、ほんまに最後の最後まで来ましたね。ぼくらも精一杯頑張りましょう!!」
先生  「ほな、この大大大混戦をタイガースが制することを願って」
コーチ 「乾杯!!!!」

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posted by コーチ at 03:34| Comment(11) | TrackBack(1) | □ 桜井 広大 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月19日

『面白い』へ一直線に向かうこと

先生  「井端は、試合出てたな」
コーチ 「ですね。ヒット打ってました。だけど万全ではないみたいですね」
先生  「首のケガやし、赤星みたいな感じなんかなぁ。。」
コーチ 「試合に出れるくらいのケガっていうのが一番怖いんですよね。今日以降『ケガしてるのにむっちゃ打つ井端』にならないか非常に心配です」
先生  「そしたら『むっちゃ強いドラゴンズ』にまたなってしまうもんな」
コーチ 「はい」
先生  「ただ、昨日は」
コーチ 「はい」
先生  「甲子園やー!!!!」
コーチ 「凄かったです!!!」


先生  「ほんまになぁ」
コーチ 「はい」
先生  「やっぱり原さんが監督になって面白くなったんよな、野球」
コーチ 「ですね」
先生  「大事なところがブレへん」
コーチ 「分かります」

先生  「江草の好投と、野口が江草を乗せるナイスリード」
コーチ 「序盤、大劣勢やったのがそれで阪神ムードになりましたよね」
先生  「江草、ニッコニコやったな」
コーチ 「『ねぇ、ママねぼくね速い球投げれるよ』みたいな(笑)江草がそんな守られている顔してしました」
先生  「『よーし、じゃあ仁貴くんは思いっきりこの辺に投げておいで』って野口が言ってな(妄想)」
コーチ 「『うん!』って(妄想)」
先生  「『凄いね、仁貴くん。高橋由選手が全く手が出ないよ!』(妄想)」
コーチ 「『やったー! 谷選手も三振だー!』みたいな(妄想)」
先生  「うん、そんな感じで阪神ノリノリになってきた」
コーチ 「野口が江草の時は、キャッチャーが受けてからピッチャーに返すまでを早くしてるんですよね。捕って、すぐ返す」
先生  「その辺もうまくハマったんやろな」
コーチ 「で、そんな流れの中」
先生  「アニキー!!!!!」
コーチ 「あんな低い球を、ようあそこまで。物凄いホームランでした」
先生  「この時点で阪神1点リードやったな」
コーチ 「そうでした」

先生  「もちろんな」
コーチ 「はい」
先生  「この試合を落としたら、巨人サイドから見ると優勝は非常に苦しくなるんよな」
コーチ 「そうですね」
先生  「でもな、『今年はクライマックスシリーズもありますし、目標は飽くまで日本一なので、三位以上がほぼ確定した以上、そこに向かってしっかり調整していくべきだと考えてます』というような考え方があったって、それはそれでスジが通ってると思うんや」
コーチ 「ですね」
先生  「だけどな」
コーチ 「はい」
先生  「それでは、面白くないんや!」
コーチ 「もちろんです」
先生  「三チームが三チームとも『絶対優勝する!』って思ってるからこそ面白い」
コーチ 「確かにその通りで、だけどそういう『面白さ』っていうことってけっこう日常の中では蔑ろにされてる感じありますもんね」
先生  「みんながみんな『面白い』に向かって突き進んでいければ、毎日流れてくるイヤな事件のニュースとか、そんなこと起きひんもん」
コーチ 「ビハインドの場面での原監督。凄く正しかったですよね。結果的に『豊田を欠いていた』ということが敗因になる展開になっちゃったけど、ジェフと久保田から3点取って追いついたんですもん」

先生  「それを呼んだ6回の高橋尚の登板」
コーチ 「その前のランナーなしの場面でゴンザレスに代打清水」
先生  「この二つよな」
コーチ 「6回にヒサノリ出てきてなかったら、そのまま2−1やったかも知れません」
先生  「もちろん、そうやなかったかも知れへんけど阪神のリリーフ投手を『凄い』と認めた上で、その『凄さ』に立ち向かうためには、ムードを変える大きな一手が必要やった」
コーチ 「『高橋尚』という名前は、それを変えるのに最も最適な名前ですもんね」
先生  「プレーオフのこと考えたら、あの場面で投げさせるべきではなかったかも知れん。だけど『優勝する!』って強く思うならば投げれる状態ならばあそこは高橋尚しかおらん」
コーチ 「両チームの『絶対優勝するんや!』が、バッって噛み合ってね、ジェフが失点する。だけどアンディがあんなにも難しい球を粘りに粘ってタイムリー打つ。葛城が追い込まれてから、タイムリー打って」
先生  「それでも久保田を追い込んで、まぁエラーもあったけど、だけど同点に追いついた小笠原のセンター前なんか、あれ初回のショートの前に落ちたハーフライナーとほとんど同じような打球やん。だけどそれがセンターの前まで飛んでいくねん」
コーチ 「言い訳しない。純粋に『これが面白いから』に迎えた結果なんですよね」
先生  「最後は久々の一軍で落ち着きのなかった門倉を甲子園が飲み込んで、紙一重の一点取って」
コーチ 「そしてまだまだフラフラしていたゲームの流れを真正面から球児が止めた」

先生  「面白くなるように頑張りたいよな、なんでも」
コーチ 「ですね。『面白くない』って言う前に、『どうせ頑張ったって仕方ない』とか言う前に」
先生  「『高橋尚をあそこで投げさせるんはどやねん? ほんで結局負けてるやん』っとか、面白くないこと言う人がおるのも分かってて」
コーチ 「だけど『絶対優勝する』『そのためにこの試合、絶対勝つ』って原さんは『面白いほう』へ全力で向かったんですもんね」
先生  「それに選手もほんまに応えた。ジェフや久保田がマウンドに上がっても、諦めてなかったから点が入るんやもん」
コーチ 「その中で得点を与えなかった球児がいかに凄いピッチャーか、ってそういうところも見えてきますしね」

先生  「とにかく、岡田阪神、原巨人、落合中日やからこそ、ペナントレースはここまで面白くなっているわけで」
コーチ 「で、阪神ファンとしては、その強い2チームを大逆転して優勝するのが一番面白いですから」
先生  「今日も勝って、マジック点灯や!!」
コーチ 「アニキの胴上げを見たいんやー!!!!」

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posted by コーチ at 11:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 読売ジャイアンツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月18日

井端に、代打。代わってショート森野。

昨日、もちろんぼくはタイガース戦の中継を見ていて、
下柳先輩の一挙手一投足に夢中になっていたのだけど、
パソコンの電源は入れて、神宮の経過も追っていた。

初回の5点ビハインドをスワローズが追い上げていったことにももちろん驚いたが、もっと驚いたのは井端に代打が出たことだった。
ネットの速報では事情が分からない。だけど「井端に代打」はただことではないということだけは分かった。

井端弘和選手。走攻守、どれをとっても超一流だ。メジャーリーグに対してそれほど見識がないので、迂闊なことは言えないが、日本球界に限って言えば、2位以下を大きく引き離してダントツに凄い遊撃手である。メジャーリーグに見識を持って「井端は世界一だ」と自信を持っていいたいとすら思う。藤川球児のストレートとともに、井端はぼくにとって日本球界の誇りだ。

もちろん、タイガースの鳥谷もいい選手だし、二岡、宮本、ソフトバンクの川崎やマリーンズの西岡、ライオンズ中島。プロ野球でショートを守れる人は誰であっても皆凄い。ただ井端はその中でも群を抜いた選手であると思う。

タイガースでは赤星に対してよく使われる形容だけれども「赤星がセンターを守っているだけで年間相当の失点を防いでいる」というような言い回し。無論、嘘はない。それはもちろん、タイムリーヒットを防ぐという意味あいだけではなく、局面局面で「ここで出塁を許すと一気に流れがいってしまう」という場面で、アウトにできるかできないかという際どいところをアウトにして、そのイニングを三者凡退で凌げたりだとかそういうことも含まれる。失点を未然に防ぐ守備だ。

タイガース戦に限っても、今まで何点井端に防がれてきたか分からない。「未然防御失点数」なんていう数字は計算しようもないけれど、もしそんなタイトルがあれば、もう何年も連続で井端がタイトルを取っていると思う。

さらに打撃面での「しつこさ」「いやらしさ」「思い切りのよさ」。井端は現在 
打率.288 本塁打4本 打点37(9月17日終了時点)

打撃三冠の数字はそれほどでもない。とにかく数字で表現できる選手ではないのだけど、表現できそうな数字を探してみると、

得点が74。これはセントラルリーグで6位の成績。
得点とはホームベースを踏んだ回数であるので、当然ホームランバッターがそのランキングの上位に来やすい。トップ10の中でホームランバッターではない選手は井端とあとは青木だけ。(その他は小笠原、村田、ウッズ、スンヨプ、新井、ラミレス、ガイエル、金本)
青木も「出塁する」という面では別格なので、この結果は頷けるけれど、井端の凄さは「以下の打者を打ちやすくする」言い方を代えると「流れを自分のチームに引き寄せる」とかそういう打撃により持ち味のある打者で、その参考になる数字が「カウント2−3時の四球数」
かなぁと。

純粋な四球王はテレビ中継の中でも散々取り上げられているけど、ウッズ。109個でこれはダントツ。(二位がガイエルで77個。余談になるけどガイエルはスペンサータイプだと思う。6番ガイエル7番福川8番宮出。この打順だと怖いけどなぁ)ちなみに3位が金本選手。
これは当然、「敬遠」「敬遠気味」のフォアボールも含むので、ホームランバッター。さらに言うと狭い球場がフランチャイズのホームランバッターに四球が増える傾向がある。あとは、ピッチャーの前の8番打者。これも敬遠が増えるので。

意外と健闘しているのが鳥谷で60個。これはタイガースではアニキに次ぐ数字でセリーグの7位。立派に一番やってるじゃん!
で、問題の井端はここでは53個で12位と意外と少なかったりする。

なのだけどカウントを2−3まで持っていってさらに四球で出塁する。井端をランナーに出すと得点が入りやすいことは分かっているので絶対に出したくないという場面で。バッテリーは絶対に歩かそうとは思わない。このカウントでの四球が37個で、セリーグ3位。1位はウッズとガイエルで44個。四球の合計が53個でそのうち2−3からが37個。投手は必死になってストライクを投げてきていることを想定すれば、どれほどファールを打っているかも見えてくる。タイガースではやはり赤星がこの率が非常に高く、総四球38個に対して、カウント2−3からが24個。もちろん赤星も凄いのだけど井端がやっぱり凄いのが二塁打34本。これはセリーグ2位。早いカウントでも甘く来たらバチーン!と打ってレフト線。何度もやられた記憶があります。井川の試合で(笑)

こうなんか、物凄く「がっくり」させられる出塁をするのが井端の素晴らしさの所以で。さらに今年は後半福留を欠いて打線における責任が非常に増し、打順もずっと打ってきた二番ではなく一番になっての成績。

井端がどれだけ凄いか、ってこのくらいでいいかな(笑)
いやね、自分の周りの阪神ファンや巨人ファンの人に「中日は井端のチームなんだ」と説明してもいまいち反応が薄いので。
打線の中でウッズを欠くことももちろん痛手だけど、中日は井端を欠くとウッズで得点できなくなる。


で、報道によれば、井端は首を痛めたらしい(デイリースポーツ)
記事によれば離脱ピンチとある。


もちろん、井端が出場できなければドラゴンズは大きな大きな戦力ダウンだ。防げたはずの失点あるだろうし、いたはずのランナーがいない。一番から始まる攻撃なのに簡単に3人で終わってしまう。ウッズが先頭のイニングが増える。昨日は森野が急遽ショートを守っていたが、不慣れなポジションが打撃に影響することもあるだろう。悪循環に陥る可能性は非常に高い。

福留も故障で離脱して、さらに井端となればこれはこんなに苦しいことはない。タイガースが球児とジェフを同時に欠いたようなもの。

複雑な気持ちだ。万全のドラゴンズを倒してこそ、という気持ちもどこかにはあるし、勝負にこういうことは付き物なので仕方のないことなのだろうという気持ちもある。ただ、一番に思うことは、

「故障をおして活躍する井端のいるドラゴンズ」

この一致団結ぶりによる果てしない怖さ。井端は怪我した時に活躍する。もちろん怪我の度合いにもよるだろうが、活躍するイメージがとてもある。奮い立たされたドラゴンズ。脅威なのだ。

このアクシデントがペナントレースに大きな影響を及ぼすことは間違いない。大きな結束を産み、ドラゴンズがさらに強さを増すか、若しくは大いなる戦力ダウンによりそのほころびを埋めきれないままシーズンを終了するか、そのどちらか。

甲子園での阪神巨人戦ももちろん重要だが、ひとまず、その結果が出るであろう21時から22時の間の約3時間前、神宮球場のスコアボードに「1番ショート井端」の名があるか、そしてその井端がどんなプレーをするか、非常に大きな一日となった。


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posted by コーチ at 16:48| Comment(9) | TrackBack(1) | ■ 中日ドラゴンズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

雨なんか、どうでもいいから

先生  「途中、豪雨やったやん?」
コーチ 「阿部の打席の時、急に強くなったんですよね」
先生  「その中で、下柳先輩は全く雨のことを気にしてないように見えたんや」
コーチ 「阿部の方が打ちずらそうに何度かタイムかけて」
先生  「あんだけ雨降ったら、それがふつうやと思う」
コーチ 「ほんまに土砂降りでしたもんね」
先生  「『いいから、矢野。サインをくれ。オレは投げなきゃ。オレは抑えなきゃ。雨なんかいいから、そんなのいいから』そんな風な表情に見えたんや」
コーチ 「わかります」
先生  「そんな顔、他の場所でも見たことあるなぁって思ってん」
コーチ 「どこでした?」
先生  「『明日のジョー』や。ジョーも力石もカーロスもホセ・メンドーサも極限状態に入ったらああいう顔になるねん」
コーチ 「力石がジョーと対戦するために階級下げようと過酷な減量をしてるときとか、そういう顔でしたもんね」
先生  「下柳先輩はな」
コーチ 「はい」
先生  「不安や憤りや喜びを外側にぶっ飛ばして投球するピッチャーやないやん」
コーチ 「そうですね。むしろその感情全てをそのまま自身の中へ受け入れて、そのエネルギーを投球へかえていく」
先生  「前回の登板は東京ドームで、3回降板3失点。外から見てたら十分と思えた内容やったけど、本人はもちろん悔しかったことやろうな」
コーチ 「ですね」
先生  「加えて後半戦の快進撃の中で、自身はなかなか波に乗れない中、だけど大事な試合の先発は必ず下柳先輩なんや」
コーチ 「先発投手の中に『エース不在』はもう、当たり前みたいになっていますけど、中心はどう考えても下柳先輩でしたもんね」
先生  「この一週間、その悔しさ全部をきっと受け入れきったんやと思う」
コーチ 「そしてマウンドに立った」
先生  「不安や悔しさぶっ飛ばしてもあの顔にはなられへんと思うねん」
コーチ 「はい」
先生  「自分の中に受け入れきったからこそ、あの場所から投球できる」
コーチ 「あれこそ」
先生  「本当に強い、ということやと思う」
コーチ 「確かに」
先生  「あんな顔してる人の球はよっぽどのことがないと打たれへんで」
コーチ 「奥さんがその日に金メダル取る、ってよっぽどのこと過ぎますもんね」
先生  「昨日、唯一下柳先輩と正面から対峙できる状態の選手は谷しかおらんかった」
コーチ 「ほんま、そうでした」
先生  「打席でも木佐貫からヒット打つしな」
コーチ 「もう、ずーっと集中状態やったんでしょうね」
先生  「テレビで掛布さんがなるほどなぁ、っていうこと言ってたんや」
コーチ 「『ジャイアンツ打線は低目の変化球に意識があるから、敢えて高目のボールゾーンで勝負しにいっている』ってやつですよね」
先生  「せや。その対策は十二分に功を奏していた」
コーチ 「ですね。矢野のナイスリードでした」
先生  「さらに下柳先輩がほんまに投げミスせえへん」
コーチ 「ほんまに素晴らしいピッチングでした」
先生  「正真正銘、大正直者にしかできんピッチングやったもんな」
コーチ 「雨なんか、どうでもいいから」
先生  「やばい、泣きそう」
コーチ 「でね」
先生  「うん」
コーチ 「ぼくもピッチャーやってた頃のこと思い出したんですよ」
先生  「おう」
コーチ 「雨上がりのマウンドって、妙に空気が澄んでて、すごく土の匂いがするんです」
先生  「ああ、わかる」
コーチ 「全部を受け入れて集中状態に入った下柳先輩やからね」
先生  「おう」
コーチ 「土の匂いも一身に感じて『ああ、甲子園におるんや!』って、踏み出したスパイクが『ザクッ』って土に刺さる音を聴いて」
先生  「『オレが抑えるんやー!!!!!!』ってな」
コーチ 「赤星がヒーローインタビューで『楽しくてしょうがない』ってね」
先生  「うん、言ってた」
コーチ 「楽しいことがあっても『楽しい』を感じることができなきゃそれは『楽しい』じゃない」
先生  「その通りや」
コーチ 「その中で下柳先輩は、最も『楽しい』を感じることができる状態で投球をしてたと思います」
先生  「矢吹ジョーとジョーのライバルたちは、極限状態で殴りあう過程でほんまのほんまの『友情』を掴んでいったんやもんな」
コーチ 「本来的な感情を手にするために、下柳先輩が見せてくれたこと」
先生  「あの場所にこそ、『本当の楽しい』があると思った」
コーチ 「赤星もそれに引っ張られるように、あんだけ牽制されてスタート切って」
先生  「止めたバットに当たった打球がスタート切っていた勇気によって決勝打になった」
コーチ 「下柳−矢野のバッテリーの本当に凄いところは、もちろんテクニックもそうなんですけども、あれだけのキャリアを積んでる大ベテランなのに結局『勝ちたい、抑えたい』で投げ切るところやと思うんです」
先生  「だから今日は、一夜明けてもなんだかボンヤリしていて」
コーチ 「まるで雨上がりのグラウンドにいるように、清清しいんでしょうね」
先生  「ということで」
コーチ 「はい」
先生  「下柳先輩、大大大ナイスピッチング!!!!」
コーチ 「勝てたらいいなぁ、と思ってました」
先生  「懐かしいなぁ(笑)」

●2005年9月22日「勝てたらいいなぁ、と思ってました」

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posted by コーチ at 11:50| Comment(2) | TrackBack(1) | □ 下柳 剛 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月17日

だから今日は声を合わせて

先生  「なぁ、コーチ」
コーチ 「はい」
先生  「やっぱりこういう日は、目を閉じることやな!」
コーチ 「はい! 閉じました!」
先生  「では、質問に答えてください!」
コーチ 「はい!」
先生  「鳥谷選手の好きなところはどこですか?」
コーチ 「えっと、あまりいろんなことを引きずらずにいつでも安定したプレーができるところです。最近、内なる強い気持ちがポイントポイントであふれ出てくるようになったところも好きです」
先生  「わかりました。では、赤星選手の好きなところはどこですか?」
コーチ 「赤星選手は、いつでも全力で本当に根っこの部分で『フォアザチーム』のプレーをするところです。自分が何打数何安打だったとか気にしてません、チームの勝利が一番ですから、ってみんな言ううおそらくみんなそう思っているのだろうけど、本気の本気で一番そう思ってそうなのが赤星選手です」
先生  「はい。分かりました。では、シーツ選手の好きなところはどこですか?」
コーチ 「シーツ選手は、自分に向けてよく怒りを露にしますが、それだけ怒れるくらいいつも真剣なんだなって思います。バッティングで調子悪くても、守備の時に特に外国人のピッチャーによく声をかけにいくところがとても好きです」
先生  「では、金本選手は?」
コーチ 「金本選手は、もう、全部凄すぎて言葉になりません。アニキのおかげでタイガースはここまでこれました。感謝してもしきれません。心から尊敬しています」
先生  「では、今岡選手は?」
コーチ 「え?」
先生  「間違いました、桜井選手はどこが好きですか?」
コーチ 「本当に気持ちの強いところです。今は調子が悪いけど、真正面から克服してくれるだろうって期待しています。チャンスの時なんとかしてくれそうっていう雰囲気がとてもあります」
先生  「はい。では浜中選手はどうですか?」
コーチ 「浜中選手の好きなところは、恥ずかしがり屋で照れ屋に見えるところです。心の奥にきっと暗い影をたくさん持っているように見えます。それだけに打席で心の底から集中した浜ちゃんの表情を見るだけで泣けてくるのだと思います」
先生  「はい。では葛城選手のどこが好きですか?」
コーチ 「ブログにも何度か書いたけど、代打で出てフォアボールを選べるところがとても好きでした。赤星選手と同じで、場面場面で一番チームの力になれることを自分の精一杯で表現してくれるところが大好きです」
先生  「高橋光信選手はいかがですか?」
コーチ 「みっちゃんは、いっつも絶対打とうとしています。バッターは3割打てれば一流だとか、本当に考えてない。いっつも全部打とうとしているみっちゃんが大好きです」
先生  「では矢野選手はどこが好きですか?」
コーチ 「矢野選手は、もう感情をそのままに嬉しいときは嬉しいしダメになったらダメな顔するし、ぼくも矢野選手と一緒にいっつも喜んで、いっつも溜息をついてしまいます。素直なおじさんってとってもかっこいいと思います。大好きです」
先生  「はい、では野口選手はどうですか?」
コーチ 「野口選手は、とても優しいから好きです。みんなのお母さんみたいです。金本選手がお父さんで、野口選手が世話好きのお母さんです。野口選手に『偉かったね』と言ってもらいたくて頑張れた選手もいっぱいいると思います」
先生  「なるほど。では、続けます」
コーチ 「はい」
先生  「関本選手の好きなところはどこですか?」
コーチ 「関本選手は、自分ではない選手が活躍した時に、一番喜ぶところが好きです。サヨナラヒットを打った選手に真っ先に駆け寄るのはいつも関本です。大きな体をいっぱいに使って『ナイスバッティング!!』って満面の笑みは最高です」
先生  「そうですね。では藤本選手はどこが好きですか?」
コーチ 「藤本選手は、金本選手とニコニコじゃれあっている時が好きです。チームを潤滑するにあたって絶対に必要な選手だと思います。途中から守備についても、初回から出ているのと同じようにいたってふつうに出場しているところもとても凄いと思います」
先生  「なるほど。では、桧山選手はどこが好きですか?」
コーチ 「桧山選手はとても誠実な表情です。打てないけど代打で出続けていた頃、周りもよく見える人だと思うので『申し訳ない』と強く思っていたと思います。だけど、その『申し訳なさ』に対する一番の恩返しは打つことで、桧山選手は満塁ホームラン打つことができました。その誠実な強さ、本当にかっこいいと思います」
先生  「そうですね。では林選手のどこが好きですか?」
コーチ 「林選手もまた、真面目で実直で、嬉しいときは物凄く笑うし、林クンのような選手が活躍してくれると本当に幸せな気持ちになります」
先生  「藤原選手はどこが好きですか?」
コーチ 「藤原選手は、この間上原投手から打ったタイムリーヒットに象徴されるような『何が何でも』が物凄く溢れるところです。どこのポジションでも一生懸命こなすし、彼のおかげでいろんな攻撃のバリエーションもできているし、素晴らしい選手だと思います」
先生  「では狩野選手はどうですか?」
コーチ 「春の苦しかった頃、甲子園のジャイアンツ戦で打ったサヨナラヒットをぼくはずっと忘れないと思います。最近出場機会は少ないですが、ベンチにいる時、身を乗り出して声を出しているところを頻繁に見ます。プロ野球だって高校野球だって大事なことは同じだと思います。それを毎日毎日続けていて本当に素晴らしいと思います」
先生  「では最後に」
コーチ 「はい」
先生  「今岡選手が泣いたら、あなたは泣きますか?」
コーチ 「はい。もちろん号泣です。今岡が泣くところ見たいです。だから早く調子を上げて一軍の試合に出れるようになってほしいと思います。優勝争いに参加してほしいです。たぶん、打席に立っただけで泣いちゃいます」

先生  「ならばコーチ」
コーチ 「はい」
先生  「我々ができることは、一つですね」
コーチ 「はい、『大好き!』を目一杯表現して応援することだと思います」
先生  「だって、みんな大好きですからね」
コーチ 「だって、みんな大好きです」
先生  「そんな大好きなみんなに金本選手が胴上げされるところを」
コーチ 「ぼくたちは見たいから」
先生  「今日は勝てますよね」
コーチ 「もちろんです!!」
先生  「だから今日は声を合わせて」
コーチ 「はい!!」
二人  「頑張れー!!!!!!」


* 投手編は、次回のピンチの時に(笑)
  だけど投手編がないことを願いながら、「タイガース頑張れ!!!」 by コーチ


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posted by コーチ at 10:59| Comment(8) | TrackBack(0) | □ 金本 知憲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月15日

大守備戦の果てに

取りつ取られつの第一戦と打って変わって、大守備戦となった第二戦。

強風の浜風と激しい通り雨の降る序盤、その浜風がタイガースに味方をした。神様にお祈りしたもん。通じたのかな。

タイガースの先発投手は安藤。インコースのシュートを完全に見切られカウントを悪くする苦しい立ち上がりだった。さらに「勝ちに行こう」とする強く気持ちの出た安藤に対し、それをセーブするかのように黙って淡々とリードをする矢野のリズムが噛み合わず、安藤が少し苛立っているように見えた。

確かに安藤が好投する時は「なんとなく打った内野ゴロ」というような「安藤が抑えた!」という印象ではないアウトを積み重ねていくことが必須条件。投手が勝ったのでも、打者が負けたのでもない「なんとなく」のアウト。2年前にリリーフから先発に転向した安藤は、先発として投げるようになった当初、全ての打者を完全に封じようとするリリーフ時のピッチングスタイルが抜け切らず、なかなか先発投手としてのリズムがつかめなかった。

強く気持ちの出た今日の安藤は、その失敗をする可能性が確かにあったと思う。ただ、矢野という捕手は勇気があるというか、頑固というか、「全部抑えにかかっても後でしんどなるだけやし、ふつうにいこ」とばかりにローテンションでアウトコースにミットを構え続ける。「ここに投げれなどうせ打たれる。だから投げろ」そんな感じ。冷たいと言えば冷たいが、それが正解なのだから、そうする。試合終了後に満面の笑みでマウンドへ向かう矢野の表情が印象的なので矢野のリードはそういう温かみに溢れたリードと思いがちだが、それは違う。矢野の本領はこういった、頑固一徹「勝つために一直線でむかうリード」。ただ、そこへ向かうためのプロセスを省くので、安藤が何か納得いかないまま投球していた序盤3回まで。大ピンチの連続だった。大ベテラン捕手に敢えて課題を挙げるならば、この「投手が矢野の考えを受け入れやすくして気持ちよく投げれるようにするプロセス」に気を遣ってほしいな、というところだけど、それはそもそもの人間性が左右する部分なので、仕方ないことなのかも知れない。

逆に野口のリードは優しい。見てるぶんにも気持ちがいい。基本は「よーしいいぞ」だ。「いいぞ〜上園」「いいぞ〜能見」。調子の悪いときでも、ピッチャーの力が最大限ひき出るようにピッチャーに寄り添い、優しく引っ張ってあげる。投手が萎縮して力を出し切れないままマウンドを降りるということは矢野がマスクを被るよりも少ないと思う。だけど、今日のようなシビアな投手戦の大事な場面で、野口が優しく見えないようにしていた、その日投手が抱えている欠陥が浮き彫りになってしまう可能性がある。そうなってしまった時に野口のリードは脆さが出るのか。

そこが出ないように週一回にしてるのかな。と考えてみたり。

矢野がレギュラーであるという理由が今日、本当に良く分かる、そんな矢野のリードぶりだった。


初回。

先頭の井端は打ち取るものの、荒木に非常にイヤな見逃されかたをする。そして粘られ、センター前へ。さらに盗塁を許し、ノリにもシュートボールを簡単に見切られ結果フォアボール。1アウト1塁2塁でウッズという初回から試合が決まってしまうようなピンチを迎えた。ドラゴンズの先発は小笠原。先日のナゴヤドームで15三振を喫している、ふつうに投げられるとほとんど打てないピッチャーだ。ホームランを打たれたら、雨でコールドゲームを期待するしかないような局面で、しかし噛み合わない安藤、矢野のバッテリー。カウントを悪くして、「ここに投げろ」と構えられた矢野のミットからボール二個ぶんシュートして入った、ど真ん中のストレート。その球をウッズが見逃さないわけがなく、大飛球が右中間の上空へ舞った。

正直、諦めた。「うわっ」と言って、天を見上げた安藤。天井を見上げたぼく。

神様が風を吹かせてくれたかな。甲子園以外の球場だったら絶対にホームランだった打球。ナゴヤドームであっても、もちろんホームランだし、東京ドームだったら何かの看板に直接当たって賞金がもらえるような特大のアーチになるべき飛球。強風が押し戻してセンターフライ。桜井のグラブにボールがおさまり甲子園が大きくどよめいた。

さらに5番森野。森野は「オレが打つ」という強い気持ち。矢野は「ここに投げろ」とローテンションでアウトコースに変化球を要求。それほど調子のよくない安藤が強気で攻めていってたならば、森野の発する熱量と安藤の熱量がかみあって、バチーン!と右中間へいかれてたかもしれない。結果、森野がその球をひっかけてセカンドゴロダブルプレー。

ウッズのホームランをセンターフライにした神風と勝負師矢野のナイスリードで、初回の大ピンチを凌ぎ切った。大量点も覚悟で無失点を取りにいった、矢野の大いなる勇気に拍手。

対して攻撃陣は、昨日に引き続き両サイドをやや広めに取る球審と、そこに寸分の狂いもなく投げ込む小笠原に手も足も出ない。鳥谷がデッドボールで出塁するも、2番の浜ちゃん、3番シーツと完全に打ち取られてしまう。そして4番のアニキを迎えたところで、小笠原−谷繁のバッテリーは『対金本用』のカーブでレフトフライ。初回、ドラゴンズペースだった。

そして2回表。
なかなか噛み合わない安藤−矢野バッテリー。矢野は確かに「簡単に打ち取れる場所」へ向かっていたが、そこへたどり着くまでに省かれているプロセスの真っ最中。ビョンと谷繁に連打を浴び、たちまち大ピンチ。さらに藤井が送りバントで、ドラゴンズが9番小笠原はアウトでも、2アウト2塁3塁で井端勝負、という明解な勝負に来ているところ、半分パスボールのワイルドピッチで進塁を許す。ノーアウト2塁3塁。

打順は下位だけど、どうしようもないくらいの大ピンチだった。流れの悪いバッテリー。この場面の藤井で一点取られれば、チャンスが残って井端に回る。そういう場面で井端は必ず打つ。井端が打つと、下手すると満塁でウッズに回る。「優勝」という二文字が遠のいてしまうかに見えた2回表。


全員野球とは、こういうことを言うのだ。
そのことを思い知った。ノーアウト2塁3塁、当然タイガースは前進守備の体系を取る中で、藤井の打った打球はショートの左を襲う痛烈なゴロだった。それを鳥谷が瞬時に反応してダイビング。三塁ランナーをしっかり牽制して一塁をアウト。大ファインプレーで一点を凌ぐ。バッテリーがうまくいってないならば、その時はみんなで守ろう。鳥谷がチームを救う。

このプレーが流れを大きく変えた。少し苛立っているように見えた安藤に、「安藤さん、まだまだこれからっすよ」という、少しはにかんだ鳥谷の笑顔は、気持ちをほぐす意味でとても大きかったのではないかと思う。

さらに、続く9番小笠原の打席で矢野が安藤に少し歩み寄る。それ以降の森野やビョンに対する投球の練習だったのかも知れない。この試合、初めてインサイドにストレートを続けた矢野。そこに気持ちよく投げていく安藤。そしてフォークボールで三振。安藤が取りたかった形でアウトを取らせる。

そして2アウト2塁3塁で井端。
もともと藤井が送って、小笠原が凡退してこの形になる予定だったのだが、その過程が大きく狂って結果的にタイガースの流れで井端を迎えることとなった。

がっちり噛み合った安藤−矢野の攻め方は完璧。しかし、こういう場面での井端は球界屈指の打者なのだ。得点圏打率は確かにチャンスでの強さを計る目安にはなるが、『どうしてもここで一点』という時の打率ではない。10点差で勝ってる試合で2アウト2塁とかいう場面も含まれるので、それは飽くまで目安だ。『どうしても一点という場面での打率(出塁率)』、全試合くまなく見てなければ算出する術がないので分からないけど、井端はその打率が間違いなく高い。若しくは次の打者以降が打ちやすくなるような、相手投手の全球種を投げさせてフォアボールで出塁するとか、そういうことができる打者。

安藤が投じた完璧なフォークボールを、井端は泳ぎながらもミートしてセンター方向へ。抜けていれば2点だった。しかし紙一重で関本が好捕。井端しか打てないような、しぶとい打球を、阪神の「しぶとい人」関本がファインプレー。

大量点の可能性も十分にあった、というかほとんどノックアウト寸前だった安藤が土壇場で復活し、鳥谷、関本のファインプレーで無失点。少しずつタイガースに流れが来るかに思えた。

しかし2回ウラの小笠原が完璧。桜井は外のまっすぐでズバッと見逃しの三振。みっちゃんはインサイドのまっすぐで詰まらせてレフトフライ。矢野は「まったく打てないときの矢野」に戻って三振。

この小笠原の投球から、投手戦のスイッチがバチン!と入った音がした。

3回表
噛み合った安藤と矢野。ひとまず荒木を打ちとって、ノリに対してアウトローのまっすぐで見逃しの三振を取る。安藤の気持ちのいいアウト。そしてウッズをセンターフライ。少しだけタイミングを外して外野フライでアウトにする。この時期まで阪神がウッズを抑えてこれた
象徴的な打ち取り方によるアウト。安藤もようやく流れに乗る。

3回裏
関本、安藤倒れて、2アウトで鳥谷の一二塁間のゴロ。
荒木のファインプレーで三者凡退。大守備戦の様相を呈してきた。

4回は表裏ともに両投手の好投。

5回もともに三者凡退で終わるのだけど、最後の打者の打ち取り方に大きな差があった。

5回表。
マウンドに安藤、2アウトランナーなしで井端。
カウント2−0とあっさり井端を追い込んでから、やはり井端は2−3までカウントを持ってくる。いいリズムになってきたところ、井端を出塁させたくない。カウント2−3から難しいコースをファールにされた後、安藤−矢野のバッテリーの呼吸がバチッと合う。「ここは力勝負」。技術を駆使して出塁を取りに来る井端に対して真っ向勝負を挑んだ安藤と矢野。瞬間それに圧された井端のタイミングが狂う。ショートゴロでスリーアウトだった。

5回裏。
前回に引き続き素晴らしい内容でここまで来た小笠原。しかし得点が入りそうで入らない味方の攻撃と、あまりに完璧すぎる内容にそろそろ綻びが出てもおかしくない頃ではあった。
2アウトランナーなしで関本。やや真ん中よりに入ったストレートを関本がジャストミートする。打球がレフトの正面に飛んでアウトにはなったが、その時の小笠原が示した反応が過剰だった。関本が打った瞬間「やられた!」と大きくレフトへ振り向いた小笠原。得点を与えない投球ではなく、気が付けばランナーを許せない、そんな投球に追い込まれているのではないのかと感じた。

最初から良かった小笠原。最初全然ダメだったけど、矢野の大ギャンブルがはまって、急激に良くなった安藤の投げあい。苦しんでいたのは小笠原だった。


6回
先頭の荒木の打球が赤星不在の布陣の中、最も弱い右中間へ飛ぶ。「赤星だったら」という打球、それが2塁打に。一転大ピンチになった。しかし続くノリが、それはミスではなのだが安藤を楽にしてくれる。勝負を分けた場面だったと思う。ノーアウト2塁という場面でノリ。カウント1−3となって、安藤は非常に苦しかった。しかし次の球をノリがセカンドゴロにしてくれる。近鉄時代のフルスイングを封印した練習生からの今シーズン。ノリの一年間がこの場面での『進塁打』を選択したのだと思う。気持ちは良く分かる。だけど、ここは近鉄時代のフルスイングが怖かった。安藤からすると、攻め入られそうな場面で、アウトを一つくれたという印象だったか。少し楽になって1アウト3塁でウッズ。ここは途中から敬遠でフォアボール。敬遠が不服だった安藤が気のない球で歩かせたことに怒りを見せる矢野。終始今日はそれがはまった。
「そうだ安藤、待ちにまった勝負の場面はこれからだぜ」
矢野の怒りの号砲とともに、ここから安藤エンジン全開。
1アウト1塁3塁で森野。全球速い球を要求する矢野。それを完璧にコーナーに投げ分けた安藤。森野を三振に取った。2アウトとなってビョン。森野と同じように投げれば、森野より怖くない。結果は詰まってライトフライ。

序盤から攻めて攻めてというピッチングをしていれば、この局面での森野、ビョンというところでこのピッチングをする余力はおそらくなかったと思う。矢野の大ギャンブルに、それによって亀裂が生じそうになった時の鳥谷のビッグプレー。それで安藤が落ち着いたことによって矢野のリードが抜群にはまった結果となった。6回を無失点。立ち上がりを考えれば信じられないような結果だったがそれが結果だった。「バッテリーも含めたプロ野球の守備」。十分に堪能できた首位攻防戦だった。

そしてゲームはその直後に動く。

5回の最後、関本のレフトライナーで異常な反応を示した小笠原。加えて6回表の攻撃で、またまた得点できなかったことによって完璧な投球の中追い込まれた小笠原。このイニングがチャンスだった。

先頭は安藤の代打に野口。
やや甘く入ってきたストレート。野口が気持ちで合わせにいった。右中間よりの打球。迷わず二塁へ走る野口。ヘッドスライディングで二塁打。

大ピンチの連続を凌いで凌いで無失点で来た中盤。攻撃はさっぱりで、甲子園はどんよりとしていたのだった。その重苦しい空気に頭から突っ込んでいった野口。暗く大きな塊に風穴をあけた。代走に赤星がコールされ、甲子園はようやく「甲子園」となった。

鳥谷がなんとかバントを決めて1アウト3塁。

打席に浜ちゃん。
気持ちと体がちぐはぐだった浜ちゃんの歯車を、野口がかみ合わせたのかもしれない。あの顔で打席に立ってる時、それは打つ時の浜中だ。

初球、大ファール。

前の回でノリが見せた「進塁打を」という小さなプレーに身をおく意識。この打席の浜ちゃんにその類の意識は全く存在しなかった。「外野フライで一点」その意識が全くない中で打席に立つ浜中は、マウンドの小笠原にどう映っていただろうか。そうなんだ。このワンチャンスをモノにするためにチームとしてずっとやってきたこと。それは小さく一点取りにいくことではない。この局面で、ただ己を信じ、全力でバットを振り切ることだ。それこそがタイガースの野球。昨日の球児とウッズの勝負だってそうだった。小さく守りきろうなんて考えてない。そこで思いっきり投げること、それをやり続けることが自分たちの野球。浜中が打った初球の大ファールは、まさにそれを体現していた。迷いなく振り切って、大きな目で小笠原を睨みつける浜中。

浜中と甲子園に飲み込まれた小笠原。ここまで見せていた完璧なコントロールがきかなくなる。吸い込まれるように真ん中に投げてしまったストレート。迷わず振り切った浜中の打球は、左中間に舞い上がった。初回にウッズのホームランを押し戻してくれた風が、今度は打球を運んでいく。

技術を超えた浜中の2ランホームラン。

チームみんなで守って取った、大きな大きな2点だった。


7回表
そして久保田のメモリアル登板。新記録。
そうだよ、MVPは久保田しかいないんだよ。

1アウトから代打の上田にヒットを許し、続けて代打の堂上兄に粘られ四球、しんどい場面で井端だった。

あれはもう、久保田の一年間全部で投げ込んだストレート。打たれるわけがない。真っ向勝負でダブルプレー。偉大な金字塔に自ら花を添えた。


7回裏
ピッチャー代わって石井。
久本は、明日だな。

浜ちゃんが打ったので負けてられない桜井がヒット。
藤本送りバントの場面でストライクが入らない石井。ストレートのフォアボールでノーアウト1塁2塁になった。

ここでまた、深みのある岡田采配。
矢野に強攻策。

もちろん、ストライクを取るのに苦しんでいる石井に、アウトを簡単にあげないことで、ここ最近の四球連発押し出しの可能性を狙ったこともあるだろう。さらに、1塁2塁の送りバントは失敗の可能性も比較的高く、失敗した場合にドラゴンズに流れがいってしまうというリスク。打たしてダブルプレーと、送りバント失敗、どちらが確率が高いかはどちらとも言い切れない。

ただ、そういう分かりやすい理由だけではないのではないかと感じた。

7回。2点差。ノーアウト1塁2塁で矢野に強攻させる意味。これは「2点を守りきるための強攻策」ではなかったか。8回、9回。もちろんジェフと球児。ジェフは休み明け、球児は昨日の今日。どちらも不安を抱えてのマウンドだ。そこで在るべき矢野は、超強気の矢野なのだ。しかし、クールに安藤を引っ張ってここまできた終盤。送りバントをしてベンチに戻り、守りにつくのと、打とうとして(もちろんヒットが一番いいのだけれど)たとえアウトになっても、打とうとした矢野が守りにつくこと。ここで一点取りにいくよりも、一点取れなくても、矢野がこの場面で打とうとすることが勝てる確率が上がると判断したのではないか、そう思った。

結果この打席、矢野はレフトへの飛球に倒れる。
後続も抑えられ無得点に終わった。

だけど、8回のジェフはウッズの前にランナーを出したが、ウッズをダブルプレーに取ってそのイニングを全うした。

9回の球児も昨日の影を乗り越えて、三人で最終回を締めることができた。

直接関係しているかどうかは分からないが、結果は不安を抱えていたジェフと球児がしっかり抑えて勝ちきったゲームとなった。

先発の安藤が踏ん張って、「ここぞ」という場面で迷いなく振り切った浜中。その点をJFKで守りきるというタイガースの形でもぎとった勝利。

その中に神風があり、矢野のギャンブルがあり、チームを救った鳥谷のビッグプレーがあった。ノリの一年間が打たせた進塁打が無失点の鍵を握り、矢野に呼応した安藤が最後の最後で自らを解放しきってピンチを凌いだ。関本の打球に過敏に反応するまでに追い込まれた小笠原は、やはり甲子園に飲み込まれていった。そのきっかけを作った野口のヘッドスライディング、真正面からその気持ちを受け取った浜中のホームラン。久保田の2007年が井端を押し込み、7回の矢野への強攻策が、不安を抱えた8回のジェフ9回の球児を引っ張らせた。

この大一番でベストゲーム。
大守備戦の果てに、大きな大きな二文字が見えてくる。

優勝、栄光、歓喜。
その二文字は何でもいい。

確かにその言葉を見据え今日、大きく一歩前進したんだ。


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posted by コーチ at 19:56| Comment(4) | TrackBack(1) | □ 矢野 輝弘 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ドラゴンズが見せた、9回表「五つの勇気」

先生  「ゥゥゥゥゥナイスゲーム!!」
コーチ 「いやいやほんまに、手に汗握るってベタですけど、ほんまに手ビショビショでした」
先生  「結果的に負けてもうたけど」
コーチ 「これやから野球はほんまにおもろいんですよね」
先生  「東京ドームでジャイアンツがまた物凄いゲームやってのけたみたいやし」
コーチ 「9回に5点差追いついて、11回にサヨナラですよね。清水が決めたみたいです」
先生  「凄い! 凄いぞジャイアンツ!!」
コーチ 「なんか、今年のプロ野球の見方。見るべき姿勢っていうんですかね。そういうのをウッズと球児が教えてくれた感じでしたね」
先生  「せやなぁぁ」
コーチ 「9回表。マウンドには球児。ウッズ決勝タイムリーその直前の球をファールした時でした」
先生  「ウッズ、ええ顔で笑ってたんよな」
コーチ 「最高の投手と最高の打者との対戦が、優勝をかけた大一番の試合を決める局面で訪れたときに起こった、最高の勝負の中でのみ生まれるような、そんな笑顔に見えました」
先生  「ウッズ、楽しそうやったなぁ」
コーチ 「2アウト2塁3塁で自分と勝負してくれたこと。全部ストレートでそのストレートがほんまに凄い球であること。調子がよくてそれをファールできてる自分。さらにその場面は優勝の行方を左右する大きな大きな一球一球」
先生  「その舞台の主役を演じてるんやもん。嬉しくなってくるよな」
コーチ 「球児に対するリスペクトと、その球児と対峙している自分自身に対する『やれてる感』」
先生  「そこで思わずこぼれた笑みで」
コーチ 「直後にウッズが球児を打ちました」
先生  「今年、見てるもんて、そういう勝負なんやろな」
コーチ 「先日の東京ドームでの伝説の三連戦もそうでした」
先生  「凄すぎて、泣けてきて、最後には笑ってしまう。敢えて言おう、タイロン・ウッズ、最高な!!」
コーチ 「そのウッズ。生きるか死ぬかという場面で笑えるウッズを明日あさって、必死になって抑えにかかるんですよ。だからこそ面白い」
先生  「また凄い三連戦になるでー!!!」


コーチ 「というわけで、紙一重のところで敗れた大一番、振り返ってみましょうか」
先生  「せやな」

コーチ 「最初に言っておきたいことは」
先生  「おう」
コーチ 「今日は球審、むっちゃ良かったですよね」
先生  「せやな。外の低目かなり広めに取ってたけど、タイガースドラゴンズ関係なく広かったし、序盤から終盤までずっと一定してたし、分かりやすくてとても良かった」

コーチ 「で、そのジャッジにボギーはけっこう救われた面がありましたよね」
先生  「今日のボギーはやったら鼻息荒く投げてた」
コーチ 「でしたよね。3回表とか、井端をフォアボールで出して、その後の荒木の送りバントの処理した時に、ファーストに全力投球」
先生  「藤本も怖かったやろなぁ。150kmでファースト投げてくる人おらんもんな」
コーチ 「こんなボギー見たことあるぞ。って思ったら思い出したんですけどね」
先生  「いつや? 奥さんとキスするときか?」
コーチ 「ちゃいますよ。その時はもっと甘いです。ボーグルにゃんになってます(笑)」
先生  「ハハハ、おもろいおもろい」
コーチ 「あれですよ。リグスに満塁ホームラン打たれた日あったでしょう」
先生  「あった、あった。完全に勝ちゲームやったのに、一発で逆転されて、その後赤星が打って勝った試合や」
コーチ 「浜ちゃんがベンチに戻ってきて、葛城とすれ違いながら葛城が大きな存在になっていったのもこの頃でした」
先生  「せやな。満塁ホームラン打たれたあとな」
コーチ 「なんか怒り狂って、『わー!!』って泣きながら腕振り回してる子どもみたいに投げてたら、アッという間にそのイニング終わってた、みたいな」
先生  「確かに今日のボギーは最初っからそんな感じやったな」
コーチ 「『わー!!!』言うて」
先生  「とにかくブンブン腕回して投げてる感じ」
コーチ 「ボギーも素直な人なんでしょうね」
先生  「ちょっとバランス悪いけどな、『今日は大事な試合やから飛ばしていくぞ』って思ったらあんな感じになるんやろう」
コーチ 「この間東京ドームでホームラン打たれまくったんもあるでしょうし」
先生  「試合作ったし、ナイスピッチングよな」


コーチ 「で、スコアは0−1。阪神1点ビハインドで迎えた4回ウラでした」
先生  「円陣組んでたよな。鳥谷からやったし快投を続ける朝倉をなんとかしたかった」
コーチ 「先頭の鳥谷は、朝倉が物凄いピッチング続けて打ち取られるんですけど」
先生  「赤星が高いバウンドのファーストゴロ。ウッズとの競争で赤星の勝ちっていう内野安打で出塁」
コーチ 「1000本安打まであと1本になって、これは終盤のいい場面で出るぞーって物凄い期待しましたね」
先生  「せやな」
コーチ 「1アウト1塁。ゲームの中で大きなキーとなるシーツがダブルプレーを打つか繋ぐかというところ」
先生  「結果はレフトフライやったけど、内容は悪くなかったな」
コーチ 「ですね。ちゃんと右向いて打ちに行ってましたし、だけど朝倉のボールが速いしインサイドの厳しい球でしたから。ほんまは見送ってほしいんですけど、シーツは二個も三個も同時にできないですからね、『ライト打つ』って決めたら、それで頭いっぱいの感じでした」
先生  「やけど、それでいいんよな」
コーチ 「2アウト1塁でアニキ、という場面でも点は入るという象徴的なイニングともなりましたしね」
先生  「結果的にこの回4点入ったわけやけど、朝倉と谷繁のまず最初のミスは、アニキとの勝負を避けたことやったな」
コーチ 「結果フォアボールは問題ない場面なんですけどね、気持ち的に『勝負したるんや!!』っていうもんがなかったです」
先生  「で、一塁二塁になった時に初めて気づくねん」
コーチ 「あ、ここは甲子園やった」
先生  「『わっしょい、わっしょい』始まって、360度黄色のメガホンが揺れてる真ん中で」
コーチ 「一度逃げ腰になった朝倉は、『攻める』ということが分からなくなってしまいました」
先生  「桜井にカウント2−3からフォークボール」
コーチ 「この配球は谷繁が朝倉を苦しめたかな、と思いました。攻めなきゃいけない場面。1−3からのインサイドのまっすぐを桜井が空振りしてましたし、もう一球あのコースに朝倉は投げたかったかも知れないなぁと」
先生  「カウント2−3からのフォークボールを桜井がしっかり見てフォアボール」
コーチ 「調子もいい。打たれてないのに、360度の『わっしょい』に合わせて黄色のメガホンが揺れる中ピンチを迎えた朝倉」
先生  「葛城が大きく見える」
コーチ 「前の打席、ランナー一塁で引っ張りにいこうとし過ぎて引っ張り切れずダブルプレーだった葛城。ここはポイントを近くしてレフトにライナーを打つタイミングで待ってました」
先生  「非常にシュートが投げにくい」
コーチ 「外に甘いシュートが行ったら、左中間にライナーが抜けていくイメージが朝倉には過ぎったかも」
先生  「少なくともオレには過ぎってた(笑)」
コーチ 「360度の『わっしょい』の中で、塁上のランナーが一気にホームインしてしまうイメージが過ぎってしまったとすれば、もうどうしようもなく」
先生  「葛城、矢野に連続押し出し」
コーチ 「藤本にもカウント0−3まで行って」
先生  「その後、2−3になってから、藤本がしっかり粘った」
コーチ 「ファールする中で、『非常時の満塁』を『通常の満塁』へと変えていった藤本」
先生  「藤本は満塁には強いんや!!」
コーチ 「ピッチャーの足元を強く抜いて、二点追加」
先生  「昨日と似たような展開で一気に逆転。ええ雰囲気やったんよな、ここまでは」

コーチ 「でも、やっぱり簡単に優勝させてくれないですよね。ドラゴンズさすがですよ」
先生  「直後の5回表。先頭は井端やった」
コーチ 「ここの井端をボギーが抑えることができれば、かなり勝てる確率は高かったですけども、飛ばしすぎてちょっと疲れてきてたボギーの中途半端になったボールを井端があわやフェンスオーバーという二塁打」
先生  「さすがは井端やな。『ここ』っていうとこで、ほんまに出塁する」
コーチ 「だけど荒木が初球を簡単にサードゴロ」
先生  「オレ、ドラゴンズファンやったら、このサードゴロは凄く残念に思ったと思う」
コーチ 「ですね。赤星出塁の後の、シーツ初球ショートゴロダブルプレー並みの残念です」
先生  「で、ノリのとこで犠牲フライの一点で済ますんよな」
コーチ 「なんとかなるかも、って思いました」
先生  「だけどクタクタのボギーは、ウッズにヒットを打たれて、さらに森野にライトオーバー、完全にキレがなくなってもうた」
コーチ 「5回でしたから、継投も難しかったと思うんですよね。昨日杉山が4回でマウンドを降りたんは、チャンスが来てしまったから、あれはあれで自然やったと思うんですけど、逆転してあと1イニング抑えて交代ってとこでしたから。勝ち投手の権利の件もありますし」
先生  「4回2/3で交代させるのって、あそこまで打たれてからじゃないと不自然やもんな」
コーチ 「でまぁ、1点差に追いつかれて交代という自然な流れで、江草がピシャリ」
先生  「江草、ナイスピッチング!!」

コーチ 「で5回ウラから、今日の影のヒーローの登場です」
先生  「ずっと試合見てるドラゴンズファンならその予想はあったんかも知れんけど、阪神ファンはまさかあのピッチャーがヒーローになるとは思ってもみなかったもんな」
コーチ 「久本、快投」
先生  「阪神ベンチも久本に対する準備を怠ってたかな? ふつうに打てるやろう、と。やけど、ナメたらエライ目にあう。ええ教訓やで」
コーチ 「鳥谷の平凡なセカンドフライを荒木が落球したところから久本の快投が始まるんですよね」
先生  「赤星のバントをサードへ見事な送球」
コーチ 「あれ、ちょっとでもズレてたらセーフでしたから久本の大ファインプレーですよね」
先生  「で、一塁に赤星が残って、また1アウト一塁でシーツ」
コーチ 「ライトフライでしたけど、これも気持ちの出たスイングしてました。アウトになるんはいいんですよ。シーツは右向いて打ちにいけばいい」
先生  「2アウト1塁でアニキ。4点入った場面と全く同じになった」
コーチ 「抜け球が頭の近くにいくってハプニングもありましたけど、あれは抜けただけやししゃあないですよね、その後逆に久本がビビらんと腕振ってようスライダー投げました」
先生  「空振り三振で無得点」

コーチ 「6回表、ピッチャーは渡辺でした」
先生  「ええピッチングやった」
コーチ 「でね、優勝争いの真っ只中で、ちょっとのん気な話かもしれないんですけどね」
先生  「おう」
コーチ 「渡辺って新人王の権利ありますよね?」
先生  「せやなぁ。。5年目以内で、それまで投球回数が30イニング未満が条件やったと思う」
コーチ 「渡辺、今シーズンの春にプロ入り初登板でしたし」
先生  「上園もチーム事情で二軍行ったからなぁ。渡辺、アリよな」
コーチ 「シーズンの結果はまだ分からないですけど、少なくともタイガースが優勝争いを展開できている現状を踏まえて、その立役者はもちろんJFKってことになるじゃないですか」
先生  「せやな」
コーチ 「リリーバーがむちゃくちゃ大事な時代に、しっかり突入してるんですよね。それやったら、先発で何勝でもないし、何セーブでもないけど、貢献度で言うと、渡辺の活躍は先発ピッチャーの10勝に匹敵すると思うんですよ」
先生  「思う思う」
コーチ 「調べてみたら、今シーズンの渡辺の成績。投球回数や防御率、奪三振。もちろん投げてる場面が違いますけど、岩瀬と遜色ないんですよ。あの岩瀬とです!」
先生  「コーチ、ちょっと興奮してるなぁ(笑)」
コーチ 「優勝できて、で、渡辺が新人王取れたら最高やなぁと思ってね」
先生  「中継ぎ投手がもっと評価されていい、っていうことの革命的な選出、あってほしいなぁ」
コーチ 「思いますね」
先生  「というコーチの思いをさらに強くするような、ナベ君の快投で6回表は完璧やった」
コーチ 「ナベ君、ナイスピッチング!! やったんですけど、結果的にここで落合監督のファインプレー采配でしたね」
先生  「久本続投」
コーチ 「確かに2アウトランナーなしで久本に回ったんで、どうするかなぁと思ったんですけど、1点負けてる場面で代打出さないっていうのは勇気ありますよ」
先生  「そのイニング捨てるわけやからな」
コーチ 「最近のドラゴンズ中継ぎが不安定な面ありましたし、代えにくかったのもあるとは思うんですけど、久本と心中って凄い信頼です」
先生  「この勇気が紙一重の勝負をドラゴンズがものにした理由よな」


コーチ 「6回ウラは、久本ショー」
先生  「桜井、代打関本、矢野と、そうそう簡単に打ち取れない3人をあっさり三者凡退」
コーチ 「あの試合に似てるなぁと思ったんですよ」
先生  「桧山が代打で満塁ホームラン打った試合な」
コーチ 「そうそう。その時の江草」
先生  「久本がちょっと打てそうもない感じになってた」
コーチ 「凄かったです」
先生  「ところで、話が前後するんやけどな」
コーチ 「はい」
先生  「コーチは桜井スタメンで、浜ちゃん下げたんどない思った?」
コーチ 「ぼくは自然やと思いました」
先生  「理由は?」
コーチ 「仮に広島二戦目の大ホームランがね、アニキより前に打ったホームランであったか、昨日のアニキのホームランの後の打席で
出塁できてれば浜ちゃん今日だけじゃなくてしばらくスタメンやったと思います」
先生  「なるほど」
コーチ 「広島戦で代打で出た桜井のショートゴロは少しタイミングがズレただけで雰囲気は戻ってきてましたし、切り拓くという面ではやっぱり桜井に多くの打席を打たせたい感じはありますよね。どっちがなかなかアウトにならないかって言えば桜井やと思いますし」
先生  「桜井、もうちょっとやな」
コーチ 「頑張れ、桜井!!」
先生  「負けるな浜ちゃん!!」


コーチ 「というわけで阪神1点リードで7回表」
先生  「当然、久保田がマウンド。80試合目、タイ記録や」
コーチ 「先頭は井端でした」
先生  「また井端や、大変なことや、と思ってたら、久保田が完璧な内容で井端を抑えてしまって」
コーチ 「やったー!!!勝ったー!!!って思ったんですけど」
先生  「甘かったなぁ。強いは、ドラゴンズ」
コーチ 「荒木がしぶとくライト前」
先生  「セカンドフライ落球したんと、チャンスであっさりアウトになってしまったんを取り返すいいバッティングやったな」
コーチ 「でも、今日の久保田凄かった」
先生  「155キロ出てたしな。どーん!!っていうストレートでノリを完璧に抑えて」
コーチ 「やったー!!!勝ったー!!!って思ったんですけど」
先生  「やっぱり甘かった」
コーチ 「ここで今日の大ヒーローの出番です」
先生  「矢野の配球ミスでも、久保田の失投でもない完璧なインコースのストレートやった」
コーチ 「それを詰まってたんですけどね、タイロンの超絶のパワーと、巧みなバットコントロールで、バックスクリーンまで運ばれました」
先生  「いやいや、今年見たホームランの中で、正直一番ビックリした」
コーチ 「あれ、ホームランにするかぁってね。けっこう前ですけど、東京ドームで下柳先輩が阿部に打たれたホームランもビックリしましたけど」
先生  「顔の前のシュートをホームランにしたやつな」
コーチ 「やけど、飛距離が違うし、あそこまで飛ぶんですね。あのコース、あの打ち方で。ほんまにビックリしました」
先生  「久保田また泣きそうになってたけど、久保田全然悪くないで!!」
コーチ 「タイロン、凄すぎ!! しかも、二度と同じ打ち方できないような奇跡的な打法やし、気にせんでいいから!!」
先生  「最多登板新記録の試合は記録に花を添えれるといいな」
コーチ 「明日ですかね」
先生  「おそらく」

コーチ 「で、久保田がしっかり森野を抑えて7回ウラ」
先生  「久本がどんどん良くなる」
コーチ 「あと二試合。対久本も勝負のキーポイントですね」
先生  「現在のタイガースは集中状態に入るとよっぽどいいピッチングされない限り先発ピッチャー攻略するからな」
コーチ 「ジャイアンツ二戦目の久保とか、急激に調子が変動するとかじゃない限り、なんとかしてきてます」
先生  「カープ戦の二試合は脱力してたから置いといて」
コーチ 「昨日の高橋建、今日の朝倉。共に途中までナイスピッチングやったけど、突如乱れて、といゆうよりプレッシャーで乱してる感じですからね」
先生  「ドラゴンズも惜しみなく久本を投げさせてくるやろし、あと二試合に限って言うと、久本はウィリアムスやと思って打ちにいかなあかん」
コーチ 「ですね。そんじょそこらの中継ぎ投手じゃないんや、って意気込みでいかなまたやられてまいます」
先生  「まぁ何はともあれ、久本、ナイスピッチングやった」
コーチ 「敵であっても、脇役の大活躍は素直に嬉しいです」
先生  「何とか明日は中盤で久本を引きずり出して、打って勝ちたい。リベンジやで!!」

コーチ 「で、8回表。岡田さんは1点負けてる場面でジェフじゃなくて、橋本でした」
先生  「岡田さんはやっぱり勇気のある人やで。『そら延長の可能性もあったしな、あそこは橋本が抑えなあかんやろ』って感じや。1点負けてて、さらにハシケンは本調子じゃなかったのに、しっかり勝つこと考えてる」
コーチ 「同点になった時に、球児とジェフが控えてるって形は圧倒的に有利ですもんね。ドラゴンズは岡本に不安がありましたし、非常にいい継投やと思いました」
先生  「で、ハシケンが完璧に1イニング全うして」
コーチ 「ようやく、チームに合流しました」
先生  「おかえりハシケン、ナイスピッチング!!」

コーチ 「延長を見越して8回表にハシケン投げさせたんが、やっぱりはまった8回ウラ」
先生  「ドラゴンズは不安のあった岡本、タイガースは先頭赤星」
コーチ 「ここは行けるなぁ、と思ったら。赤星、完璧なセンター前ヒットでした」
先生  「1000本安打。おめでとう!!!!」
コーチ 「いい場面でメモリアルが出て、甲子園が一気に朝倉を飲み込んだ『わっしょいの蟻地獄』と化します」
先生  「シーツの送りバントはサインやな」
コーチ 「そうですね。8回ですし、何より赤星メモリアルのムードを潰してしまうことは、今後の戦いを考えてもあってはならないことでしたから」
先生  「メモリアルの時間を長く取ることが絶対条件というところで送りバント」
コーチ 「シーツは活き活きとバントを決めました」
先生  「おもろい人やな、ほんま」
コーチ 「そしてアニキ」
先生  「こういう場面で、ほんまにアニキは打つなぁ」
コーチ 「だからみんな憧れるんですよね」
先生  「赤星、小さい体でほんまによう頑張ってきたけのー。ワシからのプレゼントじゃけ!!!打法」
コーチ 「長いです(笑)」
先生  「痛烈なライト線の当たりが際どくファールになった後やって」
コーチ 「詰まらされたんですけど」
先生  「アニキの気持ちは」
コーチ 「打球をショートの後ろまで運んで」
先生  「メモリアルな空気の中」
コーチ 「赤星がホームを踏んで、同点」
先生  「アニキー!!!!」
コーチ 「赤星ー!!!!」
先生  「ほんまにええチームやなぁ。ほんまにほんまにええチームや」
コーチ 「ベンチで腕グルグル回してた監督の嬉々とした表情も良かったですし」
先生  「とにかく、岡本を打って同点に追いついた」
コーチ 「よっしゃ、もう1点というところで、岡田さんは甲子園と一緒に試合を決めようとしました」
先生  「桜井に代えて、桧山」
コーチ 「でしたけど、ここは岡本が意地を見せて2アウト」
先生  「最後は抜けたフォークボールが打ちにくいところにきてしまって三振やったな。打ち取られたんではなかったし、関本打てるぞ!って思ったら」
コーチ 「関本、会心のレフト前ヒット」
先生  「そして再度甲子園に『わっしょい』が始まって」
コーチ 「岡本がもうフラフラやったんですよね」
先生  「この試合唯一、阪神の選手に『おい』って思ったのは」
コーチ 「やっぱり矢野でした(笑)」
先生  「チャンスで初球から行くのも分かるんやけどな」
コーチ 「赤星メモリアルと、アニキのタイムリーのあと、関本が完璧に繋いでという二重三重の『わっしょい』の中で岡本が投げなあかん場面でしたしね。しかも岡本調子悪いし」
先生  「4回の朝倉と同じくらいしんどかったはずやもんな」
コーチ 「初球のフォークボール、引っ掛けてショートゴロ」
先生  「ストライクは入りにくいし、必ず甘い球来るって余裕持ってほしかったんはあったけど」
コーチ 「そういう矢野のお茶目な部分を読みきった谷繁のナイスリードということで!」
先生  「矢野、明日は頼むで!!」

コーチ 「で、同点の9回表、球児できました」
先生  「これはやっぱり延長になってウッズを見越してやろうな」
コーチ 「ですね延長になれば球児が2イニングの予定で、9番から始まる9回の最大の敵は1番の井端で、順調に抑えたとして10回に回ってくるウッズが怖い」
先生  「ということで球児、9回10回のうちどちらかで1点とって勝とうと、岩瀬の9回、10回で点が取れなくても、まだジェフを残している強みがあってしかも後攻。タイガースが有利な状況で9回表を迎えたわけやったけど」
コーチ 「あんな名勝負が待っているとは思いませんでした」
先生  「やねんけど、結果的にドラゴンズが球児を攻略できた最大の理由は、勇気やったな」
コーチ 「ですね。9回表、ドラゴンズが見せた『5つの勇気』です」
先生  「5つやな」
コーチ 「まず『ここが勝負、といきなり立浪を代打で出してきた落合監督の勇気』が一つ」
先生  「ほんで、その立浪が『初球の変化球を打ちにいった勇気』が二つ目」
コーチ 「さらに井端のバントの後、荒木が打てないのはしゃあないって、開き直って『ここや、と思った高さよりも随分高い場所を振った勇気』が3つ目。これが結果的に高いバウンドのサードゴロになってシーツの頭を越えました」
先生  「ノリのファーストゴロはみっちゃんがしっかり守って、得点を阻止」
コーチ 「挟んでアウトにするのに、少し時間かかったのは、英智の好走塁でした。キャッチャーの矢野が『すぐサードに投げる』っていう瞬時の判断が効を奏したものでした。その『瞬時に判断した英智の勇気』が4つ目」
先生  「そして最後の最後までストレートを待ち続けた、『タイロン・ウッズの勇気』が5つ目」
コーチ 「球児も勇気あったと思います。今日も高め狙った球が低目にいってしまったストレートがありました。あの球が一番怖かったはずなんですけどね、2アウト2塁3塁で逃げない球児」
先生  「あまりの真っ向勝負に、矢野がちょっと置いてけぼりになってしまってたんがかわいそうやったけど」
コーチ 「しゃあないですよ。球児vsウッズの最後の勝負は、もう二人だけの異次元の世界でしたから」
先生  「究極のストレート勝負の中で笑ったウッズ」
コーチ 「球児も155キロ何球も投げてましたしね」
先生  「それを楽しみきったウッズに軍配」
コーチ 「やけどほんまに紙一重でしたからね。インサイドの高いところにいってたら、空振り取れてました」
先生  「あの球をそこにコントロールせえっていう方が無理な話やろからな」
コーチ 「今日はウッズが楽しめたから、そこに行かなかったんですよね。ウッズの日だったんです、きっと」
先生  「だけど、タイロンの日ばっかりになることはないと思う」
コーチ 「そうですね。だって、球児やって久保田やってあんなにも頑張ってきましたから」
先生  「タイガースが今シーズン積み重ねてきた長くて濃密な時間はな、一生懸命頑張る人たちを絶対に裏切らへん」
コーチ 「だから、明日も明後日も今までどおり一生懸命やればいい」
先生  「ふつうにやったら、また凄い試合になってしまうのかも知れないけど、またきっと勝てるはず」
コーチ 「だから、今日はナイスゲームで」
先生  「今シーズンは、ナイスシーズンなんや!!」

コーチ 「だけどぼくたちタイガースファンは」
先生  「アニキの胴上げが見たいんです!!」
コーチ 「だから神様」
先生  「明日は阪神、勝てますように」


神様  「わかりました」


コーチ 「え? 先生今、何か聞こえませんでした?」
先生  「う、うん。聞こえたで、聞こえたでー!!!!」


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posted by コーチ at 03:02| Comment(0) | TrackBack(12) | □ 藤川 球児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月14日

シーツのポテンヒット

先生  「この間、コーチの店行った時にな」
コーチ 「はい」
先生  「明け方、ちょっとギャルっぽい女の子が店の前掃除しててんけど、あれどないしたん?」
コーチ 「あぁ、あれですか。あれは凄く嬉しかったんですよ」
先生  「嬉しいことやったんやな」
コーチ 「はい。あれね、前の日の晩、大雨降って、その子店の前で友達と雨宿りしてたんですよ。まぁ夜中によく来る子なんですけど」
先生  「それで?」
コーチ 「で、『連れの男に迎えに来てもらうし、雨宿りしてていい?』って言うから、『別にええよ』言うて」
先生  「『連れの男に迎えに来てもらう』リアルやなぁ?笑」
コーチ 「でしょ。待ってる間も、携帯電話でゲームしてましたわ(笑)」
先生  「リアル、リアル」
コーチ 「ほんでまぁ、その時にようさん煙草吸ってね、その辺にポイポイ捨ててたんを、明け方にぼくが掃除してたんですよ」
先生  「なるほど」
コーチ 「そしたら、たまたまその時、その子が通りかかってね、『お兄ちゃん、わたしやる』って凄い申し訳なさそうに、ほうきとチリ取りをぼくから奪ってね、掃除し始めたんですわ」
先生  「ふむふむ」
コーチ 「でね、ギャルっぽい女の子らって、昔で言う『ヤンキー』とはまた雰囲気が違うと思うんですけど、その子らってほんまに悪気がないことが多くてね」
先生  「分かる分かる」
コーチ 「ちょっと表現は難しいですけど、煙草一つ取ったら『そこに灰皿あるんやから、そこに捨てたらええやん』って大人は言うでしょうけども、それが難しいまま過ごしてきたから結果ギャルやって夜中にウロウロしてるわけでね、その子らだけの問題やない」
先生  「確かにその通り」
コーチ 「うまく言えないですけど、『煙草を灰皿に捨てる』っていうことと『彼女が彼女として存在する』っていうことは、大きく矛盾してることなのかな、とも思って、別に吸殻捨てていったりすることに腹も立たないんですけど」
先生  「アイデンティティっていうんかな? 大袈裟かも知れんけど、そうじゃないと『在れない』から、そう在っているという、って感じよな」
コーチ 「同じ意見です」
先生  「ほんで掃除し始めてんよな」
コーチ 「そうなんですよ。『ごめんなぁ。ウチら煙草捨てるの癖やねん』言うて、ふつうに謝ってくるから、『いや、別にそれは謝らんくてええけど、次から灰皿に捨ててくれたら嬉しいで』って言うたんですよ」
先生  「そしたら?」
コーチ 「そしたら、『うん、分かった!!』って、自分が捨てたものじゃないもんまで掃除してくれてね」
先生  「むっちゃかわいいやん!」
コーチ 「むっちゃかわいいんですよ。彼氏と何回も分かれて何回もより戻すんですけどね(笑)」
先生  「あるある」
コーチ 「その度、『別れた〜』って言って泣きながら報告来たり、『ヨリ戻った〜』ってむっちゃ笑いながら報告来たり忙しい子なんですけど、正直でかわいい子ですね」
先生  「やけど、正直過ぎてちょっと周りに流されやすいとこあるんよな」
コーチ 「そうなんですよ。この間も水商売始めた雰囲気あったんで、『向いてないからやめとき』って言うたんですよ。水商売自体が悪いことやとは思わないけど、彼女はその仕事をするには『いい子過ぎる』っていうか、そういう風に思って」
先生  「なるほどなぁ」
コーチ 「そしたらそれもこの間、『もう水商売辞めてん。今日、派遣のバイト登録してきた』って報告してくれてそれもむっちゃ嬉しかったですね」
先生  「ええ話やなぁ」
コーチ 「正直、ぼくも何か手ごたえありました。これで良かったんやなぁ、って思えて」

先生  「で、話しながら思ったんやけど、野球の話してええか?」
コーチ 「もちろん」

先生  「昨日の6回、シーツの打席やねんけどな」
コーチ 「赤星デッドボールの後、押し出し二つで逆転する途中ですよね」
先生  「ライト前のポテンヒット。結果的にあれは物凄く大きかった」
コーチ 「確かに」
先生  「で、あのヒットはレフトの方向向いて振ってバットの先っぽに当たってライト前にフラフラっと上がった打球ではなかったよな?」
コーチ 「そうですね。それとは逆の、ライトの方を向いて振ってボールの下をこすってしまったから、ああいう打球になったと思います」
先生  「前さ、シーツが自分で送りバントしに行ったように見えたときに、こんな話したよな」
コーチ 「8月の終わりの甲子園のカープ戦。杉山と黒田で、桜井が黒田を打った試合ですよね」
先生  「そうやった」


コーチ 「ところが」
先生  「シーツが初球のシュートにまんまと詰まってゲッツー」
コーチ 「交流戦までの阪神に戻りかけてました」
先生  「気持ちはあるねん。やけど『絶対打ったる』があまりに先行してしまうと、あんな簡単な配球にまんまとやられてまう」
コーチ 「紙一重なんですけどね」
先生  「シーツに出してほしい根性は赤星とは全く逆でな」
コーチ 「はい」
先生  「あの場面で『外に逃げる球を待つ』という根性や」
コーチ 「スライダーを待ってライトに向かって思いっきり振る。100点が右中間を抜くあたり、打ち損じてもライト前のポテンがあるかもしれない。仮にライトフライやファーストフライでもアニキまでまわる」
先生  「これは結果論やないでな。散々こんなシーン見てきてるわけやから、ダブルプレーを避けるのって消極的なやり方ばっかりやない。スライダー待って思いっきり右向いて打つのは十分に気持ちのある打撃やと思うもん」
コーチ 「それができるはずの選手ですからね」
先生  「赤星が走るまで待ったりとか、そういう気配りまでできる状態やないから、そんなことは言わん。ああいう場面はとにかく右向いて思いっきり振ってほしい」
8月30日 当ブログ記事『桜井を叫べ』より抜粋



先生  「シーツがまさにその打撃をしたと思って、オレはとても感動したんや」
コーチ 「よう分かります」
先生  「シーツの中にな『ランナー一塁でライト前のポテンヒットはアリ』って感覚はないと思うねん」
コーチ 「ないでしょうね」
先生  「でもむっちゃアリなわけやん。その場面でランナーはたいがい赤星。次のバッターはランナー二人おる場面でアニキや」
コーチ 「大チャンス過ぎます」
先生  「それを少し許せてきたんかな、思ってな」
コーチ 「はい」
先生  「さっきの、ギャルの女の子の話やないけど、素直になれたらいいこといっぱいあるって思うもん」
コーチ 「ですね」
先生  「その女の子の話で言うと、コーチがしてきた対応はほんまにええ方向に導いたと思う」
コーチ 「そう言ってもらえたら嬉しいです」
先生  「『叱られたり』『注意されたり』とかではない中で、『この人に悪いことした。嫌われたくない』って思って掃除したんやろから。最高やで」
コーチ 「ちょっと恥ずかしいですけど、そうやとすれば嬉しいです」
先生  「シーツにしてもそうで、なんぼダブルプレー打っても、ベンチは一切エンドランのサインを出そうとせんかった」
コーチ 「ほんま『初球から打て』ばっかりですもんね」
先生  「その中でシーツが『ライトへポテンヒットでもいい』ってメンタルを獲得できたとすれば、これは今日からの大事な大事な6連戦の中で大きな大きな戦力アップや」
コーチ 「まだそれが本物かは分からないですけど、期待できる昨日の打席でした」
先生  「ランナー一塁。右向いて思いっきり振った結果それがダブルプレーになっても全然かまわん」
コーチ 「はい」
先生  「アニキに繋ごうとする意識。それが間違いなく得点に繋がってくるんや」
コーチ 「そうですね。期待しましょう」
先生  「そしたら、今日からの甲子園、阪神タイガースの勝利を願って」
コーチ 「乾杯!!」


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posted by コーチ at 11:47| Comment(2) | TrackBack(0) | □ シーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月13日

アニキは孤独じゃない

先生  「なぁなぁ、コーチ」
コーチ 「どないしたんですか?」
先生  「あ、ちょっと待って」
コーチ 「え?」
先生  「(ティッシュをこより状に丸めて鼻をくすぐる)あ、来た」
コーチ 「先生?」
先生  「ふぁ、ふぁ… ふぁァァアニキ!!!!!」
コーチ 「ちょっと、先生」
先生  「なんや?」
コーチ 「なんや? やないです。何ですかそれは?」
先生  「『くしゃみをしながらアニキと言う』という新しい技や」
コーチ 「なぜですか?」
先生  「理由なんかあらへん。何で生きてるか?なんて答えは人それぞれ、答えは一つやないのと同じことや」
コーチ 「急に話題が飛躍したし、質問の答えになってないし、その技と答えが一つでないことは同じではないです。てか、いっぺんに三つもツッコまな成立しない発言せんといてください」
先生  「なぁ、コーチ」
コーチ 「はい」
先生  「ツッコミは愛やな。ツッコミは優しさやな」
コーチ 「いきなり何の話ですか?」
先生  「『何でやねん!』『どないやねん!』って言うだけがツッコミやない」
コーチ 「まぁそらそうですけども」
先生  「コーチのツッコミは愛がある。だって、全部つっこんでくれる。ボケって言うのはある種、会話の流れを遮る行為や。だからツッコんでもらってその異物感を取り除くことによって初めて成立する。だからボケるのは勇気がいるんや。自らを孤独の淵に向かおうとする行為やと言っても過言ではないと思う」
コーチ 「過言です」
先生  「コーチはオレを孤独にせぇへん。だからオレは孤独ではない」
コーチ 「さっきまで、テッィシュを丸めて鼻に詰めてた人の発言とは思えないです(笑)」
先生  「コーチ!!!!!!!」
コーチ 「は、はい」
先生  「好きー!!!!!!!」
コーチ 「分かりましたよ(笑) ぼくも好きですよ」

先生  「ところで、5回表の攻撃やけどな」
コーチ 「急展開すぎます」

先生  「アニキのホームランやった」
コーチ 「ほんまに苦しいところでは、いっつもアニキですね」
先生  「ホームラン打った後のベースを一周する表情見てて思ったんや」
コーチ 「はい」
先生  「孤独やろなぁ、って」
コーチ 「そうですね、ぼくも思いました」
先生  「何かな、洪水やねん。そこのドアが水に破られたら、家ごと流されてしまう。そのドアを破られんように必死になって歯を喰いしばって一人で支えてる感じがした」
コーチ 「足、ケガしてるのにね」
先生  「一人じゃ苦しい。一人じゃ苦しいから誰かに助けてもらいたいけど、頼んでやってもらうことやない。その部屋にいる誰もがそのドアが破られたらもう命がないことは分かってるんや。だけどそれに脅えて動くことすらできひん。その恐怖を克服してドアを破られへんように真正面から死守してこそ、何かが開かれてくるんや。諦めたらもう終わり」
コーチ 「前の試合でも、全く同じようなホームランをアニキは打ちましたけど、周りが反応しきれませんでしたからね」
先生  「二日続けてやったし、この試合の序盤もシーツと浜ちゃんがダブルプレー。今日のホームラン後のベースランニングには孤独感により拍車をかけたと思う」
コーチ 「だけどアニキは一人で支え続けた。何も言わないでただ只管に、真摯な態度で大水が押し寄せるドアと格闘するアニキ」
先生  「そこへ、一人の男が謝りながらやってくるんや。『金本さんすいません。ぼくにも手伝わせてください』」
コーチ 「みっちゃんでしたね」
先生  「アニキは少しだけ心が安らいだやろうと思う」
コーチ 「みっちゃんの気持ちがこもりにこもったフォアボール」
先生  「そして矢野や。『カネ、いっつもありがとう』」
コーチ 「その時、アニキとみっちゃんの二人で支えてたドアの後ろから矢野が体ごと支えてるみたいな」
先生  「このドアは絶対に破らせへん!!」
コーチ 「ファールファールで粘ってカウント2−3から矢野が苦手な真ん中の落ちる球で三振しそうなところ、そこを何とか止まってフォアボール」
先生  「その時、アニキとみっちゃんで支えてたドアを矢野が後ろから両手で支える。『カネ、いっつもありがとう』って」
コーチ 「アニキにホームラン打たれるまで、カープの高橋は素晴らしい内容でした。それが突如崩れたのはアレですよね」
先生  「せや、タイガースは高橋と対峙してたのではなく、再び飲み込まれかけた大きくて暗い憂鬱の闇を蹴散らそうと、アニキを先頭に対峙し始めたからや」
コーチ 「アニキを先頭に、みっちゃん、矢野と続いて」
先生  「藤本にもストライクが入らない」
コーチ 「ここで岡田さんもそれに呼応するんですよね」
先生  「代打、桜井」
コーチ 「杉山を4回で降ろすって勇気いったと思うんですけども、いいピッチングしてましたし」
先生  「だけど孤独や徒労を受け入れてまでアニキが打ったホームランに、みっちゃんと矢野が続いたこの回」
コーチ 「それに桜井が反応することで、桜井も何かを突破できるかもしれない。突破したなら、おそらく一気に大量点という場面でしたし、試合も決まる」
先生  「ええ代打やと思ったけど」
コーチ 「桜井もとらえかけてはいいたんですけどね」
先生  「いい当たりのショートゴロやった」
コーチ 「打球が矢野の体に当たって、守備妨害で矢野がアウト。ダブルプレーを阻止した形にもなりましたし、何となくいい流れで、鳥谷」
先生  「ジャストミートしたライナーが東出の正面」
コーチ 「もう、ほんまにあと僅か、あと僅かでした」
先生  「やけど大水からドアを守ろうとアニキを先頭にそれを死守しようと頑張った4回表」
コーチ 「気が付けば、嵐はおさまりました」

先生  「だけどまだ、部屋の外で水は強く流れてる。余談を許さん場面の5回裏」
コーチ 「杉山にかわって江草でした」
先生  「2アウトからピンチを招いて、代打に昨日打たれてる井生やった」
コーチ 「2アウト2、3塁で1塁が空いてたんですけども」
先生  「あそこでよう江草が攻め切った」
コーチ 「気持ちがほぐれたアニキが言うんですよね『江草も来い』って」
先生  「江草も一緒にドアを支えたもんな。『杉山、おまえもよう投げた』って杉山も江草と肩組んで、その輪に入る」
コーチ 「『偉い、偉い』ってみんなにヨシヨシしてもらってね、『ぼく4回しか投げてないですけど』とか遠慮がちに言うんですけど」
先生  「『そんなこと関係あらへん。ナイスピッチングはナイスピッチングじゃけ』」
コーチ 「杉山も仲間に加わって」
先生  「後はドアを開けて外に出るだけやってんけども、水によってドアが変形してしまってて開かないんや」
コーチ 「よっしゃ、みんなで行くでー!!」
先生  「6回表や」
コーチ 「いよいよです」
先生  「赤星、デッドボールで出塁」
コーチ 「シーツが右向いて思いっきり振ったらポテンヒットになったという内容のあるポテンで1塁2塁」
先生  「『ワシに任せとけ』ってアニキが決めたい場面やったと思うけど、もうこの時、アニキは孤独やなかった」
コーチ 「みんなでドアをこじ開けよう。フォアボール」
先生  「満塁になって浜ちゃんのところで代打桧山」
コーチ 「いい表情してました」
先生  「押し出しで、勝ち越しや」
コーチ 「葛城もまたいい顔してるんですよね」
先生  「ストライク入らへんのも無理ないでな」
コーチ 「また、押し出しでもう一点」
先生  「そして、矢野が決めた」
コーチ 「『みんなで優勝しよう!!』」
先生  「際どいファールフライがファールになった直後やった」
コーチ 「三遊間に強いゴロ」
先生  「ダメ押しのホームをアニキが踏んで」
コーチ 「アニキは孤独から解放されました」
先生  「みんなで守った心のドアを、みんなでこじ開け4得点」
コーチ 「嵐が去った夜空はとても穏やかに雲が流れ」
先生  「それを見上げてアニキは、少しだけ笑ったんや」


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posted by コーチ at 23:11| Comment(4) | TrackBack(1) | □ 金本 知憲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

堂々、上園。


負けてしまったけど、昨日は上園が「これこそ上園」というものを示してくれたシーンがあった。

2回裏、4番の新井からというイニング。

新井はしっかり抑えるものの、続く前田にインハイのボール球を詰まりながらもレフト前にヒットされる。体操の技にそれを始めて成功させた選手の名を技の名前にする慣わしがあるが、あの打球に名前をつけるなら「マエダ」だ。前田にしか打てないヒット。それで出塁。
栗原にも繋がれて、1アウト1塁2塁という場面。

打順は下位に進むとはいえ、とてもイヤな雰囲気のするイニングだった。

例えば上園がサラリーマンだとして、何かミスをした。上司にそのまま報告すれば怒られる。だけど上園は怒られると分かってて、ちゃんと事実を報告して、ちゃんと怒られることができる人だと思う。そしてちゃんと謝れて、ちゃんと反省し、鍛錬する。

そのことを若い頃から繰り返し繰り返し続けてきたのだろうな、という強さをマウンド上で頻繁に感じる。

上園は「エース」になれる可能性が十分にある。年間200イニング投げて、勝ったり負けたり。だけどシーズンを終えてみれば15勝10敗。5つ勝ち越してるみたいな、そんなピッチャー。被安打数はリーグトップ。防御率もそれほど良くない。だけど、最多勝争いをできるようなそんな投手。

新人王取れるかなぁ。取ってほしいな。

セリーグが上園。パリーグがマー君。
二人とも打たれ強くて、投げる試合でチームが勝ちやすいピッチャー。そういうピッチャーこそいいピッチャーだ、という時代へはっきりと野球が変わってきていると思う。今や高校生だって150キロのストレートをヒットにする時代。その中で「打たれ強さ」とは物凄い武器だ。

上園とマー君。
スケールはちょっと小さいけど、上原と松坂みたいな関係にならないかな。


2回裏 カープの攻撃

前田に「マエダ」というヒット名のヒットを打たれ、栗原に繋がれて1アウト2塁3塁。打席に思い切りの良いイメージのある森笠。

上園は、三球続けてストレートを投げた。そしてダブルプレーにとってしまう。時速140キロに満たないプロ野球の世界では遅いストレート。投げさせる野口もかっこいいし、投げきった上園も凄い。

さらに付け加えると、上園は3回表先頭打者として打席に立ち、フォアボールで出塁している。

その上園が大好きすぎて仕方がない野口ママは、昨日また三本もヒットを打った。

「アフター東京ドーム」に混乱して、また紙一重のちぐはぐに陥りかけているタイガース。大事なことは上園と野口が見せてくれたよ。

正面玄関から正々堂々と。

10連勝のスタートは、甲子園でカープ相手に1敗1分で迎えた第三戦が1勝目だった。その時も相手は黒田。桜井がバックスクリーンに物凄いホームランを打った試合。タイガースのピッチャーは杉山。

そして今日も。カープに連敗して、先発はおそらく黒田の三戦目。タイガースは杉山。

あの時と現在でまったく違うことが二つあると思う。
一つは桜井が打てなくなっていること。だけど黒田をきっかけにして復調してくれたらなぁという期待。スタメンかなぁ?
そして、もう一つは矢野が打てること。

ドラゴンズ戦の前、なんとなくイヤな雰囲気の広島で、7番が決める試合があるといいな。


上園と野口の気持ちをそのままに、正面玄関から堂々と。
優勝の方向を向いて、再び進撃開始。


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posted by コーチ at 11:57| Comment(4) | TrackBack(5) | □ 上園 啓史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月12日

能見がんばれ、桜井がんばれ

先生  「空が急に秋めいてきたなぁ(空を仰ぎ見る)」
コーチ 「珍しいですね。季節の話題からなんて」
先生  「だけど、審判むっちゃ下手!!!!」
コーチ 「急展開!!笑」
先生  「あの下手さはないで。もちろん悪気はないやろうけど、速い球やとストライクゾーン広がるし、バントの構えしたらストライクゾーン移動するし」
コーチ 「ボランティアで草野球の審判やってくれてはるおっちゃんとか、たまにああいう人いますけどね。ちょっとでも抗議の態度見せたらむっちゃ怖い顔で睨まれるんですよ(笑)絶対ボールのとこストライクって言ってるのに」
先生  「ほんま、そのレベルやったなぁ」
コーチ 「もし、何らかの事情で、例えば体調がむっちゃ悪かったとか、正常な判断ができひんのやったら球審やるべきじゃないですしね」
先生  「まったくその通り。能見はかわいそうやったなぁ」
コーチ 「ですね」

先生  「せやけどな、コーチ」
コーチ 「はい」
先生  「能見はもっと『あいこでしょ』が必要やって話、前したやん」
コーチ 「しましたね」
先生  「鞘師のフォアボールの場面。確かにストライクやったけども、もちろんガッカリやけど、もうちょっとゆとり持って適当に投げれたら、あんなにもガッカリせんですむんやもんな」
コーチ 「一つ一つ全部勝ちに行かなくても、相手関係によっては十分アウトにできるスピードと切れがありますもんね」

先生  「そこで考えたんやけどな」
コーチ 「はい」
先生  「ピッチャーって、グラブに好きな言葉の刺繍入れたりするやん?」
コーチ 「下柳先輩やったら『前後裁断』みたいなやつですよね」
先生  「そうそう。ふつうはそういうカッコいい気持ちが引き締まる言葉やねんけど、能見の場合はもっと気持ちが緩むような」
コーチ 「はい」
先生  「『鼻毛』とか」
コーチ 「『鼻毛』って刺繍いれるんですか?笑」
先生  「せや。さあ、この一球は絶対コントロールミスしたらあかん! 丁寧に丁寧に、と思ってるところでふとグラブの刺繍が目に入るんや」
コーチ 「鼻毛」
先生  「ちょっとリラックスできそうやろ」
コーチ 「確かにできそうですけど、能見のキャラクターを考えると少し頑張り過ぎてる感じもありますね。もう少しカッコいいほうがいいですよ、たぶん」
先生  「ほな、『鼻毛裁断』でどうやろ?」
コーチ 「それは、鼻毛が常に伸びやすいことを過剰に思いすぎてる感じが出すぎてダメです。下柳先輩をバカにしてるみたいに見えますし。そもそもリラックスするっていう本来の目的から外れてきてます」
先生  「『鼻毛厳禁』」
コーチ 「おんなじことです」
先生  「じゃあどないしたらいいねん! 何鼻毛って刺繍にしたら能見はリラックスできるねん!」」
コーチ 「先生」
先生  「なんや?」
コーチ 「絶対に、鼻毛やないと、ダメなんですか?」
先生  「あ!」


コーチ 「まぁ完封負けやったわけですけど、長谷ビッシュ良かったですよね」
先生  「せやな。昨日もダルビッシュみたいやった。前回のタイガース戦は勝ち投手なれる展開やったけど打順のめぐりで交代して、結局勝ち投手なられへんかった」
コーチ 「浜ちゃんが広池から復帰後初アーチの試合でした」
先生  「そういうのもあって、チーム全体で長谷川さんを勝たそうって雰囲気があったかも知れんし」
コーチ 「とにかく長谷ビッシュ、ナイスピッチングでしたね」

先生  「完封された中でも打線でよかったところチラホラあったよな」
コーチ 「矢野ですよね」
先生  「せやねんよな。6番から始まるイニングで1人でも出塁して最低9番まで回したいイニングで」
コーチ 「矢野だけが出塁して9番まで回るってシーンはほんまに久し振りに見ました」
先生  「6番の葛城もしくはみっちゃん。あと8番の関本は、残り試合トータルで考えると、ある程度安定した出塁率が見込めるやん」
コーチ 「その通りやと思います」
先生  「で、ここに来てバードが今シーズン一番の絶好調期や」
コーチ 「6番からの攻撃で得点が取れる可能性がけっこう出てきたんですよね」
先生  「そこに矢野も加わってきた下位打線」
コーチ 「大量点も狙える強い下位打線です」
先生  「というのもやっぱり桜井がな」
コーチ 「超絶の不調ですね」
先生  「ハーフスイングの三振が二個あったもんな」
コーチ 「気持ちだけはしっかりあるんですけど、体が反応してくれなくなってるんでしょうね。打つべきボールをファールしてしまう。見送るべきボールを振ってしまう」
先生  「典型的なスランプや」
コーチ 「確かに」
先生  「だから、5番で切れることがしばらくは増えるかも知れん」
コーチ 「はい」
先生  「でもな、現時点で首位の位置におれていることは桜井なしには語ることができんのや」
コーチ 「もちろんです」
先生  「ここまで、大活躍してくれたぶん、これからは桜井を守るんや」
コーチ 「ですね。きっかけがつかめるまで、桜井が打てなくても矢野が打って勝つ。そういう試合ができれば、自ずと道は開けてくるはずや」
先生  「桜井が真の四番へ到達するまでの最初の大試練」
コーチ 「その試練を勝ちゲームの中でさせてあげよう」
先生  「これまで打てなかった矢野が繋いで、鳥谷やシーツの長打で大量点や」
コーチ 「悩める桜井に、『気にするな待ってるで』と言ってあげられたら」
先生  「結果的に久保田と球児も休める試合になる」
コーチ 「さぁ今までのぶん7番矢野が打ちまくるときやで」
先生  「今日は、勝ってほしい、勝ってほしいんやー!!!」

コーチ 「あ、先生」
先生  「なんや?」
コーチ 「鼻毛出てますよ」
先生  「吉兆やな」
コーチ 「なんでですか?」
先生  「ほな、帰るわ」
コーチ 「なんでですかー!!」


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posted by コーチ at 10:36| Comment(4) | TrackBack(0) | □ 能見 篤史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月11日

この三日間を忘れない

最初に断っておきたいことがあります。
とても長くなりました。
この三連戦のことを自分のために記録しておきたいと思いました。
だからとても長くなりました。

最後までお付き合い頂ければ、幸いです。

コーチ

********************


もちろん、グラウンドで戦っていた選手たちはは徹頭徹尾そうだったのだろうと思う。
「何が何でも勝つ」

だけど、得点が入ったら手をバンバン叩いて大喜びし、90%の主観と10%の客観で監督という仕事を全うしているように見える岡田彰布の10%の客観にはしっかりと「今日は負けてもええんや」という意識が宿っていたように思う。

久保田と球児と赤星を休ませたる。

「別に今の首位にこだわる必要はあらへん。最終的に首位やったらええんや」

先発投手を大方の予想通り下柳先輩できたところ。さらに二番に浜中を入れてきた一見斬新に見えるオーダーに、言葉は悪いが「捨て試合」を感じた。付け加えるとぼくはその「捨て試合」の印象を好意的にとらえていた。

ここ数試合の下柳先輩の投球内容。そして現在のジャイアンツ打線の力量を考えて、もちろん抑えてほしいとは思うのだけど、客観的に見れば打ち込まれる可能性の方が圧倒的に高かった。ジャイアンツは決死の覚悟で高橋尚。

甲子園でのヤクルト戦。グライシンガー相手の試合で、下柳先輩が中盤に大量失点をした試合のような、10点近く差のつく可能性も十分に孕んだゲームを岡田さんは覚悟しているように思えた。
「それでもかまわん、今日はシモが投げることが大事」
なんとなく、そんな印象を感じたのだった。

前日、結果的に裏をかいた形になって安藤が快投を演じた。
第三戦も、本当にこの試合だけ勝ちにいくなら、中四日で能見だったろうと思う。さらに、キャッチャーも野口に代える。高橋尚がふつうのピッチングをしたとして、得点の標準的な予想ラインは2点3点だと思う。

第一戦でダーウィンや久保田をいとも簡単にとらえて見せたジャイアンツ打線。これをまともに2失点に抑えようとすればJFKが三イニングずつ投げるしかない。

だけどそんなことは当然非現実的な話で、
要するに今のジャイアンツ打線を(特に東京ドームで)抑えるにはまともではほぼ不可能。それほどに凄い並びだ。
ならば、先発投手を相手が準備していなかった投手に、さらにキャッチャーのリードもかえてしまう。
二重のアドリブを必要とさせるくらい負荷をかけなければ、しんどい。

しかし、先発投手は下柳先輩。順番なのだからそれでいい。今日は勝てなくていい。
だけど、次以降なんとか復調してもらうために、唯一一年間ローテーションを守り苦しいチーム状態から支えてきた下柳先輩がこの日のマウンドに立つことは絶対に必要で、それで打たれてもかまわない。もしかして高橋尚が全然ダメなとき、チャンスがあるかも知れないし。
そうやって送り出したような気がした。

そして「二番、浜中」。この「二番」に意味付けはないと思った。
前回の対戦で浜ちゃんが高橋尚からホームランを打っているのはスタメンの一つの理由だっただろうけど「二番」の理由ではない。「二番」なのは赤星ありきの話だと思った。

おそらくは、第一戦の本塁上でのクロスプレーの影響があったのだろう。二戦目の赤星は、結果うんぬんではなく。スイングのスピードが明らかに鈍っていてた。ライトに引っ張れるイメージは皆無。
「休ませたらな」
ということで、「浜ちゃんでいってみるか」「この間ホームランも打ってるし」
打順は「二番があいてるから二番」。
飽くまで打線のリズムは壊さない。
関本を二番に上げて、矢野を八番に下げ浜中を七番に入れる。
浜中ありきの打線としてはこれが最も自然だろうが、チームとして今動かすことにストレスが生じるならば、
空いてるとこにいれといたらええ。負けてもええんや。

1番鳥谷、2番浜中、3番シーツ。この並びを見てぼくは可笑しかった。ギラギラとした闘志をぶつけ合い激しく一点を取り合い、激しく一点を守りあった「天王山」一、二戦。
その印象とは遥かにかけ離れた「のん気さ」を感じさせる並び。
3番打者タイプが三人ならぶ、しかし、3番打者としては皆それぞれに不足のある顔ぶれ。
全員初球を打って3球で一イニングを終えてしまう可能性もある並びだ。
しかし同時に「のん気だなぁ」って許せてしまうような顔ぶれ。

「是が非でもこの試合落とせない」というオーダーにはとても見えず、そのことにとても好感を持った。

ところが、
プレイボール直後、高橋尚が投じた二球目から状況は怒涛の変化を見せる。


1回表。

今シーズン初めての中四日で高橋尚。ジャイアンツとしてはもちろん「何が何でも落とせないゲーム」なのであった。
先発投手の人数が足りなければ、当然エースを中四日で。
1番の鳥谷に対して初球はアウトローのストレート。「ヒサノリボール」と呼んでもいいような、長い槍を低い位置でまっすぐに突きその先端がベースの角を横切るボール。それが決まって1ストライク。
この一球だけ見れば「ヤバイ。高橋、デキはいい」そう判断してもおかしくなかった。
しかし、二球目の変化球がやや甘く入る。

こういう時にあまり何も考えないで打席に立つタイプの鳥谷の真骨頂。平気な顔で素直にバットを出していく。
左中間にライナーが、二塁打に。

高橋尚。前回のナゴヤドーム。
丁寧に、丁寧に。強くウッズを警戒することで自らの稼動域を少し狭めてしまったように見えたドラゴンズ戦のノックアウト。
「丁寧さ」と「大胆さ」今日の課題はきっとそのバランスだっただろう。しかし両極の分かりやすさを課題としているのではなく、それが「バランス」であるところが難しい。鳥谷のヒットが高橋尚の意識を「もっと丁寧」にむかわせてしまったと思った。

二番、浜中を迎えたところで、実況のアナウンサーが言った。
「さぁ二番浜中です。いったいどんな攻撃をしかけてくるんでしょうか?」

確かに、ノーアウト1塁だったら少し気になるところだけど、ここは打つしかない。
で、おそらくは浜ちゃんに「打つ」以外の作戦はよっぽどのことがない限りないと思う。
ホームランバッターと期待され入団してきた選手が、プロ野球以前に二番に配置されることはまずなく、特に浜ちゃんは入団以降もスラッガー畑を歩んできた人なので、バントさせたりエンドランかけたりは少し不自然だ。

基本「のん気」な浜ちゃんはここでも「のん気なイメージ」で二番と対峙しているように見えた。
赤星の打席に見られる「進塁打を!」という強い気持ち。そういうものはこの浜ちゃんの打席にはない。
だけどそれがいいところ。持ち味をいかんなく発揮して、
「二番って右方向とかに打つよね」
外の高目に抜けた変化球を右向いてオリャって振った打球がライト前へ。

ノーアウト1塁3塁でシーツ。

カウント2−2からインコースに厳しいストレート。ボール球だったけど、通常の「高橋尚vsシーツ」の対戦時であれば、
シーツが「まったく手が出なかっただけなのに、悠然と見送っていたフリで素知らぬ顔でする」そんな球だった。
で、結局次の球を打ち上げて悔しがったりするのが通常。しかし、この球をシーツが本当に悠然と見送った感じがした。
そして、2−3から、ストライクゾーンに同じ球。

詰まりながらもレフト前へ。1点先制。

シーツがあのコースのストレートをヒットゾーンへ飛ばした、という事実はタイガースに大きな勇気を与えたと思う。
この試合を勝つ条件の必須事項だった「もしかして高橋尚の状態が物凄く悪い場合」。その場合のように見えるアンディの先制打だったと思う。


さらにノーアウト1塁3塁でアニキ。
ここでアニキは軽打ではなく強打だった。
あと一点とれば勝てるという打席でアニキが見せる「軽く当ててレフト前へ」または、「レフトフライ、センターフライで一点」。そういう打ち方をする打席ではなかったということだと感じた。

勝つにはたくさん点がいる。初回に二点では少ない。
大量リードで久保田と球児を休ませる、そういう気持ちの強振に見えた。

高橋尚が投じたインコースのボールを強振するアニキ。
バットが真っ二つ。ボールがセカンドの木村拓の方へ転々と。
三塁ランナーの浜ちゃんはもちろんゴー。赤星だったら当然セーフの打球。
だけど浜ちゃんだったからあそこでライト前に打てたとも言える。
出場機会の減っていた浜ちゃん、中途半端な走塁でタッチアウト。
突っ込みもせず、挟まれることもできず。
「らしさ」と言えば「らしさ」かな。
赤星ではなく浜中が二番に入っていることをいろんな意味で表現してくれる浜中が少し可笑しかった。
これまでの二試合の中で湧かなかった感情。
「のん気さ」の注入。

1アウト1塁2塁で桜井。
桜井は横浜戦からずっと状態が悪い。
野生の肉食動物のような瞬発力で相手投手の決め球をファールにしていた姿にかげりが見える。
一戦目はそれでもゲームの流れが桜井の鈍った感覚を瞬間的に呼び覚ました。

しかし、それは一時的なもの、現在は桜井が一軍選手として始めて経験している「スランプ」の真っ最中だ。
外のまっすぐにファールチップで三振。
調子がふつうであれば少なくともいい当たりのファールになっていたであろうボール。かなり深刻に見えた。

続くみっちゃんは初球の変化球を打ち損じて内野フライ。

高橋尚がなんとか1点で凌いだ、タイガース初回の攻撃だった。
大量点になるかならないかはやはりフォアボール。
ノーアウト1塁3塁の場面でアニキを攻めたこと。それが一失点でおさめた要因だと思った。


1回裏

下柳先輩の調子が悪かったのか、ジャイアンツ打線の重圧が凄いのか、おそらくはその両方。
打順を開幕オーダーに近い形に戻し、さらに矢野謙、木村拓を二番、八番に配置するという、
機能すれば「何十点も取れる打線」を組んだジャイアンツ。
連敗脱出の起爆剤として、ということもあっただろうが、スンヨプが打つこと前提で純粋にこの並びは怖い。
「打ちやすくして」→「打つ」のバランスが物凄く高い次元でバランスが取れている。


1 高橋由  超、打つ人 「ホームラン打たれたらダメ」があとを打ちやすくする。
2 矢野謙  雰囲気のある人。 「なんとかしようが」強くいい作用をもたらす。
3 小笠原  打つもできるし、打ちやすくも出来る。万能。ものすごい。
4 李    超、打つ人。
5 二岡   超、打つ人。
6 阿部   天才
7 ホリンズ 全部強打してくる。
8 木村拓  得点できなくても9番までまわす仕事とかをできる選手。特に右打席がイヤ。


先頭の高橋由。初球の空振りが「ホームランを打てるスイング」。
もうこれだけで大変だ。フォアボール。
続く矢野謙。バントしてきてくれたらラクだったけど、やっぱりヒッティング。
打席に矢野謙の間にワイルドピッチで高橋由はセカンドへ。
ランナー二塁になって、右方向へ打ちにいく矢野謙。
その打ち方をして膝元のスライダーを打つとあれがフェアグランドに飛ぶ。
三遊間を詰めていたシーツをあざ笑うかのような強いゴロが三塁線を抜けていく。
二番打者として最高のタイムリーヒット。
さらに小笠原が詰まりながらセンター前へ。あっさり逆転。
スンヨプには、ライトへボールが燃えだしそうな猛ライナー。
続く二岡にフォアボールで満塁。
天才阿部に初球の難しいシュートを簡単にセンター犠牲フライで3点目。

先頭の高橋由と二岡に出したフォアボールは、局面的には絶対フォアボールがダメなところ。
ジャイアンツサイドから見ればこれ以上ない完璧な攻撃だった。
この後ホリンズにホームランでも出れば、いや贅沢は言わない。
ホリンズ木村拓のどちらかが出塁して9番まで回れば、2回もまた高橋由から。
勝利はほぼ手中に収めるという場面だった。
記録的大敗も覚悟した。

だけど、もしかしたら大丈夫かも、そう思えたのは
阿部に犠牲フライを打たれた直後の下柳先輩の姿だった。
初球を打たれた。もうこれ以上点をあげられないと投げ込んだシュートをいとも簡単にセンターへ。

打球を目で追うことなく、下を向いて溢れ出てくる感情と正対しているように見えた。
その姿で本塁のベースカバーへ走っていく下柳先輩。

「悔しくて仕方ない」を隠そうともしない男がその気持ちと正対し、それごと投球をするようになった。
続くホリンズに初めて「狙った空振り」を取れた。絶対に木村拓で抑えて、2回を9番からにしたい場面。
粘られはするもどうにかこうにか木村拓を打ち取った。

初回、3失点。
よく3点で耐え抜いたと思う。ホリンズ、木村拓に対する投球は見事の一言。


2回表

シーズンオフのテレビ番組などで高橋尚がよく「お調子者役」を演じているのを見かける。
ただ、マウンドの彼にその姿はまるでない。それは本来的に「お調子者」ではないからだと思う。
本来的にお調子者に見えた、例えば元木とか、打席や守備時のちょっとした仕草にそういうものが出ていたように感じる。

「お調子者」だけど「仕事はしっかりできる」、このバランスに「かっこいい」を感じる人なのだと思う。

もちろんそれはとてもかっこいい。しかし本来的にお調子者でない人が、そこで道化て見せるというのは、サービス精神という一面プラスで「弱さの隠蔽」という面もあると思う。

ゆえに大事なのは「仕事」だ。彼の仕事は当然、ピッチング。
それが思うように行く時、弱さを前に道化ることのできる部分。
他者に気を配ったり、自己批評が強かったりそういう部分がより力を添えて、好投を呼ぶ。
「みんなの力になれている」「やれている自分」そこで乗っていけるのだと思う。

しかし、その「仕事」が少しうまくいかない時、本来的なお調子者なら、別にたいして気にならないことなので悪循環を招くこともないのだけど、高橋尚が気配りと、自己批評の強い人だとすれば、そこで対面する「己の弱さ」。
「みんなに申し訳ない」「何やってんだ、オレ」が自らを苦しめる。

ただそれがあったからこそ、
それほど目立った特徴があるわけではない左投手が、「エース」と呼ばれるまでになったのかも知れない。
とても好きな投手なのだけど、今は敵。
「お調子者、高橋尚」は諸刃の剣だ。そこを攻めたい。

「いけるかも」と思わせたら、やられるし、
「何やってんだオレ」と思わせたら、攻略できる。

7番から始まる二回表、得点できなくてもいい。
少なくとも「いけるかも」と思わせないことが大事なイニングだった。

先頭の矢野輝は、初球の甘い球を打ちにいってライトフライ。
双方共にミスで1アウト。まだ「いけるかも」ではない。

続く関本。気配りと自己批評。似たタイプの選手だと思う。ただ、先に憂鬱を蹴散らしたのは関本。
真ん中よりに入ってきたまっすぐを、バチーン!とレフト前へ。素晴らしい打球だった。

シーズン後半に入ってからの関本はこういうリードされて苦しい場面で、レフトにヒットを打つことがよくある。
強い気持ちで真正面からチームの憂鬱と対峙している証拠だろう。
高橋尚に「いけるかも」と思わせない、このイニングのミッションは完了。

それどころか「ダメかも」と思わせられる可能性のある強烈なライナーだった。

下柳先輩が送って、2アウト2塁。

このところ送りバントの成功率が非常に高いのは、バントの質だけではない。先日代走で出た狩野、横浜戦での藤本に象徴される一塁ランナーのスタート。これが徹底してチームの中に浸透しているように感じる。誰が言い出したわけでもないだろう。
『走塁に関する金本談話』がもたらした、余剰の効果だ。
関本は狩野や藤本の走塁を見て「あ、オレもああやってやろう」と思っていたに違いない。

下柳先輩のバントはやや強いゴロ。ダッシュしてきた高橋尚の前へ。一瞬セカンドに投げようとする高橋。
しかし、その時関本はもう二塁ベース付近まで到達しているのだった。タイミング的にアウトになる可能性があるバントだったかは微妙だが、クロスプレーになっててもおかしくはない場所。
楽々とバントが決まる、チームみんなでやってきたことがしっかり実を結んだ場面だった。

スコアリングポジションで鳥谷。さぁ、打てるか。

打球は三遊間へのゴロ。内野安打のコースだった。
それを取りそこなった二岡。それを見るや吉竹コーチがゴー!!!

二岡がキャッチしていれば、瞬時にサードベースに戻る必要がある中での関本の走塁。ギアをローからトップへ入れ直すも、
もともと足が速くない関本。ギアチェンジはスムーズではない。

二岡が本塁へいいボールを投げてアウトにした。

しかしここでジャイアンツ側のファインプレーは、レフトの矢野謙がかなり早い段階で「ホーム!!」と二岡に指示を出していたところ。
二岡は後ろ向きなので、関本が走ったかどうかは確認できない。一瞬でも隙があればホームインだった。
さらに基本、ローテンションの二岡。ああいう送球はハイテンションで投げたほうがアウトになりやすい。
イメージだけど。
今日のレフトは谷ではなく、矢野謙。
谷と二岡のローテンションコンビだったらあれはアウトにならなかったかもしれない。矢野謙のハイテンションに乗せられて、二岡が「ちょっとテンションあがってしまいました」というようなキレのある動き。

一生懸命走ってくる関本と、必死でブロックする阿部。
双方にとてもいいプレーだった。

ひとまず、高橋尚は「いけるかも」と思えないままイニングを終了する。


2回裏。

阿部の犠牲フライのベースカバー。
「悔しい」と真正面から対峙し、その後のホリンズ、木村拓を悔しい気持ちをそのままに抑えきった下柳先輩。

1回を8番で終了できたことによる。高橋尚から。
しっかり投げて1アウト

「悔しい」を全部吐き出して、それが落ち着きへと変化していった。

1アウトで高橋由。
2ストライク目のワンバウンドのボール球を高橋がハーフスイングの空振り。
こういう空振りが明暗を分ける結果ともなる。先に「いけるかも」を手にしたのは下柳先輩の方だった。
高いバウンドのセカンドゴロを前に出てきて関本がジャンピングスロー。
ファインプレー。
直前の本塁突入の際に見せた関本のダッシュ力のなさ。
これは先天的な筋力の問題なので仕方がない。ジャンピングスローなど、瞬発力を必要とするプレーは関本は本来的に得意なタイプではないのだ。
だけど物凄く練習すれば、あんな風に守れるようになるんだ、と体の大きな内野手に拍手。

2アウトで矢野謙。

チーム事情で今は一番を打っているが、日本球界を見渡して最も優れた二番打者はやはりドラゴンズの井端だと思う。
井端はこういう試合の、こういう場面で本当に必ず出塁する。
打率や出塁率など目に見える数字では判断しきれないとてつもない力を持っているのが井端。

技術的に見て矢野謙はもちろん井端ほどの怖さはない。しかし何かやりそうな雰囲気がある。
その雰囲気込みで非常にイヤな場面、しかもカウント1−3。
ヒット性のあたりだったがセンターライナー。

結果的に三者凡退に抑えきった。
ハイライトは高橋由の2ストライク目のハーフスイング。
振らせた下柳と、振ってしまったヨシノブ。
ホリンズの空振りに続いて、本日二球目の「よし」と思える空振りだった。


3回表。

ストイックに自分を追い込む投手が、いい調子で投げ続ける時、いとも簡単にアウトになるのが「のん気」な打者だ。
ただ、調子が悪く、自問自答をしながらという時に最も投げにくいのもまた「のん気」な打者。
勝負の調和点が見えづらい。

二番、のん気浜中。
そういう「投げにくさ」が高橋尚にあっただろうか。
ど真ん中に力のないストレート。それを浜中が完璧に運ぶ。レフトへ大アーチ。

赤星がシビれるような勝負を制しての出塁。シーズンをトータルで考えると絶対に必要なシーンだ。
だけども、この日このイニングに限って言えば、
「のん気な人」を先頭で迎えるよく分からない感じは高橋尚を苦しめたと思う。

アニキはやはり状態の悪いのだろう。高橋尚が「よし」と思い切れない球を空振り三振。
桜井は大スランプの兆候。
初球のアウトコース高目のストレートは、
あれよりも100倍難しい黒田のストレートをバックスクリーンにホームランしたコース。
それをファールにしてしまう。2ストライクを取られてからも、これまでファールにできていたボールが、フェアゾーンに飛んでしまう。頑張れ桜井。自らの力でこの苦しいところを突破してほしい。

クリーンナップは三人続けてアウトにするも、その前に大ホームラン。

本来的なお調子者なら、三人続けてアウトにできたことで乗っていけるのだろうけど、ヒサノリはホームランを反省してしまう人だ。
「いけるかも」にはならなかった。


3回裏

「むっちゃ悔しい」を「落ち着き」へと消化させた下柳先輩。
もちろん絶好調とまではいかないが、「悪くない」という状態へは戻っていた。
そしてその下柳先輩を矢野輝が支える。

先頭3番小笠原。

小笠原は打ち取ることが本当に難しい打者。丁寧に丁寧に投げて、最後にいい当たりが正面をつくとか、際どい球がストライクと判定されて見逃し三振とか、どっちが勝ちでもどっちが負けでもないような勝負を挑む必要がある。

この打席の中で何球かファールがあったが、それは下柳先輩の復調がファールにさせているのだと感じた。
フェアゾーンに入れられない。だけど、いい当たりのセカンドライナーとかにもなってくれない。
苦しいところ。最後は根負けして四球。

4番 スンヨプ。
得点は2−3。ジャイアンツのリード。
当然だけどホームランを打たれたら負ける場面だった。
しかし、一打席目のヒットを打つ前の様子などを見ていると
「四番」というものを大事にしたいという気持ちが強く出すぎている気配を感じる。
前日までの、来た球に反応してどーん!!というような雰囲気がない。そういう時に攻めていくことができた矢野輝。見事な配球だった。

インコース、顔の近くのシュート。甘く入ったらどーん!!だけど、よく投げさせた。
下柳先輩もそれに応える。そして、その後外を待っているだろうところへもう一球インコース。
いいリードだと感じた。しかしそれが、真ん中へ。
顔の前へのシュートの残像、それプラスで「四番を守る」という僅かな消極性。
それが圧倒的に打者が上の勝負で、セカンドゴロを打たせたのだと思う。
いい当たりだったがダブルプレー。

ふつうの打線と対峙しているのなら、これで完全に乗っていけたと思う。
しかし東京ドームにおけるジャイアンツ打線は世界一凄まじいのだった。
「甘く入ったらホームランになる」その可能性は、本当に苦しい。

2アウトランナーなしで二岡。
ここで二岡が初球をブンッと振ってくる。東京ドームにおける攻撃の仕方を熟知したスイングだと思った。
空振りになっても、その空振りが四球を呼ぶ。
守る場合の「見せ球」。直前のイスンヨプに投げたシュートなどがズバリそれだが、
打ち取るにあたってその見せ球は随時使われる。
この打席二岡の空振りは、それとは逆の「見せ振り」に見えた。
下柳先輩が投球に入る前に一呼吸つく、さぁ投げよう。投球動作に入った時に、必ずその「見せ振り」が意識のどこかに棲んでしまう。
そのスイングの軌道にあわせないように必死にそこから外そうとする投球は、すでに自分のペースではない。

二岡の圧力が四球を呼ぶ。下柳先輩、流れに乗れない。
続く阿部のショートゴロがイレギュラーして鳥谷がファンブル。
リズムが悪い。

2アウト1塁2塁でホリンズ。

ここは、矢野だった。矢野、ナイスリード。
カウント2−2からインコースに沈むボールをホリンズに楽々と見送られる。
落ちる球をジャイアンツ打線の中で最も振りやすいホリンズに、その落ちる球が全く通用しない。
動揺しただろう。
しかし、矢野「大丈夫、もう一球こい!」
慎重になりすぎるといい結果を招かない場面で、矢野は大胆だった。
ストレート勝負だけが大胆なのではない。
あれほど余裕を持って見切られた球をもう一度要求する勇気。

ホリンズ空振り三振でこの回無得点。

大ベテランバッテリー、渾身の無失点だった。


4回表

自信を持ちきれないままマウンドを守るジャイアンツのエース高橋尚。

先頭の高橋光信、続く矢野をどうにか。
完全に「ヒサノリの勝ち」ではないアウトにして2アウト。
関本に勝って終われれば、5回から復調する可能性もあった。

前回の打席でも関本が活路を見出すレフト前ヒット。
さらに本塁突入と、守りでもファインプレー。
関本に分があるこの勝負、非常に重要だった。

ジャイアンツとしては8番で切りたい。
タイガースから見れば、これ以降のゲームも考える必要があるので、
総合的に見て、下柳先輩を続投させるかどうかというところだけど、
ジャイアンツとしては当然続投させてほしかっただろう。
いつだって大量点寸前の雰囲気なのだ。

その続投のために、ここは絶対に関本を出してはいけない。
特に長打が出れば確実に代打が出てくる。

という勝負の高橋尚vs関本。

結果は関本。
「あいこ」の決着ではない、完全に関本が勝利した四球だった。
カウント2−3からコース高さともに完璧な変化球。空振りの可能性が非常に高い球だった。
それをしっかり見送られた高橋尚。
見送った関本。

長打ではなかったが、高橋尚の精神状態を考えればスコアリングポジションにランナーがいるのと同義といえる場面。
岡田監督、動く。

代打だった。

打席に入る機会は非常に少ない狩野だったが、ベンチでの佇まいが非常に良いというのは以前も書いた通りだ。
だから、打てるってもんでもないだろうけど、狩野は打った。

通常の高橋尚であればほとんど来ないような高目に浮いた変化球。
それをしっかり呼び込んでライトへ打った狩野の見事な打撃。
打球はライト戦を転々とし、関本は「当然ホームまで」と思って走っている。

2アウトランナーなしの大勝負を制した関本と、狩野の佇まいに賭けた岡田監督。
そして出場機会のない中で、しっかりと準備をしていた狩野の日々の姿勢。
語り草となった『金本談話』以降の走塁改革。その全てがあいまってこの一点をうんだ。

みんなで取った一点だ。

下柳先輩は3回3失点。よくぞ踏ん張ったと讃えたい。
相手打線とここ最近の調子、さらに井川が抜けてマークされている度合いを考慮すれば、この内容は6回2失点に十分匹敵すると思う。

ナイスピッチング!とは言いにくいけど、だけどナイスピッチングと小さく言いたい。


4回裏

ジャイアンツ戦において大変なのは当然攻撃よりも守備だ。
どうやって失点を最小限に食い止めるか。
よく「守備から攻撃のリズム」みたいなことを言うが、この試合に関しては逆。
「攻撃から守備へのリズム」を作って、なんとか守りたい、そんな試合になっていた。

関本と狩野が作ったリズムにダーウィンが呼応する。

先頭は8番木村拓。

8番から始まるイニングは是が非でも先頭をアウトにしたい。
9番が送りバントをできるか、流れのまま2アウト目の打者になるか、この差は試合を決めかねない大きさになる。

内容はどちらでもよい。
ダーウィン、とにかく木村拓を打ちとって1アウト。
流れのまま、高橋尚が三振。
そして、怖い怖いヨシノブを2アウトランナーなしで迎えることに成功し、最後はアウトローへズバッと速球。見送り三振。

三者凡退。
勝てるかもしれない、初めてそう思った。


5回表

攻撃から守備へ、そして守備から攻撃へ。
いいリズムを重ねてゆく。

先頭の浜中がのん気に振って内野安打。ここに来て「ラッキーボーイ」の雰囲気。
そんなキャラクターだったっけ?笑
三遊間に飛んだゴロ。ショートの二岡が深い位置で取ってテンションが低いまま送球。
送球は確実だが、テンションが低いぶんセーフだった。
ノーアウト一塁だけどここはバントなし。
高橋尚にとって一番対峙しにくい「ノビノビ野球」。シーツも(この時は)ノビノビ。ナイスバッティングの二塁打。

緊張感が先行するビッグゲームにおいて、
この「ノビノビ感」は、フッと息をついて肩の力をぬくためにいい効果をもたらしたのではないだろうか。

ノーアウト2塁3塁。勝ち越すのに絶好の場面でアニキ。
カウント0−2から、際どいコースの球にストライクの判定。
ニコッと笑ったアニキ。ベンチでは岡田監督も笑っていた。
レフトスタンドでは「わっしょいわっしょい」のお祭りの中、その笑顔とわっしょいがいいバランスで融合し、
高橋尚を「いけるかも」と思わせることなく、最後のボールへと誘った。

ど真ん中のスライダー。強振したアニキの打球はあっという間にライトフェンスに衝突した。

2点勝ち越し。本当に強い、そう思った。

そして、極度のスランプの兆候を見せる桜井に岡田監督は思い切って代打、葛城をコールする。
もうこうなったら絶対に久保田と球児を休ませる、そう決めたのだと思った。
普段のゲームならここで桜井が打てなくてもいい、打席に立って感じる中で復調していくことが理想。
岡田監督はずっとそうやって来た。そうやって桧山は復調したんだ。
シーツだって今岡だって矢野だって鳥谷だって赤星だって浜中だってそうだった。

この試合をふつうにものにすることだけを考えればきっとそのまま桜井を出していたと思う。
だけど大差で勝つためには、ピッチャーが代わって最初の打者。
その打者こそ鍵だった。確率で考えれば昨日も試合を決めるホームランを打ってる葛城。

今日はもう絶対に大差で勝つ。大差で勝って久保田と球児を休ませる。
可能性があるとすれば今しかない。
「何が何でも」
それがこの場面の「代打、葛城」なのだと感じた。

しかし、高橋尚に代わって登板した福田がそれを封じる。
二軍落ちから再登録されての気持ちの入ったナイスピッチング。

大差で勝とうとしにいくことは、当然力みが産まれこの試合の勝率そのものは下げると思う。
だけどそれは関係ない。大差で勝ちにいくことが必要なイニングだった。紙一重で福田が好投。

勢いで飲みこみにいった岡田采配に対して、底力で封じたジャイアンツ。

素晴らしい攻防だった。


5回裏

「大差で勝ちにいく」というギャンブルを失敗したタイガース。
サッカーで言うとリスクを犯して両サイドが上がっていって攻撃をしかけたような場面。
しかしディフェンスの福田にボールを奪われた。

カウンター攻撃に入ったジャイアンツ。

先頭の矢野謙が2ナッシングに追い込まれるも、ユニフォームに掠ったデッドボールで出塁。
いい選手だなぁ。

ディフェンシブハーフの矢野謙がボールを繋ぐ。

小笠原が粘り勝ちのフォアボール。

トップ下がフォアードへいいパス。
しかしこの試合消極的なプレーが目立つ大型フォアード、イスンヨプがシュートを放つも決められない。
ゴールキーパーがシュートを弾く。しかし、こぼれ球を二岡が押し込んでゴール。

そんな攻撃で一点差だった。

1アウト2塁3塁で阿部。

ここでビッグプレーが飛び出す。真ん中高目のストレートを強振した阿部の打球は、強いゴロとなって人工芝のグラウンドで前進守備をとるファーストの葛城の右横を襲った。
ダイビングでそれに反応する葛城。
ミットに当てるも弾いてしまう。
しかし、弾いて方向が変わった打球に、同じくダイビングでその打球に反応していた関本が反応。捕って立ち上がってファーストをアウト。

一二塁間を抜かれていれば逆転されていた場面。
抜かれなかっただけでなくアウトまで増やした。

ギャンブルを失敗した後、同点で止めたタイガースの守り。
凄いゲームだ。


6回表

福田が好投を続ける。
代打藤本、鳥谷、浜中を三者凡退。

攻撃終了時点で、2番浜中のところに渡辺を入れる。
久保田、球児を休ませる可能性をまだ見ていると感じた。


6回裏

ピッチャーは渡辺。
先頭の脇谷のフラフラとしたフライをアニキがファインプレー。
「何が何でも」やっぱり引っ張っていたのはこの人なんだろう。

代打の大道もライトフライ。また2アウトランナーなしで高橋由にまわる。
第二戦で梨田さんが「1番の谷が孤立してるように見える」といったのが的を得ていると感じた。
この日もそう。8番が出塁できないと、1番の高橋由が活きない。
そしてホームラン警戒の四球。

2番矢野謙。追い込まれてからしっかり振って粘ってこられたが、最後は力勝負でファーストファールフライ。

渡辺、ナイスピッチング。


7回表

先頭のシーツ。
バットが折れてサードゴロ。この後の件については、とてもイヤな気持ちになった。
なんでこのゲームでこんなことが起きるのか分からない。
「ボンヤリしてて、内側を走ってただけ」と思いたいけど・・・

もしわざとで「メジャーでは当然のプレー」だとか言うならば、残念だけど帰国してもらったほうがいい。
「ダサい」が分からない者は、日本の野球には必要ない。自分がファースト守ってるときにいっつも気にしてることだし。
それを相手の選手にやってしまうことの「ダサさ」。一番かっこ悪い行為だ。

ボンヤリしてただけなら、もっときちんと謝る。それがこの国で当然のことだ。
シーツの悪いところを出さず、なるべくいい部分が出るような使い方をみんなでしてきただけにね、凄く残念だった。

それにしても原監督の形相は凄かった。岡田監督の「天然」の物言いが癇に障ったのだろうけど。
あんなにも重厚なストレスを抱えて毎日を過ごしてるのかと、少なからず心配になる表情だった。
とにもかくにもその後の展開で「報復」が行われなくて本当に良かった。
原監督の最もかっこいい部分だと思う。そしてスンヨプが大事に至らなくて本当に良かった。

(追記:この件に関しては、球団の代表レベルの謝罪で社会的な解決を見た模様。もう、いろいろ考えたくないし、アンディしっかりな!)


どこか釈然としない中で、しかしゲームは進行する。


西村が疲れていた。
もう、あれだけフル回転できたのだ。それも仕方ないだろう。
アニキはなんとか打ち取るものの、葛城には制球が定まらず四球。
6番に入った赤星にインコースの速球をライト線へ。

前日、非常にスイングが鈍っていた赤星。いつもよりも3時間長いだけの休憩だったが、それでも随分違うものなのだろうか。
確かに西村の球にも力がなくなっていたが、よく打った。さらに一塁から一気にホームを狙うつもりでいつでも走る阪神の選手。
葛城も大きく三塁をオーバーランするが、ここは吉竹コーチのナイス判断で、ストップ。

ベンチで岡田監督、もう喜んでいた。
切り替えてるとかそういうのじゃない。チャンスが広がって嬉しいから喜んでいる。
極端に素直なのだと思う。
原監督、羨ましいだろうなぁ。「極端に素直」はやろうと思ってやれるものでもないし。

そして、矢野が打つ。
インローのストレート。通常の西村の速球であれば、あんな打球は打てなかっただろう当たり。
超前進守備のレフトの横を左中間にゴロで抜けていく。
二塁から生還した赤星と本塁上で待っていた赤星が手を合わせる姿が「チーム」だった。
セカンド塁上で矢野、ガッツポーズ。

2点リードになった。


7回裏。

2点リードで江草。
このままリードを保ち、8回に追加点をとって久保田、球児を休ませたい。

小笠原はファーストゴロ。
しかしスンヨプをフォアボールで歩かす。


二岡。
初戦でも8回に同点ホームランを打ったのが二岡だった。
二岡はだいたいいつでも自分の力を発揮できるのだろう。
序盤で下柳先輩相手に見せたホームランスイング。
これがいい角度にボールと衝突し、右中間へ。

またホームランで同点になった。
点を取ったら、取り返す。今のジャイアンツ、本当に強い。


8回表。
投手は豊田。代打、桧山からの攻撃。

豊田のフォークボールが素晴らしかった。
豊田の手元を離れた時は、打者の肩辺りの高さ。
それがホームベース近くでワンバウンドしようかというところまで落ちる。
それと低目に制球されたストレート。交互に投げられたら三球三振でもちっともおかしくないボールだった。
しかし、桧山がなかなかアウトにならない。
ピッチャーがあれだけの球を投げるのにバッターが粘れることを見ている人もやっている豊田も桧山も
当たり前と感じているように見えた。

最後は、再び物凄い落差のフォークボールを桧山が辛うじて当てるもののセカンドフライ。
いい勝負だった。

さすがにシーツでは豊田が上回る。
一球もバットに当てられず、注文どおりフォークボールで空振り三振。
あれをファールにしていた桧山がいかに凄いかということを思い知る。

豊田vsアニキ
ジャイアンツサイドから見れば、当然ホームランだけは打たれてはならない場面。
だけども外の変化球一辺倒でレフト前にコツンというのも困る。
ランナーが出ただけで「わっしょいわっしょい」東京ドームが甲子園へ変貌する様を前々日とこの試合で痛感している。
逃げ腰になった瞬間に得点が入る試合。攻めなければならない。

初球インサイドへフォークボール、空振り。
そして二球目だった。
もう一球インコースへストレートをボール球で。
投げミスをすればライトスタンドへ猛アーチもあるボール。あそこに投げれたことで勝負あり。
その軌道からまたストンと落とす。
バットには当てるもののアニキの打球は力なくスンヨプの前へ。

豊田、完璧な内容でタイガースの勢いを一旦止めた。


8回裏

同点の8回で橋本。
何が何でも休ませる。監督はまだそう考えていたのだろうと思う。

先頭は途中から守備で入った調子の悪い谷。
落ちるボールの制球が定まらない中ショートゴロでワンアウト。

ここまで何とか7点で抑えている背景には、
やはり高橋由の前にランナーを出していない。しかも先頭バッターでもない。
というところが大きかったと思う。

1アウトランナーなしで高橋由。
1ストライク、2ストライクを続けて非常に角度のあるストレート。
素晴らしいボールだった。
その残像がある中、落ちるボールで打ち取りたかったが、いまいちいいコースに決まらない。
余裕を持って見切られて四球。

1アウト1塁で矢野謙。
1点取れば、9回は上原がいる。当然バントの場面。矢野謙この場面で萎縮。バントは小フライに。
キャッチャーの右横にフラッと上がった高さのないフライ。矢野輝が瞬時に反応してダイビング。
ファインプレーで進塁を阻止した。

2アウト1塁になって小笠原。
タイガースに流れが来ているようでいて、橋本にはまだ余裕がない。
一軍に再登録されてからほとんど投げていないのだ無理もない。
そこへ来て、ビッグゲームの同点で8回。対峙するのが小笠原。
だけど頑張れ、なんでもいいから抑えてくれ橋本。
初球はストレート。
ここで小笠原が非常にイヤな空振りをした。

ほとんど対戦したことがないであろう小笠原。
高橋由に対する攻め方を見て、短い時間で対策を練る。ストレートに角度がある。
思っているより低い場所を振ってみよう。この辺かな?と決めてブンッ。
非常に余裕があった。
そして次の変化球をヒットにされる。
「さすが」を感じた打席。ジリジリとジャイアンツが実力による圧力をかけてくる。

2アウト1塁2塁でイスンヨプ。
この試合四番に入ってどこか消極性が出ていたイスンヨプ。
その消極性を矢野が見事に見切って攻める、三球目まで徹底してインサイドに中腰。
その後は、いいコースに来てくれるだろうと信じて全球落ちる球。
決してコントロールされたボールではなかったが、矢野と橋本の気持ちの強さが、
スンヨプの腰を浮かせた。
鳥谷の後方へ力のないフライ。

ここでの1点が勝負を分ける場面。
病み上がりの橋本を矢野が引っ張りに引っ張って気力で防いだ。


9回表

ジャイアンツがチャンスで勝ち越せなかった直後。
前の試合で決勝打の葛城、前の打席でライト戦に強い打球を打っている赤星。
さらにタイムリーを打ち試合終盤好守の光る矢野というタイガースとしては非常に期待の持てるこの回。

8回を完璧な内容で凌いだ豊田は、9回、一球も投げミスをしなかった。
その集中力と、集中を投球へと変えられる技術は圧巻。
葛城は当てるだけで精一杯のショートゴロ。
赤星はストレートを強く振りにいって豊田を威圧するも、
2ストライクからファールを打つことにかけては日本一うまい赤星が連続の空振りで三振。
乗っている矢野もバットに当たらない。

ジャイアンツに来て苦労もした百戦錬磨のパリーグを代表するストッパーは、このゲームしぶい光を強く放った。あんなピッチングしたら誰も打てない。


9回裏

橋本がふつうに投げれていれば続投だったと思うが、やはり苦しかった。
ここまで、久保田と球児を休ませることをずっと念頭においてやってきた。
それはこの後の9連戦が二回続く日程を見越してのことだったと思う。
7−7の同点で9回まで来て、もう一度考えてみる。
ここで勝とうとしない方が、むしろ良くない。
苦渋の選択だっただろうが、勝ちにいくには久保田しかいない。

頼んだ久保田。偉いよ久保田。

9回に投げるのは久し振りの久保田。
しかも東京ドーム。相手がいきなり二岡。

2年前、タイガースのストッパーは久保田だった。
東京ドームで二岡に、連日のサヨナラホームランを打たれた試合があったっけ。
しかも大連投の中この巨人打線との対戦で相当疲れているように見えた久保田。
二岡をフォークボールでショートゴロ。
なんでもいい。本当によく抑えた。

続く阿部はホームラン警戒でフォアボール。仕方ない。

1アウト1塁で古城。
1点取ればもちろんサヨナラ。当然送りバントに来るジャイアンツ。
いつもの球威がない中、明らかにストライクのコースをボールと判定されてさらに苦しくなる久保田。
カウント0−2。
ここで原監督が古城を呼び寄せ長い耳打ち。
もう全てを口頭で確認しておこうということだろう。曖昧なまま策を取ることを避けた。
全てを明らかにして古城を打席に立たせる。さすがにあんなにもひどい状態だったジャイアンツをここまで持ってきた名監督だ。
2ストライクとなってスリーバント、これを古城が見事に決める。
ベンチに帰ってきた古城を讃えるジャイアンツベンチ。
あの頃こんなシーンを東京ドームで見ることはなかった。
ホームランをいっぱい打てるから強いんじゃない。スリーバントを決めた古城を全員で讃えることができるから強いんだ。

2アウト2塁。非常にいい雰囲気で脇谷。
通常の久保田の球威であれば力で抑え込める可能性が高い。しかし、調子ははっきりと悪い。

だけど、本当に気持ちの入ったストレートに脇谷のバットが出てこない。
矢野のミットがズバン!と鳴って、久保田は久し振りの9回を無失点で切り抜けた。
久保田は本当に強くなった。
久保田は本当に強くなったよ。


10回表

その久保田の気持ちを、非常に感じるタイプの関本が先頭。
打順としては非常にいいところから始まった。

ジャイアンツは上原。どうしても落とせないゲーム。
両チーム決め手のないまま12回までいくようなら最後まで上原。そんな心積もりではないかと思った。

矢野謙が目測を誤ったこともあったが、関本の打球がセンターの前に落ちた。
確かに記録にはならないエラーかも知れない。ただ、それ以上にこの日関本がしてきた数々のプレー。
下柳先輩が四苦八苦する中で、その憂鬱を切り裂くレフト前のヒットも、間一髪ジャンピングスローでアウトにしたファインプレーも、逆転を防いだ一二塁間のダイビングキャッチも、
狩野のヒットで追いついた場面。その前にツーアウトランナーなしから際どい球を選びに選んで出塁した気持ちも、
ボテボテの三塁ゴロで一塁にヘッドスライディングしたのも、
全部あったから、ヒットになったのだと思った。

この試合のMVP、勝っても負けても絶対に関本だ。

ノーアウト1塁で藤本。もちろんバント。
一度失敗するも、しっかり決めて関本を2塁へ。ナイスバントだった。

鳥谷はこの三連戦、一回り大きくなったのではないだろうか。
それまでの四球。上原、渾身の投球に明らかに圧されていた。
確かに上原も疲れている。この三連戦の前、ナゴヤドームでも延長戦だった。
そこでも2イニング力投していた上原。
だけどこの場面、そういうものを超えた戦いだった。強く気持ちを持てたほうが勝つ。
追い込むまでは上原が勝っていた。しかし、追い込まれてからの鳥谷、凄まじい集中力で上原と対峙する。

真ん中高目のストレート。
うまく打とう、きれいに打とうとして打てる球ではなかった。
強い気持ちをバットに乗せて、心と体全部を使って振り切らなきゃ前には飛ばなかったはず。

鳥谷は、振り切った。

強いライナーがセカンドの頭を越え、前進守備の外野手の間を抜けていった。
三塁まで達した鳥谷が見せた強い表情。感情をそのまま表現して振り切ることの強さを実感している表情だった。

1アウト三塁で藤原。

藤原と言えば、ナゴヤドームでの連続エラーが語り草。
今思えば、岡田監督があそこで藤原をファーストに入れたのは、
葛城と藤原でファーストの併用を考えていたからではないかとも思う。
報道等で知らされていなかったが、林クンの状態は当時から相当悪かったはずで、代役についても考えながらゲームを進めていたのではなかっただろうか。

結果的にみっちゃんが一気にチャンスをものにしてファーストの一人におさまった。
だけど藤原だって、その可能性が十分にあった選手だ。
守備もどこでも守る。代走もある。代打でバントもある。
なんでもやってきた藤原の珍しく「打て」の場面。

岡田采配の素晴らしい点は、こういうところで絶対「スクイズ」の予感をさせないところだ。
相手チームにはされてもいいけど、自分のチームには絶対させない。
「ええからしっかり振って来い」
2ストライクまではまったく打てる感じのない空振りだった。
だけど、3球ストライクを取るというのは本当に難しいのだ。
策によって一球見送ったりがなく、「迷いなく三球振る」をしてくる打者は誰だって打つ可能性が上がる。

藤原の気持ちもまた、あの上原を凌駕した。

高校野球みたいなヒット。アウトコース高目の見送ればボールのストレート。
文字通り「くらいついっていった」藤原の打球は、ライトの前に落ちた。

ナゴヤドームでの出来事はもうみんな忘れたよ。
「藤原」を形容する冠はこれから、「あの上原を打った男」だ。
おめでとう。

延長に入り、上原から2点をもぎ取った。
さぁ、球児。


10回裏

球児が打たれる可能性がある球があるとすれば、それは高目を狙ったストレートがベルト付近にいってしまったボール。
人差し指と中指で強烈にスピンをかけ球を浮かしにいっている高いストレート。
それが低くいくということは、少しだけ指にひっかかり過ぎて、スピンがかかりきっていないということ。
球速は同じでも球道が、「ふつうの速球」になる。
その球でももちろん凄いのだけど、
そもそも球児のストレートに合わせてボールを上から見て打とうと準備している打者が振ったバットとその球が衝突しやすい。
初戦で矢野謙が打ったレフトへのヒットはまさにそのボールだった。

先頭は代打の清水。ジャイアンツ打線の中で最もストレートを打つことがうまい打者。
しかも大型補強期間中、不遇の扱いを受けてきた一番の被害者だ。
「ここ一番で」とてもイヤなバッターだった。
初戦は桧山が、二戦目は葛城が決めた。苦労してきた選手が怖かった。

高目を狙ったストレートが高目にいかない、
清水がその球を逃さずジャストミートでセンターへ運んだ。

疲れていないわけがない。
いつもの球が投げられない中、ランナーのいる場面で高橋由にまわった。
その初球。
また高目を狙った球がベルト付近へ。
それをヨシノブが強振。鋭いファールが一塁線を襲う。

球児がファールされるとき、そのほとんどは振り遅れて左打者なら三塁のファールスタンドに入っていくファールだ。
一塁線に火の出るような当たりでファールされたシーンはほとんど見たことがない。

なりふり構わず、もう、フォークボールだった。
絶対に勝ちたい。絶対に勝ちたい。
全力投球のストレートが万が一真ん中のベルト付近へ行ってしまった時、ホームランの可能性は十分にあった。
変化球ならホームランを打たれない。だから変化球。
自らを研ぎ澄まし、切なく思えるほど真摯な姿勢で球児は「勝利」へ向かおうとしていた。
高橋由をフォークボールで三振。

続く矢野謙の打席でワイルドピッチでランナーをセカンドに進めるもフォークボールで三振。

2アウトになった。

2アウトランナー2塁で小笠原。
小笠原とは、なんと勇敢な打者だろうか。

確かに球児は変化球主体の投球をしていた。
しかし、初球から変化球のタイミングで待つことは即ちストレートで打ち取られる可能性を意味する。
そしてその瞬間ゲームセットなのだ。
初球は変化球に合わせて、それ以降ストレートのタイミングで、そんなことで対応できるボールではない。
重々承知の上で、小笠原は勇敢がギャンブルを仕掛け、それに勝利した。

初球の外に抜けたフォークボール。レフト前へ。
変化球だけを打ちにいった打球だった。
一点差。

2アウト1塁。代走に鈴木尚。
盗塁は関係ない。バッターを抑えるだけ。
球児も矢野もそういう姿勢だった。

極度の集中が長い間合いとなって、スンヨプがそれを嫌った。
審判がタイムをかけ、投球動作に入りかけた球児がボールをフェンスに投げつける。

それほどに、それほどに集中しているのだ。
あんなにも優しくて泣き虫な球児が怒っている。勝ちたいから。勝ちたいからだ。

解説の中畑は球児を讃える形容としてこんなことを言っていた。
「コンスタントにこの速さのボールを投げ続けることが凄い。マシンのようだ」

違うぞ中畑。球児が凄いのはそんなところじゃない。
ゲームの最後にチームメイト全員の気持ちを真正面から背負って、それをボールに乗せる150キロだからだ。
マシンにそんなことできないよ。

下柳先輩が悔しくてかんだ唇も、矢野がダイビングで捕球したキャッチャーフライも、関本の数々のファインプレーも、久保田の心で投げたストレートも、橋本がなんとか無失点で切り抜けた時の安堵の表情も、浜中のホームランも、シーツのタイムリーも、
代打を出された桜井の気持ちも、
あの場面で持った鳥谷の思いを、藤原の思いを、
休む予定だっただろうが出場すれば、会心の当たりでチャンスを広げ、ホームに帰ってきて葛城と手を合わせた赤星の表情を、
どんなにつらくともチームを引っ張り続けるアニキの姿を、
全部引き受ける勇気があるから球児は打たれない。

球児はこの場面では絶対に打たれない。

最後のバッターは二岡で、最後はやっぱりストレートだった。
外のボール球、思わず手が出た二岡。必死に止めにかかるも回ってしまう。


マウンドで球児が下から拳を突き上げ、
大激戦は幕を閉じた。

天王山の東京ドーム。三戦三勝。

もしも全てのゲームが逆の結果になっていたとしても、ぼくは満足していたように思う。
原監督がジャイアンツに帰ってきて、本当に野球が面白くなった。
その強いジャイアンツと九月にこんなゲームを三試合も。しかも首位攻防戦。

それだけで幸せだった。

これが野球。これがプロ野球。
季節が移り変わろうとする頃に訪れたこの三日間。
ぼくはこの三日間を、絶対に忘れない。


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posted by コーチ at 13:10| Comment(8) | TrackBack(1) | □ 藤川 球児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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