コーチ 「先生、何やってるんですか?」
先生 「岩田稔くん! はい!!」
コーチ 「先生」
先生 「・・・」
コーチ 「先生、返事してくださいよ!」
先生 「・・・」
コーチ 「先生!!」
先生 「はい!!(右手をまっすぐ上に挙げる)」
コーチ 「今日はいったい何やってるんですか?」
先生 「これが、岩田にとってこれから最も大事になるやろうと思うことをやってるんや」
コーチ 「何のことですか?」
先生 「コーチ、小学校1年生の頃思い出してみ」
コーチ 「え、ええ」
先生 「担任の先生が、出欠取るんで、クラスのみんなの名前呼ぶんや」
コーチ 「はい」
先生 「コーチ、その時、返事するだけやのに、一生懸命声出して『はい!!』って返事してなかったか?」
コーチ 「してたと、思います。ええ」
先生 「さらに言うと、『はい!!』って返事することだけに精一杯やったやろ?」
コーチ 「そうですね」
先生 「こない返事したら、だれだれ君がどう思うから、先生がこう思うからとか、そんなこと考えながら『はい!!』ってなんて言ってなかったと思うねん」
コーチ 「そらまぁ、一年生ですからね」
先生 「岩田に必要なのはそういうことや」
コーチ 「何がいいたいか、おぼろげに見えてきましたよ」
先生 「あれやねん。岩田は、いっぺんにいろいろ考えすぎる癖がついているような気がする」
コーチ 「なるほど」
先生 「二回のバント失敗した場面でもな」
コーチ 「えぇ」
先生 「バスターのサインは出てなかったと思うねや」
コーチ 「正田コーチも出てなかったって後でコメントしてましたわ。自分の判断やったんかなぁ、って困ってたらしいです」
先生 「もちろん、相手野手の守備位置見て、自分からバスターに切り替えることは悪いことではない。でも、それはな、『岩田君、バントな!』『はい!!』って、自然な流れで返事ができること前提や、あえてわかりやすいように言うと『お返事』できること前提なんや」
コーチ 「分かりますわ。『はい!バント決めれるように頑張ります!!』ってしっかり思う場所と違う場所で、『ここは野手の守備位置を冷静に分析して、確率が高ければバスターを選択』っていうのが出てきてしまって、そっちが勝ってしまってるって感じですよね」
先生 「せやねん。しっかり『お返事』できてないねん。ふざけてるわけやないで、むっちゃ大事な話や」
コーチ 「分かります」
先生 「まずは『お返事』するところから始めなあかん。じゃないと岩田は絶対肩か肘いわして、投げられへんんくなる」
コーチ 「他人とのコミュニケーションの中でしっかり『はい!!』と言えない状態は即ち、自分の脳のある場所から発せられるメッセージにも『はい!!』と言えないことと同義ですもんね」
先生 「焦ることはないから、時間かけてゆっくり作っていったらいいと思ったな。投げるボールは素晴らしいボールいっぱいあるねんから」
コーチ 「そうですね」
先生 「いい結果を出すために、必要な自分を出すのではないねん」
コーチ 「はい」
先生 「自分がやったことがうまくいった場合に結果的にいい結果になるのがほんまやと思う」
コーチ 「ですね」
先生 「そのためにまず、久保コーチや矢野が言うことに『はい!!』って『お返事』できることから」
コーチ 「難しい人にとっては、とてもつもなく難しいことなんでしょうけどね」
先生 「コーチも昔、そうやったもんな」
コーチ 「お恥ずかしい話ですが」
先生 「『はい!!』って言えるようになってから、コーチ随分成長した」
コーチ 「ありがとうございます」
先生 「目が優しくなったよ」
コーチ 「そうですねぇ。それは自分でも思います。ほんでね、分かったことはね」
先生 「うん」
コーチ 「『素直で一生懸命』がいかに大事か、ってことでした」
先生 「一生懸命は一生懸命やったけどな」
コーチ 「『素直』が難しかったんですよ」
先生 「人それぞれ、いろいろあるもんな」
コーチ 「そうですね。。。」
先生 「ほんで、岩田が決して素直じゃない、って言ってるわけではないんよな」
コーチ 「もちろんです」
先生 「無意識にかかってしまってる、他者との間のフィルターとか、薄いカーテンみたいなもんありきで物事を考えてるように見える」
コーチ 「それを全部取っ払ってほしい」
先生 「問題は一人で解決しなくていい」
コーチ 「ほんまに、そう思います」
先生 「岩田は、たとえば全盛期の中日の野口やとか、ヤクルトの藤井みたいな、そんな投手になれる可能性が十分にあると思う」
コーチ 「そうですね」
先生 「そのために『素直で一生懸命』は絶対に欠かせないことや」
コーチ 「野口や藤井になる以前に、ケガがほんまに心配ですから」
先生 「今のプロ野球界でな、ミスター素直で一生懸命はな」
コーチ 「はい」
先生 「楽天のマー君やと思う」
コーチ 「そうですねぇ。ぼくも彼やと思います」
先生 「そらあんだけ投げ続けてたら分からんけど、彼はケガしにくいような気がなんとなくするんは」
コーチ 「『素直で一生懸命』を既に獲得してるからなんですよね」
先生 「ほんで、マー君すでに8勝もしてる。決して強くはないチームでや」
コーチ 「ルーキートップの数字です」
先生 「初登板のソフトバンク戦でボコ打ちされたけど、しっかり正しく成長を続けてる原因こそ『素直で一生懸命』やと思う」
コーチ 「確かに、でその後ソフトバンク戦でプロ初勝利を上げるんですもんね」
先生 「松中、小久保、多村、って超一流相手にバッタバッタ三振とっての初勝利やった」
コーチ 「マー君はよう、松坂と比較されますけどね」
先生 「うん」
コーチ 「松坂大輔ってやっぱり、全てにおいて別格やと思うんですよ」
先生 「せやな」
コーチ 「でも、マー君、松坂の数字からそれほど遠くない場所をずっとキープしてるんですよね」
先生 「してる」
コーチ 「次元の違う松坂との距離を埋めてるのは、やっぱり『素直で一生懸命の力』っていうか、そういうもんやと思うんです」
先生 「タイガースで見てもな先発と抑えの両エース」
コーチ 「下柳先輩と球児ですね」
先生 「もう、久保田もジェフもなんやったらアニキもレッドもバードもみんなそうや」
コーチ 「はい」
先生 「みんな『素直で一生懸命』の中でプレーすることが当然になってる人ばっかりなんや」
コーチ 「ですよね」
先生 「ケガも病気も患って、今まで他の人には分からん苦労をたくさんたくさんしてきたんやろうと思う。で、その中で、プロ野球のドラフト一位で指名されるような選手になるために、それはもう想像を絶する努力を重ねてきたことやろう。『素直で一生懸命』ではやってられんかったこともいっぱいあるかも知れん。だけど、ここから一流になるためには『素直で一生懸命』は絶対に通っていくべき道やと思うんや。岩田はそれが他の選手に比べても難しい道のりのような気が昨日のピッチングを見てて思ったんや。おせっかいやろうけど心配
させてくれないか。あなたが頑張っていることはとてもよく分かるから。あなたがストイックに自分を追い込みすぎることで、投げることができなくなってしまうことがあったとしたら、そんなに悲しいことはない。『痛い』時には『痛い』と分かり、『勝ちたい』と思ったときに、仲間が笑ってる。そんな野球をしてほしい」
コーチ 「ぼくたちは、岩田稔を応援し続けます」
先生 「初勝利の夜は、みんなで泣きましょう」
コーチ 「『素直』に泣けたら、また一つ強くなれる」
先生 「岩田くん! 『はい!!』」
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ほんと、素直で一生懸命って大事。
マー君だけでなく、他の若い投手が怪我無く夏を乗り切ってほしいものです。
あ、おっさんもですよ、はい。
>おりがみさん
お久し振りです!
覚えてくれててありがとうございます◎
保育の仕事されてるんでしたよね。
「お返事」難しいと思います。
子どもたちもそれぞれにいろんな境遇で育ってきてるでしょうから、「幼児期」といえども「素直」を持ち合わせているとは限りませんもんね。幼児期なればこそ、それは全く本人の責任ではありませんし。。
だけど、人生においてどこかの出会いが「素直」に導いてくれることがあるから、「素直」はまだまだこんな社会の中にもしっかり息づいているんじゃないかな、って思ったりします。「素直」はしんどいことも多いけど、だけど「本当」なんだ、ってみんながそう思える社会がいいですよね。
今後とも宜しくお願いいたします◎