2007年08月03日

『四番』の継承

桜井は、着々と『四番』へと進んでいるように見える。

三安打の鳥谷、二本のタイムリーヒットを打った赤星と比べると、
それほど目立った活躍ではなかったかもしれない。
しかし桜井は、確かに『四番打者』特有の何かを身につけつつあると思う。

二回、第一打席。

格の違いでフォアボールを選んだアニキの後、林クンがファーストゴロ。辛うじてダブルプレーにならず、林クンが一塁に残って桜井の打席。

スワローズバッテリーが、桜井に対して全力でインコースを攻めてくる。これは「今年から一軍の打者」にする配球ではない。四番打者を討ち取るための渾身の配球。
すでにそういう打者になっているのだと、ぼくは思った。
推測だが、ミーティングでも「桜井対策」にはかなりの時間が割かれているのではないだろうか。
だとすれば、古田の太鼓判。
「金本の次に警戒すべきは六番桜井」

警戒された中での桜井。
スワローズの松岡が、「打ってもファールにしかならない場所」に見事にコントロールしたキレの良いストレートだった。キャッチャー福川の要求どおり、松岡としても納得のいくボールではなかったか。

それを桜井は、ファールにするものの、三塁のアルプススタンドの方へ強烈なライナーを打ち込む。あれは『四番のファール』だ。
「コースを間違えば、完璧な打たれ方をする」
スワローズバッテリーに恐怖心を植え付けた、凄い当たりのファールだった。

「コースを間違えなければ打たれない」と「コースを間違えば打たれてしまうかも知れない」この差。

結果、この打席は三振に倒れるが、
桜井には『相手投手を飲み込む風格』というまさしく『四番の片鱗』を感じる打席だった。

当然『真の四番、金本』は、こういった局面では度々フォアボールを選んで出塁している。何度となくそんなシーンを見てきた。アニキまでの道のりはそれはもちろん果てしない。しかし、到達することは不可能とも思える『金本知憲』という場所に桜井は一歩ずつ向かっていっているように見えるのだ。

金本知憲の『四番性』は、唯一無二のものだと思う。
リアルタイムで見ていないので、伝え聞いた話だけども、
長嶋茂雄が不世出のスーパースターであったように、
現在ぼくたちが目の当たりにしている金本知憲もまた、
不世出の四番打者だ。

イチローでも、松井秀喜でも、長嶋茂雄とは比べられなかったように、金本知憲もまた誰とも比べられないような、そんな選手。仮にタイガースにバリー・ボンズがやってきてホームランを60本打ったとしても、タイガースの四番は金本だ。


そんな『金本知憲』という偉大で大きな山を、桜井は正面玄関から堂々と上っていこうとしているように見えるのだ。頂上には『真の四番』が待っている。


四回、第二打席

桜井は左中間に二塁打を放った。
ツーナッシングと追い込まれてからの二塁打だった。四番打者が打つ二塁打だ。

相手投手は引き続き松岡。
第一打席で打たれたファールの残像が強くあったのか、
追い込んでからの投球に躊躇を感じた。
投げる球がなくなったのか。
カウント2−3になって、苦し紛れ投げたスライダーが真ん中に来たところを、桜井はさも当たり前のように左中間へ運んでいった。

この時点では1点リード。2アウトランナーなし。ツーナッシングからの二塁打。得点には繋がらなかったが、こういうヒットが勝利に繋がることもまた事実で。これまで四番一人でやっていた仕事を六番もやり出したのだ。だから勝てる。


第三打席 
六回。すなわち、逆転満塁弾を打たれた直後であり、後に赤星の感動的なタイムリーで再度逆転する六回。
桜井はその先頭打者だった。

追い込まれてから、デッドボール。

「桜井」という名前だけで、相手がひるんでくれたゆえの出塁。
この出塁が、逆転を呼んだ。「桜井」という名前が苦境を切り拓いた象徴的な場面だったと思う。

これもまた四番性の高いとても内容のある打席だった。


第四打席。

すでに2点リードして、久保田が完璧に抑えた七回。
先頭打者は、攻撃の手を緩めない真の四番はライト前ヒットで出塁していた。アニキは本当に凄い。
本日いまいちタイミングの合わない林クンが凡退した後の桜井。
強烈なサードゴロだった。
これもまた四番性の高い凡退。リードの局面で相手を押し込む。
さらにダブルプレーを阻止する走塁。


桜井は『四番』へと向かっているように見える。
もちろん『金本知憲』になろうとする必要はない。
その偉大な山を登ろうとしている過程こそ、『桜井広大』という四番打者が生み出されるためのこれ以上ない鍛錬だと思うから。

広島でカープ戦。序盤にたくさん負けた頃、タイガースのオーダーの中に桜井の名前はなかった。今、タイガースには桜井がいる。チーム全体の調子がいいのももちろんだが、桜井がオーダーに入ってタイガースは基本、強くなっている。

六番にもう一人の発展途上の四番がいるチーム。
そのチームは今、大逆襲の真っ最中だ。


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posted by コーチ at 01:23| Comment(3) | TrackBack(0) | □ 桜井 広大 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは〜
桜井選手は、生まれながらにして何か大きく輝く物を持った人やと思います。
最初彼を見たときは「なんだか若手っぽくない風貌やなぁ〜」などと感じましたが、これはもうすでに彼に大器のオーラがあったからなのかもしれません。
こんな選手がいてくれて、ほんとに阪神はラッキーだなと思います。
だって、こんな選手が相手チームにいたら、嫌で嫌でしょうがないですから。

あとは怪我に気をつけて、自分で決めた道を堂々と歩んで欲しいです!
Posted by gavi at 2007年08月03日 02:05
広大くんは本当に「今年途中から一軍」とはとても思えない風格ですよね。
まだスタメンで出始めて日の浅い彼に
全てを望んではいけない。
でもね、『真の四番』をよき手本として
打撃だけでなく走塁や守備も貪欲に吸収してって欲しい。
正捕手の座を勝ち取るにはまだまだ道程が遠い狩野くんは
常に何かを自分の物にしようと周りを見ているし
いつでも力が出せるようにベンチでも準備してます。
先輩だけでなく、同じ若手でも手本となる選手がたくさんいるって幸せですね。
広大ー もっとおっきくなれー♪
Posted by ちび at 2007年08月03日 14:13
>gaviさん

後半戦に入ってからのタイガースと同様、桜井自身もどこかちぐはぐだったものが音を立てて結実してきたというか、そんな感じがします。特にベンチで座っている時の「ほどよく緊張して」「でもほどよく先輩に頼ってる感じ」一軍ベンチでこれを身につけるその準備のためにこれだけ時間がかかったのかもしれないなぁ、とか思ってます。あのバランスでずっとできるなら、林クンと二人で凄いバッターになりそうな気がします。学ぶべき生きた教材が目の前ですもんね!!


>ちびさん

そうですね。狩野くんは本当に四方にアンテナを伸ばして一軍ベンチを全うしてますよね。ぼくは狩野に正捕手になってほしいです。この間負けたゲームで、桟原と渡辺が投げた時に久し振りにマスク被ってましたよね。あの時の点差のことを本当に考えず、ただ自分ができることを全力でやるって感じが素晴らしかったです。イニングの合間にしっかり打ち合わせとかやってるし。上園ー野口みたいな感じで固定で出れる試合ができるといいなぁ、とか思ったり。長いことファームで一緒にやってきた中村ヤスが理想だけど、ヤスがローテーション入って、その日は狩野。楽しみが増えるんだけどなぁ。まぁ近い将来に取っておきましょう◎
あ、狩野の話ばっかりになってしまった。
桜井もこのままシーズンの最後までレギュラーで出続けて、「優勝メンバー」になってほしいです。そしたら、凄いことになりそう!!
Posted by コーチ at 2007年08月03日 16:29
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