2007年08月03日

「代打、濱中」をめぐる攻防

コーチ 「序盤は、似たような展開で進んだ試合でしたね」
先生  「せやな、正直、3回表はヤバイかなぁと思ったけど」
コーチ 「最近、実はいっつも序盤危ないんですよね」
先生  「せやねん」
コーチ 「昨日、2回を9番まで回すことがむっちゃ大事や、みたいな話したじゃないですか?」
先生  「したした。第二戦二回ウラの関本のダブルプレーが痛かったってってとこやな」
コーチ 「そういう、二回に8番で終わるか9番で終わるかみたいなケースもよくあるんですけど、ピッチャーが良かったり、攻めあぐねたりしてると昨日みたいに、『3回が8番打者から』これも相当多く見られるケースなんですよね」
先生  「昨日は両チームともそうやった」
コーチ 「その時の鉄則は」
先生  「先頭の8番を絶対に出したらあかん。さらにフォアボールはよりあかん」
コーチ 「ここで、ボーグルソンその一番やったらあかんことをしてしまうんですよね」
先生  「結構、簡単に歩かせてもうたもんな」
コーチ 「で、次の松岡の場面で、追い込みながら送りバント決められてしまって」
先生  「青木、田中、ラミレスにまわる」
コーチ 「正直、二点くらいは覚悟しましたよね」
先生  「で、青木を警戒してフォアボール」
コーチ 「第二戦で下柳先輩が大量失点したケースとよく似てましたし」
先生  「さらに、1アウト一塁二塁で田中というところで、カウントが0−2になってまう」
コーチ 「ここで苦し紛れにストライク取りにいったストレートで」
先生  「井端やったら、ボカーンや右中間」
コーチ 「ところが、田中が打ち上げてくれるんですよね。ライトフライ」
先生  「思い出すだけで胃がキリキリする」
コーチ 「抑えたんじゃなくて、相手のミスでツーアウト」
先生  「やけど次がラミレスやし、慎重にと思ったんやろけど」
コーチ 「また、ボールボールで入ってしまって」
先生  「カウント1−3から高目に変化球が外れて」
コーチ 「フォアボールで満塁! 大量失点! って思ったら、ラミレスがそれをファールしてくれました」
先生  「ほんで、2−3からの外角にストレート。これが大きくホームベースから外れて、フォアボール! 大量失点! って思ったらラミレスそれ振ってくれたもんな。空振り三振」
コーチ 「何かよう分からんけどゼロで抑えてしまった」
先生  「野球って面白いのは」
コーチ 「やっぱりこのウラに点が入るんですよね」
先生  「3回ウラ、こちらも8番関本から」
コーチ 「ここでスワローズも簡単に関本を歩かしてくれたんですよね」
先生  「『どうぞ先制してください』対決」
コーチ 「そんな感じでした」
先生  「せっかくもらったチャンス」
コーチ 「タイガースとしては、初球をきっちり送りたかった。そしたら」
先生  「ボギー、バントうまい!!」
コーチ 「きっちり決めました」
先生  「そして続く鳥谷のとこで」
コーチ 「『打ってください』といわんばかりのコースに投げられた球を」
先生  「バード、完璧な右中間」
コーチ 「ほんま完璧でした」
先生  「前の試合でグライシンガー見てたんもあったけど、エース級のピッチャーじゃなかったら、甘い球って来るもんやなぁって思った」
コーチ 「逃さず打った鳥谷も見事でした」
先生  「で、ここで赤星が進塁打打ってしまったことは、他で触れたからスルーして」
コーチ 「問題は、アンディですよね」
先生  「ちょっと、この打席はオレ怒ったで」
コーチ 「珍しいですよね。タイガースの攻撃で困った顔することはあっても先生が怒ることあんまりないですもんね」
先生  「ツーアウト三塁でアンディやろ」
コーチ 「はい」
先生  「アニキまで回そうとせな」
コーチ 「そうですね、チャンスで打ててないのは、『調子が悪かった』だけじゃないことが顕著に出た打席でした」
先生  「別にアウトになったって怒らへんねや。『アニキにつなごう』『センター前に落とそう』って気持ちがあったら、絶対あんなスイングにはならへん」
コーチ 「低目の変化球ブンッって振ってましたもんね」
先生  「あれは、気の緩みや。じゃないとしたら、『アニキまで回す』という気持ちが足りなさすぎる」
コーチ 「カウントもまだ1−1でしたし、見逃せばボールかもというコースのゆるいボール」
先生  「強い気持ちがあったら、あれは見送れるはずや」
コーチ 「ちょっと内容が悪いですよね。鳥谷と関本調子いいですし、鳥谷を3番にして、1番赤星、2番関本、3番鳥谷で、8番に坂か藤本って感じでもいいんやないか、って思ってしまいました」
先生  「打たんでもいいから、『四番に繋ぐ』っていう気持ちを出してほしい」
コーチ 「まぁ、広島行ったら急に打つかも知れないですし、期待しましょ」
先生  「待ってるで、アンディ!!」

コーチ 「で、4回表のテーマはランナーのいる場面で宮本にまわさないこと、でした」
先生  「ガイエル、リグスっていう比較的ラクなバッターをきっちり取れるか」
コーチ 「後で、リグスはホームラン打ちますけど、この時点のボギーの球威やったらラクな打者でしたからね」
先生  「しっかり打ちとって、2アウトランナーなしで宮本をむかえることに成功した」
コーチ 「この三連戦に関しては、宮本は井端級の活躍でしたから」
先生  「で、宮本も打ちとって、勝ったと思った、けどまだ早かった」
コーチ 「早かったですね(笑)」

先生  「4回ウラは、アニキがノースリーから強振でかっこいいレフトフライ」
コーチ 「たまにはアウトになります」
先生  「ほんで林クンも簡単にセカンドゴロで、ちょっと停滞ムードになりかけたところで」
コーチ 「もう一人の四番が左中間へ二塁打」
先生  「矢野が凡退でチェンジなったけど、桜井の二塁打はタイガースに来ているムードを壊さない、っていう意味で非常に大きな一打やったな」
コーチ 「確かに」

先生  「ほんで5回表や」
コーチ 「この回はあれですね、野球における『タブー』が浮き彫りになったイニングでしたね」
先生  「せやな。作戦とはゆえ、わざとアウトになったら試合に負ける」
コーチ 「暑さのせいかピリッとしないボギーが、まず先頭の宮出にライト前に打たれます」
先生  「宮出はええ選手やな」
コーチ 「そうですね。大柄やけどコンパクトに内野の間を狙って打ってきますから」
先生  「関本みたいな選手ってイメージよな」
コーチ 「そうですねぇ」
先生  「6番宮本が、ほぼ井端の状態でプレーしてたやろ?」
コーチ 「はい」
先生  「ほんで7番宮出が関本や。6番井端、7番関本ってむっちゃイヤな並びやもんな」
コーチ 「そら、苦労するわけですよ。今日からジャイアンツ叩いてくれると助かるんですけどね」
先生  「宮本と宮出の『宮宮ブラザーズ』をナメめたら痛い目合うで!」
コーチ 「『宮宮ブラザーズ』て(笑)昭和ネーミングもええとこです」
先生  「でな、その宮出にな」
コーチ 「代走でしたね」
先生  「一点取りにきたんやろけど、宮出を下げてくれたんは終盤のこと考えてもちょっとラクやったよな」
コーチ 「でした」
先生  「で、代走の飯原の盗塁を、矢野が刺した」
コーチ 「あの送球は実に見事でした。取ってから投げるまでがむっちゃ速い。これぞ矢野っていうプレーでしたね」
先生  「古田の目論見をあっさりしりぞけて、これでボギー乗っていけるか、もう少しや頑張れってとこで」
コーチ 「福川にフォアボール」
先生  「1アウト一塁で松岡をそのまま打席送って、送りバントのサインでした」
コーチ 「後でここの采配はどうや、みたいになってましたけど、ここは全然それでOKやろうと思ったんですよ」
先生  「せやな」
コーチ 「松岡続投は、次の回の先頭の関本を抑えるにあたって、松岡以外の投手と比較するとまだ確率が高いという判断やったんでしょう」
先生  「先にそこの話ちょっと続けると、その松岡が、5回の裏先頭の関本にヒットを打たれた」
コーチ 「関本、ナイスバッティングでした」
先生  「で、ボギーがまたきっちり一球で送って」
コーチ 「1アウト二塁で、鳥谷、赤星の場面」
先生  「このタイミングで藤井にスイッチしたんやけど」
コーチ 「ここで代えるんやったら、ノーアウト1塁の場面で飯原を盗塁ささんと、福川に送りバントさして、1アウト二塁で松岡のとこで代打出しとったら良かったんちゃうか、みたいな話ですよね」
先生  「これは、あまりにも結果論過ぎると思う」
コーチ 「そうですね。古田監督は100点狙いに行ったんですよ。飯原が盗塁成功して、福川が送ってランナー三塁で切り札真中、そして青木に繋がっていく感じ」
先生  「ところが、盗塁失敗してもうたもんやから予定が完全に狂って、この回1点取られへんのやったら続投させよう、というのもリリーフ陣考えたらよう分かる」
コーチ 「代打もそんなたくさんいないですから、真中をランナー一塁では使いたくないし」
先生  「で、続投で送りバントやったわけやけど」
コーチ 「これを松岡が失敗してくれるんですよね。スリーバント失敗で三振」
先生  「非常に助かった」
コーチ 「そして『タブー』はここでした」
先生  「非難されるべきポイントがあるとすればここよな」
コーチ 「2アウトランナー1塁。打席に青木、1塁に福川、という場面で単独スチール」
先生  「もちろん、セーフになったら得点圏で青木。アウトになって次の回を青木からはじめれるっていうのは理解できるんやけど」
コーチ 「走者が福川ですから、あんまり足の速さを知ってるわけじゃないけど『俊足』って選手ではないと思うんですよね」
先生  「せやな。タイガースで言うと、シーツ、林クンや矢野とか関本くらいかな」
コーチ 「たぶん。今シーズンも盗塁一つしか記録してないですし、普段ほぼ走らない選手であることは間違いないです」
先生  「こういう場面でアウトになるの覚悟で走っても成立するのは、やっぱタイガースやったら、赤星はまぁ当然として、鳥谷とか藤本、広げても、アニキ、桜井、狩野といったあたりや」
コーチ 「ですね。次のイニングを鳥谷からはじめたいからと言って、一塁ランナーの関本を単独スチールっていうのはやっぱり違う」
先生  「アウトになりにいってるようなもんやからな」
コーチ 「『スリーアウト目』をどうぞってプレゼントしてしまうと」
先生  「どうしても、次の回、相手にチャンスが行く」

コーチ 「ということで、5回のウラに赤星が宮本の横をしぶとく破るタイムリーでした」
先生  「これで、勝ったと思った。だけどまだ早かった」
コーチ 「早かったですね(笑)」

先生  「勝負の6回表や」
コーチ 「ボギーが微妙なとこやったんですよね。まだいけるか、もうあかんのかギリギリの感じで」
先生  「代えるタイミングがむっちゃ難しかった」
コーチ 「どうかなぁ思ったら、やっぱり青木に打たれた」
先生  「コーチのメモ書きに、『交代…』って書いてあったな」
コーチ 「そうですね。明らかに球威が落ちてきてましたから、そのメモ書きしたんはガイエル相手にストライクとれんようになった時でしたけど」
先生  「前日の桟原がむちゃくちゃ良かったから勝ち試合で使ってほしいな、っていうのもあったしな」
コーチ 「まぁ、とりあえず、ちょっと戻って、青木が二塁打で、その後の田中の場面です」
先生  「言いたいことは言っておこ」
コーチ 「はい」
先生  「あれは、誤審や」
コーチ 「だと思いました」
先生  「やけど、良かったんはな」
コーチ 「はい」
先生  「監督が抗議に行った後な、マウンドに行ってボギーに事情を説明してたんや」
コーチ 「あの気配りは良かったですよね」
先生  「言葉の分からん国でのマウンドで、微妙な判定。監督が抗議してくれてるけど、状況がよう分からん」
コーチ 「逆の立場で考えると、もしぼくらがアメリカおって、なんかトラブルに巻き込まれたとき、日本語で事情を説明してもらえるだけでむっちゃ安心しますもんね」
先生  「で、ラミレスは抑えた」
コーチ 「岡田の気配りの功でした」
先生  「これで勝ったと思った。でも、まだ早かった」
コーチ 「スワローズ打線で最もラクなガイエルにストライクが入らない。しかもストライク投げたところを大ファール」
先生  「結局歩かせてもうて」
コーチ 「次のリグスに」
先生  「どーん!!!」
コーチ 「確かに球威がない、甘い球でしたけどホームラン打ったリグスを誉めましょう」
先生  「せやな。スワローズはことごとく負けよう負けようとしてたような試合で、『ここ』というしかない場面で逆転したわけやから」
コーチ 「この三連戦全体通したらリグスは不調で、タイガースとしては少しラクでしたけど、あれで調子に乗ってジャイアンツ戦で打ちまくってもらえたらいいんですけどね」
先生  「リグスも打ち出したらスワローズ打線、マジで怖いしな」
コーチ 「で、満塁ホームランの後は、ボギーがキレ気味で『わー!』ってなりながら抑えてもうた」
先生  「球威が戻ったよな」
コーチ 「まぁ、人間そんなもんなんでしょうね」

先生  「で、決勝点の6回ウラ」
コーチ 「1点ビハインドになって、桜井からでした」
先生  「貫禄のデッドボール」
コーチ 「代わって出てきた遠藤が、『桜井』と『甲子園』に飲まれてました」
先生  「矢野があっさり送りバント決めて」
コーチ 「関本でしたが、ここでも遠藤、ストライクが入らない」
先生  「ストレートのフォアボールで1アウト一塁二塁」
コーチ 「ここからがほんまに見ごたえありましたね」
先生  「『代打、濱中』をめぐる攻防」
コーチ 「9番ボギーのところで、最初は桧山の予定やったんですよね」
先生  「関本が凡退してツーアウト二塁やったら桧山やったんやと思う」
コーチ 「だけど一塁二塁になって、遠藤が予想以上のフラフラ状態」
先生  「できたら遠藤続投がええけど、左が出てきたときに、桧山には代打の代打を出しにくい」
コーチ 「昨日からベンチには日焼けした濱ちゃんスタンバってましたから」
先生  「ヤクルトが石川を出してきたときに代打の代打を出せるように、すまんけど葛城いってくれ、の葛城」
コーチ 「勝負どころでしたから、葛城には悪いと思いましたけど、あそこは『代打、濱中』がほしかった」
先生  「でも、そのまま『代打、濱中』は、右の花田や木田が出てきたときに、どうにもしっくりこない」
コーチ 「スワローズが左投手を持ってきたときに、待ってましたの『代打、濱中』。左を出させるための葛城」
先生  「そのタイミングの『代打、濱中』でこそ、勝負が決まると、どちら側のベンチも思ったんやろな」
コーチ 「スワローズバッテリーvs『非日常的な甲子園』という戦いになりますから」
先生  「それを古田はどうしても嫌った」
コーチ 「ここで投げさせる投手として一番いいピッチャーは石川やけど、濱中が出てくることと、そのまま葛城を天秤にかけて『葛城』を選択しました」
先生  「遠藤に代えて、同じく右の花田が登板」
コーチ 「タイガースは当然、葛城で勝負」
先生  「そして、葛城がな」
コーチ 「無かったはずの打席で」
先生  「打ったんや」
コーチ 「センター前、当たりは良くなかったけど、気持ちの入ったいいヒットでした」
先生  「タイガースは『代打、濱中』をめぐる攻防に」
コーチ 「そのシーンのエキストラだったかもしれない葛城が」
先生  「決着をつけた」
コーチ 「そしてその後」
先生  「真夏のレッドスターが輝いたんや」
コーチ 「決着をつけたのは葛城」
先生  「ナイスバッティング!!!!」

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posted by コーチ at 08:33| Comment(2) | TrackBack(0) | □ 葛城 育郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
テレビのニュースだけ見たらドタバタの幕切れの試合だったかもしれませんが、今季のテーマ「素直で一生懸命」の試合でしたね。
みんな開幕から「素直で一生懸命」だったけど、素直に自分を見つめ過ぎたり、一生懸命過ぎたりして上手くいかない試合が多い前半でしたが、みんなの一生懸命がまとまると勝てちゃうんですよね。
選手の交代を見るたびに、コーチさんの「今岡とアツを守る秀太の守備固め」の記事を思い出します。
試合を見ていて、「ああ、ここはこの選手の気持ちを守ったな」とか「この選手の立場を立てているな」と思う事がありますが、この見方はコーチさんに教えていただきましたよ。
秀太のような役割で結果を出せた「葛城」よかったです。
ヒーローインタビューに立つ事のない、ヒーローが毎試合でるようなゲームが続くといいですね。そういうゲームはきっと見ていて嬉しくなるゲームのように思います。

真っ黒な濱ちゃん。近いうちにセカンドベース上か、ファーストを回ったところでガッツポーズをしてくれるのを楽しみしています。


Posted by ちえ虎 at 2007年08月03日 16:51
>ちえ虎さん

「秀太の守備固め」またまた嬉しいとこ出してきてくれるなぁ。。あれは自分でも好きです(笑)

今岡の147打点は、本当にいろんなことの積み重ねでした。やっぱり今岡は今岡なので、あのシーズンだって不調の期間の方が長かったですもんね。

昨日の葛城のヒットはむっちゃ興奮してみてました(笑) 心の中のいろんな葛藤を集中力に変えて、なんと「変化球に素直にバットを出す」ということで生まれたヒットでしたもん。物凄い達観ですよ。

濱ちゃんを一軍登録するに当たって、抹消緒するの、庄田か葛城か難しいところやったと思うんですけど、葛城が残ったのはおそらく、代打で出てフォアボール選んで塁出てたことが評価されたんだと思います。自分をアピールしたい打席で、フォアザチームの打席を作れる選手は、代えがきかないですもん。

昨日のような活躍ももちろん嬉しいけど、
葛城に一度でいいからお立ち台たってほしいですね。

「今日のヒーローはもちろんこの人、走者一掃の逆転タイムリーを放った葛城選手です!!」

泣く!!笑

Posted by コーチ at 2007年08月03日 17:15
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