2007年08月11日
鳥谷の初球
タイガース2回表の攻撃。
初回に上園がズタズタにされ、2失点。
初顔合わせのベイスターズ、マッドホワイトも好投手であり、それほど調子も悪くない。なんとか1点でも返したいイニングだった。
先頭は5番の林クンから。
理想は林クン桜井のどちらかが出塁して、野口、関本でなんとか1点。ツーアウト二塁で関本の場合は敬遠される可能性が高いのでそれも避けたい。ビハインドで5番からという打順はなかなか得点がしずらいことも確かだった。得点するには長打が必要。しかし長打を狙えばマッドホワイトの術中にはまってしまう。
しかしタイガースはここで3点とって逆転してしまう。
さらに、このイニングの最終打者となったシーツのあたりも不運な併殺打であって、一気にこのイニングで決まってもおかしくないような攻撃を展開したのだった。
まずは、林クンだった。
林クンの打撃の長所は、どの球種でも若いカウントから振りにいける点にある。だから「振ってこないだろうから甘い球でストライクを取れる」というカウントがない。ただ、よく空振りもする。それを見て感じることは、林クンは非常に目がいいのではないか、ということ。ピッチャーの手からボールが離れた瞬間に、ストレートか変化球かおおかた球種を認識できる能力が高いのではないかと思うのだ。コンマ数秒の世界だ。コンマ数秒早く認識できる。
そのことで、林クンは若いカウントの場合。ストレートならストレートが、スライダーならスライダーが甘いコースに来た場合にヒットになるようなタイミングと軌道でバットを出す。ゆえに、それが投手の狙ったコースの球になれば、林クンは空振りをする。
林クンvsマッドホワイト
初球、二球目とスライダーが外に外れた。もちろんボールには手を出
さない。カウント0−2。
バッティングカウントの3球目。アウトコース低目のスライダーだった。林クンこれを空振り。いいコースだったのだ。そして林クンはまた同じことをやり直す。
4球目。外にスライダーが外れてボール。1−3。
5球目。外にストレート際どいコース、ファール。2−3。
6球目。外にスライダーこれも際どいコース。ファール2−3。
そして7球目。この対戦で初めて投じられた甘いコースだった。
真ん中高目のストレート。これを林クンレフト前ヒット。
際どいコースはファールされる。甘く入ると打たれる。
阪神タイガースというチームはとてもしんどいチームだ。
「へヴィだぜ」とマッドホワイトが言ったかどうかは知らないが、
林クンが桜井以降の打者を「打ちやすくした」ことは確かだった。
ノーアウト1塁で桜井。
ここでふと思ったことがあった。桜井は併殺打のイメージがほとんどない。そこそこ足も速いが右の強打者。ノーアウト一塁の場面は相手バッテリーは当然ダブルプレーを狙ってくる。
気になって調べてみた。
桜井広大、今シーズン130打席に立ち、
実に併殺打「0」。
ゼロ? 衝撃的な数字だった。
ダブルプレーにならない男桜井、ノーアウト一塁で、あわやダブルプレーのコースだが二球目を際どくレフト前へと抜いていく。やはり強く振れることがダブルプレーにならない原因なのだろうか。その謎については追って考えていきたいと思った。
林クンが打ちやすくして、桜井が打つ。これ以上ない理想的な攻撃でマッドホワイトを揺さぶるタイガース。さぁ、野口が送って、関本で勝負という場面ができた。得点の可能性が広がる。
打席に野口。ほぼ100%送りバントという場面で、ベイスターズの守備体系は、ファーストの吉村とサードの村田が極端にダッシュしてくるというものだった。この辺を徹底できているからベイスターズは上位争いをしているのだろう。特に吉村は打者の目の前までダッシュをかけてくる。
ベンチの岡田監督はこの重要な局面で、「まさか」と思うようなまるで家のテレビで野球中継を見ているようなフリーな体制からサインを出す。
出されたサインは「バスター」。
しかし、ファール。
一度バスターをやられたことで極端な守備体系が取れなくなったベイスターズ。次の球をきっちり野口がバント。これをマッドホワイトがファーストへ悪送球した。
スワローズ戦で下柳先輩が悪送球をした時も、東京ドームで木佐貫が悪送球した時も、やはりそれは「バントの場面」だけの悪送球ではないのだ。悪送球を呼ぶような攻撃をしていた結果(スワローズ戦はされていた結果)。林クンがマッドホワイトを手中におさめたかのようなヒットで出塁したこと。初対戦の利がどっちに転ぶか分からない場面で林クンがその利をタイガースに手繰り寄せた。
ノーアウト満塁で関本。
関本でどうしても1点取りたかった。外野フライでも、併殺崩れでも、なんならダブルプレーの間に1点でもいい場面。仮に関本が倒れた場合、1アウト満塁で上園。ふつうに考えて打てない。2アウト満塁で浜中。この時、浜中にかかる重圧は大変なものになる。
ダブルプレーで1点でもいい。そして上園で終わって次の回トップから。その方が勝つ確率の高い場面だった。
逆に言えばベイスターズはこの関本を打ち取れば、確実にゲームの主導権を握れる場面。マッドホワイトの投球にも力が入る。
カウント2−1から投じた外のストレート。これは空振りしてもおかしくないほど、力のある球だった。しかし、関本これをファール。ゲーム終盤のような息の詰まる勝負。そして、次の膝元に落ちる速いスライダーを関本、ハーフスイングで空振り三振。
マッドホワイトの完璧な内容だったが、タイガースとしては非常に痛かった。だけど、あの外のストレートを空振りしなかったことが、まだ流れを切らさないことに繋がったのだと思う。
1アウト満塁で上園。
上園の打席もまた、いい打席だった。初球のストレートを強振、空振り。関本が三振でアウトになったことにより、タイガースはチャンスであるがピンチの場面。ベイスターズはピンチでもあるがチャンスの場面。上園の強振が「チャンスであること」を継続させた。
確かに甘い変化球だった。上園がヒットできるとすれば、あのコースの、あの変化球を、ああいった詰まったヒットにするしかなかったと思う。関本に投げた球と同じ球だった。同じコースにいっていれば三振していただろう。しかし、あそこに投げてしまうような攻撃をタイガースは繰り返していたのだと思う。林クンが打ちやすく、桜井が打つ。岡田監督が仕掛けてバントエラーを誘い。関本が最高のウイニングショットを一度こらえて見せ、上園が初球を強振した。好投手マッドホワイト、決して調子が悪かったわけではないと思う。タイガースが攻略したのだ。
なおも1アウト満塁で浜中。
赤星への配慮も感じられた1番で起用された浜中。その自然性がこういったよい流れを産む。岡田野球の最も魅力的なところかもしれない。
流れに乗った浜中、流れに飲まれたマッドホワイト。
ほぼ勝負はついた場面で、浜中がしっかりセンター前へはじき返す。
2点タイムリー。一気に逆転。
「強い」と一言、ぼくはつぶやいた。
さらに攻撃は続く。この鳥谷の初球、マッドホワイトになすすべをなくすような動きを鳥谷が見せた。この人の野球勘は本当に素晴らしい。
鳥谷は初球。もちろんやる気はなかっただろうがセーフティバントの構えを見せる。これは、しんどい。本当にヘヴィだ。全く思うような投球が出来ていないわけではない中、際どいところを攻め込まれ逆転を許した投手。もう、投げることだけに専念したい場面だ。そこで「セーフティバント」に対する準備を要求した鳥谷。自身のバント処理がこの失点に繋がっていることもあって、相当神経を消耗したであろうマッドホワイト。鳥谷の非情とも取れる、しかしこれぞ「プロ野球の選手」という初球の動きだった。
動揺し、体のバランスを少し崩したマッドホワイト、鳥谷に対してストライクが入らない。0−3から一つストライクを取るのがやっとで、フォアボール。また1アウト満塁になる。鳥谷のビッグプレーだった。
1アウト満塁でシーツ。
甘く入ったストレートをシーツが強振。痛烈なライナーがピッチャー目がけて飛んでいく。勝負あったかに思えたが、マッドホワイトが出したグラブに打球が当たりそれが石井の正面へ。結果ダブルプレーでチェンジになるも、このイニングに見せた攻撃はまさしく、
「強いチーム」の姿だったことは間違いない。
林クンの「打ちやすくする」から始まったこのイニング。
「併殺打を打たない男」桜井が打ち、たまに作戦を指示する岡田監督の作戦が的中した。関本はここ一番全力投球のマッドホワイトのウイニングショットをファールし、上園で先制点をもぎとった。流れに乗った浜ちゃんが打ち、そして鳥谷の初球。
これがさらなる攻撃を生んだのだった。
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