2007年08月17日

「何か」は起きた

何かが起きそうで、起きない。
いやでも確かに「何かは起きていた」。
季節は夏。
だから「起きたこと」が告げられただけだったのかも知れない。

「どこ見てんねん、セーフやろ!!」

激しく審判に詰め寄る岡田監督の姿を見て、「2005年9.7」がやってきたと思った。
全く予期することのできない「何か」は、セカンドベース上で起きたのだと思った。

際どい判定で、おそらくはセーフだとぼくも思った。

中日サイドから見れば、あれが正しく「セーフ」だと判定されてそのまま逆転負けをするより、もしくは、「セーフ」の判定でなおもノーアウト満塁で赤星、シーツ、金本を斬って、勝ちきってしまうよりも、あれが「アウト」だと判定されたことに恐怖を覚えたのではないか。

やはり、何かが起こる。

「チーム」というものを結集してしてまう「何か」が。
それを起こさせないために、さも自分の方にそれが起きたかのように錯覚させるために、第二戦、自ら「スクイズ」のサインを中村紀に出したのだ。

落合監督は知っている。

「起こしたもの」よりも「起きてしまったこと」の方が、遥かに爆発的な力を持っていることを。人間が考えられうる「予定調和」などたかが知れている。野球における配球、作戦。いくら裏をかいたところで、その全ては「予定調和」に含まれるのだ。

予定調和は「鳥谷にセカンドゴロを打たせたところまで」だった。

ウッズのホームランも井端が出塁して、上園から一点取ったところも「予定調和」の範疇。試合の中で起こりうる「野球」という座標軸内の出来事の一つだ。

満塁のピンチで鳥谷の裏をかいてセカンドゴロを打たせた。

しかし、なんでもないセカンドゴロを荒木が捕球できない。慌てる、一塁ランナーが全力で走ってくる、間一髪、井端が捕球する。それが審判には「アウト」に見えてしまう。
荒木が捕球できなかったところから、「アウト」の判定までは誰にも意図がない。

そして、「無意図の天才、岡田彰布」がベンチから恐ろしい形相で飛び出してくる。「監督として怒る必要があるから」→「怒っている」というニュアンスが全くない「怒る岡田彰布」。

「なんで、今のがアウトやねん!!!!どこ見てんねん、下手くそ!!!!!」

わざと退場になったのではない、「退場になってしまった」岡田。

おそらく、これが怖かったのだ。
「起こそう」として起きるものではない、人間の魂の奥底にある感情、それがチームの中に強く太く浸透し、圧倒的結束を持って前に進みうる、そのきっかけとなる「何か」。その「何か」は意図のある場所には存在しない。

ただ「監督」という仕事は、「意図」を持ってのみ成立する仕事でもある。「岡田の在り方」こそ、実は爆発的な強さを産む。しかし、「その場所で監督で在り続けること」その在り方は難解すぎるし、自分がやろうと思ってできることではない。

自分ができることは、「何か」が噴出する前に、先手先手で手を打ってそれを封じること。「監督」としての自然な在り方のまま、「意図」の範疇で「無意図」を封じる。

しかし「何か」は噴出してしまった。

後手に回らざるをえない。
「本当の意味での勝ち」を取りにいくならば、あの場面は岡本を続投させ、岡本が抑え切ってこそ噴出した「何か」を真っ向から制することになったのではないか。しかし、その確率は低かった。

高橋聡をマウンドに送る。
高橋はとてもいい球を投げ、赤星とシーツを打ち取った。
ドラゴンズは強いのだ。
9回は岩瀬が抑えて逃げ切った。
しかし、

「逃げ切った」

昨日、ドラゴンズの戦いは「逃げ切った」に制限された。福留がいなくなってしまったことで、それしかなかったのかも知れない。しかし昨年落合監督が優勝インタビューで流した涙は「逃げ切った」がいかに苦しいものだったかを現しているものだと、そう感じた。

二年連続「逃げ切った」に追い込まれた落合監督。
岡田監督の気持ち形にかえることができず、
「さぁ、今日から」と結実したタイガース。
季節は夏。そのゲームで「起こったこと」がそのままゴールに繋がる時期ではなかったのだろう。しかしその「何か」は「さぁ、今日から」が意図してできる次元を遥かに超えた場所で安定したように見える。

「意図」と「無意図」のガチンコ勝負だ。だから阪神と中日の試合はこんなにも面白い。

広島では「意図」が空中分解を起こした。
監督の「力み」に端を発したナゴヤドームから広島にかけての空中分解。東京ドームであれほど輝いていた阿部は、何かイライラし、たとえば実力主義を唱える飲食店で、若いが店長をやっている男のようだった。店が忙しくなるとピリピリし、売上げが伸びなければピリピリする。年上の社員をおかまいなしに叱責し、従業員たちにその憤慨ぶりをぶちまける。
あの延長12回の2−2の引き分け以降。1勝5敗。

ジャイアンツは、昨年球児がヒーローインタビューで悔しくて泣いてしまった時のようなことが、起こらなければ苦しい。阿部が泣いて謝るようなことがなければ苦しいと思う。ストライクが入らない福田に「話にならん」と言ったこと、球が走らない門倉に「137,8kmじゃそりゃ打たれるでしょ」と言い捨てたこと。
巨人は「ごめんなさい」「うん、もういいよ」ここからはじめなきゃ。

ドラゴンズは「大人」としてのペナントレースを選択した。落合監督は考えられうる「策」を遠慮なく出してくるだろう。問題を見てみぬ振りをすることも本意だ。それが大人の社会。うまくごまかしてうまくいくなら、うまくごまかす。そのことに迷いはない。だけど、それはしんどいし、そうじゃない勝ち方があることも重々知っている。だから迷っていたのだと思う。だけど、落合は昨日のゲームで覚悟を決めたようにそう感じた。岡田が怒ってベンチを飛び出していった瞬間、覚悟は決まったのだと思う。

タイガースはそのままでよいと思う。
岡田阪神、金本阪神、なればこそ体現できる「さぁ、今日から」をライバルたちは極度に恐れている。ならば迷わず「さぁ、今日から」だ。

昨日勝てなかった悔しさを、赤星やシーツはあの場面で打てなかった悔しさを思いっきりプレーにぶつければいい。

「ぉぉりゃぁぁああ!!!!」って言って野球をやれば、それでいい。

さぁ、佳境に差し掛かってきたペナントレース。
何が起きるか。


クリックでblogランキングへ

posted by コーチ at 08:17| Comment(5) | TrackBack(0) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すごい形相で怒っている岡田監督を見てなんだかうれしかったです。
親が自分の代わりに怒ってくれているような、守ってもらっているようなそんな感じでした。
岡田監督が出てくる時って自分が腹が立つからじゃないなって思います。
「うちの選手になにしてくれんねん」って感じで・・・(大阪弁おかしくないですか?)

とは書いても、ホントは負けたことがすごく悔しいです。今朝起きた時に昨日の負けを一番に思い出しました。
本音をいうと中日だけには負けたくないです!家ではかなり悪態をついてます(笑)

勝ち越したかったです。でも今はまだこれでよかったかもしれません。05年とも06年とも違うメンバーで戦っているのだから、過去と同じような出来事がポイントになるわけではないから。
07年の昨日までの試合の中で培われたものがあってこそ、今後繰り広げられるすごい試合。すごく楽しみです◎
「何か」を起こすのは今年を象徴する若手なのか、それとも今年まだ力を発揮できていない中堅、ベテランなのか、できれば全ての選手に「何か」が起きてほしいですね。
Posted by ちえ虎 at 2007年08月17日 16:53
急いで仕事行かなきゃなんないんで、
また還ってきてからレスします。
遅くなってごめんなさい。
Posted by コーチ at 2007年08月18日 05:57
ちえ虎さん

ただいま戻りました。
お盆ウィークは、昼夜問わずなのです。
あと5日くらい。頑張るぞ!!

>「うちの選手になにしてくれんねん」
全然おかしくないですよ◎

応用編。さらにネイティブに近づけようと思えば(笑) 「してくれんねん」の「れ」と「ん」の間に「て」を入れてみましょう(笑)

「うちの選手に、何してくれてんねん!」(語尾に向けて強さを増していくように発音しましょう)

さらに、大阪の狭い地域の言葉ですが、
「しさらす」
という動詞があります。

使い方。

「うちの選手に、何しさらしてくれてんねん!」

「くれてんねん」の後に「おぉ!」とつけて凄んでみましょう。

「うちの選手に、何しさらしてくれてんねん!おぉ!!」(眉間に皺を寄せる)

ただ、日常語ではありません(笑)吉本新喜劇とか、Vシネマの世界で出てくる言葉です。

以上、ためにならない(笑)語学の時間でした。


ところでね、
ぼくは「監督」という仕事ではないのだけど、いちおうバイトの子たちの面倒を見る仕事で、やっぱりその子たちは誰もがかわいいわけで、彼らを傷つけるようなことをした人には腹が立ちます。

そういう時は、やっぱり怒ります。
ぼくは弱いので、「怒ってることのみ」に専念できず、怒りながらいろんなフォローとかも考えてしまうのだけど、バイトの子らが理不尽な仕打ちを受けたりしたときは自分のことよりも腹が立ちます。やっぱ。

そういうことって当たり前のことだと思うのだけどなかなか「当たり前」として機能してなくて、その中で岡田さんはあまりにそれを「当たり前」としてやってくれているように見えるので、とても好きなんだと思います。

あと文章に滲み出ちゃってるかも知れないけど、落合監督も原監督も好きです、さらにブラウン監督も大矢監督も古田監督も好きです。なので、けっこう大変な状況になっていることは確かなのです(笑)


>「何か」を起こすのは今年を象徴する若手なのか、それとも今年まだ力を発揮できていない中堅、ベテランなのか、できれば全ての選手に「何か」が起きてほしいですね。


大賛同します!!
一昨年は、中村豊と久保田でした。
去年は山本昌のノーヒットノーラン。
その瞬間のヒーローはわずかだけど、だけどそれに至るまでに一球、ワンプレーが全て繋がっていると思うので、
後半戦開幕試合で見せた、今岡のファールフライもまた、快進撃に繋がっていると思います。
そして最後の最後に今岡にヒーローになってほしい。個人的な希望は彼に託しています。

いつも、ありがとうございます◎


Posted by コーチ at 2007年08月18日 14:55
遅くなってしまいましたが、たくさんお返事頂きありがとうございました。
大阪弁もご教授いただきありがとうございます◎
とてもためになりましたよ(笑)

今日のニッカンにアニキが「若手に優勝を味あわせたい」と言ってるとありましたね。
この言葉でベテランも若手もより一層強固に結束できそうです。
シーズンは長いのでその間には様々なことがあり、時に私たちファンも含め外野は勝手なことばかりを言いますが、大事なのは内部でそこでこんな事が話されていると思うと本当に嬉しいし、ただただ応援するだけだと改めて思います。
今岡にも他の主力選手同様、3回目の優勝を心の底から喜べる状態になってほしいです。
Posted by ちえ虎 at 2007年08月21日 14:18
ちえ虎さん

その結束が産んだ0−7からの逆転だったんでしょうね。結束ナシにひっくり返せるスコアじゃないですもんね!!

いやぁ、凄かった。
「これがあったか」って思いました。

「何か」を起こしたたのは、
桧山かぁ。。。涙

桧山ー!!!!!
って気持です。

桧山ー!!!!!
Posted by コーチ at 2007年08月22日 10:56
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/51670349

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。