コーチ 「三つ目ちょっと変ですよ」
先生 「あいこでしょ!あいこでしょ!愛甲でしょ!」
コーチ 「もういいです」
先生 「ちゃうねや、コーチ」
コーチ 「何も違うことなんてありません」
先生 「能見のピッチングのことや」
コーチ 「能見?」
先生 「コーチがこの間しとった話やで。高橋尚が赤星に対してした『あいこでしょ』の勝負の話」
コーチ 「あぁ、ありましたねそういうの」
先生 「コーチ、東京ドームの巨人戦のあと、こんなん書いたやろ?」
序盤、引き続き阿部のリードは抜群の冴えを見せていた。
特に赤星に対する攻めが素晴らしかった。好調時の赤星というのは本当にフォアボールを取ることに長けている。それを封じるために阿部が見せた配球。
例えば気心知れた友人と「じゃんけん」をする時に、相手が「グー」を出してくる確率が最も高いと感じた。データ的にそうなのだ。この場面では「グー」で来る。しかし、相手もこっちの気心をよく知っている。自分がグーを出すことを逆手にとって、こちらが「パー」を出すことを読み、「チョキ」を出してくるかもしれない。おそらく「パー」で来ることはない。ならば・・・
阿部が赤星に見せた配球はこの時に「グー」を選択する配球だと思った。「パー」を出してくる確率が一番低いなら、「グー」が最も負けない。「あいこ」でもいい。ファールを打たれるのは構わない。野球は「じゃんけん」と違って「あいこ」で決着がつく場合がよくある。ヒット性の当たりの内野ゴロも、フェンスギリギリのファールフライも、際どいコースの見逃しの三振も全部「あいこ」の範疇。阿部は赤星に対して「あいこ」での決着を選択しているように見えた。
赤星の第一打席。カウント2−3からの6球目。ストレートをショートゴロ。赤星に対しては木佐貫の決め球、鋭く落ちるフォークボールを初球以外は一球も使わない。見事な「あいこでしょ」で、阿部に軍配。
逆にシーツは「グー」を出してくるだろうと思って安心して「パー」を出す。フォークボールで空振り三振。このゲーム阿部のペースで立ち上がった。
コーチ 「書きましたねぇ。うん、読み返してみても案外いいとこついてるなぁとは思います」
先生 「今、能見に大事なんは、イヤ、能見だけやなくて上位三球団全ての投手についていえることやと思う」
コーチ 「はい」
先生 「この『あいこの精神』やで」
コーチ 「なるほど」
先生 「能見見ててな、一生懸命投げてるのは手に取るように分かるんや。丁寧に丁寧に。ほんまに一生懸命投げてる」
コーチ 「昨日は特にまたそんな感じでしたね」
先生 「やけど、勝負の決着のほとんどが、能見の勝ちか、能見が勝てなかったか、という勝負になってしまってるねん」
コーチ 「確かに」
先生 「フォアボールが多かったのもそれが原因やしな」
コーチ 「丁寧さゆえ」
先生 「もちろん、それは悪いことではないねんけども、実際昨日も6回1失点。素晴らしい結果や」
コーチ 「はい」
先生 「だけども、昨日ナゴヤドームで高橋尚がKOされたやろ?」
コーチ 「ウッズを警戒しすぎて、押し出しの四球と満塁ホームランだったみたいですね」
先生 「たぶん、能見と高橋尚はおんなじスタンスで投げてたと思うねん」
コーチ 「試合展開もあって、甲子園の方はラクでしたけどもそうでない試合の方がこれから絶対多いですからね」
先生 「大事なことはや」
コーチ 「はい」
先生 「持ってる力をしっかりと発揮することやと思うねん」
コーチ 「もちろんです」
先生 「その時に、ちょっと言葉おかしいかも知れへんけど、能見みたいな基本真面目な人は、もっと雑に投げてもいいと思う」
コーチ 「ですね。『あいこ』でもアウトになることありますもんね」
先生 「それだけの球を能見は投げれるピッチャーやからな」
コーチ 「昨日やったら数少ない『あいこ決着』の勝ちは下窪の初球サードゴロとか、金城の二球目を打ち上げたセンターフライとかね」
先生 「『あいこ』で負けたんが吉村に打たれた二塁打」
コーチ 「別に悪くないんですよね、それで。印象に残りにくいアウトやヒットだってあってもいい。それを積み重ねていって、勝負どころで『勝ちにいく』と」
先生 「結果ももちろん重要な時期やけど、それよりもやっぱり『思いっきり投げて、おさえたー!』へ向かうことが大事やと思う」
コーチ 「その結果打たれたんやったら、もう相手を讃えて、また悔しい気持ちを技術にかえていけばいいんですもんね」
先生 「安藤が抑えから先発に転向した当時もこの感じで凄く戸惑ってよな」
コーチ 「適当にアウトを取りにいけないんですよね」
先生 「ベイスターズの山口俊とか物凄い球投げてたけど、先発したらしたでまたそういうところにはまるんやろうな」
コーチ 「まぁあんだけすごい球やったら、調子良かったら全然打てないかも分からないですけども。ワインドアップの時は痩せてた頃の伊良部みたいでしたもん」
先生 「ま、とにかく昨日は勝ててよかった」
コーチ 「大事に行き過ぎると昨日のベイスターズみたいなことが起こってしまうんですよね。『寺原、この大事なときに何してんねん』相川がそう思ってしまった時点で苦しかったです。それが自身の捕球ミスにも繋がってもうて、もう収拾がつかないっていうか」
先生 「高橋尚もたぶんそんな感じで打たれたんやろうな」
コーチ 「広島でのドラゴンズは決して調子よくなかったですからね。井端が必死になってピッチャーに声かけて保ってた感じでした」
先生 「てなわけで」
コーチ 「はい」
先生 「大事なことは、もう同じやな」
コーチ 「ですね」
先生 「ピッチャーは腕を振る。バッターは思いっきり振る」
コーチ 「ここまできたら最後は『オリャァァ』の精神をどれだけもてるかの勝負みたいな感じですよね」
先生 「最終局面に差し掛かってきて、当然そのことが最も難しいんやけども」
コーチ 「昨日のタイガース結構良かったですよね」
先生 「『オリャァァ』を強く手にできたチームが混戦を抜け出す」
コーチ 「今日もそういう試合ができれば順位はまだ下ですが、一歩抜け出せるかも知れないですね」
先生 「てことで、タイガース、オリャァァァ!!!」
コーチ 「どんな締めなんですか(笑)」
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