2007年09月09日

矢野の中腰


先生  「なぁ、コーチ」
コーチ 「はい」
先生  「今から、オレはコーチの目の前まで行って、大声で『こんにちは!!』と言います」
コーチ 「え?」
先生  「その時に、最も自然な受け答えをしてください」
コーチ 「なぜかは聞かない方がいいんですよね?」
先生  「せやな」
コーチ 「先生、なんか自信ありげやし、いいですよ。いつでもきてください」
先生  「では行きます」
コーチ 「はい」

(先生、三歩近づいてコーチの前へ。顔を間近につける)
先生  「こんにちは!!!!!」
コーチ 「・・こ、こんにちは、ってちょっと恥ずかしいですわ(苦笑)」
先生  「今の自然な受け答えか?」
コーチ 「自然、、じゃない気がします」
先生  「じゃあもう一回行きます」
コーチ 「はい」

(先生、三歩後ろに下がって回れ右。そして、もう一度三歩近づいてコーチの前へ。顔を間近につける)
先生  「こんにちは!!!!!」
コーチ 「・・こ、んにちは」
先生  「どやった?」
コーチ 「恥ずかしがったらあかんって思いすぎて今のも自然じゃないですねぇ。難しいですわ」
先生  「ほんなら次で最後な」
コーチ 「はい」

(先生、再度、三歩後ろに下がって回れ右。そして、もう一度三歩近づいてコーチの前へ。顔を間近につける)
先生  「こんにちは!!!!!」
コーチ 「こんにちは!!!!!」
先生  「なるほど」
コーチ 「思いっきりいってみたんですけど」
先生  「それはどやった?」
コーチ 「これもちゃいますねぇ。力んだ時点で自然な受け答えじゃないです。で、これで何が分かるんですか?」
先生  「ほな、帰るわ」
コーチ 「ちょっと先生、待ってください。答え、答え教えてもらわんと」
先生  「ほなまたそのうち」
コーチ 「え? ほんまに帰ってもうた」


(5分後。コーチの携帯電話がなる)

コーチ 「あ、先生から電話や。もしもし、ちょっと先生」
先生  「こんにちは!!!!!」
コーチ 「え?」
先生  「それやで、自然は今の『え?』やで!!」
コーチ 「どういうことですか。先生はいったい何の話をしてるんですか!!」
先生  「電話代もったいないからもう一回行くわ。家の前おるし」
コーチ 「はよ、来てください」

(先生、戻ってくる)

先生  「昨日の8回9回の話やわ」
コーチ 「野球の話なんですね」
先生  「せや、オレは野球の話か、面白いと思った話しかせん。あと、酒を飲んだら少し下ネタも言う」
コーチ 「そんなこと、今、正直に言わなくていいです」
先生  「阪神の矢野がな」
コーチ 「はい」
先生  「ここ一番の時に、分かりやすくインコースの高目に中腰で構えてたやろ?」
コーチ 「あれ、ちょこちょこやりますよね」
先生  「少年野球のキャッチャーとかああいう風に指導したりもするやん」
コーチ 「そうですね。ピッチャーがストライク投げること自体が難しいですから。できるだけ分かりやすく構えよう、みたいな感じで」
先生  「せやけど、久保田と球児は当然少年野球のレベルやない」
コーチ 「そらそうですよね(笑)日本を代表するクローザーですもん」
先生  「矢野はある面で少年かも知れんけど、捕手の技術は当然一流なわけや」
コーチ 「確かに、ある面では少年ですね(笑)でも、一流の捕手です」
先生  「で、相手の打者も久保田の時は谷。球児の時はヨシノブ、小笠原、二岡。そうそうたる顔ぶれや」
コーチ 「はい」
先生  「その時に、なんであんなに早くから構えて『次インハイのまっすぐ行きますよ』ということを、相手のバッターに知らせるのかについて考えてたんや」
コーチ 「なるほど。それはとても興味があります」
先生  「さっき『こんにちは!!!』って大声で言うたやろ」
コーチ 「はい」
先生  「『いくでー、いくでー、来たー』って感じやなかった?」
コーチ 「そうですね。先に『大声でこんにちは、って言うでって宣言されてるから、先生がこっちに一歩ずつ近づいてきている時からなんか身構えてしまいましたね。あ、そうか・・・」
先生  「何か気づいた?」
コーチ 「先生、さすがですねぇ」
先生  「でも、酒飲んだら下ネタ言うで。少しやけど」
コーチ 「恥ずかしがらんでいいですよ。あぁ、なるほどようできてますわ」
先生  「やろ」
コーチ 「一回目の時、ぼく先生の顔面が近くにあってそこから挨拶されることに、向き合えなかったんですよ。恥ずかしくて逃げてしまった」
先生  「うん」
コーチ 「で、二回目はそれじゃあかん、自然やない、って思って、恥ずかしがらんとこうとする余り、かたくなってしもうたんですよね」
先生  「うん、うん」
コーチ 「ほんで三回目は、もうよう分からんしとにかく思いっきりいこうって思って、思いっきりいったけどうまくいかなかった」

先生  「これで空振り三振やろ」
コーチ 「理にかなってると思います」
先生  「『いくでー!』『はい、来たー!』って感じは、さっきのこんにちはで言うと『ふつうのこんにちは』やったらもちろん逆効果で、コーチは難なく対応してくると思うねん」
コーチ 「はい」
先生  「やけど、顔面の間近で、さらに大声ってなると様相は一変する」
コーチ 「久保田や球児のインハイの速球ってことですよね」
先生  「『いくでー』が物凄い効果的なわけや」
コーチ 「昨日で言うと、久保田から谷が打ち上げたフライは『かたくなってしまった』ですよね」
先生  「せや、プラス久保田の球の力」
コーチ 「で、球児対ヨシノブの三振、球児対小笠原のキャッチャーフライは『思いっきりいこうとしすぎてしまった』」
先生  「プラス、球の力」
コーチ 「なるほどなぁ」
先生  「で、最後に電話して、コーチ『え?』ってなったやろ」
コーチ 「はい」
先生  「あれがほんまは一番自然やと思うねん」
コーチ 「ですねぇ。予期してませんでしたから」
先生  「予期してなかったけど、それがあることは知ってたから瞬時に心のどこかがそれに対応してるやろ?」
コーチ 「ですね。その大声の挨拶と調和を図れる場所に心を落ち着かせようとしてたような気はします」
先生  「巨人のバッターほとんど超一流なわけでそれが怖いんやでな」
コーチ 「『え?』って反応して自然と出したバットに当たった。飛んでいった、みたいな感じですよね?」
先生  「せやせや。それが怖いんやけど、『次インハイですよ』って中腰で構えた時点で」
コーチ 「絶対にバッター身構えてしまいますもんね」
先生  「以上、矢野の中腰は、けっこう理にかなっているんやないかという考察でした」
コーチ 「うん、凄いですよ先生」
先生  「そんなことあらへん。たまに下ネタも言うで」


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posted by コーチ at 14:49| Comment(3) | TrackBack(0) | □ 矢野 輝弘 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは〜
う〜〜ん、なるほど。
キャッチャーって相手の裏をかくリードをすることが一番やと思っていました。
で、矢野の中腰見ながらいつも「大丈夫なんかなー」と思っていました。
こういう事ってわかるようでわからない事でして・・・でも誰も教えてくれないし〜。
でもなるほど納得です!
先生ありがとうございました!
Posted by gavi at 2007年09月09日 18:14
gaviさん

こんにちは。
いやまぁ、飽くまで「たぶんそうだと思う」という範疇なので、
あんまり信頼しぎないで下さいね(笑)

東京ドームでの矢野選手は、
本当にいい仕事をいっぱいしていると思いました。

このまま最後までいってほしいです!!
Posted by コーチ at 2007年09月11日 15:02
すごいですね、このエントリー。
私が見に行く阪神ブロガーさんはみんな野球のことよく知ってらして、どれも読んでて面白いけど、コーチさんの選手のみならず監督や相手チームに対してまでの暖かい視線、選手の心の中まで汲み取るような詳述はとても読み応えがあります。
これ読んでてあの3連戦を観戦していた時の胃のしくしく感がよみがえってしまいました(笑)。

シモがまた勝ち投手になれなかったのはとても残念だけど、あの巨人相手に他の誰が先発に出ても波に乗れなかったのではないかと思うと、私もよく初回3失点のあと2回を抑えてくれたと思います。
そう、桧山の復活だって私は信じていました。いや信じていたかった、ですが。
そして桧山は復活しました。支持しているファンからさえっも「なんで桧山出すん?」と言われ続けながら監督が出し続けたからなんですね?シモも今シーズン中に絶対復調してくれると思います。今度は、負けられないゲームで見事に相手を抑え切ってくれると思っています。

これ読まれるのはお仕事明けですね。お疲れさまです。3タテのあと、ここの更新ないなあと思っていたんですが(笑)、これは時間かかっても当然ですね。
今日の試合は見てる方もラクな完封され試合でしたw
Posted by 南河内郎女 at 2007年09月12日 00:51
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