2007年09月18日

雨なんか、どうでもいいから

先生  「途中、豪雨やったやん?」
コーチ 「阿部の打席の時、急に強くなったんですよね」
先生  「その中で、下柳先輩は全く雨のことを気にしてないように見えたんや」
コーチ 「阿部の方が打ちずらそうに何度かタイムかけて」
先生  「あんだけ雨降ったら、それがふつうやと思う」
コーチ 「ほんまに土砂降りでしたもんね」
先生  「『いいから、矢野。サインをくれ。オレは投げなきゃ。オレは抑えなきゃ。雨なんかいいから、そんなのいいから』そんな風な表情に見えたんや」
コーチ 「わかります」
先生  「そんな顔、他の場所でも見たことあるなぁって思ってん」
コーチ 「どこでした?」
先生  「『明日のジョー』や。ジョーも力石もカーロスもホセ・メンドーサも極限状態に入ったらああいう顔になるねん」
コーチ 「力石がジョーと対戦するために階級下げようと過酷な減量をしてるときとか、そういう顔でしたもんね」
先生  「下柳先輩はな」
コーチ 「はい」
先生  「不安や憤りや喜びを外側にぶっ飛ばして投球するピッチャーやないやん」
コーチ 「そうですね。むしろその感情全てをそのまま自身の中へ受け入れて、そのエネルギーを投球へかえていく」
先生  「前回の登板は東京ドームで、3回降板3失点。外から見てたら十分と思えた内容やったけど、本人はもちろん悔しかったことやろうな」
コーチ 「ですね」
先生  「加えて後半戦の快進撃の中で、自身はなかなか波に乗れない中、だけど大事な試合の先発は必ず下柳先輩なんや」
コーチ 「先発投手の中に『エース不在』はもう、当たり前みたいになっていますけど、中心はどう考えても下柳先輩でしたもんね」
先生  「この一週間、その悔しさ全部をきっと受け入れきったんやと思う」
コーチ 「そしてマウンドに立った」
先生  「不安や悔しさぶっ飛ばしてもあの顔にはなられへんと思うねん」
コーチ 「はい」
先生  「自分の中に受け入れきったからこそ、あの場所から投球できる」
コーチ 「あれこそ」
先生  「本当に強い、ということやと思う」
コーチ 「確かに」
先生  「あんな顔してる人の球はよっぽどのことがないと打たれへんで」
コーチ 「奥さんがその日に金メダル取る、ってよっぽどのこと過ぎますもんね」
先生  「昨日、唯一下柳先輩と正面から対峙できる状態の選手は谷しかおらんかった」
コーチ 「ほんま、そうでした」
先生  「打席でも木佐貫からヒット打つしな」
コーチ 「もう、ずーっと集中状態やったんでしょうね」
先生  「テレビで掛布さんがなるほどなぁ、っていうこと言ってたんや」
コーチ 「『ジャイアンツ打線は低目の変化球に意識があるから、敢えて高目のボールゾーンで勝負しにいっている』ってやつですよね」
先生  「せや。その対策は十二分に功を奏していた」
コーチ 「ですね。矢野のナイスリードでした」
先生  「さらに下柳先輩がほんまに投げミスせえへん」
コーチ 「ほんまに素晴らしいピッチングでした」
先生  「正真正銘、大正直者にしかできんピッチングやったもんな」
コーチ 「雨なんか、どうでもいいから」
先生  「やばい、泣きそう」
コーチ 「でね」
先生  「うん」
コーチ 「ぼくもピッチャーやってた頃のこと思い出したんですよ」
先生  「おう」
コーチ 「雨上がりのマウンドって、妙に空気が澄んでて、すごく土の匂いがするんです」
先生  「ああ、わかる」
コーチ 「全部を受け入れて集中状態に入った下柳先輩やからね」
先生  「おう」
コーチ 「土の匂いも一身に感じて『ああ、甲子園におるんや!』って、踏み出したスパイクが『ザクッ』って土に刺さる音を聴いて」
先生  「『オレが抑えるんやー!!!!!!』ってな」
コーチ 「赤星がヒーローインタビューで『楽しくてしょうがない』ってね」
先生  「うん、言ってた」
コーチ 「楽しいことがあっても『楽しい』を感じることができなきゃそれは『楽しい』じゃない」
先生  「その通りや」
コーチ 「その中で下柳先輩は、最も『楽しい』を感じることができる状態で投球をしてたと思います」
先生  「矢吹ジョーとジョーのライバルたちは、極限状態で殴りあう過程でほんまのほんまの『友情』を掴んでいったんやもんな」
コーチ 「本来的な感情を手にするために、下柳先輩が見せてくれたこと」
先生  「あの場所にこそ、『本当の楽しい』があると思った」
コーチ 「赤星もそれに引っ張られるように、あんだけ牽制されてスタート切って」
先生  「止めたバットに当たった打球がスタート切っていた勇気によって決勝打になった」
コーチ 「下柳−矢野のバッテリーの本当に凄いところは、もちろんテクニックもそうなんですけども、あれだけのキャリアを積んでる大ベテランなのに結局『勝ちたい、抑えたい』で投げ切るところやと思うんです」
先生  「だから今日は、一夜明けてもなんだかボンヤリしていて」
コーチ 「まるで雨上がりのグラウンドにいるように、清清しいんでしょうね」
先生  「ということで」
コーチ 「はい」
先生  「下柳先輩、大大大ナイスピッチング!!!!」
コーチ 「勝てたらいいなぁ、と思ってました」
先生  「懐かしいなぁ(笑)」

●2005年9月22日「勝てたらいいなぁ、と思ってました」

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posted by コーチ at 11:50| Comment(2) | TrackBack(1) | □ 下柳 剛 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も昨日はシモのピッチングを見ていると気持ちが良くて…。

思い通りに相手が空振りしてくれる。「これ取ってください」と言わんばかりのゴロを打つ。時々はシモの胸元に軽〜く打球が返るので、それを楽々受け取って1塁にほうる。
あと少しというところで谷選手に痛恨のソロを打たれて、10勝目を逃してしまってわたし的には惜しくてしょうがなかったんですが、終わってからなんだか「気持ちよく勝ったー」という気分しか残っていませんでした。「シモで勝った…記録にはついてないけど今日はシモで勝った」と思っているからでしょうね。
1ヶ月以上、こういうシモを見てませんでした。負ける彼を見るのは辛い。

あんな危なげない先発を見られたのは久しぶりなもので、のどから胃のあたりに詰まった感じがなくて爽快です(笑)。
Posted by 南河内郎女 at 2007年09月18日 13:05
>南河内郎女さん

本当に昨日は最高の投球だったと思います。本文でもたくさん触れたけど「あの目」こそ、下柳投手の本領。『勝ち星』ってぼく個人としては何も気にしてないのだけど、やっぱり記録に残りますもんね。年俸の査定なんかにも影響してくるんだろうし、だから昨日の下柳投手のようなピッチングに対する『残る記録』っていうのを新設してほしいなぁと思います。
『先発投手貢献ポイント』みたいな、中継ぎ投手の『ホールド』みたいな感じで、ドラゴンズの小笠原投手もけっこう好投しながら勝ち星に恵まれないみたいなのですが、そういう投手を見る時に、へビィに野球見てる人ではない人にも分かりやすい指針みたいなものがほしいなぁってなんとなく。

それにしても、昨日は本当にいい表情で投げてはりました。それが何よりですね◎
Posted by コーチ at 2007年09月18日 17:13
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