やっぱり現地に行ってこそ分かるたくさんのこと。
ビールで顔を真っ赤にしながら、熱く野球を語るおじさんは、ピンチを迎えたときに「もっと今岡や鳥谷や関本が上園のところに行ってやらなあかん。一人で投げさせてかわいそうやないか」とそのことに強く憤慨していた。ぼくもその通りだと思った。
後ろの座席に座っていた、少し声しゃがれたおばちゃんは、「うちが見に来た試合は24年間で100戦以上になるけど、一度も負けてない」と言っていた。本当かどうかは分からなかったが、本当ならば羨ましいし、そのおばちゃんの強運に是非あやかりたいと思った。
試合終了後ゴミ拾いをする若者の団体だったり、スタンドに占める「ヤンキー比率」「ギャル比率」はやっぱり甲子園が一番高いのかなぁ、とか、そういうことって現地でこそ感じることできる。
けっこう無理して行ったけど、行って良かったなぁ。
5万人も収容する甲子園という場所、そのスタンドを埋めてしまう野球というスポーツ。阪神タイガースというチーム。
阪神ファンの熱量、性質。岡田さんがどれほど支持されているか、いないか、その度合い。そんなことも肌で感じることができた。
5回裏が終わって喫煙所に煙草吸いに行ったら、喫煙所では岡田批判(笑) (5回表、上園に代打で高橋光信出塁を受けて)「なんで上園代えるんや」「てか、それはええけどなんで鳥谷に送りバントささへんのや」「いや、なんでそもそも鳥谷をずっと使うねや」「わしあいつ嫌いや」などなど(笑)
「なぁ、兄ちゃんもそう思うよなぁ」と同意を求められ、「ええ、まぁ」と曖昧な返事をするぼく。
いろんな人たちに、いろんな考え方があって、いろんな思いを持って、みんなが一球一球に集中している。甲子園における応援スタイルの良さは、余り本意ではない岡田さんの選手交代も、代わってしまえばその選手を全力で応援する、その度量の広さというか、まぁ勝ってしまえば「勝ったー!やったー!」で終わってしまう近畿地方が含有する根っからの陽気さというか、基本サバサバしていて優しい大阪商人的な「情」の良い部分。それが全面に出るところが甲子園なのだなぁと思った。
そして甲子園に来ているお客さんは野球を良く知っている。
圧巻は今岡のエラーでノーアウト二塁のピンチを招いた7回表だった。瞬間的に、「今岡アホー」「下手くそー」と野次が飛んだが、それは一瞬にして「久保田頑張れ」に変わっていった。
打席にイビョンギュ。同点狙いの送りバントを二度失敗したイビョンギュ。明らかにセカンドゴロを打って二塁ランナーを進塁させようとしていて、イビョンギュはそれが非常にうまい打者だった。2ストライクに追い込まれてから二度ファールしたイビョンギュ。
甲子園のスタンドは三振を望んでいた。もちろんマウンドの久保田もマスクを被っていた野口も同じ気持ちだっただろうと思う。
「セカンドゴロを打たれてはならない」
必死で進塁打を封じようとするバッテリーを、同じ気持ちで後おしした甲子園。久保田がイビョンギュを三振に仕留めた瞬間。立ち上がっての大歓声だった。
他にも3回表のツーアウトランナーなしで井端を迎えた場面。
井端を迎えるに当たって最高のシチュエーションであることの期待。「井端で切る」が今後の試合展開において良い方向の作用するという予感。女性もたくさんいるわけで、お客さんは野球経験者ばかりではもちろんないと思う。だけども局面局面を肌で感じる力が全体に浸透しているのだと思う。一二塁間のゴロを関本がうまくさばいて井端をアウトにした瞬間の甲子園の雰囲気は「序盤の三者凡退」では全くなく、さながら終盤の大ピンチを凌ぎきった時のようだった。まさに昨日、ジェフがウッズから三振を取って凌いだ8回と同等の拍手が3回の上園にも向けられていた。
それが甲子園なんだ。
試合は、岡田監督がもう必死になって「岡田彰布」と格闘している様が大いに見て取れた試合。うまくいかない面もたくさんあったけど、だけどこれが岡田さんの野球だ。
オーダーは前日と同様、5番サード今岡。6番ライト林。
ドラゴンズ中田攻略へ向けて、初回の鳥谷と赤星の打席は素晴らしかった。ファールファールでなかなかアウトにならない鳥谷。打つポイントを極限まで近くして打撃を行う赤星。「今日の阪神、ラクじゃない」中田がそう感じるには十分な打席を一、二番で。できれば、ここからシーツが出塁してアニキが歩いて、今岡でドカーン!みたいな得点ができれば最高なのだけど、無論そんな贅沢なことを言える状況ではない。シーツは簡単に打ち上げて内野フライ。これが現在、だけどやろうとしていることが見えてきて、確かにその場所へ近づいていると感じた初回の攻撃だった。
3回表は2アウトランナーなしの場面から鳥谷がクリーンヒットで出塁。中日、阪神共に『8番から』の打順となった3回、2アウトから井端を抑えた上園と、ヒットで出塁した鳥谷。僅かなアドバンテージを鳥谷の出塁が奪い取る。ここで赤星の打席が難しいなと思ったのは、やはりシーツの状態が悪いからで、『赤星が繋いで1塁2塁になってシーツが三振。次の回がアニキから』これはとても避けたいケースだった。
ならば鳥谷を一か八か走らせて、成功すれば2アウト2塁で赤星。失敗しても、次の回赤星から、そういう考え方は一般的には道理だと思う。喫煙所でもそういう話題が持ち上がっていた。ただ岡田さんの野球はそれを好まない。シーツが3番に入っている以上、シーツは「よく打つ人」という扱いを断じて動かしてはならない。
そのベンチの思惑を察するかのように、赤星はセーフティバントを試みた。まさしく繋ぎ。シーツが打てる可能性は低い。だけど、シーツが打つ可能性にかけて自分はバントで生きる。結果は失敗に終わったが素晴らしい打席だと思った。もし、サインだったとしても監督のやろうとしていることは非常に一貫していて気持ちが良い。岡田の格闘、応援したくなるじゃないか。
そして翌4回、1点を先制された裏のイニングで、唯一の得点が入ったイニングだ。岡田野球が瞬間的に燃えたイニングだった。
前の回に繋ごうと期待されたシーツが、ヒットで出塁する。人間はやっぱり期待されないよりも、期待された方が良い。ようやくそういうムードになってきたチームを感じて打席に入ったであろうアニキ。だけど相手も負けられないのだ。ドラゴンズはまだ確かに優勝を争っている。スタンドからでははっきりしたコースは確認できなかったが、完璧に攻められたのだろうな、と思った。ダブルプレー。だけど、その後の今岡が素晴らしかった。突如制球を乱すのは今シーズンの中田によく見られる場面で、この場面で今岡が選んだ四球は今岡が奪ったというよりも、中田が与えてしまった、という印象が強かったが、四球目のボールを選んだ今岡が「よし」といった面持ちで、ファーストベースに向かっていった。その姿に大いなる期待をしたのだった。
そして、林クンの弾丸ライナー。
ドラゴンズの1点はまさに「これぞドラゴンズ」という得点だった。荒木がヒットで出塁して、警戒されながらも盗塁を決める。ノーアウト2塁からノリの外野フライで進塁。1アウト3塁で、ウッズが歩き(上園はよく攻めていたけど)、森野の内野ゴロで1点。ヒットは荒木のライト前の1本だけで1点先制してしまった。もちろんこれも見事な繋がり。
しかし、それと両極にあるような「繋がり」こそ、岡田野球の真骨頂。前の回に期待された←ここ重要、シーツが出塁。だけどアニキがダブルプレー。だけど今岡が歩いて、林クンの2ラン。何もしてないけど、二点取ってしまう。その後野口も続いてレフト前。これが、ピッチャーが中田のような凄いピッチャーじゃなければ、一気に大量点もあったイニング。何かが結実し始めた。
うまくいかなかったところも多数あったが、それも岡田さんが岡田さんと格闘しているところがよく見えるようなシーンだった。
喫煙所でも話題だった、代打のみっちゃんが出塁して打席に鳥谷という5回表。赤松を代走に出して、「走るかもよ」という重圧を相手に与えたり、鳥谷にバントさせたり、エンドランやってみたり、それはもちろん正論なのだと思う。だけど、岡田野球はここで、代走も出さずに鳥谷に打たせる野球なのだった。負け続けてぼくも少し忘れてたよ。前の打席でヒット打ってたし、今後クライマックスシリーズを考えても鳥谷が打つか打たないかは本当に大きくチーム力を左右する。だから「打て」。いいじゃないか、いいじゃないか。
結果はセカンドゴロのダブルプレーだったけど、左の方を向いてしっかり打とうとしているところを、谷繁にうまく利用されてのセカンドゴロ。打つポイントを後ろにしているぶん、中田のスライダーが低めに来た場合、少しだけ鳥谷の手首が返ってうまい具合セカンドゴロになる角度でバットと衝突する。中田の投げたボールがもう少し高ければ、セカンドの頭をライナーで越えたはず。本当に紙一重だった。
8回の1アウトから赤星が内野安打で出塁して打席にシーツという場面も然り。この試合だけ勝つんだったら、当然送りバント。だけどシーツはヒッティングだった。結果は「あわや」というレフトフライ。
ふつうに考えればクライマックスシリーズでもう一度、ドラゴンズと対戦する。岡田さんは本気で日本一になろうとしているんだ、そう感じた。この試合を勝つことと、日本一になることを両天秤にかけての試合。8連敗中でそんな余裕があるわけない。だけど必死に格闘して岡田は岡田の野球を貫いた。
本気で日本一になろうとしている3位のチーム。
目が離せない。
そして、甲子園はほんとにみんな藤川球児が大好きだった。
今日も球児が甲子園に抱きしめられて投げることができる試合になりますように。
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初日、例によって早いイニングで3点とられたゲームで、取り返せないまま試合が進むにつれ、ヤンキーの口汚いヤジがマイクを通して実によく聞こえてきました。
なに言ってるかまではわからないんですが、とても不快で、気を散らされます。相手チームを罵ることが応援だと思い込んで、同じファンからも応援している選手からも嫌がられていることがわからないのかと苦々しく思いました。
次の日。リンちゃんの2ランで1点だけ先制して、追加点に結びつかないまま逃げ切るしかないかという試合運びで、今日こそは勝ってくれと皆が祈る思いで観ていた試合。
夫と「今日はあのヤンキー来てへんみたいやな」と話していたら、聞き覚えのあるどら声(笑)。また来とる。
しかし、もう口汚い調子が耳に障らないんです。相手チームをやじるより、自分たちのチームを応援する声の方がはるかに大きくて、かき消されています。それにもしかしたらそのヤンキー自身も阪神に声援を送るという当たり前のことをやり始めたのかもしれなくて。
前日の試合で安藤がピンチに追い込まれた時は、「また負けるのか」という気分に支配され、解説の福本さんや実況アナまでお通夜のような暗さで、実にたまらない空気でした。その時は安藤しのいだのですけど。そんな中で、日頃TVではあまり耳につかない汚いヤジが大きく聞こえてきたのです。
負のパワーは周囲の大勢の人間性まで変えてしまうんだな、と思いました。それは必ずしも負けそうだからってわけじゃなく勢いのあるなしではないかな?
あの耳障りなヤンキーにいちゃんたちを「いい人」に変えてしまうくらい、勢いのある試合を残り4試合とCSでぜひお願いしたいです!
私のコメントいっつもいやんなるくらい長いですね、すみません…私、自分のブログの記事でもアホほど長いんです(恐縮)。
ヤンキーの野次のくだり、よく分かります〜(笑)負けた方の試合も幸いぼくの周りにそういう人はいいなかったので不快な思いをせずにすみました。女子高生の二人組が後ろにおって、攻撃になると一生懸命声援してたりしてほほえましかったです。
コンビニで働いているとヤンキーとの付き合い方って非常に重要になるのですが、長く付き合っていると、彼らのほとんどに悪気があまりないことに気づかされます。その恥ずかしい自意識だったりとかもね、けっこう「仕方ない」に集約されることが多い子をよく見ました。「この人は安心だ」と彼らか許可してくれると、突如身の上話を「聞いて聞いて」としてくるのが彼らの特徴で、やっぱり問題は家庭にあったりで。。。
だけどそのことを逃げ道に自分は幸せになれないことを正当化するのは間違っているというようなことを、時期が来たなと思えばぼくは伝えるようにしています。「お前は幸せになれる、だけど幸せになろうとせな幸せになられへん。幸せになりにくいのはもうどうしたって動かせへん。だけどお前は不幸せを強く感じてきたぶん、幸せを感じれるんや、だからむっちゃ幸せになれるはずや」みたいなことを言います。レジで(笑)
コンビニでできる社会的貢献ってこういう小さなことしかないんですけども、甲子園って大きくそれを浄化する働きがあるかもしれないな、って南河内郎女さんのコメントを読んで思いました。
もちろん本質的な解決じゃないですけども、心の動きとしての経験、「負」から「正」へをリアルに体感したことによってその後の彼らに何かしらのいい影響を及ぼすかもしれない。
確かにそういう試合になるといいなぁ、って思います。強い阪神までもう少し。急上昇の気配のむんむん漂う甲子園でした◎
また長いコメントお待ちしております。
ぼくもたぶん同じ理由で長くなるタイプなので、非常に理解できます。
全部出さなきゃ気が済まないですもんね(笑) だからぼくの記事も長くなること多々あると思いますがこれからもどうぞよろしくお願いします◎