コーチ 「あ、落語ですか?」
先生 「似てる部分ってのは、顔だけではないんでございますなぁ」
コーチ 「ほぅほぅ」
先生 「性格や、趣味趣向、あと職業によっちゃ投球内容なんかもそっくりなんていうこともございまして」
コーチ 「投球内容?」
先生 「10勝してるが、11敗」
コーチ 「はいはい」
先生 「153個の三振を取って、これはリーグ2位なんでございますが、同時に92個の四死球を与えちまってる。こちらは2位に大きく水を開けた、ぶっちぎりのトップでございます」
コーチ 「カープの大竹のことですね」
先生 「ストレートもスライダーも、うまくいく時は、もう手がつけられないほど素晴らしい球がいくんでございますが、ちょっと歯車を狂わせますとまるで別人のようになってしまうわけでございます」
コーチ 「なるほどなるほど」
先生 「自分で自分の首をしめると申しますかね、しっかり投げなきゃ、しっかり投げなきゃ、そう思えば思うほどに、体のほうが硬く動かなくなってしまうんですなぁ」
コーチ 「おっしゃるとおり」
先生 「で、そんな鯉の投げ手、大竹とそっくりの投手が、虎の投げ手にもいるんでございます」
コーチ 「よ!8勝14敗!!」
先生 「私なんぞは、昨日の試合を見ていましても、どうにも鯉の大竹が虎の福原に見えてしまいまして、なんとも複雑な心境でござったわけなんでございます。あと、亜米利加のほうにYABUなんていう投げ手もおりますなぁ」
コーチ 「確かに似てる」
先生 「素晴らしい才能を持ちながら、しかも努力も重ねているのに、本番でチカラを出し切れない」
コーチ 「ほんまに、その通りです」
先生 「あなたはどうですか?」
コーチ 「え?」
先生 「おとといの福原、昨日の大竹を見たあなたは何を感じましたか?」
コーチ 「えっと・・・」
先生 「一生懸命頑張っているのに、仕事でなかなかうまくいかない。うまくいかなくなると自分で墓穴を掘って、自分からどんどん崩れていってしまう。そんな人はあなたではないですか?」
コーチ 「・・・」
先生 「私がそうなんでございます」
コーチ 「え?」
先生 「せっかく準備していった授業のレジュメ。ほとんど徹夜で作るときもございます。ここであれを言おう、ここで少し間を取ってちょっと息をぬいてから、話をきかせよう」
コーチ 「はい」
先生 「毎日、試行錯誤の連続でございます」
コーチ 「なるほど」
先生 「でも、それが満足に発揮できる授業など10回のうち5回あればいいほうで、いつも生徒に迷惑をかけてしまったと、自戒の念を持ってしまうわけでございます。するとまたその自戒が自戒を呼び、切り替えて次、と思いはするのですが、どうしても失敗してしまった場面が脳裏をよぎってしまいまして」
コーチ 「分かります・・・」
先生 「私は、大竹投手や福原投手が他人のようには思えないのでございます」
コーチ 「そうですね、ぼくも感じるとこあります」
先生 「ですが、大竹投手も福原投手もこれから長きに渡って自身との格闘を見せてくれるのでしょう」
コーチ 「そうですね」
先生 「私は時に、その姿に勇気づけられ、その姿を自分に投影し身を戒め、ともに戦っていきたい、そう思っております」
コーチ 「素晴らしい!!あんたの生徒は幸せもんだよ!!」
先生 「昔の人の中には面白いことを考える人がおりまして。まんじゅうを食べたいがゆえに、わざと“まんじゅうが怖い”そんなことを申して、周囲がまんじゅうで怖がらせようと、まんじゅうを枕元に並べたところ、“まんじゅう怖い、まんじゅう怖い”と言いながら、むしゃむしゃまんじゅうをほうばった、そんな人がおったそうです」
コーチ 「はいはい」
先生 「数年後、ある同僚が、福原にこう尋ねます」
コーチ 「なんでしょう?」
先生 「おい福原、おまえ怖いもんなんだ?え?オレかい?オレは…」
コーチ 「はい」
先生 「自滅が怖い◎」
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