2007年08月08日

ミスター、ボーグルソン!!

そうなのだった。

未然に防がれたことは「そうだったのだろう」と知りつつも、やはりに目に見える結果として起きていないことなので確信しきれないものがある。

そうだった。東京ドーム初戦。第二戦の圧勝劇をそっくりそのままやられていても全くおかしくなかったのだった。それほどジャイアンツのゲーム運びは完璧だった。それを阿部のホームランの失点のみに抑えた。第一戦、下柳先輩のあとを受けた投手。渡辺、杉山、江草の好投を、数々のビッグプレーを、最終回に林クンが打ったあのヒットを改めて讃えたいと感じたゲームだった。

初戦をあの形で終われたことが、ここまではっきりと第二戦へ繋がるのだ。素直に一生懸命、真面目に一生懸命。いかなる場面でもそれをやる続けることがいかに大事かを思い知らされる。


第二戦。

タイガースが勝利を得るための最大のポイントは、初戦神がかり的活躍をした阿部に「まさか!」「え?」と思わせることができるかだと思った。

甲子園での横浜戦。連続無失点を記録した番長三浦を攻略した時のように。あの日は桜井が番長が「まさか打ってこない」と思って投じたであろう、カウントを取りにいったスローカーブを強打し、それがレフト線への痛烈な二塁打になったことが難攻不落の番長を揺れ動かす突破口となった。「まさか」この感覚は絶好調のリズムでプレーを続けるプレイヤーにとって、そのリズムを狂わせられる最大の敵だ。

さぁ、難攻不落の阿部を攻め落とせ。それが今日のゲーム最大の焦点だと感じた。

序盤、引き続き阿部のリードは抜群の冴えを見せていた。
特に赤星に対する攻めが素晴らしかった。好調時の赤星というのは本当にフォアボールを取ることに長けている。それを封じるために阿部が見せた配球。

例えば気心知れた友人と「じゃんけん」をする時に、相手が「グー」を出してくる確率が最も高いと感じた。データ的にそうなのだ。この場面では「グー」で来る。しかし、相手もこっちの気心をよく知っている。自分がグーを出すことを逆手にとって、こちらが「パー」を出すことを読み、「チョキ」を出してくるかもしれない。おそらく「パー」で来ることはない。ならば・・・

阿部が赤星に見せた配球はこの時に「グー」を選択する配球だと思った。「パー」を出してくる確率が一番低いなら、「グー」が最も負けない。「あいこ」でもいい。ファールを打たれるのは構わない。野球は「じゃんけん」と違って「あいこ」で決着がつく場合がよくある。ヒット性の当たりの内野ゴロも、フェンスギリギリのファールフライも、際どいコースの見逃しの三振も全部「あいこ」の範疇。阿部は赤星に対して「あいこ」での決着を選択しているように見えた。

赤星の第一打席。カウント2−3からの6球目。ストレートをショートゴロ。赤星に対しては木佐貫の決め球、鋭く落ちるフォークボールを初球以外は一球も使わない。見事な「あいこでしょ」で、阿部に軍配。


逆にシーツは「グー」を出してくるだろうと思って安心して「パー」を出す。フォークボールで空振り三振。このゲーム阿部のペースで立ち上がった。


対するボーグルソンも初回は三者凡退。しかし、高橋由が7球。谷が6球。二岡が6球。いい立ち上がりなのだが、簡単にはアウトになってくれない巨人打線。今巨人は、確かに強いのだ。


やや巨人ペースで2回。


前日あれだけ苦しそうだったアニキがどういう打席を送るのか、ここも焦点の一つだった。木佐貫の相性の悪さ。そして、阿部が一夜明けたアニキに何かいやなものを感じたのだろうか。四球を与える。

そして林クンが初球のフォークボールを狙って打ってライト前。スタメン起用の葛城が気持ちで持っていったセンター前で満塁。さぁ、矢野と関本でなんとか、「阿部」という重たい扉をこじあけようというところだった。

ここでも「阿部」は大きくタイガースの前に立ちはだかる。

大胆かつ細心。「あいこ」決着はいらない。勝ちにいこうぜ、木佐貫。これまで見極められることを恐れてか、昨日の門倉からあまり投げさせなかったフォークボールを、見極められることが最も怖い満塁の場面でガンガン投げさせる。「え?」と思ったのは矢野と関本の方だった。矢野、関本、チャンスであるにもかかわらず全く余裕なくフォークボールで三振。ボーグルソンは仕方ないが、フォークで三振。ノーアウト満塁を三者連続フォークで三振に斬ってとる。全盛期の大魔神佐々木を思わせる、豪快な内容だった。

「阿部慎之介」これほどまでに凄い選手だったか。


2回ウラ。

対してボギー、前回の甲子園でのスワローズ戦はリグスに逆転満塁弾を打たれた試合だった。その前はナゴヤドームで好投。涼しいほうがいいのかな?と思った。ジャイアンツ打線がストレートに差し込まれていく。

小笠原をカットボールを見せた後に三球ストレートを続けて内野フライ。いけるかも、そう思った矢先に、スンヨプに変化球が甘く入ったところを痛打され、二塁打。続く最も怖い打者阿部は当然一塁が空いているので敬遠気味のフォアボール。しかし清水をダブルプレー。ボギーがジャイアンツの圧力を必死に押し戻した、いい投球だった。


3回表。

鳥谷、赤星の攻め方を手にした阿部が大事な大事なトップバッターから始まるイニングを翻弄する。しかしシーツが今までのシーツではなくなっていたことが阿部の誤算だったかもしれない。シーツは満を持して投じられたカウント2−2からのフォークボールをファールにする。甘いボールではなかった。少なくとも不調時のシーツならば空振りしていたようなボール。それをファールされたことで阿部に少しだけ「え?」と思わせることができた打席。その後のストレートをセンターに弾き返してツーアウトながらランナー1塁。アニキが先頭打者になることを避ける意味でも非常に大きなヒットだった。

続くアニキは、数年前片手で打っていた頃に見せたような、やはりそういった打ち方に切り替えてきたように思った。体に負担のかかりにくい変化球を拾いにいくような打ち方。ホームランはいらない。繋ぐ四番に徹する。その気概を大いに感じるライト前ヒット。タイガースがジリジリとジャイアンツを押していく。

ところがやはりここでも阿部なのだった。本日二度目の「さぁ木佐貫勝ちに行こう」。「ドカベン」の主役山田太郎を彷彿とさせるような
「さぁ里中、勝ちにいこう」というおおらかぶり。阿部、でかい。

2アウト1塁3塁。バッター林クン。一打席目でヒットも打っている。何が怖いって、ここで怖いのはホームランなのだ。ここで阿部は迷うことなく、一つ間違えばホームランになるインコースにストレートを三球続ける。一点もやらないための配球だ。「間違ってもホームランだけは」というセオリーは完全に無視した、「さぁ木佐貫、勝ちに行こう」

おおらかな阿部のリードにコースを間違わない木佐貫。
三球インコースにストレート、4球目のフォークボールを空振り三振。

タイガースが押し込みかけたところで、ゲームのバランスをまたジャイアンツの方へ傾けた阿部の見事なリードと木佐貫のピッチングだった。


3回ウラ

8番の脇谷から。昨日大活躍の木村拓を外した理由はおそらくヒットを打ったのが全て右打席だったからだろうと思う。正直木村拓じゃなくて良かったと思っていたら、脇谷が初球をヒットで出塁。

そういえばボギーはこの間のスワローズ戦でも、3回を先頭の8番福川を出塁させて、ピッチャーが送りバントのケースで追い込みながらも結局バントを決められて、トップに回ったところで青木を歩かせて・・・という8番から始まるイニングで最もやってはいけないことをしていたのだった。

そして今日も、全く同じ展開が3回に起こる。木佐貫を追い込みながらバントを決められたところまで同じだった。で、高橋由を歩かせて・・・

スワローズ戦は、ここで田中が簡単に打ち上げてくれて、さらにラミレスがボール球を振りまくって三振してくれたおかげで助かったのだったが、今日は谷と二岡。そう簡単にいくものだろうか、怖くて怖くて見てられなかったが、ここでボーグルソン踏ん張る。これはもう踏ん張った!!えらかった!!というピッチングだと思った。ボギー偉い!!よく頑張った!!

谷をシュートで詰まらせてショートゴロ。二岡をカーブかチェンジアップで泳がせてピッチャーゴロ。

重たい重たい守りあいで序盤。
格闘技におけるグラウンドで関節を取り合う攻防ような展開。桜庭が腕を取りにいったその瞬間、ノゲイラがその攻撃をかわし、かわした瞬間に逆にノゲイラが桜庭の膝をきめに行っているも瞬時にそれをかわした桜庭が逆にノゲイラのバックを取ろうとしそれに素早く反応したノゲイラが立ち上がり、両者見合わせて、大歓声みたいな。

そんな序盤戦だった。
「阿部慎之介」という大きな大きな牙城をなかなか崩すことができない。


4回表。

好投を続ける木佐貫を絶対に調子に乗らせてはいけないイニングだった。6番の葛城から。

なぜ桜井ではなく葛城だったか、何も知らないまま書くので、明日の新聞で完全に間違っていたことが判明するかもしれないけど、思ったことを書いておきたい。

岡田監督は、結果的に木佐貫を攻略することを読んでいたのだと思った。浜中を使いたかったのだ。第三戦のスタメンに向けて。しかし、左投手が出てきて桜井に代えて浜中というのはチームのバランスとしてやはり微妙なズレが生じる。かといって桜井に代えて、浜中をスタメンで起用するほど桜井の調子が悪いわけではない。左が出てきたときに迷わず浜中を出せる状態にしておくこと、浜中を起用してもチームのバランスが崩れないこと。そのことに重点をおいた6番葛城という起用ではなかった。もちろん、木佐貫を攻略するに当たって左の葛城が打ってくれれば、今後終盤の先頭打者で代打というシーンも多いであろう葛城だ。中長期的にシーズンを見てもプラスに働く可能性がある。そういう起用だとぼくは感じた。

ただ、この4回表。
大変な事態に陥る。
葛城、矢野、関本。一人出て、9番まで回す。このことを絶対にやりたかったイニングに、三者連続三振。
これ以上ないほどに木佐貫を調子に乗せてしまったのだった。

次のイニング、ジャイアンツは4番から。阿部に回るイニングだ。
大変な事態に陥っていた。


4回ウラ。

絶対に阿部の前に走者を許してはいけなかったイニング。昨日のスリーラン以降、全ての打席で出塁していた阿部。チャンスで回して勝負もしずらいし、歩かせれば大量失点の危険もある。まだ4回。久保田やジェフを出せる場面ではない。

頑張れ、ボギー。テレビの前でぼくは祈った。

そしてこの直後ぼくはボギーの頑張りに魅了させられる。

小笠原をなんとか打ち取って1アウト。
ここからが今日のヒーロー、ボーグルソン。

スンヨプがアウトにならないのだった。投げても投げても全てがファールにされる。阿部の前にランナーを出すことは許されない。かといって甘く入ればスンヨプがホームランを打つ可能性だって十分にある。ボギーが持ちうる全ての球種を持って、この打席のスンヨプに立ち向かっていった。それをスンヨプがことごとくファールにする。ボギーが押してファールになった球。スンヨプがわざとファールにした球。双方があいまみれ、気が付けばスンヨプに対して12球目。チェンジアップでレフトフライに打ち取った。よくぞ、よくぞフォアボールを出さなかった。2アウトランナーなしで阿部を迎えた。

ボーグルソンの気迫と粘り。それがジャイアンツを一気に押し込むきっかけになったことは間違いない。

そしてやはりタイガースはアニキなのだった。

打席に阿部。
阿部の当たりはレフトファールグラウンドにフラフラと上がるフライ。それを猛スピードで追うタイガースの外野手はもちろんアニキ。
凄い速さだった。落下点まで一直線。「迷い」だとか「言い訳」だとかそういうものが少しでも頭にあれば、あれは追いつけない。いっぱいいっぱいのランニングキャッチ。あれをファールにしなかったこと。アニキが走る姿が、またタイガースを勝たせた。


5回表。

難攻不落の阿部をギリギリのところでアウトにとった。
ボギーの粘りの投球。そしてアニキの激走。

この回。この回だ。

少しずつ「阿部慎之介」という壁にほころびが出てきた展開で、しかしまだ前回の三者三振が光を放つ、「9番ボーグルソンから」という攻撃。しかし、そのボーグルソンが決定打を放ったのだった。

ボギーといえば「バッティングがいい」というイメージがあってそれでいつも出てくるのが、川上から打った豪快なホームランなのだけど、しかし、ああいうことはそれほど珍しくはない。思いっきり振ったバットにボールが当たって、そもそもパワーのある外国人投手。弾丸ライナーでレフトスタンド。これはわりと見たことがある。

ゆえにまだ、ジャイアンツサイドから見ればホームランの方が良かったかもしれない。
ここでボギーが阿部に決定打を与えた。「まさか!」と思わせた。
ボギーが切り拓いた、結果的に22安打15得点。
阿部の頭脳を混乱させた。

二球目だった。球種はスライダー、見逃せばボールになるようなアウトコース低目の非常に難しいコース。不調時のシーツはまず打てないようなボールだった。阿部のリードミスでも、木佐貫の失投でもない、2ストライク目を取るにあたって完璧なスライダーのはずだった。しかし、それをボギーがきれいにライト前に運ぶ。あれは待ってなければそうならない打ち方だと思った。スライダーにタイミングを合わせて、それをライトを狙って打った完全なヒット。まぐれでホームランよりも遥かに混乱する、阿部に「え?」と思わせリズムを狂わせる、非常に効果的なヒットだった。

そして鳥谷が、フォアボールを選ぶ。このフォアボールもまた取りにいったフォアボールに見えた。完璧な流れ。

ノーアウト1塁2塁で赤星。当然のように送りバント。
これが三塁側へ走った木佐貫とあまりダッシュしてこなかったスンヨプのちょうど真ん中に転がる。阿部の指示も瞬時に出ない。ボギーに完璧なヒットを打たれたジャイアンツバッテリー、ボギーに粘り負けしたスンヨプ。それが一瞬の躊躇を呼んだ。慌ててボールを拾った木佐貫、そこでボンヤリとしていた頭が現実に戻る「あ、赤星。速い」そうやって投げた球はやはり一塁キャンバスを大きくそれた。

ようやく取った先制点。本当にようやく取った先制点だった。

なおも一塁三塁でシーツ、その二球目。

赤星、盗塁。セカンドに送球できず呆然と立ち尽くした阿部。


ここで勝負は決した。
阿部、陥落す。

勝負は第三戦へ。

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posted by コーチ at 23:32| Comment(4) | TrackBack(2) | □ ボーグルソン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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