2007年09月29日

岡田監督は本気で日本一を狙っているんだ

二日続けて、甲子園。二日目の昨日はスコアボード上の旗が上に向かって千切れて飛んで行きそうなほどの強風。ウッズやノリがそれを意識して大降りになってくれたらなぁ、とそんなことを思った。

やっぱり現地に行ってこそ分かるたくさんのこと。
ビールで顔を真っ赤にしながら、熱く野球を語るおじさんは、ピンチを迎えたときに「もっと今岡や鳥谷や関本が上園のところに行ってやらなあかん。一人で投げさせてかわいそうやないか」とそのことに強く憤慨していた。ぼくもその通りだと思った。
後ろの座席に座っていた、少し声しゃがれたおばちゃんは、「うちが見に来た試合は24年間で100戦以上になるけど、一度も負けてない」と言っていた。本当かどうかは分からなかったが、本当ならば羨ましいし、そのおばちゃんの強運に是非あやかりたいと思った。

試合終了後ゴミ拾いをする若者の団体だったり、スタンドに占める「ヤンキー比率」「ギャル比率」はやっぱり甲子園が一番高いのかなぁ、とか、そういうことって現地でこそ感じることできる。
けっこう無理して行ったけど、行って良かったなぁ。

5万人も収容する甲子園という場所、そのスタンドを埋めてしまう野球というスポーツ。阪神タイガースというチーム。
阪神ファンの熱量、性質。岡田さんがどれほど支持されているか、いないか、その度合い。そんなことも肌で感じることができた。

5回裏が終わって喫煙所に煙草吸いに行ったら、喫煙所では岡田批判(笑) (5回表、上園に代打で高橋光信出塁を受けて)「なんで上園代えるんや」「てか、それはええけどなんで鳥谷に送りバントささへんのや」「いや、なんでそもそも鳥谷をずっと使うねや」「わしあいつ嫌いや」などなど(笑)

「なぁ、兄ちゃんもそう思うよなぁ」と同意を求められ、「ええ、まぁ」と曖昧な返事をするぼく。

いろんな人たちに、いろんな考え方があって、いろんな思いを持って、みんなが一球一球に集中している。甲子園における応援スタイルの良さは、余り本意ではない岡田さんの選手交代も、代わってしまえばその選手を全力で応援する、その度量の広さというか、まぁ勝ってしまえば「勝ったー!やったー!」で終わってしまう近畿地方が含有する根っからの陽気さというか、基本サバサバしていて優しい大阪商人的な「情」の良い部分。それが全面に出るところが甲子園なのだなぁと思った。

そして甲子園に来ているお客さんは野球を良く知っている。

圧巻は今岡のエラーでノーアウト二塁のピンチを招いた7回表だった。瞬間的に、「今岡アホー」「下手くそー」と野次が飛んだが、それは一瞬にして「久保田頑張れ」に変わっていった。

打席にイビョンギュ。同点狙いの送りバントを二度失敗したイビョンギュ。明らかにセカンドゴロを打って二塁ランナーを進塁させようとしていて、イビョンギュはそれが非常にうまい打者だった。2ストライクに追い込まれてから二度ファールしたイビョンギュ。

甲子園のスタンドは三振を望んでいた。もちろんマウンドの久保田もマスクを被っていた野口も同じ気持ちだっただろうと思う。

「セカンドゴロを打たれてはならない」

必死で進塁打を封じようとするバッテリーを、同じ気持ちで後おしした甲子園。久保田がイビョンギュを三振に仕留めた瞬間。立ち上がっての大歓声だった。

他にも3回表のツーアウトランナーなしで井端を迎えた場面。
井端を迎えるに当たって最高のシチュエーションであることの期待。「井端で切る」が今後の試合展開において良い方向の作用するという予感。女性もたくさんいるわけで、お客さんは野球経験者ばかりではもちろんないと思う。だけども局面局面を肌で感じる力が全体に浸透しているのだと思う。一二塁間のゴロを関本がうまくさばいて井端をアウトにした瞬間の甲子園の雰囲気は「序盤の三者凡退」では全くなく、さながら終盤の大ピンチを凌ぎきった時のようだった。まさに昨日、ジェフがウッズから三振を取って凌いだ8回と同等の拍手が3回の上園にも向けられていた。

それが甲子園なんだ。

試合は、岡田監督がもう必死になって「岡田彰布」と格闘している様が大いに見て取れた試合。うまくいかない面もたくさんあったけど、だけどこれが岡田さんの野球だ。

オーダーは前日と同様、5番サード今岡。6番ライト林。

ドラゴンズ中田攻略へ向けて、初回の鳥谷と赤星の打席は素晴らしかった。ファールファールでなかなかアウトにならない鳥谷。打つポイントを極限まで近くして打撃を行う赤星。「今日の阪神、ラクじゃない」中田がそう感じるには十分な打席を一、二番で。できれば、ここからシーツが出塁してアニキが歩いて、今岡でドカーン!みたいな得点ができれば最高なのだけど、無論そんな贅沢なことを言える状況ではない。シーツは簡単に打ち上げて内野フライ。これが現在、だけどやろうとしていることが見えてきて、確かにその場所へ近づいていると感じた初回の攻撃だった。

3回表は2アウトランナーなしの場面から鳥谷がクリーンヒットで出塁。中日、阪神共に『8番から』の打順となった3回、2アウトから井端を抑えた上園と、ヒットで出塁した鳥谷。僅かなアドバンテージを鳥谷の出塁が奪い取る。ここで赤星の打席が難しいなと思ったのは、やはりシーツの状態が悪いからで、『赤星が繋いで1塁2塁になってシーツが三振。次の回がアニキから』これはとても避けたいケースだった。

ならば鳥谷を一か八か走らせて、成功すれば2アウト2塁で赤星。失敗しても、次の回赤星から、そういう考え方は一般的には道理だと思う。喫煙所でもそういう話題が持ち上がっていた。ただ岡田さんの野球はそれを好まない。シーツが3番に入っている以上、シーツは「よく打つ人」という扱いを断じて動かしてはならない。

そのベンチの思惑を察するかのように、赤星はセーフティバントを試みた。まさしく繋ぎ。シーツが打てる可能性は低い。だけど、シーツが打つ可能性にかけて自分はバントで生きる。結果は失敗に終わったが素晴らしい打席だと思った。もし、サインだったとしても監督のやろうとしていることは非常に一貫していて気持ちが良い。岡田の格闘、応援したくなるじゃないか。

そして翌4回、1点を先制された裏のイニングで、唯一の得点が入ったイニングだ。岡田野球が瞬間的に燃えたイニングだった。

前の回に繋ごうと期待されたシーツが、ヒットで出塁する。人間はやっぱり期待されないよりも、期待された方が良い。ようやくそういうムードになってきたチームを感じて打席に入ったであろうアニキ。だけど相手も負けられないのだ。ドラゴンズはまだ確かに優勝を争っている。スタンドからでははっきりしたコースは確認できなかったが、完璧に攻められたのだろうな、と思った。ダブルプレー。だけど、その後の今岡が素晴らしかった。突如制球を乱すのは今シーズンの中田によく見られる場面で、この場面で今岡が選んだ四球は今岡が奪ったというよりも、中田が与えてしまった、という印象が強かったが、四球目のボールを選んだ今岡が「よし」といった面持ちで、ファーストベースに向かっていった。その姿に大いなる期待をしたのだった。

そして、林クンの弾丸ライナー。

ドラゴンズの1点はまさに「これぞドラゴンズ」という得点だった。荒木がヒットで出塁して、警戒されながらも盗塁を決める。ノーアウト2塁からノリの外野フライで進塁。1アウト3塁で、ウッズが歩き(上園はよく攻めていたけど)、森野の内野ゴロで1点。ヒットは荒木のライト前の1本だけで1点先制してしまった。もちろんこれも見事な繋がり。

しかし、それと両極にあるような「繋がり」こそ、岡田野球の真骨頂。前の回に期待された←ここ重要、シーツが出塁。だけどアニキがダブルプレー。だけど今岡が歩いて、林クンの2ラン。何もしてないけど、二点取ってしまう。その後野口も続いてレフト前。これが、ピッチャーが中田のような凄いピッチャーじゃなければ、一気に大量点もあったイニング。何かが結実し始めた。

うまくいかなかったところも多数あったが、それも岡田さんが岡田さんと格闘しているところがよく見えるようなシーンだった。

喫煙所でも話題だった、代打のみっちゃんが出塁して打席に鳥谷という5回表。赤松を代走に出して、「走るかもよ」という重圧を相手に与えたり、鳥谷にバントさせたり、エンドランやってみたり、それはもちろん正論なのだと思う。だけど、岡田野球はここで、代走も出さずに鳥谷に打たせる野球なのだった。負け続けてぼくも少し忘れてたよ。前の打席でヒット打ってたし、今後クライマックスシリーズを考えても鳥谷が打つか打たないかは本当に大きくチーム力を左右する。だから「打て」。いいじゃないか、いいじゃないか。

結果はセカンドゴロのダブルプレーだったけど、左の方を向いてしっかり打とうとしているところを、谷繁にうまく利用されてのセカンドゴロ。打つポイントを後ろにしているぶん、中田のスライダーが低めに来た場合、少しだけ鳥谷の手首が返ってうまい具合セカンドゴロになる角度でバットと衝突する。中田の投げたボールがもう少し高ければ、セカンドの頭をライナーで越えたはず。本当に紙一重だった。

8回の1アウトから赤星が内野安打で出塁して打席にシーツという場面も然り。この試合だけ勝つんだったら、当然送りバント。だけどシーツはヒッティングだった。結果は「あわや」というレフトフライ。

ふつうに考えればクライマックスシリーズでもう一度、ドラゴンズと対戦する。岡田さんは本気で日本一になろうとしているんだ、そう感じた。この試合を勝つことと、日本一になることを両天秤にかけての試合。8連敗中でそんな余裕があるわけない。だけど必死に格闘して岡田は岡田の野球を貫いた。

本気で日本一になろうとしている3位のチーム。
目が離せない。

そして、甲子園はほんとにみんな藤川球児が大好きだった。
今日も球児が甲子園に抱きしめられて投げることができる試合になりますように。


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posted by コーチ at 13:21| Comment(2) | TrackBack(0) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月06日

赤星に送りバントなし

完璧。あまりにも完璧なサヨナラゲームだった。

岡田采配、ここに来て抜群の斬れ味。
いや、「斬れる」という表現は適切ではないか。
「超自然性采配」。お見事。

長期ロードの最終カード。ナゴヤドームの中日戦と、
続く甲子園での対広島の2戦目まで。
この辺りでチームの歯車ははっきりと狂っていた。

そこから「とにかくしっかり振る」「気持ちを入れて振る」ということをキーワードに、短いスパンでの立て直しを図っていく中で連勝に入る。

今日のゲームを見る限り、その「振って、振って」という鍛錬の時期はもう過ぎた様子。相手は番長。素晴らしい内容だった。
チャンスは作るも一点が取れないという展開だったが、チャンスを作れていた時点で100点満点。「散発3安打完封負け。今日はしゃあない。明日から切り替えていこ」そんなゲームになる可能性が十分にあった番長の投球内容だった。チャンスを作れていたのがタイガースの強さで、それでも得点を与えなかったことが番長の凄さ。

守備でもシーツの大ファインプレーもあって得点を与えない。今日は普通のデキだった杉山を今回は矢野が見事に導いていたと感じた。連敗したことによってクライマックスシリーズ進出へ最後の小さな灯りが消えてしまったことにより少しの気落ちがあってのであろう今ひとつ元気のないベイスターズ打線だったとしても、番長相手に一点もやれない中で無失点に切り抜けていった内容は杉山も矢野も素晴らしかった。

そして岡田彰布ショーは、6回から。

両軍無得点で迎えた6回裏タイガースの攻撃。先頭の桜井が倒れて、葛城が詰まりながらもライト前に落として出塁する。インコースよりの厳しいストレートだったけど、葛城がそれをしっかり振っていける。チーム全体でやってきたことが確実に実を結んできていると感じた。1アウト1塁で矢野。岡田監督、ここで2アウト覚悟の送りバント。

いよいよトップギアだ。仮に1点を取れなくてもここで「打つ」を選択する時が鍛錬の時期。矢野も前の打席でライト前にいいヒットが出ていた。もう、矢野に鍛錬を積ませる必要もない。ここで送っても次の打席、次の試合でしっかり振ることができるという準備。それが整った上での「2アウト覚悟の送りバント」。もし、矢野がこの試合も全く打てない素振りの凡打を繰り返していれば、ここはバントではなかったような気もした。広島戦の時のようにエンドランかけたり。もしかしたら純粋に「ヒッティング」だったかも。だけど送りバントをしたかった場面。矢野が二打席目までにヒットを打てていたことが、チームがいい流れになっているということを象徴しているようにも感じた。

非常に「自然」な中での送りバント。成功して2アウト2塁。
打順はここまで番長に完全に封じ込められていた関本。
岡田監督は動く。代打、高橋光信。そして続く杉山の打順にも代打を出すべく、早々とウエイティングサークルには桧山がスタンバイしていた。

タイガースには言わずもがなの久保田、ウィリアムス、球児がいて、6回裏は8回裏として機能する。ただ岡田さんはよっぽどのことがない限り6回を8回にすることを嫌ってきた。「6回は6回よ」。おそらくは、そこで小さく一点を取りに行くことが少しずつ後ろの三人に負担をかけていくことを懸念してのことと、ゲームの中盤で「打つ」というしっかりしたメンタリティがない者に「ここぞ」という場面で「オレが打つ」が備わらないということを見越してのことだと感じる。

しかしシーズンも終盤、そうやって一年間鍛錬してきたことを堂々と表現する季節がやってきて、岡田監督は2アウト覚悟のバントを選択し、関本に代打を送った。
「矢野も関本ももう大丈夫。ここは、『高橋光信』『桧山進次郎』という響きで甲子園とともに一点を取りに行く」そういう作戦に思えた。

2アウト2塁。1塁が空いている場面で、高橋か桧山そのどちらと勝負するか。ベイスターズバッテリーが選んだ相手は高橋光信。

番長vsみっちゃん。

名勝負だった。
「どうしてそんなコースに連続して投げることができるのだ?」というコースに全ての球種を投げ分ける番長。それに必死にくらいついていくみっちゃん。気持ちのビンビン伝わる至極のファールが何球も飛んだ。最後は番長が有する最高のウイニングショット、アウトコース低目からビシッ射抜くストレート、の軌道からストンと落としたフォークボール。
みっちゃんが天を仰ぐ。

しかしながら、名勝負。番長の意地とみっちゃんの執念。それが真っ向からぶつかったこれぞプロ野球という対決だった。

なのだけど、問題は打順が9番まで回らなかったことで、杉山の投球数はそれまで70球を切っていた。ただ、6回裏の攻撃で仮にみっちゃん敬遠で桧山と勝負という場面であれば当然交代だったわけだ。「打席がまわるまでもう1イニング」ここで失点するケースが非常に多いのはやはり投手として一度切れそうになった気持ちをもう一度つなぎ合わせる必要があるからだと思う。だからと言って「攻撃はまったく見ない。オレは投げるだけに専念する」という投手は「チーム」という観点から見れば違和感がある。攻撃にも一喜一憂してそれを踏まえて、頑張って投球しているところに守っている選手たちが共鳴し「点取るぞー!」ってなるのが理想だと思う。そして杉山は、そういう投手だ。

7回のマウンドには久保田がいた。最初から決めていたのだと思う。「9番まで回っても回らなくても7回は久保田」。久保田も準備しやすいし、杉山も不必要にいろんなことを考えずにすむ。ベンチが失点する可能性をできうる限り小さくしているように見えた。
そして、まったく危なげなく久保田が7回を乗り切る。

7回裏は鳥谷が出塁するも番長に抑えられ、8回表久保田がランナーを許すも得点を与えない。

8回裏。
投手代わってマッドホワイト。
先頭のアニキがさすがの出塁。併殺打のきわめて少ない桜井のところでバントなし。

桜井は少し調子が落ちてきたところで番長に完璧にやられてしまった。番長としても連続イニング無失点が途切れた試合で打ち込まれた桜井を是が非でも抑えたかったのだろう。絶対に打たれないコースにばかり投げていた。投手がマッドホワイトに代わって圧倒的に打ちやすくなった場面で期待したが、一度大きく狂わされてしまった感覚はなかなか戻らない。さぁ、桜井。踏ん張りどころ。

桜井三振で1アウト1塁。ここで葛城にはバント。2アウト覚悟で送る。これを相川が悪送球。ベースカバーに入った藤田の足が離れてセカンドセーフ。岡田監督、ここも迷わず送りバントだった。

1アウト1塁2塁で矢野。いよいよ矢野がヒーローになる日が来たか、と思ったが矢野ライトフライ。しかし、これまでの「まったくダメです」という打席の姿はそこにはなかった。右を向いてしっかり振れている。バットが少し下から出たぶん、こすってライトフライだったが右中間を抜く矢野の最もいい打球が出るまでもう少しという飛球。いいぞいいぞ。

セカンドランナーのアニキがタッチアップで2アウト1塁3塁。

打順は、ピッチャーの久保田。代打はもちろん浜ちゃん。
「もちろん、浜ちゃん」だからチームのバランスを考えれば浜中でいいと思うのだけど、ベンチでの佇まいなどを見ていると、得点を取るだけならば狩野か野口の方が一点取れる可能性は高かったと思う。浜ちゃんちょっと緩みすぎている場面をよく見る。ここでいい当たりのレフトフライか詰まってもレフト前にヒットが打てるかってそういう部分だと感じる。

それでもチームのバランスを最も意識するのが岡田監督だ。もちろん浜ちゃんが全く打てないというわけではない。狩野や野口の方が打つ確率が高くとも浜ちゃんが打つのが一番いい、だから浜ちゃん。

林クン離脱前に桜井が6番だった頃、2アウト、ランナー1塁に桜井という場面がよくあった。打席に矢野もしくは関本。テレビの解説などでは盛んに「なぜ桜井を走らせない」という意見が飛び交っていた。ぼくは走らせなくていいと思った。三球のストライクの中でしっかりと矢野と関本が振って打とうとすること。これが、先々に必ず繋がる。そう信じての「無策」なのだと感じた。2アウト1塁で打席に矢野で最高は矢野のホームランで2点入ることだ。その次が外野の間を破って、桜井が一気にホームまで帰ってくること。それに向かおうとチャレンジすることこそ、ここ一番でのチームを強くする。

8回裏、2アウトランナー1塁3塁。投手は左。この場面での代打は浜ちゃんしかいない。なぜなら浜ちゃんが打つことが一番いいことだから。狩野が出てボテボテの三塁ゴロが内野安打で一点入ったりする、その可能性だって十分にある。狩野はベンチでものすごくそういう雰囲気を出している。だけども、浜ちゃんが打つ場面なのだ。それが「自然性采配」の妙。

桜井を走らせないことと、ここでの代打浜中は全く同じ意味あいなのだと感じた。

9回表。両軍無得点は続いていた。
ここで岡田監督はマウンドにウィリアムスではなく球児を送った。
理由はまたとても分かりやすい。8回裏のチャンスで浜ちゃんという場面で「1点入れば球児、入らなければジェフ」という二人の微妙な準備のしずらさを先に無くしてしまおうということだと思う。チャンスになった時点で、「次は球児」。1点入れば9回裏は当然球児。だから「1点入りそうになったら、球児」。分かりやすい。

前日、佐伯の大飛球に少し動揺した感のあった球児だったが今日は万全。村田を三振に取ったストレートは速かったなぁ。


そして9回裏を迎える。
岡田彰布ショーのフィナーレ。

先頭の藤本が三遊間を強く抜いていくレフト前ヒット。ナイスバッティング。続く鳥谷は当然バント。あまりバントがうまくない鳥谷、キャッチャーの前に高いバウンドになるバント。タイミングはアウトのコースだったが、ランナーの藤本がよく分からないくらい速くスタートを切っていた。この間の狩野といい、ここ一番の好スタート素晴らしい。当然、間に合うものと思ってセカンドに送球しようとした相川。しかし、ことのほか藤本が速かったゆえ焦ったのだろう、ボールをうまく握れないままセカンドへ、力ない送球がバウンドしてセカンドへ到達する。オールセーフ。

ノーアウト1塁2塁で赤星。
この試合でも2度、2アウト覚悟で送りバントをしにいっている岡田監督。1点取ればサヨナラの場面。打者は赤星。誰もがバントだと思った場面で、バントなし。

岡田監督しか取れない策だと思った。すごい。
もちろん、アウトになってもゴロを打てば併殺もなく1アウト1塁3塁という形を作れる可能性は高い。ただ、そういうことではないと思った。岡田監督はあの場面で赤星のフォアボールを読んだのだと感じた。次のシーツは「三振」の可能性も十分あるバッター。1アウト2塁3塁でシーツ、金本よりも、ノーアウト満塁でシーツ、金本、桜井の方が得点できる可能性は遥かに上がる。

やや浮き足立っているマウンドのマッドホワイト。そしてエラーをした相川。チャンスでの赤星のストライクゾーンを見極める能力と集中力。もちろん甘い球が来たら一気にサヨナラヒットもある。アウトを一つ与えることはない。

そして、
赤星に対してストライクが入らなかった。
フォアボールで満塁。

岡田采配、恐るべし。


ここ最近のシーツは、とにかく初球を打ち続けていた。赤星がランナーにいても「いいからアンディ、振るんだアンディ。盗塁のことは気にしなくていい」そういった指示が徹底されているように見えた。それはなぜか?

こういう場面でしっかり振れるようにするためだ。

そして、アンディは追い込まれてもしっかり振りぬいた。
レフト前へのサヨナラヒット。

最高の、あまりにも最高の形で東京ドームへ。
ベンチとグラウンド、まさに一体。


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posted by コーチ at 22:49| Comment(9) | TrackBack(1) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月31日

振って振って優勝するんや

先生  「シーツの送りバントのシーンやけどなぁ」
コーチ 「はい」
先生  「結果的に桜井のタイムリーをお膳立てした形になったけどな」
コーチ 「ええ」
先生  「あれ、サインか?」
コーチ 「ちょっと分からなかったんで、画面の監督の顔から察しようと思ったんですけど、たぶん、シーツが自分でやったんちゃうかなぁ?」
先生  「確かに後ろのピッチャー考えたら6回裏は8回裏ともいえるけど」
コーチ 「1点取ったらほぼ勝ちですからね」
先生  「やけど、6回は6回で、まだ相手に3イニング攻撃が残ってるわけや」
コーチ 「ですね」
先生  「これやられたら久保田もジェフも球児もしんどいで」
コーチ 「3イニングを絶対無失点っていう野球になっちゃいますもんね。『結果的に無失点』じゃなくて、無失点しか許されないような窮屈な投球を強いられてしまうとぼくも思います」
先生  「実際昨日はバントしたシーツがタイムリーエラーして一点失ってる。センター前に二本連続ポテンヒットっていう不運のあとでや」
コーチ 「月並みですけど、何が起きるかわからないですからね」
先生  「1アウトで1塁に赤星。打席にシーツ。ここで作戦があるとすれば、盗塁やと思う」
コーチ 「赤星、首の状態もあまり良くなさそうですしそんなにガンガン走れないんでしょうけどね」
先生  「やったら、シーツの二塁打で一点取ろうとするのがベストや」
コーチ 「せや、思いますね」
先生  「もし、あのバント自分でやったんやったらな」
コーチ 「はい」
先生  「厳しい言い方やけどシーツは3番を放棄してるとも言える」
コーチ 「ダブルプレーにならないためだけやったら3番に関本いれてた方がいいですもんね」
先生  「そういう意味合いで3番に関本入れたんやったら、無論あそこはバントやし、初回だってバントや」
コーチ 「『エンドランやるかもよ?』って見せかけてバントとかもできますしね。関本そういうの好きそうやから」
先生  「やけど、シーツは赤星がランナーにおっても初球から打っていっていいことになってるやろ」
コーチ 「見てたらたぶんそういう決まりごとになってますね」
先生  「これは言うたら特権やで。星野さん時代の3番金本にその特権はなかったわけやから」
コーチ 「ですよね」
先生  「じゃあ、この特権はなんとためか言うたら、当然ヒットを打つ可能性を上げるためやと思うねん」
コーチ 「2ストライクまであれこれ作戦の中の打席を過ごして、カウント悪くなったから『打て』言われてなかなか打てるもんやないですからね」
先生  「初球からしっかり打ちにいって3球のストライクの中で勝負できるようにしてるわけや」
コーチ 「ピッチャーからしても、それはそれで簡単にストライク取りにいけないですし、ぼくがピッチャーやってた頃も、迷わず『打ち』って作戦はけっこうイヤでした」
先生  「ただその時に、『打ち』に『迷い』が出るとな」
コーチ 「一転してむっちゃラクですね」
先生  「ダブルプレーを怖がっている時点で打てる範囲が急に狭くなるしな」
コーチ 「だからまぁあの場面も『迷い』があったからバントしたって言うんやったら辻褄が合ってる言うたら合ってるんですけどね」
先生  「だけども、岡田さんが最近再三言うてる『気持ちで打たなあかん』って言うのは、ああいう場面での『迷い』との格闘であったりとかそういうことも含んでいると思うねん」
コーチ 「強くなれ、って」
先生  「あそこでバントしてたら、いつまで経ってもシーツはあんな感じのままやもん」
コーチ 「そんな感じのまま引退してほしくないんですよね」

先生  「逆にな、カープはよう仕掛けてくるわけやけど、仕掛けてくるチームの守りって見てて思ってんけど」
コーチ 「過敏ですよね」
先生  「昨日、岡田さんが一回だけサインらしいサインだした場面が5回裏やった」
コーチ 「葛城が1塁。打席に矢野でカウント2−2でエンドランでしたね」
先生  「やけど、矢野のファールが三塁戦のボテボテのゴロやったことを考えると、ランエンドヒットやったかも知れん」
コーチ 「そうですね。葛城の走力考えたら、けっこうギャンブルですけど。インコースよりにシュート系の球で、エンドランのサインでそれを引っ張るようなことはないでしょうから」

* 野球未経験者の方へ「用語解説」
ヒットエンドラン・・・文中表記は「エンドラン」。投球と同時にランナーがスタートを切って、バッターが打つ作戦のこと。ランナー1塁の場面で使われることが多い。ライト前ヒットで1塁3塁の形を作ることが理想。この際、打者は原則どんな球でも振りに行かなければならないのがエンドラン。ボール球でもボテボテのゴロを転がしてランナーを進めれば良しという作戦。

ランエンドヒット・・・エンドランと似た作戦だけど、微妙に違うのは打者がストライクの球のみを打つ作戦であるということ。ボール球ならば見送る。その際当然「盗塁」と同じことになるので、一塁ランナーの走力があるか、ほぼ確実にストライクを投げてくるだろうという場面でかつコントロールのいい投手の場合しかなかなか使えないサイン。エンドランよりもギャンブル性は高いが、バッターが普通に打ちに行くため、長打が出る可能性もあり、一気に一点が入ることもある作戦。

先生  「用語解説は済んだ?」
コーチ 「はい、済みました」
先生  「確かに、ヒットエンドランとランエンドヒットはややこしいわな。テレビの解説とか平気で注釈なしで喋るけど」
コーチ 「テレビはほんまにその辺、雑やと思います」
先生  「で、話戻すけどな」
コーチ 「はい」
先生  「カープの方がこの矢野のエンドランかランエンドヒットか分からんかってけど、この作戦にやたら過敏になったことが問題やと思うねん」
コーチ 「でしたね」
先生  「黒田対矢野って、阪神ファンが見てても、ちょっと期待できなんなぁ、って感じや。『三振でもいいから気持ちのある空振りで終わってくれ』ってそんな感じやったもん」
コーチ 「でしたね。ところが黒田がそわそわしだすんですよね」
先生  「過敏やなぁって思った」
コーチ 「で、エンドラン警戒してなのか、もう一球シュート系の球を投げて、それがちょっと甘く入ってレフト前」
先生  「矢野がヒットで出塁してしまう」
コーチ 「で、なんかリズムが悪くなった黒田が関本を追い込みながらもカウントを2−3にまでしてしまったり」
先生  「関本はなんでか全然あかんかったからなぁ。初めてちゃんとバット振ったん三打席目やで。一打席目なんか全球見送りの見逃し三振やった」
コーチ 「だけど、一つのエンドランがなんか変な流れを呼びましたよね」
先生  「で、結局関本は三振で、代打の桧山」
コーチ 「黒田も2アウトになってようやく吹っ切れたか、これは見ごたえのあるいい勝負でした」
先生  「際どいコースのフォークボールを桧山が見極めたり」
コーチ 「ストレート待たれてそうな場面でのまっすぐが153キロで桧山がそれに振り遅れてファールとか」
先生  「エース対切り札の真っ向勝負」
コーチ 「結果は黒田に軍配でしたけど、桧山にいたるまでの過程で黒田が疲弊したことは確かですよね」
先生  「で6回のシーツ送りバント、アニキ敬遠。桜井の決勝打へ繋がっていった、と」
コーチ 「阪神ファンから見てると、エンドラン一つで過敏に反応してくれたらむっちゃラクでしたし、桜井と勝負してくれたことで勝機を感じたことは確かでした」
先生  「黒田博樹という物凄い大エースを最大限解放しない敬遠やった気がする」
コーチ 「1点取られたら負けの場面で、ランナー二塁に井端。球児がウッズを敬遠して森野と勝負するようなもんですもんね」
先生  「そういう時は、ウッズと勝負してほしいもん。エースやから」
コーチ 「逆に杉山は全然まだまだエースじゃないですけど」
先生  「ここ一番でええ球投げたよな」
コーチ 「あんだけランナー溜まっても、あんまり失点する感じがなかったです」
先生  「打線になかなか定着しない『振る』が、ピッチャーにはしっかり備わってるんやでな」
コーチ 「『腕を振る』ですよね」
先生  「杉山のここ一番、栗原を三振に取ったストレートとか」
コーチ 「桜井の『まっすぐ』と決めて打ったホームランと『シュート』と決めて打った決勝打」
先生  「その前の赤星の『ゴロ』と決めて打った内野安打も素晴らしかった」
コーチ 「桜井があれだけ振れるのは、もちろん桜井が偉いですけど、振らしてきた岡田体制の賜物という風にも見えます」
先生  「杉山にしてもそうやしな」
コーチ 「確かにそれでうまくいかない日もあるけど、全員が強くそのことをやろうと心がけることができれば」
先生  「そのチームが一番強いと、オレは思う」
コーチ 「その中でのシーツは当然二塁打を打ちまくるシーツなわけですから」
先生  「もし、自分でバントしたんやったら、それで良しとせんといてほしいと思うんや」
コーチ 「もしサインやったとしたら、シーツは相当危機感持たなヤバイですしね」
先生  「あれだけ『打て』っていう監督が、それを諦めたわけやからな」
コーチ 「ピッチャーのストレートと同じでね」
先生  「おう」
コーチ 「ストレートがあるからこその変化球ですもん」
先生  「せやな。『打つ』『振る』がしっかりしてない中の作戦は結果的に自分の首をしめていくことになるとオレも思う」
コーチ 「『打つ』がしっかりしてない中で、バントと内野ゴロで加点して勝っても、それじゃ日本一まで辿り着けへん」
先生  「チーム状態が苦しくなった今やからこそ、『振る』という鍛錬を積むことがチーム力を大きく飛躍させる」
コーチ 「残り30試合。ここから飛躍できるとすればいいタイミングかも知れません」
先生  「シーズン最後の試合終わる時点で最高潮を迎えられるかも」
コーチ 「そのために今、振ってるんですよね」
先生  「赤星、アニキ、桜井、葛城、桧山。試合出てないけど狩野や第二戦見てる限りは高橋もそれができてる。浜ちゃんはできつつある、って感じかな?」
コーチ 「ピッチャーは球児、ジェフ、久保田はもちろん。渡辺、江草、安藤もダーウィンもよかったですし、杉山、能見、ボギー、上園」
先生  「下柳先輩は丁寧に投げようとしすぎてるから、その『丁寧さ』と『思い切り』のバランスを取り戻してからやな」
コーチ 「ですから、その現在『振る』『腕を振る』ができてる人の場所へ、今できなくなってる人たちが必死こいて向かう」
先生  「その間に、林クンも戻ってこれるといいけど」
コーチ 「あの苦しい場所からチームを支えた大きな功労者ですからね」
先生  「最高のチーム状態で林クンを迎えたい」
コーチ 「そして、今岡、福原」
先生  「シーズン序盤から中盤にかけて、狩野を皮切りにガンガン若い選手が出てきたやん」
コーチ 「今年の象徴ですよね」
先生  「そして終盤はベテランが決めるって最高やけどな」
コーチ 「安藤を皮切りに、福原、今岡」
先生  「そこに林クンも戻ってきて」
コーチ 「クライマックスシリーズ」
先生  「そこに向かうための導火線に桜井が点火した」
コーチ 「中堅どころがまずその火を大きくしてほしいですね」
先生  「鳥谷、関本、浜ちゃん、藤本」
コーチ 「ほんでおいしい所を今岡が持っていったら、みんなで殴りましょう(笑)」
先生  「涙の殴打や(笑)」
コーチ 「そしてアニキが宙に舞う」
先生  「そのための苦しい戦いが今、始まって」
コーチ 「ぼくたちはその伝説の証言者となりたい」
先生  「さぁ、こっからやで!!」
コーチ 「久し振りにこれで締めますか」
先生  「せやな」
コーチ 「2007年、阪神タイガース、奇跡の逆転優勝を願って」
先生  「乾杯!!!!!」


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2007年08月17日

「何か」は起きた

何かが起きそうで、起きない。
いやでも確かに「何かは起きていた」。
季節は夏。
だから「起きたこと」が告げられただけだったのかも知れない。

「どこ見てんねん、セーフやろ!!」

激しく審判に詰め寄る岡田監督の姿を見て、「2005年9.7」がやってきたと思った。
全く予期することのできない「何か」は、セカンドベース上で起きたのだと思った。

際どい判定で、おそらくはセーフだとぼくも思った。

中日サイドから見れば、あれが正しく「セーフ」だと判定されてそのまま逆転負けをするより、もしくは、「セーフ」の判定でなおもノーアウト満塁で赤星、シーツ、金本を斬って、勝ちきってしまうよりも、あれが「アウト」だと判定されたことに恐怖を覚えたのではないか。

やはり、何かが起こる。

「チーム」というものを結集してしてまう「何か」が。
それを起こさせないために、さも自分の方にそれが起きたかのように錯覚させるために、第二戦、自ら「スクイズ」のサインを中村紀に出したのだ。

落合監督は知っている。

「起こしたもの」よりも「起きてしまったこと」の方が、遥かに爆発的な力を持っていることを。人間が考えられうる「予定調和」などたかが知れている。野球における配球、作戦。いくら裏をかいたところで、その全ては「予定調和」に含まれるのだ。

予定調和は「鳥谷にセカンドゴロを打たせたところまで」だった。

ウッズのホームランも井端が出塁して、上園から一点取ったところも「予定調和」の範疇。試合の中で起こりうる「野球」という座標軸内の出来事の一つだ。

満塁のピンチで鳥谷の裏をかいてセカンドゴロを打たせた。

しかし、なんでもないセカンドゴロを荒木が捕球できない。慌てる、一塁ランナーが全力で走ってくる、間一髪、井端が捕球する。それが審判には「アウト」に見えてしまう。
荒木が捕球できなかったところから、「アウト」の判定までは誰にも意図がない。

そして、「無意図の天才、岡田彰布」がベンチから恐ろしい形相で飛び出してくる。「監督として怒る必要があるから」→「怒っている」というニュアンスが全くない「怒る岡田彰布」。

「なんで、今のがアウトやねん!!!!どこ見てんねん、下手くそ!!!!!」

わざと退場になったのではない、「退場になってしまった」岡田。

おそらく、これが怖かったのだ。
「起こそう」として起きるものではない、人間の魂の奥底にある感情、それがチームの中に強く太く浸透し、圧倒的結束を持って前に進みうる、そのきっかけとなる「何か」。その「何か」は意図のある場所には存在しない。

ただ「監督」という仕事は、「意図」を持ってのみ成立する仕事でもある。「岡田の在り方」こそ、実は爆発的な強さを産む。しかし、「その場所で監督で在り続けること」その在り方は難解すぎるし、自分がやろうと思ってできることではない。

自分ができることは、「何か」が噴出する前に、先手先手で手を打ってそれを封じること。「監督」としての自然な在り方のまま、「意図」の範疇で「無意図」を封じる。

しかし「何か」は噴出してしまった。

後手に回らざるをえない。
「本当の意味での勝ち」を取りにいくならば、あの場面は岡本を続投させ、岡本が抑え切ってこそ噴出した「何か」を真っ向から制することになったのではないか。しかし、その確率は低かった。

高橋聡をマウンドに送る。
高橋はとてもいい球を投げ、赤星とシーツを打ち取った。
ドラゴンズは強いのだ。
9回は岩瀬が抑えて逃げ切った。
しかし、

「逃げ切った」

昨日、ドラゴンズの戦いは「逃げ切った」に制限された。福留がいなくなってしまったことで、それしかなかったのかも知れない。しかし昨年落合監督が優勝インタビューで流した涙は「逃げ切った」がいかに苦しいものだったかを現しているものだと、そう感じた。

二年連続「逃げ切った」に追い込まれた落合監督。
岡田監督の気持ち形にかえることができず、
「さぁ、今日から」と結実したタイガース。
季節は夏。そのゲームで「起こったこと」がそのままゴールに繋がる時期ではなかったのだろう。しかしその「何か」は「さぁ、今日から」が意図してできる次元を遥かに超えた場所で安定したように見える。

「意図」と「無意図」のガチンコ勝負だ。だから阪神と中日の試合はこんなにも面白い。

広島では「意図」が空中分解を起こした。
監督の「力み」に端を発したナゴヤドームから広島にかけての空中分解。東京ドームであれほど輝いていた阿部は、何かイライラし、たとえば実力主義を唱える飲食店で、若いが店長をやっている男のようだった。店が忙しくなるとピリピリし、売上げが伸びなければピリピリする。年上の社員をおかまいなしに叱責し、従業員たちにその憤慨ぶりをぶちまける。
あの延長12回の2−2の引き分け以降。1勝5敗。

ジャイアンツは、昨年球児がヒーローインタビューで悔しくて泣いてしまった時のようなことが、起こらなければ苦しい。阿部が泣いて謝るようなことがなければ苦しいと思う。ストライクが入らない福田に「話にならん」と言ったこと、球が走らない門倉に「137,8kmじゃそりゃ打たれるでしょ」と言い捨てたこと。
巨人は「ごめんなさい」「うん、もういいよ」ここからはじめなきゃ。

ドラゴンズは「大人」としてのペナントレースを選択した。落合監督は考えられうる「策」を遠慮なく出してくるだろう。問題を見てみぬ振りをすることも本意だ。それが大人の社会。うまくごまかしてうまくいくなら、うまくごまかす。そのことに迷いはない。だけど、それはしんどいし、そうじゃない勝ち方があることも重々知っている。だから迷っていたのだと思う。だけど、落合は昨日のゲームで覚悟を決めたようにそう感じた。岡田が怒ってベンチを飛び出していった瞬間、覚悟は決まったのだと思う。

タイガースはそのままでよいと思う。
岡田阪神、金本阪神、なればこそ体現できる「さぁ、今日から」をライバルたちは極度に恐れている。ならば迷わず「さぁ、今日から」だ。

昨日勝てなかった悔しさを、赤星やシーツはあの場面で打てなかった悔しさを思いっきりプレーにぶつければいい。

「ぉぉりゃぁぁああ!!!!」って言って野球をやれば、それでいい。

さぁ、佳境に差し掛かってきたペナントレース。
何が起きるか。


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posted by コーチ at 08:17| Comment(5) | TrackBack(0) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月15日

岡田監督、ギザ凄ユス

先生  「ギザ強ス」
コーチ 「せ、先生!!」
先生  「勝ったお(^ω^)」
コーチ 「勝ったんはみんな知ってるから普通に喋ってください」
先生  「不思議、不思議はぴなす」
コーチ 「先生ー!!」
先生  「何を熱うなってるんや? しょこたんやないか」
コーチ 「しょこたんは分かりますけど、先生がしょこたんの真似をすることがどうか、という問題です」
先生  「林クン、かわゆす」
コーチ 「もういいです」

先生  「だからな、コーチ。『不思議はぴなす』って言いたかったんや。不思議ー! 不思議はぴなす!!」
コーチ 「もう、気ぃ済みましたか?」
先生  「すみません」
コーチ 「そのすみませんは謝ってると捉えていいんですね?」
先生  「はい」

コーチ 「じゃあ何が不思議はぴなすなんですか?」
先生  「岡田監督や」
コーチ 「やっぱり」
先生  「昨日の岡田采配は、正直初体験の衝撃やった。鳥肌たった」
コーチ 「確かに、ぼくもそうでした」
先生  「7回や」
コーチ 「関本からでしたよね」
先生  「関本に代えて、代打桧山やった」
コーチ 「ちょっとびっくりしましたけど、あそこで出しとかな桧山出すとこなかったですもんね」
先生  「現状では左の代打としての格付けは葛城の方が上位やし」
コーチ 「横浜戦で代打の代打で浜ちゃん出して、桧山引っ込めてましたからね。どうしても昨日打席に立たせたかったんですよね」
先生  「でもまぁ、それだけやったら別にふつうやねん」
コーチ 「ですね」
先生  「思ったやんやけどな」
コーチ 「はい」
先生  「岡田さんは、好投のボギーを同点の場面で降板させるということに関してな」
コーチ 「はい」
先生  「代打が二人必要やって思ったんやないかな?」
コーチ 「何となく感じましたよね」
先生  「これ、何でかわからへんねんけど、関本がそのまま打席立って仮に凡退したとして、ボギーのところで代打葛城やったら、あそこまですんなりな雰囲気やなかった気がするねん」
コーチ 「結果的に勝ったからじゃなくて、あの時点で『ボーグルソン降板』という事実を圧倒的多数の人が受け入れている空気になったんですよね」
先生  「ボギーは尻上がりの好投で、しかも投球数もまだ100球行ってない」
コーチ 「次に出てくるピッチャーは間違いなく久保田。四連投」
先生  「でも不思議と、それでええんや、ってみんな思わされた感じがした」
コーチ 「桧山も葛城も凡退してるんですけどね、ついでに鳥谷も続いて三者凡退のイニングやったのに」
先生  「なぜだが、凄く勝てる気になったイニングやった」
コーチ 「ほんで結局次のイニングに林クンと桜井が打って勝ちました」
先生  「こういう、繋がってないように見えて、繋がってるかも知らんと思わせる采配こそ、岡田マジックの真骨頂やねんよな」
コーチ 「8回に得点した時、岡田さん『してやったり』って表情してたんですよね」
先生  「どこでしてやったんか、言うたら」
コーチ 「シーツに送りバントのサイン出したところじゃないんですよね、たぶん」
先生  「あれは当たり前や、って思っとる」
コーチ 「ならば、してやったりは」
先生  「7回の代打桧山や」
コーチ 「あそこで二人続けて代打で出て、打ったらもちろんチャンスになるし、打たなくても、ボーグルソン降板、久保田登板を非常に自然性の高いものに変えてみせた」
先生  「ボギーはマジでバッティングいいからな。打たしても塁に出る可能性けっこうあるわけやし」
先生  「だけど8回で決着をつけることも両睨みの上で、関本に代打、連続してボギーに代打」
コーチ 「そのことによって8回表に山井をそのまま打席に送った落合監督がなぜか後手に回っているという印象になってしまい」
先生  「同時に堂上兄が出てくることも防いだ」
コーチ 「終盤、岡田監督がゲームを支配したんですよね」
先生  「何かよう分からんねん。触れたことのない感じやねん」
コーチ 「分かります」
先生  「でも、むっちゃ凄いねん」
コーチ 「それが、岡田彰布。気が付けば、タイガースの歴代監督の中で最長の在位期間が見えてきてます」
先生  「顔があんなんやし、喋りもあんなんやから『岡田マジック』ってなかなか言ってもらわれへんけど」
コーチ 「あれだけ『自然性』に忠実に采配を振るうからこその『マジック』なんでね、非常に分かりにくいですけど」
先生  「あれはマジックを超えた、イリュージョンやったと思う」
コーチ 「7回表、関本に代えて、桧山」
先生  「不思議、不思議はぴなす!!」


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posted by コーチ at 10:51| Comment(0) | TrackBack(0) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月14日

ホームラン打ってもええんやで

横浜スタジアム、第三戦。
バッティング練習をしていた林クンに岡田監督は言った。
「ホームラン打たへんのか? ホームラン打ってもええんやで」

その試合で林クンは、インコース高目の非常に厳しい球を、
右翼スタンド上段に、完璧なホームランを叩き込んだ。
そして試合を決めた。

同じ頃、ナゴヤドームでは、
ジャイアンツの先発、福田が乱調だった。ストライクが取れず、最終的に投手の中田が打席の時、押し出しのフォアボールを出してしまう。マウンドで阿部は言ったそうだ「話にならん」。試合後原監督は福田に対して「今日は正直、庇いにくい。プロの選手らしからぬプレーが多かった」という内容のコメントを残し、二軍へ降格させた。

横浜スタジアム第一戦。タイガースの先発、上園もまた乱調だった。ストレートは全て高目に浮いた。だけど捕手の野口はピンチになればなるほど「低く投げろ」というジェスチャーをしなかった。それが「いいから上園腕を振れ」そのようなメッセージに聞こえたのだった。二回で降板した上園は試合後「次もし、チャンスを与えていただけるなら、しっかり低目へ投げれるようにしたい」そのような内容のコメントを残した。

移動日の昨日、室内練習場にてジャンはボーグルソンと「ボーク対策」をしていたらしい。メジャーリーガーとしての実績のあるジャン。その恥部とも言える「ボークの件」がチームの中でタブーではない。「なぁ、どうやったらボーク取られへんですむん?」。

ベイスターズの大矢監督は阪神三連戦終了後、こうコメントを残した。「三つ全部勝つつもりだったけど、勝てなかった。相手が強かった」

「ホームラン打たへんのか?ホームラン打ってもええんやで」

林クンのホームランは、1アウト一塁二塁のチャンスでアニキが凡退した後に出たものだった。

1回の先制点は、アニキの前のシーツが打った二塁打で赤星が一気に一塁から生還するという、今やタイガースのお家芸とも言える「ランナー一塁、二塁打で一点」という得点だった。

その赤星は、この試合で、レフト寄りだった左中間のフライを当然のごとくセンターフライにしてみせた。

一つ一つの球を取れば、どれもかなり良いのだが、勝ち試合を作ることが苦手だった能見が一軍復帰後初戦で、勝ち投手になった。林クンのホームランと同じ意味合いの好投だった。基本、真面目すぎる人たちは「ふつうにすること」が「真面目で一生懸命」になってしまう。気持ちが入れば入るほどにその度合いは高まり、それが良い結果を招かないこともよくあることだ。

林クンは思いっきりバットを振り、能見は思いっきり腕を振った。

そのチームと対した大矢監督は「相手が強かった」と言った。

2アウトランナーなしから桜井が二塁打を打ったことで、そのイニングは9番までまわった。次の回に林クンがホームランを打った。
1アウトランナーなしから矢野がヒットを打ったことで、そのイニングは9番までまわった。次の回にアニキがタイムリーを打った。

赤星は二つ盗塁を決めて見せた。打席では相変わらずカウント2−3を作る。関本はまたエラーしてもおかしくない微妙なゴロを、簡単にアウトにしていた。

横浜の先発秦は、とても球が走っていた。だけど番長ほどいい投手ではもちろんない。だけど油断してたらやられるような投球だった。だけどタイガース打線は追い込まれるまでにほとんどボール球を振らなかった。序盤は、決めれそうで決められない場面が続いた。秦が良かったからだ。だけど林クンが決めた。

「ホームラン打たへんのか? ホームラン打ってもええんやで」

能見はしっかり自分の投球をしていたが、ポテンヒットをたくさん打たれた。横浜打線が好調だったから。能見も杉山も3番と7番に絶好調の打者がいる非常に得点しやすい状況のベイスターズ打線を6イニング、しっかり抑えた。金城と内川だけでなく、村田も佐伯も相川も決して調子が悪かったわけではない。村田は上園から、佐伯は渡辺から、相川は久保田からそれぞれとても印象的な勝負で勝ちをおさめている。不調の打者がするバッティングではなかった。

巨人対阪神、東京ドーム第三戦。大投手戦の末2対2の引き分けだった試合で、ぼくは原監督に力みを感じた、と書いた。2−2の引き分け、勝てなかったことがどちらの痛手だったか、それはジャイアンツの方ではなかったか、と。

ナゴヤドームでの初戦、川上の自滅で圧勝ムードだったジャイアンツは一転、終盤にあわやの場面まで攻め込まれて、なんとか逃げ切ったゲームだった。そして二戦目に堂上兄のサヨナラホームラン、三戦目にマウンドで、

「話にならん」、と。

ジャイアンツは今週、広島、ヤクルトとの六連戦。一つも落としたくない六試合だろう。さぁ、どう出る。

横浜第三戦。タイガースにとって結果的に良かったのは高崎を出してくれたことで、その高崎がとてもいい球を投げていたことだった。右投げの速いストレートとスライダーが武器の投手。山井、朝倉、川上。川上は別格として、山井と朝倉。この二人との対戦になるであろう今日、明日。その予行演習として最適の相手ではなかったか。リードしている場面で落ち着いて高崎の球を見れたこと、これが今日からの二試合に繋がるものと思う。

高崎にはしっかりと抑えこまれた。とてもいい投球をしていたと思う。だから山井と朝倉にいきなりあの投球をされると正直苦しかった。特にシーツとアニキは現状では速いストレートは苦しい。谷繁ももちろんその辺を見込んで、ガンガン速い球で来るだろう。ただ、直前に同じタイプの投手の絶好調の球をリードしている場面で見れたこと。それを踏まえて打席に立てることは大きなアドバンテージだ。そして、打てなかったはずの速い球をシーツがアニキが、初戦の若いイニングにとらえたとすれば、三連戦の流れは一気にタイガースに傾く。ちなみに高崎からヒットを打ったのは矢野と鳥谷。何か、いい予感がする。

赤星がピークを迎えている時に、山本昌が投げてこないのも好材料で、それは自然な形で赤星がスタメンで出ることができるから。絶好調を迎えた赤星はやはりスタメンで使いたい。しかし、山本昌が先発である時に、浜ちゃんを外すことは、やはり微妙にチームバランスを崩す。それが自然な形である時、スタメン赤星、代打の切り札浜中。現状ではこの形が最も強く、それを自然な形で出せる。右の先発が3日間。(横浜第二戦は赤星が三戦連続でスタメンを外れる不自然を嫌ったのだろうと思いました)

「ボークの件」がタブーではないジャンは、もうボークを取られないのではないだろうか。少なくともボークを取られたとき、チームメイトはジャンの味方であることは間違いないと思う。前回の登板は神がかっていた阿部の一発に泣いた下柳先輩。そろそろ勝ちきる頃じゃないだろうか。そして、ボギーは15安打22得点の立役者となった次の試合だ。

アニキは痛い中での打ち方を模索しているように見える。今まで見てきた中でアニキはその打ち方を見つけ次第、急に打ち出すことがよくあった。東京ドームの二戦目でその打ち方を見つけたかに思えたが、おそらくそれ以降症状が悪化したのだろう。また違う打ち方を探しているように見える。第二戦、那須野から喫したあの場面での三振。第三戦、秦から喫した三球三振。暗中模索、非常に混乱しているように見えた三振だった。しかし、第三戦アニキはタイムリーヒットを放った。あれが仁志が低位置にいれば抜けていたかどうかは分からない。しかし、二打席目の三振よりも遥かに何かをつかめていたことは確かだった。

アニキが打てなかった後、林クンがホームランを打ち、アニキの守備範囲であるフライを赤星が当然のごとくセンターフライにして、アニキがタイムリーを打って勝った試合だった。

久保田も前日のリベンジを果たし。ジェフも球児も疲れているだろうが、しっかり仕事をしている。

4チーム潰しあいの三日間は、結果2位と3位が少し上昇し、1位が停滞ムード。4位はやや苦しくなってきたかに見えるがまだ分からない。

現状のチーム状態の順位を個人的な偏見によって並べてみると、
同率1位阪神、中日 3位横浜 4位巨人 僅差で広島 やや離れてヤクルト。

大いに希望も込めてこの三日間。阪神が2勝1敗で中日に勝ち越し。広島で巨人が3連敗。横浜がヤクルトに3連勝。可能性は十分にあると思う。そうなったら、面白いなぁ。。

少なくともいえることは、
「ホームラン打たへんのか? ホームラン打ってもええんやで」
と監督が言うチームは、絶対に強い。。はず。

さぁ、またまた大一番だ。

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2007年08月11日

1番ライト浜中

先生  「自然や。あまりに自然や」
コーチ 「何が自然なんですか?」
先生  「1番ライト浜中や」
コーチ 「あ、それは自然でしたね」
先生  「岡田野球の真髄っていうようなオーダーやったな」
コーチ 「確かに」
先生  「あれはおそらくな、浜中と赤星を同等に扱ってますというお互いに対する配慮や」
コーチ 「ぼくもそう思いました。試合が荒れちゃったからそうはならなかったけど」
先生  「おそらくは、普通に2点リードくらいでゲームが進んでいって、右投手の中継ぎ出てきたら」
コーチ 「浜ちゃんの代打に赤星だったんですよね」
先生  「浜ちゃんが7番におると少し打線のバランスがおかしなるねんな、赤星に代わったときに」
コーチ 「やっぱ、赤星は1番か2番におるんがすっきりおさまる」
先生  「昨日、林クンのとこに赤星を代走で送ってそのまま5番入ってちょっとバランス崩れたなぁっていうとこがあったんやろな」
コーチ 「一点取れてればそれでも良かったんですけど、もう一点とろうと思うと赤星はやっぱりクリーンナップの前に起きたい」
先生  「出塁率がどう得点圏打率がどうっていうんじゃなくて、感覚的な問題」
コーチ 「桜井のあと赤星っていうのは、なんかしっくりこないですもん。でね、ぼく思ったんですけどね」
先生  「おう」
コーチ 「こう、だんご状態になってきて、岡田監督はたぶん日本一になることを考え始めてるんやと思います」
先生  「どういうことや?」
コーチ 「今シーズンって当然クライマックスシリーズあるじゃないですか? もちろん選手は『一位通過』だけを考えてプレーするべきやと思うんですけど、指揮官としてはやっぱり先のことも考えざるをえないわけで」
先生  「せやな」
コーチ 「でね、そしたら今、何を考えて勝利を重ねていくべきかっていうことなんですけど」
先生  「うん」
コーチ 「やっぱりそれはシーズン終了時点で一番強い状態に仕上げるってことやと思うんです」
先生  「なるほど」
コーチ 「もちろん、前半戦の不振が計算の上やったなんてことは思いません。やけど、現在岡田監督は右肩上がりというものを視野に入れてやってると思います」
先生  「そのためには、浜ちゃんが打てることが必要なわけやもんな」
コーチ 「その通りやと思います。左ピッチャーやからって赤星外す理由にはならないんですけどね、浜中使っとかな、プレーオフで打たれへん」
先生  「もちろん林クンと桜井は外されへんし」
コーチ 「赤星はいちおう『ヘルニア』っていう休ませる大義名分があるから、だから赤星なんやと思います」
先生  「飽くまで『自然』にこだわるわけやな」
コーチ 「浜中も使いたい。だけど赤星の気持ちも尊重したい」
先生  「だから浜中ありきのスタメンで」
コーチ 「赤星ありきの打順は一番」
先生  「さすがに『二番浜中』は不自然やからな」
コーチ 「一番は交流戦でもやったことあるし、わりとすんなりおさまります」
先生  「これで今岡戻ってきたらどないしよ?」
コーチ 「それは今岡の状態にもよりますけど、もしも絶好調で帰ってきた場合」
先生  「おう」
コーチ 「シーツとポジション争いっていうのが一番自然やと思います」
先生  「調子のええ方が三番サード」
コーチ 「今岡がサードでシーツがファーストで、赤星、桜井、林クン、浜中のうち二人が外れるのはやっぱり不自然ですから」
先生  「ほな、もしもな今岡がむっちゃ打つ状態で戻ってきたらな」
コーチ 「はい」
先生  「こんな感じになるんか」

相手投手、川上

1番 鳥谷
2番 赤星
3番 むっちゃ打つ今岡(ふつうの今岡やったらシーツ)
4番 金本
5番 林
6番 桜井
7番 矢野
8番 関本
9番 岩田

コーチ 「ピッチャーのところに希望が入りすぎですよ(笑)」
先生  「まぁまぁ。ほんであれやなゲーム終盤は」
コーチ 「ピッチャーのところにシーツ代打で、そのまま9番サードで守備固め。3番にピッチャー、ピッチャーのところに回って来たところで代打に狩野や葛城、繋いでアニキ、と」
先生  「むちゃ強やないか!」
コーチ 「あくまで今岡が『むっちゃ打つ今岡』であることが前提ですけど」
先生  「ほんで相手が左投手の時はどうしよ?」
コーチ 「たぶん今日の1番浜中は、シーズンの途中だから赤星のことも考えて、ってのもありそうなんで、その試合だけ取りにいくんやったらこんな感じやないですかね」

相手投手 山本昌

1番 鳥谷
2番 関本
3番 むっちゃ打つ今岡(ふつうの今岡やったらシーツ)
4番 金本
5番 林
6番 桜井
7番 浜中
8番 矢野
9番 ジャン

先生  「で、ここに『抑えセカンド』の藤本おるし」
コーチ 「葛城はしっかり定着しましたしね」
先生  「勝負強い狩野と」
コーチ 「そのころ復活するために今苦悩している桧山」
先生  「その時に打つために、今桧山頑張ってるんやもんな」
コーチ 「さらに桧山がベンチにおることはやっぱり大事ですから」
先生  「もちろん赤星も野口もおる」
コーチ 「藤原、庄田、坂のうちその頃誰が一軍におるか」
先生  「赤松や中村豊が戻ってくるかもしれんしな」
コーチ 「さぁどうなるペナントレースと一軍争い」
先生  「そんな余裕かましてたらあかんとか思いそうやけど」
コーチ 「強くなっていかないと結局日本一なれませんから」
先生  「『惜しかった』で終わらさないために」
コーチ 「今、できるだけたくさんの人が活躍できるようにしてるんやと思います」
先生  「今年の岡田は準備が早い!」
コーチ 「もちろん『目の前の試合を勝つ』ことが前提なんでね、出したくなかったでしょうけど、今日はJFK出し切って勝ちました」
先生  「ギリギリのバランス取りながら、前に進んで行ってるんやもんな」
コーチ 「打って勝ったらJFK出さなくていいわけで」
先生  「だからできるだけ打って勝とう!!」
コーチ 「『むっちゃ打つ今岡』待ってるでー!!」








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2007年07月28日

岡田彰布が見せた秘策

先生  「昨日はまた監督、最高やったな」
コーチ 「5回ですよね」
先生  「桜井が初球のスローカーブをひっぱたいて、こじ開けたチャンスを、野口がしっかり送って、1アウト三塁を作った」
コーチ 「8番関本、9番上園で、上園よう頑張ってたし、まだ投げさせたかったんやと思うんです」
先生  「リリーフ陣がナゴヤで投げまくってたのもあるし」
コーチ 「関本で1点取りたかったんですよね」
先生  「そのためには、関本と勝負してもらわなあかん」
コーチ 「だからすぐさま桧山をネクストバッターズサークルに行かせました」
先生  「庄田や、葛城ではない理由が『桧山』とい存在にはあるってことやでな」
コーチ 「そうですね、現状のバッティングの状態だけ考えたら左の切り札は庄田やと思うんです」
先生  「だけど、好投の上園を降ろして勝負をかけたイニングに出す代打は」
コーチ 「やっぱり『桧山』なんですよね」
先生  「難攻不落の番長から、一点もぎ取ろうと思ったときに、まともに打撃だけで勝負できるんは、タイガースにはアニキしかおらん」
コーチ 「だからあの場面『甲子園』で一点取りに行ったんやと思います。相手打者との対決だけではない、異様なムードとも対決しなければいけないように」
先生  「せやな。『番長vs庄田』ではなく、『番長vs甲子園』にしてしまうと」
コーチ 「ネクストバッターズサークルに桧山が出てくるだけで甲子園のお客さんは口にするんですよ」
先生  「『あ、桧山や』」
コーチ 「ぼくも言ってしまいますもん」
先生  「ものすごい期待を込めてな」
コーチ 「桧山は甲子園と仲が良いんです」

先生  「関本で1点取れてたら、上園続投やったやろうけど、結果きわどいコースを関本がよく選んでフォアボール」
コーチ 「1アウト1塁3塁になりました」
先生  「そして、甲子園は『ミスター甲子園』のコールを待った」
コーチ 「9番、上園に代わりまして、桧山。バッター桧山、背番号24」
先生  「番長vs甲子園。この対決でしか得点できんと監督は勝負をかけた」
コーチ 「物凄い勝負でしたけど、ここで番長が完璧な投球をします」
先生  「番長が甲子園ごとねじ伏せたシーンやったな」
コーチ 「やけど、その疲労が桜井に打たれたショックと重なって、おそらく番長のリズムを大きく狂わせたんやと思います」
先生  「ツーアウト1塁3塁で鳥谷に対しては、本来の投球ができずにフォアボール」
コーチ 「最初から投手主導のフォアボールではなく、途中からフォアボールに切り替えたフォアボールでした」
先生  「『0−2になったからフォアボールでも仕方ない配球に切り替えよう』というやつやな」
コーチ 「そうです。微妙に番長のリズムではなくなっていったんですよ」
先生  「桜井の『本能打法』と、『ミスター甲子園』がジリジリと番長を包み込んでいった」

コーチ 「そして満塁で2番の坂」
先生  「今日に限って、切り札は『甲子園』だけではなかったんよな」
コーチ 「切り札は『ナゴヤ』でした」
先生  「『ナゴヤの祝祭』を誰よりも感じた男がベンチに控えてたんよな」
コーチ 「代打、矢野」
先生  「ツーアウト満塁で、番長vs『ナゴヤ』」
コーチ 「ナゴヤの夜に吠えた矢野がそのままの姿で打席に現れました」
先生  「アニキの大激走の三塁打」
コーチ 「狩野はあの岩瀬を打ったんでしたよね」
先生  「赤星が300盗塁を達成して4安打」
コーチ 「アニキの11球目のフォアボール。そして林クンと桜井で二点とって、『打線』が戻ってきたあの感覚」
先生  「みんなで勝った第二戦やった」
コーチ 「そして自身の会心のリードで、川上との勝負を制した第三戦」
先生  「アニキの完璧なホームランと」
コーチ 「自身の気持ちが乗り移った決勝犠飛」
先生  「絶体絶命のピンチでの、球児vsウッズ」
コーチ 「三振に仕留めて、吠えた矢野自身」

先生  「『代打、矢野』のコールで甲子園全体が、夢のようなナゴヤ3連戦を全て凝縮して打席にそのエネルギーを集中させた感じがあったな」
コーチ 「矢野はワンボールからの二球目のスライダーをライトを向いて打ちにいきました」
先生  「もう一つも負けられない試合で野球選手が見せる打撃やったよな」
コーチ 「そうですよね。もうすぐ夏の甲子園ですけど、高校野球の決勝点がああいうヒットであること物凄い多いですもん」
先生  「難攻不落の番長に対してなりふり構わず、全てをぶつけた矢野のバッティング」
コーチ 「素晴らしかったです」
先生  「イレギュラーはしたけど、あれは偶然ではないよな」
コーチ 「ですよね。『ナゴヤ』が詰まった打球ですから。あれはどんな名手にも取れないと思います」

先生  「ほんなら、チーム一丸となって番長を打ち崩したタイガース打線と」
コーチ 「それを見事に導いた名将岡田彰布に」
先生  「乾杯!!」

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posted by コーチ at 05:43| Comment(2) | TrackBack(1) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月01日

今年も岡田監督は岡田監督

キャンプイン前日。

ジャイアンツ、原監督の所信表明。
「巨人のユニホームに誇りを持ち、血液が沸騰するくらいに熱く、熱く戦うことが必要だ」

原監督らしい言葉。
監督自身の色が出ていてとてもいい。


対して、ディフェンディングチャンピオン。
我らが岡田監督。

(全体ミーティング後に宿舎サロンで)
−−ミーティングでは何を話した?
岡田監督 「社長が話をして、そんなにないよ」



笑ったなぁ。。

ほんともう「キャンプ前の所信表明が記事になりやすいから、新聞社向けにサービスする」とか、ほんとどうでもいいって考えてるんだろうな、監督は。
そうなんですよ、どうでもいいこと。
大事なことは「優勝すること」。

「社長が話をして、そんなにないよ」

って、過去の優勝経験を持った監督で言った人がいるだろうか?
さすがは、ぼくらの岡田さん。
で、上にリンクしたサンスポの一問一答の記事。
岡田監督のすばらしさが非常によく見えてくる。



−−若手はアピールする?

「そんなんいらん。見てる。エエとこみせて、アピールする必要はない2月1日より、下旬に違った姿をみせてくれれば」



「アピールは?」
「そんなん、いらん」
で、
「見てる」
やもんなぁ。凄いなぁ。

何度も書いたけど、
岡田監督って、本当に「人が見える」んだと思う。
その理由は明確で、
もちろんその敏感な感覚を持ち合わせている人であることもあるのだろうけど、
それに加えて、
「見えやすい状態でいること」
に監督がとても意識的でいようとしているから。



−−監督自身はどういう風にキャンプを迎えるのか

「高ぶるというか、マイペースでやっていく。外にはみせんけど、(心の)中では始まったというのはある。オレは何もすることはない。普通にやる。普通にやるのが一番難しいけどな」



「オレは何もすることはない」
という得意の台詞。
で、
「普通にやる」
そして、
「普通にやるのが一番難しい」


原監督のように情熱を全面に押し出すやり方も、一つのやり方だと思う。
落合監督のように、自分の描くゴールに向かうために、いろいろ策を練るのも一つ。
バレンタイン監督のように、選手の長所を最大限に発揮させるべく自ら先頭に立って、チームを作っていくやり方も素晴らしい。
ブラウン監督や野村監督のようにひとまず「自分の色に染めてから」というのも確かにうなずける。
古田監督は「競争」をテーマに掲げていたし、王監督は「スモールベースボール」を掲げている。

そこに来て我らが将、岡田彰布の

「普通にやる」

こんなにも抽象的だけど、分かりやすい言葉があるか、という言葉。

2005年のタイガース。
抜群に戦力が充実していたわけではない。
開幕前の順位予想でタイガースの順位を「優勝」にした解説者が何人いたか?ということ。
ただタイガースは、強いドラゴンズを振り切って最終的に独走態勢で優勝した。
何でか?
「活躍できるはずの選手が、皆一様に活躍したから」

特に投手。
球児を筆頭に、久保田、江草、橋本、桟原、安藤、杉山。
この辺りの投手が、あれだけの活躍ができたからこその優勝。

そして実績のあった、下柳、ウィリアムス。井川と福原も含めて、
実績者が大幅な脱落をせずに1シーズンを戦いきれたからこその優勝。

これが「普通にやった」ことの結果だった。

岡田監督は「無理をしてケガをすること」にとても意識的だ。
だからこそ、若手に「アピールはいらない」と言い、
ベテランにも「ケガをしたらすぐ言え」と言う。

誰か一人が大活躍する必要はない。
逆に言うと誰か一人活躍しても優勝できない。
無理することはない。
それぞれが、自分の持っている力通り打ったり投げたりしてくれたらいい。
その力を結集すれば、
おのずと優勝できる。

「普通にやる」

チームを構成する人たちの力の合計が、1年間で見た時に最も高くなる方法。

さらに言うと「普通である」という自分自身の状態。
人って、
自分の考えを話そうとしている時とか、って、
案外他人のことが分からなくなる。
情報がそのまま入ってきにくいというか、そういう状態。
たとえば「この曲を聴いて感想をきかせてね」と言われて、
最初はその曲を聴いている。
でも、しだいに「感想をどう言おうか」と考え出す。
そしたら、いまいちその曲が耳に入ってこなくなる。

インプットとアウトプットがぶつかりあうってことで、
いたって当たり前のことなんだけど、
あまりそういうことに意識的な人は見当たらない。

「自分がカラオケで歌うこと」を前提に音楽を聴いても、
音楽はちゃんと聴こえてこない。
というのが、小室哲哉時代前後からのヒットチャートの流れ。

この喩えをそのまま使えば、
「岡田監督って、音楽をちゃんと聴こうとしている」
という状態にとても意識的だと思う。
だからこそ、高ぶる気持ちをあえて抑える。
目を閉じて、耳を澄まし、一音一音に意識を傾ける。

アピールなんていらない。
だって、一音一音、しっかり拾って聴こうとする人が監督だから。
「インプットしやすい状態を保つ」

選手の能力の詳細を見極めるキャンプの時期。
岡田監督は最も重要なことに、最も意識的だ。


−−選手は目標をもってやっている

「一から自分を鍛えなおすかどうか。もう一回基本に戻って。3割とか、赤星は200本打つとかいうてるけど、1本1本の積み重ね。10月になってそういう数字が勝手に出る」


「10月になってそういう数字が勝手に出る」
そう、
「勝手に出る」

これが岡田さんの真髄。
結果から先に考えない。
3割打つための努力じゃない。
「鳥谷よ。優勝するために、おまえが毎日ふつうに力を発揮し続けたら、打率は3割になってるわ」
「赤星よ。優勝するために、おまえが毎日ふつうに力を発揮し続けたら、ヒットは200本になってるわ」


だからタイガースは強かったし、
今年も強い。
力のある選手たちが、その力を最も発揮できる環境を監督が作るから。
そしてその環境は、選手のことが最も「見える」環境だから。

これは驕りでも、冗談でもなく、
岡田監督の言葉をかりて、
「ふつうに優勝してほしい」

キャンプイン当日の朝。
ぼくはそう思ってるんだ。

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posted by コーチ at 08:02| Comment(3) | TrackBack(2) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月29日

岡田監督と喜田選手

虎ブログ界のアニキで、虎ブログ界の矢野のような存在であって、
ぼくもとても尊敬する、
自称タイガース評論家のtoraoさんが、喜田選手について書かれていて、
感銘するとことがあり、その感銘を書いてみたいと思いました。


ブレーク含みの喜田。見た目もずいぶん変わったと思う。数年前から個人的に専属トレーナーを付けて、食事からトレーニングから徹底して体質改善し、減量&瞬発力アップに成功したとか。体つきだけでなく、顔つきというか、眼の力というか…雰囲気が出てきた。
自称タイガース評論家様より引用。


ぼくも早朝にこの写真を見て同じことを感じました。
ブレイク前に閉塞感を突破すべく、必死にあえいでいた頃のカープの新井選手に顔つきが似ているかなぁ、とそんな印象で。
こんな顔する人は、是非とも状況を突破してほしいとそう願いました。
望んでいる世界は、いったい現在の自分からどの程度の距離があるのか分からない状況。
近いのか、遠いのか、それが分からない。
でも己を研ぎ澄ますしか、望んだ世界を見る方法はなく、
だからこそ、研ぎ澄ますことを継続している若い男の表情。


秋季キャンプで岡田監督から「アッパー気味で振るように」とアドバイスされて、感じるものがあったという。バットスイングなんて、本気で考え始めたら何がなんだかわからなくなるような複雑な運動だが、確かにそんなバカバカしいほど単純な一言からコツをつかむということもあり、そういうシンプルな言葉を出せるかどうかが打撃コーチの技術とも言える。

(中略)

これまで二軍で頭角を現しても一軍でガチガチになっていた喜田だったが、練習量や技術面での自信が出てくれば、もっと打席でリラックスして球を見られるようになるだろう。岡田監督の実になんでもないアドバイスが、喜田の大ブレークを呼んでくれると良いなぁ。

自称阪神タイガース評論家様より引用。


toraoさんは文中で、

岡田監督の実になんでもないアドバイスが、喜田の大ブレークを呼んでくれると良いなぁ。

そう書かれているのですが、
大ブレークするような気がぼくもしました。

種類は違いますが、ぼくも職種上、新人指導ということはかなり若い頃からやってきました。
その過程で大事にしてきたことが、
だいたい3つくらいあって、
それは「結果的にできるような道筋に乗せてあげること」と「いったん乗せてあげたらあとは自力でできるようになるまで待つこと」と、もう一つは後で書きたいのですが、
コンビニの仕事なんて、そりゃもうむちゃくちゃ簡単なので、
本気でやれば、1週間毎日来れば、ほぼ全部できるようになります。
でも、彼らの生活はもちろんアルバイトだけではないので、
そんなことはさせたくないし、
なので、「本気でやれば1週間」という仕事を、
出会って間もない年下の弟や妹みたいな青年たちの空気を見ながら、
「だいたいこのくらいの期間かければラクにできるようになるかな」
ってそういう「所要期間」についてはつかめるようになってきました。
で、あとはそれを待つだけ。
のんびりと彼らの話を聞きながら、
次第に「本当に思っていること」を話してくれるようになることが嬉しく、
よく笑い、時に泣き、
そんな職場になってきたかなぁ、と、少し自分の話でした。

もちろんプロ野球はコンビニの仕事よりも遥かに難しい仕事なので、
一朝一夕でどうこうなるものではないでしょう。
しかし、岡田監督のイメージの中に「所要期間」のイメージがはっきりと見えているような気がします。

適材適所の観点から、人を見る目が抜群に長けた岡田監督。

岡田監督の中で「ここまで来れば、あとは待つ」そういうラインが設定されているように思います。去年の鳥谷などはそのラインに到達していたということなんでしょう。
今年の鳥谷に対して「3割20本は当たり前に打てる」なんていっているのも、
その「期間満了」に対する自信なのではないかなぁ。
喜田選手が「自力でできるようになる」という部分で、
岡田監督のイメージを・える「でき具合」を見せ、一定のラインに到達したならば、
きっと待ってくれると、そう思います。

で、最後に指導に当たって大事だとぼくが勝手に思っていることの3つ目ですが、

「これまで二軍で頭角を現しても一軍でガチガチになっていた喜田だったが、練習量や技術面での自信が出てくれば、もっと打席でリラックスして球を見られるようになるだろう。」

「自信」というキーワードに関して。
「自信」というのは、文字通り「これでいいんだ」と自分を信じることなのだと思うのですが、当然誰にとってもそこまでの道のりは長く、とても険しいものだろうと思います。

じゃあ、何ができれば「これでいいんだ」っていう場所に到達できるのかって、
そのことについては考えながら仕事をしてきたのですが、
教える側のできることと言えば、それは、
「していいこと」と「してはいけないこと」がはっきり分かるという安心。
このことを出来るだけ早く、正確に伝えることかなぁと思っています。

たとえばコンビニの仕事で言えば、
「このジュースは入荷当時はよく売れていたけど、ここ数日ぴたっと売れなくなってきたから、別のものに変えたほうがいいんじゃないのかな?入れ替えてもいいのかな?でもぼくはまだ働き始めて3ヶ月くらいだし・・・」
と、アルバイトの誰かが思ったときに、当然ぼくは、思うようにやってみてほしい。

なのでぼくは最初に「万引き以外はだいたい何でもやっていいから、いいと思うことは全部やってください」ということを伝えます。
売り上げが上がると思ってやることに不正解はないですもんね。
その気持ちを持ってくれたことが嬉しいし、
「入れ替えていいすか?」
「いいよ」
という、安心の関係性の中で仕事ができることはぼくにとってもとてもありがたいことなので。
「今働いているアルバイトの人たちは、概ねそういう環境で働いてきた人ばかりやから、
先輩やから、後輩やからってそんなこと思わへんで。来年の自分がそんなこと思うと思う?」
「いや、思いません」
「ほな、どうぞ」

やっていいことが増えた人たちは、やっぱり一つ楽しみも増えてそれが「自信」に繋がってくれたらなぁ、とかそんなことを考えます。

で、前置きが長くなりましたが、
岡田監督の「アッパー気味で振るように」という飛びぬけてシンプルなアドバイスって、
この「やっていいこと」を明確にするという意味において、
とても分かりやすく「自信」に繋がる言葉じゃないかと思ったのです。

岡田監督から喜田選手へのメッセージは、これ以上ないシンプルさの
「おまえは、打て」
そういうことだと思います。

打席でも練習中もいろいろ考えんでいい。
おまえは打ったらええ。
だって打ったら点が入る。
点が入ったら勝てるやろ。
だからおまえは打ったらええ。

ダウンスイングが体に染み込んでいる人というのは、
一般的に、「厳しい環境で野球をしてきた真面目に言うことをきく、素直な選手」という人が多いように感じます。

喜田選手、なんとなくそうじゃないかなぁ、と思うのですが。

「アッパー気味に」
それはスイングの軌道もさることながら、
「もうちょっと力を抜いてさ」
という、実直すぎる喜田選手の心に対するメッセージなんじゃないかと。

同じ意味合いで違う言葉に置き換えれば、
「新庄を見てみろや、あれでもメジャーリーガーやってんで」
とか、こんな感じかなぁ。

「練習でのスイングが完璧であること」と「試合で打つこと」は実はあまりリンクしません。
重要なことは当然「試合で打つこと」であって、
岡田監督は、「試合で打てるように」という道筋に乗せ、今は「打てそう」という状態になっているかそれを見てみようという状態なんじゃないかなぁ。

「打てそう」なら、あとは待ってくれる。

キャンプ、オープン戦での喜田選手。
どこまで「試合で打つ」ことができる可能性を見せられるか。

そのことを楽しみにキャンプインを待ちたいです。


トラックバック先
「自称阪神タイガース評論家」〜雌伏から雄飛!喜田55〜



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posted by コーチ at 12:29| Comment(5) | TrackBack(0) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月25日

お風呂と采配

ぼくはお風呂が大好きだ。

頭を洗い、顔を洗い、髭を剃り、体を洗う。
そして入浴剤を入れた熱い湯船に体を沈め、息を吸って息を吐く。

冬に固まった筋肉、特に野球をやっていた中学、高校時代に痛めた腰の影響で、
ふとももの裏が張る。
だから湯船に沈んだ後、まずはふとももの裏を伸ばすストレッチをする。
すると、次第に血が通ってくるのが分かる。
ふくらはぎもマッサージして、腰も指圧する。
汗が滲んでくる。
首の裏や肩をできる範囲でまた指圧。

そして目を閉じる。
何も見えない状態の中に、お湯が揺れている気配を感じる。
石鹸や、お湯の匂いも感じることができる。

耳を澄ます。
お湯が揺れている音を聴く。

仕事のことや、世間の喧騒を頭から取り除いた時間、空間。

湯船に沈む前に、換気扇はスイッチを切る。
目を閉じたとき、その機械音は、湯船に沈んでいる自分と矛盾するから。

湯船の音を聴き、
匂いをかいで、
湯船に沈んでいたはずのぼくは、
しだいに湯船から浮き上がってくる。

そして、お風呂はおしまい。


この記事を読んだ。
http://www.sanspo.com/baseball/top/tig200601/tig2006012502.html

強引にまとめると、
岡田監督が、「古田は選手であって監督やったら、何回マウンドに行くことが許されるのか?
と監督会議でちゃんと決めときたいと思っている」という内容

見出しには「古田に挑発」とか、書いてあるけど、おそらくそんなことはない。

岡田さんはきっと、
気になるんだと思う。

強引に結び付けようと思ってお風呂のことなんて書いてみたけど、
ぼくが、「いざ湯船へ」という時に換気扇のスイッチを切るように、
岡田さんは「曖昧なものを気にしながら試合をする」ということが、
試合中の自分と矛盾するのだと、そう思った。

そんなものは別にどっちでもよくて、心の隅に排除したまま、
作戦や投手交代を考えることができる監督だっていると思う。

明日の仕事のことを考えながら、風呂に入るみたいな、
「入る」という行為に関して言えば、あまり「入れていない」お風呂と同様。

それは采配のようでいて、実はあまり采配できていない「采配っぽい」采配。

岡田監督はあまり策を講じない。
だけど、試合中の彼は驚くほどその采配に没頭しているんじゃないか、ってそう感じた。
だからこそ、「曖昧さ」という異物がとりわけ気になる。
「曖昧さを気にしながら試合を行っていく状態」と「その時の自分」が矛盾する。
言い換えれば「彼が考える野球」と「それ」が矛盾するんじゃないかな?

そんなことを感じた記事でした。

ま、考えすぎかな?笑

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posted by コーチ at 17:41| Comment(5) | TrackBack(0) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月05日

岡田野球とビジネスの矛盾

野球はビジネスだが、岡田野球はビジネスではない。

ビジネスではない気持ちで、全てをやってきたその結果、優勝し、ビジネスに繋がっているということだ。

そして今回も、逆転ホームランを許した井川に、岡田監督は「今日は良かった」という旨のコメントを残した。「いいとこを探して褒める」。それは「そのほうが井川が働くから」というビジネス的感覚ではなく、「井川に勝たせてあげたい」という「担任の先生的感覚」だと思う。「チームのために勝ってほしい」「井川のために勝ってほしい」。

ビジネスありきの人に岡田野球は分からない。

大事三連戦の初戦をことごとく落としてきた井川。でも、先発させることをやめなかった監督。そして2戦目、3戦目をなんとか勝利し続け、優勝したタイガース。

しだいにうまれてきた「初戦を井川で落とすということ」の意味。

人望があるのは、井川ではなく、監督である。
前半戦のある時期を除いて、井川を信じてエールを送り続けた監督。
そんな監督のためにも、結果を出してやりたいと奮い立つチーム。
しかし、負ける。
「えらいことだ」とさらに奮い立つチーム。
翌日、勝つ。

この意味では井川の先発失敗は、岡田監督の求心力を高めたといえると思う。

そして、ここで重要なことは、

「監督はそれを狙っていない」ということ。

「たまたま」なのだ。「結果的にそうなった」なのだ。
監督が考えていたことは一つ。

「井川が納得いくピッチングをした上で、勝ってほしいんや」

そんなのはビジネスではない。
でも、「そんなの」がぼくは大好きなんだ。

そして「そんなの」を見たいから、チケットを買って甲子園へ足を運び、
グッズも買いたくなるんだ。

ビジネスは後から産まれてくるもの。

岡田監督が残した結果は、非常にプロセスが分かりにくい。
結果にいたるまでの既存のマニュアルは存在しない。
なぜか?
それは、そのプロセスが形には表せないものだったりするからで、
文字には起こしにくいものだったりするからである。

感性を感性で理解したものが、感性で応え、
笑顔を笑顔で理解したものが、笑顔でそれを表現する。

ぼくはそんな野球を観たいと思っていた。
そしたら、観れた、そんな野球。

来年も、再来年も、ずっとずっと、
ぼくはそんな野球を観ていたい。

一タイガースファンとしての、気持ちです。

どうですか?


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posted by コーチ at 08:35| Comment(6) | TrackBack(7) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月30日

2005年の全ての真実に、ありがとう!!

岡田監督は言葉が少ない。気の利いた言い回しもほとんどしない。
だから、大好き。

人は、自分が抱いている本当の感情をありのままで言葉にしようと思うと、言葉が少なくなる。面白いことも言えない。だって、人はそれほど面白いことを思っていない。面白いことは、思うのではなく、作るもんだ。岡田監督は面白いことをほとんど言わない。それは、言葉を作らないからだと思う。

だから、岡田監督が笑っている時は、心から笑顔になれる時。
笑顔を誘発する感情が、心の底から湧き上がって来た時。

そんな監督が、笑っている場面、たくさん見た。
心の底から湧き上がる「歓喜」を、「本当の笑顔」で表現してしまう、
嘘のつけない、47歳の男の姿をいっぱい見た。
多くの政治家がテレビで見せる笑顔とは正反対の笑顔。
打算、計算、社会人として見せる、そんな「おとなの」笑顔ではない。
「嬉しいから」「笑ってしまう」、理屈ぬきの「少年の」笑顔だ。


そんな人だからこそ、一般的な基準では計りえない鋭い感性を持ち合わせていたのだと思う。
誤解を恐れず言えば、その感性って、誰もが子どもの頃には持っていた感性。
でも、大人になるにつれ失い続けてきた感性。
岡田監督って、それを極限まで保ち、逆に育て、壮年期を迎えた人なのではないだろうか。

「47歳になって、理屈ぬきで笑って泣ける男」

そんな男にぼくもなりたい。


物凄い次元で「感じる人」岡田彰布が作りたかったチーム。
それは、選手個々から発せられるストレスが最小限に抑えられる、そんなチームだと思う。

「仕事だからしかたがない」
「役割だからしかたがない」

これをゼロにすることは不可能。
ぼくの職場にだってあるし、おそらくこれを読んでくださっている皆さんの職場、教室、
そこにもこの種のストレスはきっとあることだと思う。集団から発されるストレスの集合体。その場所が抱えるストレス。

ありませんか?

ただ、それを
「あることだから、仕方ない」と割り切ってしまうのと、
「できるだけなくしたい、だってそのほうがいいから」と努力するのでは、
想像を絶する違いが差が出てくる。
端的に数字で現れているのが、阪神と巨人のゲーム差。
25ゲーム。
よく分からない差だけど、「よく分からないほどの差があった」と考えるのが正しいと思う。
チームが抱えたストレスの差が「25ゲーム」だったんだ。

3番を打っていた金本が割り切っていたものを4番に動かし解放し、
2番を打っていた赤星が割り切っていたものを1番に動かし解放した。
1番を打ち、本人も気づいていなかったであろう今岡の得点能力を、5番に動かし引き出した。
金本、今岡に対する、リスペクトを自然に持ち、かつ「繋ぎ役」が好きでそれをすることによって欠点が補われるシーツを3番に配し、
バッティングの負担をできるだけ軽くするため、矢野は7番だった。

最も悩んだであろう6番と8番は、どちらかのストレスが大きくなりすぎないように、最初から最後まで、二人を交互に使った。

ただ、このスタメンで出ていた、8プラス2の10人の選手の中で、
最もストレスを感じやすかったのは、当然桧山だと思う。
そしてその桧山と監督の間で、「割り切り」ではない「納得」の合意があったのではないだろうか、桧山が心から笑っている姿を見てそう思った。

「桧山にはほんまにすまんと思ってる、でも、スペンサーに感じる部分があるんや」
「それは分かりますよ。金本さんも赤星も外せないですからね。そしたらライトしかポジションないですから。分かってますよ」
「すまん。分かってくれて、ありがとう」
「ぼくが監督でも、きっとそうしますよ」

こんなやり取りがあったかどうかは知らない。
でも、この次元の納得がなければ、終盤にきての桧山の活躍はなかったと思う。
心から併用を認めていた、桧山が素晴らしいし、
それに最大級の「すまん」を持って接していた監督も素晴らしい。

出番が少なかった控えの選手に関しても、おそらく同様の配慮があったのだと思う。
野口、秀太、浅井、久慈。
「不慮の事態に備える仕事」
難しい仕事だけに、当然そこにストレスは生じる。
でも、それは、最小限ではなかっただろうか。

楽天に行き、虫の息だった楽天をなんとか支えた沖原の活躍を誰よりも喜んでいるのは岡田監督だと、ぼくは思っている。

岡田さんって、そういう人だ。

さらに付け加えると、雄弁ではない岡田監督は、
それゆえ「当然のこと」が多い人だろうと思う。
「当たり前のこと」は「当たり前だから」話さない。

よくテレビの解説などで「JFKばかりが注目されますが、橋本、江草、桟原の活躍も見逃せない」そんな話を声を大にして発言している場面を耳にする。

おそらく、監督にしてみたらそのようなことは、あまりに当たり前のことなのだと思う。
負け試合に登板する投手が、その仕事を「当たり前に大事な仕事」そう感じることができるくらいに、それを「当たり前にみんなありがとう」そう感じていたのだと思う。


だから岡田監督が言う「みんな」は、注釈ぬきで「チームに携わったみんな」のことだ。それが伝わらないのがイヤで、「裏方さん、スタッフも含め」みたいなことも不器用に喋っていたけど、そんなことは分かっているんだ。

岡田監督は本当に「みんな」を思う人。
「みんな」に「ありがとう」を思い、
「みんな」が気持ちを解放していることを「嬉しい」と感じる人。

だから球児は泣けるんだ。
あんなにも、あんなにも素直に抱きしめあって泣けるんだ。
心を解放しきった矢野さんと、ともにがんばってきた久保田の表情を見て涙が出てくるんだ。

岡田タイガースを見ていると、
「感じることは、ええことなんや」
そう、後押しされている、そんな気持ちになる。

感じるからしんどいこともあるし、感じなくてもいいイヤな思いを持ってしまうことがあるけど、でも、感じるからこそ強い部分があるんだ、って球児の涙がそのことを教えてくれた。ゲームセット直前の泣いてるのか笑ってるのか分からない今岡の表情もそのことを教えてくれた。ウイニングボールを取ってすぐ、赤星と目を合わせたアニキの横顔を大好きだと思った。二岡を三振に打ち取った時の下柳先輩のガッツポーズにまたジブリを感じた。打席にはまだ8番の関本が立っているのに、6番のスペンサーが打撃フォームのチェックをベンチの後ろのほうでやっていて、やっぱり監督はそのスペンサーをもう一打席、打席に送った。そしてやっぱり矢野は、一番笑っていた。

みんな大好きだ。

ほんとうに、ほんとうに、ほんとうに素晴らしいチームだ。

無策を講じる勇気を持った、言い訳をしない、嘘をつかない野球。
そんな野球が、そんなチームが優勝した。

2005年の奇跡、遂に完結。

ぼくはそのチームを司った将、岡田彰布を、「真将」と呼びたい。
全てが真実、真の心を持った、「真将」岡田彰布。

心から、ありがとう。
もう、たくさんの気持ちが溢れ出して、
言葉はこれしか見つかりません。

だから、言わせてください。
2005年の全ての真実に、

心から、ありがとう。


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posted by コーチ at 08:09| Comment(4) | TrackBack(14) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月28日

感情論の人

ぼくはいつも改革には賛成だった。
野村さんが監督に就任するという時も、同様に星野さんが就任する時も、
とにかく改革には賛成だった。

阪神タイガースというチームは「今のままではダメだ」
ずっとそう思わせる材料を持っていた。

「変わること」にいつも期待していたように思う。


村上ファンドが阪神電鉄株を買収。

このニュースをきき、正直戸惑った。
「なんか、とてもイヤだ」と、そう思った。

変わらないでほしい。
今のままがいい、とそう思った。

そして、ぼくのその気持ちは、
「タイガースが変わった」ことの証明なのだろうとも思った。


毎年、早々と優勝争いから脱落し、Bクラス入りを決め、最下位争いを繰り返していたあの頃ならば、こんな親企業の話にも何かを期待したかもしれない。

しかし、今は違う。

タイガースは本当にいいチームになった。
基本は絶対、今のままでいい。


明日にも優勝が決まるかも知れない時期なのだ。
それゆえ、株を買うには最も都合のいい時期なのだろう。

ただ、

そういうの、ムカつく。
なんか、むっちゃ、ムカつく。


そういうんじゃない野球をしてるチームやねん。


赤星があんなにも必死にファールで粘ったことを、知らない人だから、
それを見てもなんとも思わないような人だから、
きっとこの時期を狙って、株を買ったりできるのだ。


「得だから」


そんな感覚で野球やってへんねん。
そんな感覚で応援してへんねん。


なんか、むっちゃムカついた。


だから井川、今日こそ、今日こそ、
胸のすくよくなピッチングをしてほしい。
この胸のモヤモヤをスカッとさせてくれるような、そんなピッチングを。
ぼくらに見せてくれやしないか。


打って、守って、走って、勝って、そして最後に矢野と笑う。
そこには「損」も「得」もない。
あるのは、「嬉しい」だ。「やったー!!」だ。「わーい!!わーい!!」だ。


イライラした感情のゆり戻しではない喜びを。
イライラした感情なんかぶっとぶような、そんな痛快な勝利を。

無策を講ずる勇気を持った岡田監督。
策を講ずるビジネスマン。

ぼくは当然、岡田さんが好きなんだ。


今日の午後21時頃。
無策で勝った岡田監督が笑うところが見たい。


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2005年09月16日

岡田野球の真髄

「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」

最近の岡田監督の言葉。
そんなチームを堂々と作りきった、名将の言葉。

強いチームと弱いチーム。
ちなみに現在のジャイアンツは決して弱くない。

清原とローズが完全に離脱させて、
工藤先輩が必死の思いでチームを鼓舞した8月12日以降、
先生が「8月12日は工藤記念日にしよう」と言った(笑)
あのドームでの、巨人阪神戦以降、
ジャイアンツは、昨日の負けを含んでも15勝12敗と3つ貯金している状態。
9月だけ取ってみれば、この阪神戦を迎えるまでは、
実に、7勝2敗と絶好調ですらあった。

そのジャイアンツに、この完勝劇。

ジャイアンツが弱いのではない。
タイガースが強いのである。

じゃあなんで強いのか?

平たく言うと、
「みんな、活躍してるから」

橋本と江草、
野間口と内海。

名前で言えば、後者に分があったはずのネームバリュー。
活躍してるのは前者。

投手がいないのではなく、
いるはずの投手が活躍できなかったから、この差がでてるだけ。

昨年、今ひとつだった下柳。
先発に転向して初めての年の安藤。
期待されながら、打たれだすと止まらなかった杉山。
勝つけど負ける福原。
一年中波に乗れない井川。

本当はあまり抑えに向いてない久保田。
実質ルーキーイヤーの球児。
慣れられてきた感のあったウイリアムス。

そして、阪神ファン以外はまだ名前と顔が一致しないであろう、
橋本、江草、桟原。

シーズン当初から悩み続けている井川を中心にした、この投手陣。
不安要素もたっぷりだったこの投手陣。
しかし、球界随一と言われる投手陣。


投手がたくさん居るのではない。
居る投手が、活躍しているだけ。

そして、彼らが活躍できる土壌を作るのが、
監督の仕事。

「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」

ここに至るまでに、いったいどれだけ多くのことをしてきたか。
“動かない”という動きも含めた、働きかけをどれだけしてきたか。

投手起用の面で言えば、岡田監督はワンポイントでの起用をしない。

2点負けてる試合であれば、橋本に、
2点勝っている試合であれば、球児に、
それぞれ同じように1イニングを任せる。

たとえば、ランナーがたまった場面で、福留や阿部といった左の強打者を迎えるケース。
その場面のみを考えれば、橋本より江草の方が抑えやすいだろうと思う。
しかし、おおむねそういう場面で岡田監督は橋本に任せてきた。
逆もまたしかり。
ある時は江草に任せ、桟原に任せ、
9回は久保田に任せ続けた。

「抑えなければならないのは、現在、この場面だけではない。大局を見て全ての投手がそれぞれレベルアップできるような投手起用」

その結果が磐石のリリーフ陣容。
たくさん投手が居るのではなく、
居る投手が活躍したからの結果。

そして、久保コーチをはじめ、コーチ陣に対する
「やったらあかんことはない。いいと思うことは全部やればええ」
という姿勢。

杉山は岩隈から、
安藤と福原は上原からヒントを得て、より素晴らしい投手になった。
下柳は、矢野と二人三脚、技巧派の限りを極めようとしている。
あと、悩める彼はもう少し(笑)


もちろん活躍している選手が素晴らしいし、
担当のコーチも素晴らしい。
しかし、その土壌を作ったのは間違いなく彼、
岡田彰布に違いない。


攻撃陣に目を移してみる。


1  今岡
2   赤星
3   キンケード
4   金本
5   桧山
6   アリアス
7   鳥谷
8   矢野

何なんだこれは?
誰なんだそれは?というような懐かしい名前も並ぶこの打順。

もちろんこれは2004年の開幕オーダー。
岡田タイガース船出を飾った、いや飾れなかったオーダー。

自分の感覚と2003年に対する遠慮がごちゃまぜになったようなオーダー。
でもその中で譲らなかった、4番金本。

岡田采配の妙は、5番今岡の大当たりは当然絶賛されるだろうが、
2年越しで大輪を咲かした4番、金本。
ぼくはまず、4番金本ありきだと思っている。
カープ時代から凄いバッターだったので、いまいち分かりにくいが、
間違いなく、金本知憲の野球人生の中で、
今が一番凄い打者である。

仮に、メジャーリーガーも含めた全ての日本人選手で日本代表を作ろうとしたならば、
松井にするか、金本にするか、4番を選ぶのに本当に悩んでしまうような、
そんなにも凄い選手。
それが現在の金本。
ヤンキースで4番を打てる人と肩を並べている。

そんな選手を3番において、繋ぎ役をやらせるのは、なんてもったいないんだ。
悪くないけど、もったいない。
優勝イヤー。三塁コーチボックスで岡田コーチは思ってたのだろう。

頭が良くて、気配りも出来、野球をとてもよく知っている金本だからこそ、
繋ぎ役をやるのではなく、
その自身の持つポテンシャルを全て解放してもらいたい。

で、今年の大活躍。
あんな場面で、あんなホームラン。
何本見たことか。

岡田采配の妙は基本的にここ。

その選手ができるだけ活きる配置。
赤星は、赤星の前にランナーがいないほうがいいので1番。
本当は藤本に打ってもらいたかった2番。
赤星が盗塁した後、センター前にレフト前に打てる2番。
現在は、そこでの成長を見込んで鳥谷。
2番の資質を持った3番打者になってほしいということだと思う。
繋ぎ役をやるのが好きなシーツが3番。
揺ぎ無い大黒柱、金本が4番。
チャンスになると自然と眼の色が変わる今岡が5番。
不安定なメンタルが、打点を稼ぎ、勝利に直結する活躍をすることで、
いいほうに出ることを狙ったのかもしれない。だとすればそれも含みで大成功。
6番は、ひとまずおいといて。
あとは、7番矢野、8番藤本、関本。
投手の前を打つ8番、実は重要。
出塁すればピッチャーが送りバントできるし、
ツーアウトからなら、8番が出塁することによって、
ピッチャーまで回って、次の回、一番から攻撃できる。

矢野の負担をできるだけ避けたいということで、8番より7番。
去年は鳥谷の負担を最優先したため開幕当初の考えでは鳥谷が7番で矢野が8番だったか。
開幕時の鳥谷、現状の藤本、関本、問題なく8番をこなせる打者。


で、ひとまずおいといた6番ライト。

もうあまりに定着しすぎて話題にも上らない「併用」だけど、敢えて。

監督は両方使いたい。桧山もスペンサーも、藤本も関本も両方使いたい。
で、両方使いたい時のきっかけとして、右投手、左投手で使い分け。
しかし、右左にこだわっているのではない。
例えば、昨日の試合。相手は右の西村で桧山、藤本がスタメン。
西村が降板して、左の岡島がマウンドでも、
桧山と藤本が相変わらず打席に入る。
(昨日は、シーツが途中交代っていうイレギュラーもありましたが)
でも、基本的にはこのスタンス。
先発投手の右左をきっかけにして、
基本、「この試合は任せました」というスタンス。
投手起用と考え方は同じ。

その結果、
4人ともが一直線上に並んで、誰が出てもそれなりに活躍できる状況。
桧山とスペンサー、藤本と関本。ともにタイプが違うので、
単純に比較できないけど、
チームに対する貢献値は、皆同等に高い。
だから誰が出ても、それなりに勝てる。
スペンサーと関本が出てる試合で、
桧山と藤本だったらなぁと思う試合はない。
逆もしかり。

そして、送りバントをしなかった岡田監督。

チャンスで鳥谷。
チャンスで藤本。

とにかくしっかり打って来いと、打たせた監督。

結果、チャンスで鳥谷、チャンスで藤本。
相手にとって決してラクではないバッターになっていた。

そして鳥谷の後、
言わずもがなの、シーツ、金本、今岡。
どんどんラクではない打者が登場してくる。

藤本の後、
代打、濱中、片岡、桧山、スペンサー、関本、浅井。
そりゃもう、大変な打者が控える。

もちろん、うまくいかなかったこともたくさんあった。
送りバントをしていれば勝てていた試合もたくさんあった。
でも、送りバントをしなかったから、勝てた試合の方が多いから、
現在7.5ゲーム差。
実は首位を独走している状況になったのだろう。

7.5ゲーム差というのは、
セリーグの中ではどのチーム同士の差よりも開いた差である。
2位中日と、3位ヤクルトは現在5.5ゲーム差だ。
4位横浜と5位巨人の差は、3ゲーム差しかない。


「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」


そんなチームは、昨日も決して弱くないジャイアンツに快勝した。

初回、赤星が出塁し、
「先頭バッターが出塁」という意味の100倍くらいの意味を持たせる存在感を出し、
気がつけば2塁までいってしまっている。

鳥谷はカウント0−2から、真ん中の球を振りにいくも、ライトフライ。
当てて進塁打よりも、振って進塁できないほうがいい。
一貫している、後々生きる、結果、進塁打にならなかったバッティング。

そしてシーツはデッドボール。
骨折の疑いもあり、ショックだが・・・
でも、関本がいる。片岡がいる。
日本シリーズへ、大きなドラマの伏線と考えたい。

1アウト1塁2塁。
4番、大黒柱。
警戒しすぎでフォアボール。

満塁。

満塁で、人間業とは思えない打率を誇る5番。

得意の満塁ホームラン。

そして、併用を続けてこられた、優勝イヤーの4番バッターの大アーチ。


「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」


追加点は、また満塁が得意な人の前に、
先頭の赤星倒れるも、
しっかり振っている鳥谷のライト前ヒット。
いつも8番でやっている、粘ってから打つ関本が、8球粘ってセンター前ヒット。
4番は警戒されすぎて、また満塁。

で、満塁が得意な人は警戒されすぎてデッドボール。
押し出し。


「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」


頭部デッドボール以降、必死の思いでアウトコースを打ちにいき続けている矢野のホームラン。


「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」


投げては、下柳がほぼパーフェクトな内容で6回途中まで。

で、球児。
ウイリアムス。
久保田。

矢野が自身1000本安打となるダメ押しのホームランを打ったあと、
ニコリともせず、プロテクターとレガースを装着する背後で、
ニコニコニコニコしている岡田監督の表情が印象的だった。

「こんなチーム、こんなチームを作りたかったんや!!」

自分のイメージが見事なまでに具現化された現状にこぼれる笑顔だった。


理想を挙げればきりがないだろうが、、
100のことが全てうまくいくわけがない。

現実的に考えて、岡田タイガースは非常に理想に近いチーム像だとぼくは思う。

現状の7.5ゲーム差は、
岡田監督と同じことをしても、勝てる状況ではないと判断した落合監督が、
野口を朝倉を山本昌を続けて登録抹消したことも関係していると考える。
落合監督が自身の判断のみでしたことならば、問題ない。
しかし、「岡田監督のあまりにも頑なな野球」の前に、
たじろいでしまったようにも見える。
言い換えれば「岡田が落合を動かした」そんな気もしてしまうのだ。

落合監督は昨日、打順も変更した。
直接繋がっているとは言い切れないが、岩瀬が打たれて負けた。

岡田監督の野球は、

金本が4番で大活躍することによって、
球児が抑える。

繋がってるか繋がってるかよく分からない部分を、
「繋がっているのかも知れない」
そう思わせられる野球だ。

そんな時代が到来したのだ。
ぼくたちは野球というスポーツの変遷、その真っ最中を目撃している。

パイオニアは冷遇を受けやすい。
野茂英雄もそうだったし、
地動説のコペルニクスもそうだった(笑)


岡田彰布の、あそことここが関係したのかよく分からないけど、
関係してそうに思えてしまう野球。

ねじれの位置に、たくさんの架け橋をかけた野球。

その全方位が関係しあって、大きな渦を作り、勝利を生み出す。
そんな新しい野球を作った名将はこう言った。


「おれは何もしていないし、みんな役割が分かっているから、動かんでもええ」



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2005年09月15日

愛メイン、それが岡田采配

岡田監督と世間が、なんだか、うまい具合に噛み合ってきていると思います。

「何が何でも球児に記録を作らせてあげたい」

新聞は大喜びで、球児の写真を一面に持ってきていました。

岡田さんは球児の記録のことが大々的に新聞の一面を賑わすとを想定して発言しているか?
おそらくしていない。

星野さんなら、「一面用のコメント」考えてしていたでしょう。
でも、岡田監督はあまりそういうことを考えない。

「球児に記録作らせてやりたいやろ、だって」

岡田監督、もう、それのみ(笑)
だって、そうやろ。
だって、そうやろ。

星野さんは、その気持ちプラス、外向きの扇動が少し入る。
社会の人、大人の人。

球児を投げさせ続けることに関して、
やはり怪我の心配、
シリーズに向けての疲労。
来期以降へ向けての不安。

これから先、
仮に球児が打たれてしまったとき、
世間は、球児を酷使する監督を批判すると共に、
球児に対する心配を大々的にするでしょう。

その空気の中で、優勝戦線を戦うことはいいこととは言えない。
タイガースが保有する、最強の武器。
球児のストレート。
これが最も、いきいきとするために、

「球児に対する不安」

これは、ちょっと、なくてもいい不安。
もうここまで来てしまってるんだし、
あとは、充実した気持ちのままシーズンを過ごしきることの方が
絶対にいい。

ところが、
「球児に対する不安」はそれを難しくさせてしまう。

でも、
「登板数、記録更新」
という大義名分は、その不安をないものに変えてしまう。

自然と出てくる
「頑張れ、球児」の声。

もし打たれても、
「次は、頑張れ」の声。

球児が、余計なものに邪魔されない状態で、
投げ続けることができやすい。


そして、星野さんなら、
こういうことも含みで、
「是非とも、取らせてあげたいねぇ」
そう言っていただろうと思う。

でも、岡田監督は含まない。

「だって、球児に記録作らせてあげたいやろ」

それのみ。それだけ。
そしてその結果、うまれて来る、
過ごしやすい環境。

世間と監督がマッチしてきたなぁ。。


ぼくは星野さんも岡田監督もどちらも大好きだ。

でも敢えて比べれば、岡田監督のほうが好きだ。
愛の比重が大きいから。

愛メインの岡田采配。

さぁ優勝まで、
監督が愛する選手たちが、
ぼくたちが愛する選手たちが、

いよいよ、
本当にいよいよ、
「もう楽しくてしゃーなくて笑っちゃう」って、そんな状態で、
優勝までひた走ってくれそうな気がする。

全部勝てるわけない。
だけど、
「楽しいから」→「次の日勝てる」
「大好きだから」→「打つし、抑える」

信じられないような、そんな素晴らしい瞬間が、
目の前に、すでに存在しているような気がする。

長きに渡る低迷期、
2年前を経ても、まだ拭い去れない、
「本当なのか?」
という思い。

これからの2週間が、その思いを払拭してくれそうだ。
「本当なんだ」これは「本当なんだ」

愛メインの采配は、
今度はいったいどんなことを教えてくれるのだろう?

楽しみでしかない。


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posted by コーチ at 06:28| Comment(7) | TrackBack(2) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月08日

世は時として策士を讃える。しかし、彼は策士ではない。

世は時として、策士を讃える。

しかし、彼は策士ではない。
「無策の勇気を持つ者」だ。

世は時として、策士を讃える。

そして、策士のとった老獪なポーズ。パフォーマンス。
それを「さすが策士」だと言う。

しかし、彼は策士ではない。

監督が取った行動、笑顔、言葉。

その全てが、

「策」ではなく「本当のこと」だった。
ありのままの「本当の姿」だった。

作られた感情、見せかけの感情、結果のために必要な感情なのではない。

本当の感情。
本当の愛。
本当に「優勝したいんや」というその気持ち。


本当に勝ちたかった彼は、
本塁上でせめぎあった、中村豊、矢野輝弘の気持ちをそのままに、
その気持ちを解放した。

理不尽な判定に、
悔しさを爆発させた、
大好きで、
大切な、
かけがえのない、
彼のチームメイトのために、
没収試合になってもかまわない、と、
覚悟を決めた。

全て自分が責任を取る。
だからおまえらは我慢せんでええ。
さぁ、怒ろう!!
理不尽に対して思いのままに怒ろう!!

彼はチームメイトを抱きしめた。
本当の気持ちで抱きしめた。

おまえらは悪くないよ。
おまえら本当によく頑張ってるよ。
それやのに、あんなひどいことはないよなぁ。
こんなにも、ずっと一生懸命頑張ってきたのにな。
あんなにもひどいことばっかり起こっていいはずがない。
そんなことあってええはずないやないか!!
オレが、オレがなんとかしたる!!

だってオレは、監督やで!!

18分間の抗議。それは18分間の肯定。
すべての気持ちに対する肯定。

全部を肯定した彼は、
同点に追いつかれ、
マウンドへ登った。
監督になってはじめてのことだった。

そして・・・


笑った。


本当のことをわかちあうもの同士のみが見せる、
「本当」が溢れ出した

そんな笑顔だった。


いつも「本当」のかわいい抑えのエース。
強くなった抑えのエース。
大好きな人に、大好きだと言ってもらえた抑えのエース。

「本当の気持ち」で勝負する抑えのエースは。
「本当の気持ち」のまま「本当の抑えのエース」になった。

11回。

チームを支えてきた、
控えのキャプテン。

甲子園予選準決勝。
これまで出場機会がなかった控えのキャプテンに打席が回ってくる。
後輩のレギュラーを支え、
大声を出し、

チームを盛り上げ続けた控えのキャプテン。
背番号二桁の控えのキャプテン。


神様は頑張る人を見放さない。


夢の甲子園に向けて、

大きな大きな、

大きな大きな、

大きな大きな、

ホームラン。

高校生活、最初で最後のホームラン。

キャプテンのガッツポーズ。
3年間の思いをぎっしり詰めたガッツポーズ。

チームが手にしたもの、
それは勇気。

中村豊。

最高の「本当」を溢れさせ、ダイヤモンドをまわる。


ナゴヤ決戦、第二戦。

本当に「抑えたい」と思う気持ちは、世界一の2番を封じ込めた。
本当に「頼られた」4番バッターは、「ワシに任せろ」とホームランを打った。
本当に「我慢して」使い続けた2番バッターは、2塁ベース上で「本当の」笑顔を見せた。
本当に「速いストレート」は、速さと気持ちが融合したストレートだった。


そして、


指揮官の思う、本当の「大好き」は、
選手たちが理不尽に抱えた、本当の「憤り」を浄化した。


メイクドラマ

昔こんな言葉が流行ったっけ。

その頃そのドラマの脇役Tでしかなかった、タイガース。

今は堂々たる主役。

さらに、主役は教えてくれた。

本当のドラマは作られたものではない。

本当のドラマは生み出されるもの。
本当の気持ちから、生み出されるもの。


策士ではない彼の気持ちが生み出した、
本当のドラマを、
ぼくたちは見ているんだ。


世は時として、策士を讃える。
しかし、彼は策士ではない。

岡田彰布。

「策」を「愛」で制する男。


野球の神は、友を愛する者を、導かれし。


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posted by コーチ at 07:39| Comment(11) | TrackBack(8) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月07日

9回の対決を18回にすりかえる

コーチです。

昨日仕事前に大急ぎで書いたものを詳しくの続き。

岡田采配。
考えることが本当にかっこいい。

5回3失点、井川降板。

もう精魂尽き果てた感じだったので、しかたあるまい。

で、昨日の中田の出来を見るにつけ、逆転するのは正直難しいゲーム。
そんな試合だってある。

ここで、
「少ないながら勝つ可能性」と、
「最も悪い負け方を避けること」を求めた場合。
出てくる答えは同じ。

ドラゴンズの集中力を切らせること。

最も悪い負け方とは、
それでも勝ちにいくポーズを見せて、福原、球児あたりを投入し、
ビンビンの集中力だったドラゴンズ打線に打ち込まれること。

それを避ける意味で、桟原、ダーウィン、妥当。

で、桟原とダーウィンが投げることにより、生まれてくる、非緊張感。
「諦めました」というポーズ。
正確にいうとそのフリ。

ドラゴンズの集中力をいったん切って、チャンスを窺いたかった。
同点に追いつけたもんならば、間違いなく勝てる。
あそこで、福原や球児を投入するよりも、
桟原のほうが勝てる可能性が高い。
以前も同じことを言ったが、大負けする覚悟で勝ちに行く。
非常に大胆な岡田采配。
いい試合をしても負けは負け。
そして、いい試合をしにいった先にある「最悪な負け方」というリスク。
これは危機管理上、事前に回避。

井端がホームランを打ってしまったことが、どうしようもない点だったが、
おおむね目論見は当たっていたと思う。

7回以降のドラゴンズ。序盤とは全く別のチームになってしまう。
なんでもないゴロをエラーする荒木。
ハーフスイングであっさり三振する井端。
微妙なキャッチャーゴロの判定をニヤッと笑って引き下がるウッズ。

ビンビンの集中力を取り除いた結果。

対してタイガース。
打てないけど(おそらく中田対策に失敗したものと思われる。鳥谷の打席はストレートを打ちにいってスライダーを見極められなくて内野ゴロってアウトばかり。対策したものが裏目に出てしまった感じだった)
打てないけども、集中力は切らさなかったタイガース。
9回に、2点返すシーンが訪れる。

いったん切れた集中力。
もう一度、その状態に持っていくことは案外容易ではない。
それでもドラゴンズならばある程度は持ち直してくるだろうが、
微妙に歯車が噛み合わない感じで序盤を過ごしたならば、勝機は十分にあるだろうと思う。

2連戦を18回の攻防と捉え、後半のイニングを勝ちに行ったかのような采配。

はまるといいな。

とにかく初回。前のナゴヤ決戦はアニキが3ラン打ったんだっけ。
そして、微妙に歯車を狂わせることができれば・・・
そろそろアニキ。
そろそろアニキ。

ぼくはアニキのキーホルダー握り締めて応援してますから!!


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posted by コーチ at 12:02| Comment(2) | TrackBack(0) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月06日

18回の攻防にすりかえた岡田監督の見事

コーチです。

ナゴヤ決戦。
初戦、敗戦。

ただ、それほど心配のない敗戦。
心配になる敗戦になる危険も大きく孕んだ試合内容。
よくぞ、5−2でゲームを終えたと、讃えたい。

あの展開で5点しか取られなかったこと。
非常に大きい。
あと一歩で、大崩れしかけた井川の踏ん張り。
よく頑張って投げていました。

とにもかくにも、
くどいようですが、
井川が悪いのじゃなくて、井端が凄い序盤、中盤。

世界一の二番。ゆるぎなき存在感。
あれだけ井端に活躍されたら打つ手なし。
本当に2の満塁の場面を最小失点でよく凌いだ。
強くなった井川に拍手。

で、岡田采配。

今日も、見事。

5回3失点で、井川の後。
桟原→ダーウィン。

中田の投球内容を考えてほぼ難しかった試合。
3点差も球児で勝ちに行くという姿勢は、逆に自分を苦しめる。

それよりは
「天王山ぽい雰囲気を取り除いて、ふつうの中日戦にする」

これがはまった。

後半になるにつれて、ポンポンアウトになっていくドラゴンズ打線。

岡田監督のプラン

「明日の試合も入れて18回で勝てるような野球にする」

そして9回目に2点返した。
しかも、野球のルール上。明日の試合は0対0から始まる。
18回あれば逆転できた試合にした岡田采配。

さらにリセットされる明日。

勝てる可能性、高い。

コーチは仕事に言ってきます◎


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posted by コーチ at 21:54| Comment(6) | TrackBack(9) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月05日

さぁ岡田彰布を讃えよう

札幌、延長10回。

岡田監督のことが大好きな野球町ですが、さすがにさすがにあの場面・・・

先頭の今岡、フォアボールで出塁。
際どいコースに必死に手を出さなかった、魂の四球。

ノーアウト1塁でスペンサー。
ホームランを含む、唯一のヒットを打っていたスペンサーだった。
いや、でも。

先生  「あそこは代打やと思ったなぁ・・・」
コーチ 「なんぼ岡田さんでも、あそこまでリスクを背負う采配をするとは思わなかったです」
先生  「赤星に“打て”言うて、自分でバントした場面とは違うからな」
コーチ 「赤星とスペンサー。一塁に到達するスピードが違います」
先生  「ランナー今岡、打席にスペンサー」
コーチ 「ピッチャー川村」
先生  「ダブルプレーが目に浮かぶ」
コーチ 「もしくは、スペンサーがダブルプレーを怖がったとこを逆手に取られて、高めの速い球を内野フライとか」
先生  「リアルすぎる」
コーチ 「そして、なおもランナーは今岡」
先生  「動くに動かれへん」
コーチ 「でも、岡田さんは、スペンサーを打席に送ったほうが得点が入りやすいと思ったからそうしたんですよね」
先生  「それって、凄い勇気やで。勇気と愛やで」


岡田監督があの場面で採用できた作戦。
@スペンサーに代打久慈で送りバント
Aスペンサーに代打桧山でライト方向に引っ張る打球を期待する
Bスペンサーそのままで、スペンサーのバッティングに期待する


コーチ 「ぼくらスペンサー大好きですけどね」
先生  「岡田監督はもっと大好きなんやろな(笑)」
コーチ 「まぁ他にも作戦の立てかたはなんぼでもありますけど、現実的に岡田監督でもやりそうな作戦といえばこんな感じですよね」
先生  「せやな。間違っても、今岡に代走だして、代打久慈でバントエンドランなんかはありえへん」
コーチ 「でもそういう作戦の方が“思い切った作戦”言われますけど、監督からしたらラクですもんね」
先生  「あとあといろいろ言われにくいしな。ベタで分かりやすいから」
コーチ 「ただ、スペンサーをそのまま打席に送るって」
先生  「シュールやでなぁ(笑)」
コーチ 「ようそんなシュールなこと、あの場面でできるなぁってほんま思います」
先生  「勇気あるで、ほんま」
コーチ 「あれでスペンサー、ダブルプレーやったら、スポーツ新聞に何書かれるか分からないですよ」
先生  「ほんまになぁ、夕刊とかやったら、“ある球団関係者”がいっぱい出てきて、いっぱい批判するしな(笑)」
コーチ 「“どんな場面でも『お前にまかせた』って何もしない監督に、もう選手たちもあきれ返ってるんですよ”とか(笑)」
先生  「“球団内部では、岡田監督の間は優勝は無理というのがもう当たり前になってますね”みたいなタッチでな(笑)」
コーチ 「ああいうの、ええ加減やめたらいい思うんですけどね」
先生  「週刊誌も夕刊も、ああいうタッチでものを書くマニュアルでもあるんかな?」
コーチ 「そんな気もしますね」
先生  「まぁそんな結果論メディアのことなんかどこ吹く風、岡田監督は自分の感覚を貫いた」
コーチ 「ほんま素晴らしい監督ですよ。ぼく、テレビ見ててスペンサーが打席に向かうとき嬉しすぎて、笑いが止まらなかったですもん」
先生  「コーチ、シュールなん好きやもんな(笑)」
コーチ 「シュールさに興奮した笑いです。マジで」


1塁ランナー、魂のフォアボール今岡。
打席にスペンサー。

結果。
「打て」のサインも、スペンサー自らバントの構え。
監督、ベンチで笑み。
「打ってこい」
その結果。
ご存知のように、止めたバットにボールが当たり、
最高の送りバント。
転々とするボール。
全力疾走のスペンサー。
間一髪ファーストはアウト。1アウト2塁。

今岡に代走を出さない理由は簡単。
矢野、藤本。
二人とも「なんとか打たなきゃ」
それを強く思いすぎてしまう人たち。
今岡に代走は、当然、「10回で決めなければ」という意識が強くなってしまう。

その意識が強くなりすぎたときの矢野、藤本。
いい結果は生まれにくい。
ただでさえ、そういう気持ちが強くなってしまう場面。
なるべくいつもどおりの普通のイニングと同じように。

ヒットで際どいタイミングになって、「代走を出しておけば一点だったのにということが起きる可能性」と、「代走を出したことによってヒットがでにくくなる可能性」
二つを天秤にかけて、
今岡はそのまま。分かりやすい。

2塁に、走るのは遅いが一生懸命走るシーンが目立つ今岡。
打席に矢野。

THE矢野というようなライト前ヒット。

今岡は当然、3塁ストップ。

1アウト 1、3塁。
打席に藤本。

まだ桧山も濱中もベンチにいる場面。
そのまま藤本。


先生  「なんか痛烈に岡田采配の見事を感じた場面やったな」
コーチ 「そうですね、改めて藤本が打席に立ってみて分かることがありましたもんね」
先生  「代打を出す理由がない」
コーチ 「ああいう場面で、藤本がラクなバッターじゃないんですよね」
先生  「せやねん。濱中、桧山と比べても、遜色ないイヤさを藤本は持ってる」
コーチ 「2年前優勝したときは、打率は今よりはるかに良かったですけど、ああいう場面での格として濱中、桧山の方が上でしたもんね」
先生  「ところが、昨日の藤本にはまったくその格負けを感じなかった」
コーチ 「濱中、桧山にも」
先生  「ピッチャーの川村にも」
コーチ 「決して調子のよくない藤本が」
先生  「格負けしない」


これまで、一貫して、細かい一点にこだわらず野球をしてきた。
1アウト1、3塁。打席に藤本。
スクイズでも全然おかしくない場面で、スクイズという頭はまったくよぎらない。
8番、藤本が打って得点する。
そういう野球。

続けてきた結果。
藤本はあんなにもたくましい選手になっていた。
そして、決勝打。

藤本はこれでまた一回りたくましい選手になるのだろう。

スクイズが悪いわけではない。岡田さんだってやることもあるだろう。
スクイズをやるのは、本当に本当に最後の最後なのかもしれない。

対、ソフトバンク第7戦。
藤本のスクイズがあるのかも。
そして、その試合まではやる必要ないのだ。
試合は続いていく。トーナメントではない、リーグ戦。
二つの決定的な違いは、
勝っても勝たなくても、次の試合があるということ。
次の試合があるということは、その選手がまた出るということ。
連続していく試合の中で、
その選手が少しずつでもたくましくなっていける采配。
岡田監督が一貫してやってきたこと。
その一つの結果が昨日だと思う。

スペンサーが唯一のヒットを放ち、完封、あるいはノーヒットノーランを避け、
藤本が決勝タイムリー。

先生がこの間言ってた。

「スペンサーは日本語を覚えて、通訳になってほしい」

どんな形でもずっとベンチにいてほしい選手だ。
今年、大事な試合でお立ち台に上がってほしい。
そして数年後、外国人投手交代の場面で、久保コーチとともにマウンドにいく姿。
見てみたいなぁ。

それにしても、岡田采配の見事。
近年の野球を根底から覆す、新しい野球。
「無策であるメリットを信じ、無策を講ずる勇気」

こんな監督、ぼくは見たことがない。
見たことのない、かっこよさだ。

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posted by コーチ at 16:13| Comment(9) | TrackBack(3) | □監督 岡田 彰布 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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