2007年09月15日

ドラゴンズが見せた、9回表「五つの勇気」

先生  「ゥゥゥゥゥナイスゲーム!!」
コーチ 「いやいやほんまに、手に汗握るってベタですけど、ほんまに手ビショビショでした」
先生  「結果的に負けてもうたけど」
コーチ 「これやから野球はほんまにおもろいんですよね」
先生  「東京ドームでジャイアンツがまた物凄いゲームやってのけたみたいやし」
コーチ 「9回に5点差追いついて、11回にサヨナラですよね。清水が決めたみたいです」
先生  「凄い! 凄いぞジャイアンツ!!」
コーチ 「なんか、今年のプロ野球の見方。見るべき姿勢っていうんですかね。そういうのをウッズと球児が教えてくれた感じでしたね」
先生  「せやなぁぁ」
コーチ 「9回表。マウンドには球児。ウッズ決勝タイムリーその直前の球をファールした時でした」
先生  「ウッズ、ええ顔で笑ってたんよな」
コーチ 「最高の投手と最高の打者との対戦が、優勝をかけた大一番の試合を決める局面で訪れたときに起こった、最高の勝負の中でのみ生まれるような、そんな笑顔に見えました」
先生  「ウッズ、楽しそうやったなぁ」
コーチ 「2アウト2塁3塁で自分と勝負してくれたこと。全部ストレートでそのストレートがほんまに凄い球であること。調子がよくてそれをファールできてる自分。さらにその場面は優勝の行方を左右する大きな大きな一球一球」
先生  「その舞台の主役を演じてるんやもん。嬉しくなってくるよな」
コーチ 「球児に対するリスペクトと、その球児と対峙している自分自身に対する『やれてる感』」
先生  「そこで思わずこぼれた笑みで」
コーチ 「直後にウッズが球児を打ちました」
先生  「今年、見てるもんて、そういう勝負なんやろな」
コーチ 「先日の東京ドームでの伝説の三連戦もそうでした」
先生  「凄すぎて、泣けてきて、最後には笑ってしまう。敢えて言おう、タイロン・ウッズ、最高な!!」
コーチ 「そのウッズ。生きるか死ぬかという場面で笑えるウッズを明日あさって、必死になって抑えにかかるんですよ。だからこそ面白い」
先生  「また凄い三連戦になるでー!!!」


コーチ 「というわけで、紙一重のところで敗れた大一番、振り返ってみましょうか」
先生  「せやな」

コーチ 「最初に言っておきたいことは」
先生  「おう」
コーチ 「今日は球審、むっちゃ良かったですよね」
先生  「せやな。外の低目かなり広めに取ってたけど、タイガースドラゴンズ関係なく広かったし、序盤から終盤までずっと一定してたし、分かりやすくてとても良かった」

コーチ 「で、そのジャッジにボギーはけっこう救われた面がありましたよね」
先生  「今日のボギーはやったら鼻息荒く投げてた」
コーチ 「でしたよね。3回表とか、井端をフォアボールで出して、その後の荒木の送りバントの処理した時に、ファーストに全力投球」
先生  「藤本も怖かったやろなぁ。150kmでファースト投げてくる人おらんもんな」
コーチ 「こんなボギー見たことあるぞ。って思ったら思い出したんですけどね」
先生  「いつや? 奥さんとキスするときか?」
コーチ 「ちゃいますよ。その時はもっと甘いです。ボーグルにゃんになってます(笑)」
先生  「ハハハ、おもろいおもろい」
コーチ 「あれですよ。リグスに満塁ホームラン打たれた日あったでしょう」
先生  「あった、あった。完全に勝ちゲームやったのに、一発で逆転されて、その後赤星が打って勝った試合や」
コーチ 「浜ちゃんがベンチに戻ってきて、葛城とすれ違いながら葛城が大きな存在になっていったのもこの頃でした」
先生  「せやな。満塁ホームラン打たれたあとな」
コーチ 「なんか怒り狂って、『わー!!』って泣きながら腕振り回してる子どもみたいに投げてたら、アッという間にそのイニング終わってた、みたいな」
先生  「確かに今日のボギーは最初っからそんな感じやったな」
コーチ 「『わー!!!』言うて」
先生  「とにかくブンブン腕回して投げてる感じ」
コーチ 「ボギーも素直な人なんでしょうね」
先生  「ちょっとバランス悪いけどな、『今日は大事な試合やから飛ばしていくぞ』って思ったらあんな感じになるんやろう」
コーチ 「この間東京ドームでホームラン打たれまくったんもあるでしょうし」
先生  「試合作ったし、ナイスピッチングよな」


コーチ 「で、スコアは0−1。阪神1点ビハインドで迎えた4回ウラでした」
先生  「円陣組んでたよな。鳥谷からやったし快投を続ける朝倉をなんとかしたかった」
コーチ 「先頭の鳥谷は、朝倉が物凄いピッチング続けて打ち取られるんですけど」
先生  「赤星が高いバウンドのファーストゴロ。ウッズとの競争で赤星の勝ちっていう内野安打で出塁」
コーチ 「1000本安打まであと1本になって、これは終盤のいい場面で出るぞーって物凄い期待しましたね」
先生  「せやな」
コーチ 「1アウト1塁。ゲームの中で大きなキーとなるシーツがダブルプレーを打つか繋ぐかというところ」
先生  「結果はレフトフライやったけど、内容は悪くなかったな」
コーチ 「ですね。ちゃんと右向いて打ちに行ってましたし、だけど朝倉のボールが速いしインサイドの厳しい球でしたから。ほんまは見送ってほしいんですけど、シーツは二個も三個も同時にできないですからね、『ライト打つ』って決めたら、それで頭いっぱいの感じでした」
先生  「やけど、それでいいんよな」
コーチ 「2アウト1塁でアニキ、という場面でも点は入るという象徴的なイニングともなりましたしね」
先生  「結果的にこの回4点入ったわけやけど、朝倉と谷繁のまず最初のミスは、アニキとの勝負を避けたことやったな」
コーチ 「結果フォアボールは問題ない場面なんですけどね、気持ち的に『勝負したるんや!!』っていうもんがなかったです」
先生  「で、一塁二塁になった時に初めて気づくねん」
コーチ 「あ、ここは甲子園やった」
先生  「『わっしょい、わっしょい』始まって、360度黄色のメガホンが揺れてる真ん中で」
コーチ 「一度逃げ腰になった朝倉は、『攻める』ということが分からなくなってしまいました」
先生  「桜井にカウント2−3からフォークボール」
コーチ 「この配球は谷繁が朝倉を苦しめたかな、と思いました。攻めなきゃいけない場面。1−3からのインサイドのまっすぐを桜井が空振りしてましたし、もう一球あのコースに朝倉は投げたかったかも知れないなぁと」
先生  「カウント2−3からのフォークボールを桜井がしっかり見てフォアボール」
コーチ 「調子もいい。打たれてないのに、360度の『わっしょい』に合わせて黄色のメガホンが揺れる中ピンチを迎えた朝倉」
先生  「葛城が大きく見える」
コーチ 「前の打席、ランナー一塁で引っ張りにいこうとし過ぎて引っ張り切れずダブルプレーだった葛城。ここはポイントを近くしてレフトにライナーを打つタイミングで待ってました」
先生  「非常にシュートが投げにくい」
コーチ 「外に甘いシュートが行ったら、左中間にライナーが抜けていくイメージが朝倉には過ぎったかも」
先生  「少なくともオレには過ぎってた(笑)」
コーチ 「360度の『わっしょい』の中で、塁上のランナーが一気にホームインしてしまうイメージが過ぎってしまったとすれば、もうどうしようもなく」
先生  「葛城、矢野に連続押し出し」
コーチ 「藤本にもカウント0−3まで行って」
先生  「その後、2−3になってから、藤本がしっかり粘った」
コーチ 「ファールする中で、『非常時の満塁』を『通常の満塁』へと変えていった藤本」
先生  「藤本は満塁には強いんや!!」
コーチ 「ピッチャーの足元を強く抜いて、二点追加」
先生  「昨日と似たような展開で一気に逆転。ええ雰囲気やったんよな、ここまでは」

コーチ 「でも、やっぱり簡単に優勝させてくれないですよね。ドラゴンズさすがですよ」
先生  「直後の5回表。先頭は井端やった」
コーチ 「ここの井端をボギーが抑えることができれば、かなり勝てる確率は高かったですけども、飛ばしすぎてちょっと疲れてきてたボギーの中途半端になったボールを井端があわやフェンスオーバーという二塁打」
先生  「さすがは井端やな。『ここ』っていうとこで、ほんまに出塁する」
コーチ 「だけど荒木が初球を簡単にサードゴロ」
先生  「オレ、ドラゴンズファンやったら、このサードゴロは凄く残念に思ったと思う」
コーチ 「ですね。赤星出塁の後の、シーツ初球ショートゴロダブルプレー並みの残念です」
先生  「で、ノリのとこで犠牲フライの一点で済ますんよな」
コーチ 「なんとかなるかも、って思いました」
先生  「だけどクタクタのボギーは、ウッズにヒットを打たれて、さらに森野にライトオーバー、完全にキレがなくなってもうた」
コーチ 「5回でしたから、継投も難しかったと思うんですよね。昨日杉山が4回でマウンドを降りたんは、チャンスが来てしまったから、あれはあれで自然やったと思うんですけど、逆転してあと1イニング抑えて交代ってとこでしたから。勝ち投手の権利の件もありますし」
先生  「4回2/3で交代させるのって、あそこまで打たれてからじゃないと不自然やもんな」
コーチ 「でまぁ、1点差に追いつかれて交代という自然な流れで、江草がピシャリ」
先生  「江草、ナイスピッチング!!」

コーチ 「で5回ウラから、今日の影のヒーローの登場です」
先生  「ずっと試合見てるドラゴンズファンならその予想はあったんかも知れんけど、阪神ファンはまさかあのピッチャーがヒーローになるとは思ってもみなかったもんな」
コーチ 「久本、快投」
先生  「阪神ベンチも久本に対する準備を怠ってたかな? ふつうに打てるやろう、と。やけど、ナメたらエライ目にあう。ええ教訓やで」
コーチ 「鳥谷の平凡なセカンドフライを荒木が落球したところから久本の快投が始まるんですよね」
先生  「赤星のバントをサードへ見事な送球」
コーチ 「あれ、ちょっとでもズレてたらセーフでしたから久本の大ファインプレーですよね」
先生  「で、一塁に赤星が残って、また1アウト一塁でシーツ」
コーチ 「ライトフライでしたけど、これも気持ちの出たスイングしてました。アウトになるんはいいんですよ。シーツは右向いて打ちにいけばいい」
先生  「2アウト1塁でアニキ。4点入った場面と全く同じになった」
コーチ 「抜け球が頭の近くにいくってハプニングもありましたけど、あれは抜けただけやししゃあないですよね、その後逆に久本がビビらんと腕振ってようスライダー投げました」
先生  「空振り三振で無得点」

コーチ 「6回表、ピッチャーは渡辺でした」
先生  「ええピッチングやった」
コーチ 「でね、優勝争いの真っ只中で、ちょっとのん気な話かもしれないんですけどね」
先生  「おう」
コーチ 「渡辺って新人王の権利ありますよね?」
先生  「せやなぁ。。5年目以内で、それまで投球回数が30イニング未満が条件やったと思う」
コーチ 「渡辺、今シーズンの春にプロ入り初登板でしたし」
先生  「上園もチーム事情で二軍行ったからなぁ。渡辺、アリよな」
コーチ 「シーズンの結果はまだ分からないですけど、少なくともタイガースが優勝争いを展開できている現状を踏まえて、その立役者はもちろんJFKってことになるじゃないですか」
先生  「せやな」
コーチ 「リリーバーがむちゃくちゃ大事な時代に、しっかり突入してるんですよね。それやったら、先発で何勝でもないし、何セーブでもないけど、貢献度で言うと、渡辺の活躍は先発ピッチャーの10勝に匹敵すると思うんですよ」
先生  「思う思う」
コーチ 「調べてみたら、今シーズンの渡辺の成績。投球回数や防御率、奪三振。もちろん投げてる場面が違いますけど、岩瀬と遜色ないんですよ。あの岩瀬とです!」
先生  「コーチ、ちょっと興奮してるなぁ(笑)」
コーチ 「優勝できて、で、渡辺が新人王取れたら最高やなぁと思ってね」
先生  「中継ぎ投手がもっと評価されていい、っていうことの革命的な選出、あってほしいなぁ」
コーチ 「思いますね」
先生  「というコーチの思いをさらに強くするような、ナベ君の快投で6回表は完璧やった」
コーチ 「ナベ君、ナイスピッチング!! やったんですけど、結果的にここで落合監督のファインプレー采配でしたね」
先生  「久本続投」
コーチ 「確かに2アウトランナーなしで久本に回ったんで、どうするかなぁと思ったんですけど、1点負けてる場面で代打出さないっていうのは勇気ありますよ」
先生  「そのイニング捨てるわけやからな」
コーチ 「最近のドラゴンズ中継ぎが不安定な面ありましたし、代えにくかったのもあるとは思うんですけど、久本と心中って凄い信頼です」
先生  「この勇気が紙一重の勝負をドラゴンズがものにした理由よな」


コーチ 「6回ウラは、久本ショー」
先生  「桜井、代打関本、矢野と、そうそう簡単に打ち取れない3人をあっさり三者凡退」
コーチ 「あの試合に似てるなぁと思ったんですよ」
先生  「桧山が代打で満塁ホームラン打った試合な」
コーチ 「そうそう。その時の江草」
先生  「久本がちょっと打てそうもない感じになってた」
コーチ 「凄かったです」
先生  「ところで、話が前後するんやけどな」
コーチ 「はい」
先生  「コーチは桜井スタメンで、浜ちゃん下げたんどない思った?」
コーチ 「ぼくは自然やと思いました」
先生  「理由は?」
コーチ 「仮に広島二戦目の大ホームランがね、アニキより前に打ったホームランであったか、昨日のアニキのホームランの後の打席で
出塁できてれば浜ちゃん今日だけじゃなくてしばらくスタメンやったと思います」
先生  「なるほど」
コーチ 「広島戦で代打で出た桜井のショートゴロは少しタイミングがズレただけで雰囲気は戻ってきてましたし、切り拓くという面ではやっぱり桜井に多くの打席を打たせたい感じはありますよね。どっちがなかなかアウトにならないかって言えば桜井やと思いますし」
先生  「桜井、もうちょっとやな」
コーチ 「頑張れ、桜井!!」
先生  「負けるな浜ちゃん!!」


コーチ 「というわけで阪神1点リードで7回表」
先生  「当然、久保田がマウンド。80試合目、タイ記録や」
コーチ 「先頭は井端でした」
先生  「また井端や、大変なことや、と思ってたら、久保田が完璧な内容で井端を抑えてしまって」
コーチ 「やったー!!!勝ったー!!!って思ったんですけど」
先生  「甘かったなぁ。強いは、ドラゴンズ」
コーチ 「荒木がしぶとくライト前」
先生  「セカンドフライ落球したんと、チャンスであっさりアウトになってしまったんを取り返すいいバッティングやったな」
コーチ 「でも、今日の久保田凄かった」
先生  「155キロ出てたしな。どーん!!っていうストレートでノリを完璧に抑えて」
コーチ 「やったー!!!勝ったー!!!って思ったんですけど」
先生  「やっぱり甘かった」
コーチ 「ここで今日の大ヒーローの出番です」
先生  「矢野の配球ミスでも、久保田の失投でもない完璧なインコースのストレートやった」
コーチ 「それを詰まってたんですけどね、タイロンの超絶のパワーと、巧みなバットコントロールで、バックスクリーンまで運ばれました」
先生  「いやいや、今年見たホームランの中で、正直一番ビックリした」
コーチ 「あれ、ホームランにするかぁってね。けっこう前ですけど、東京ドームで下柳先輩が阿部に打たれたホームランもビックリしましたけど」
先生  「顔の前のシュートをホームランにしたやつな」
コーチ 「やけど、飛距離が違うし、あそこまで飛ぶんですね。あのコース、あの打ち方で。ほんまにビックリしました」
先生  「久保田また泣きそうになってたけど、久保田全然悪くないで!!」
コーチ 「タイロン、凄すぎ!! しかも、二度と同じ打ち方できないような奇跡的な打法やし、気にせんでいいから!!」
先生  「最多登板新記録の試合は記録に花を添えれるといいな」
コーチ 「明日ですかね」
先生  「おそらく」

コーチ 「で、久保田がしっかり森野を抑えて7回ウラ」
先生  「久本がどんどん良くなる」
コーチ 「あと二試合。対久本も勝負のキーポイントですね」
先生  「現在のタイガースは集中状態に入るとよっぽどいいピッチングされない限り先発ピッチャー攻略するからな」
コーチ 「ジャイアンツ二戦目の久保とか、急激に調子が変動するとかじゃない限り、なんとかしてきてます」
先生  「カープ戦の二試合は脱力してたから置いといて」
コーチ 「昨日の高橋建、今日の朝倉。共に途中までナイスピッチングやったけど、突如乱れて、といゆうよりプレッシャーで乱してる感じですからね」
先生  「ドラゴンズも惜しみなく久本を投げさせてくるやろし、あと二試合に限って言うと、久本はウィリアムスやと思って打ちにいかなあかん」
コーチ 「ですね。そんじょそこらの中継ぎ投手じゃないんや、って意気込みでいかなまたやられてまいます」
先生  「まぁ何はともあれ、久本、ナイスピッチングやった」
コーチ 「敵であっても、脇役の大活躍は素直に嬉しいです」
先生  「何とか明日は中盤で久本を引きずり出して、打って勝ちたい。リベンジやで!!」

コーチ 「で、8回表。岡田さんは1点負けてる場面でジェフじゃなくて、橋本でした」
先生  「岡田さんはやっぱり勇気のある人やで。『そら延長の可能性もあったしな、あそこは橋本が抑えなあかんやろ』って感じや。1点負けてて、さらにハシケンは本調子じゃなかったのに、しっかり勝つこと考えてる」
コーチ 「同点になった時に、球児とジェフが控えてるって形は圧倒的に有利ですもんね。ドラゴンズは岡本に不安がありましたし、非常にいい継投やと思いました」
先生  「で、ハシケンが完璧に1イニング全うして」
コーチ 「ようやく、チームに合流しました」
先生  「おかえりハシケン、ナイスピッチング!!」

コーチ 「延長を見越して8回表にハシケン投げさせたんが、やっぱりはまった8回ウラ」
先生  「ドラゴンズは不安のあった岡本、タイガースは先頭赤星」
コーチ 「ここは行けるなぁ、と思ったら。赤星、完璧なセンター前ヒットでした」
先生  「1000本安打。おめでとう!!!!」
コーチ 「いい場面でメモリアルが出て、甲子園が一気に朝倉を飲み込んだ『わっしょいの蟻地獄』と化します」
先生  「シーツの送りバントはサインやな」
コーチ 「そうですね。8回ですし、何より赤星メモリアルのムードを潰してしまうことは、今後の戦いを考えてもあってはならないことでしたから」
先生  「メモリアルの時間を長く取ることが絶対条件というところで送りバント」
コーチ 「シーツは活き活きとバントを決めました」
先生  「おもろい人やな、ほんま」
コーチ 「そしてアニキ」
先生  「こういう場面で、ほんまにアニキは打つなぁ」
コーチ 「だからみんな憧れるんですよね」
先生  「赤星、小さい体でほんまによう頑張ってきたけのー。ワシからのプレゼントじゃけ!!!打法」
コーチ 「長いです(笑)」
先生  「痛烈なライト線の当たりが際どくファールになった後やって」
コーチ 「詰まらされたんですけど」
先生  「アニキの気持ちは」
コーチ 「打球をショートの後ろまで運んで」
先生  「メモリアルな空気の中」
コーチ 「赤星がホームを踏んで、同点」
先生  「アニキー!!!!」
コーチ 「赤星ー!!!!」
先生  「ほんまにええチームやなぁ。ほんまにほんまにええチームや」
コーチ 「ベンチで腕グルグル回してた監督の嬉々とした表情も良かったですし」
先生  「とにかく、岡本を打って同点に追いついた」
コーチ 「よっしゃ、もう1点というところで、岡田さんは甲子園と一緒に試合を決めようとしました」
先生  「桜井に代えて、桧山」
コーチ 「でしたけど、ここは岡本が意地を見せて2アウト」
先生  「最後は抜けたフォークボールが打ちにくいところにきてしまって三振やったな。打ち取られたんではなかったし、関本打てるぞ!って思ったら」
コーチ 「関本、会心のレフト前ヒット」
先生  「そして再度甲子園に『わっしょい』が始まって」
コーチ 「岡本がもうフラフラやったんですよね」
先生  「この試合唯一、阪神の選手に『おい』って思ったのは」
コーチ 「やっぱり矢野でした(笑)」
先生  「チャンスで初球から行くのも分かるんやけどな」
コーチ 「赤星メモリアルと、アニキのタイムリーのあと、関本が完璧に繋いでという二重三重の『わっしょい』の中で岡本が投げなあかん場面でしたしね。しかも岡本調子悪いし」
先生  「4回の朝倉と同じくらいしんどかったはずやもんな」
コーチ 「初球のフォークボール、引っ掛けてショートゴロ」
先生  「ストライクは入りにくいし、必ず甘い球来るって余裕持ってほしかったんはあったけど」
コーチ 「そういう矢野のお茶目な部分を読みきった谷繁のナイスリードということで!」
先生  「矢野、明日は頼むで!!」

コーチ 「で、同点の9回表、球児できました」
先生  「これはやっぱり延長になってウッズを見越してやろうな」
コーチ 「ですね延長になれば球児が2イニングの予定で、9番から始まる9回の最大の敵は1番の井端で、順調に抑えたとして10回に回ってくるウッズが怖い」
先生  「ということで球児、9回10回のうちどちらかで1点とって勝とうと、岩瀬の9回、10回で点が取れなくても、まだジェフを残している強みがあってしかも後攻。タイガースが有利な状況で9回表を迎えたわけやったけど」
コーチ 「あんな名勝負が待っているとは思いませんでした」
先生  「やねんけど、結果的にドラゴンズが球児を攻略できた最大の理由は、勇気やったな」
コーチ 「ですね。9回表、ドラゴンズが見せた『5つの勇気』です」
先生  「5つやな」
コーチ 「まず『ここが勝負、といきなり立浪を代打で出してきた落合監督の勇気』が一つ」
先生  「ほんで、その立浪が『初球の変化球を打ちにいった勇気』が二つ目」
コーチ 「さらに井端のバントの後、荒木が打てないのはしゃあないって、開き直って『ここや、と思った高さよりも随分高い場所を振った勇気』が3つ目。これが結果的に高いバウンドのサードゴロになってシーツの頭を越えました」
先生  「ノリのファーストゴロはみっちゃんがしっかり守って、得点を阻止」
コーチ 「挟んでアウトにするのに、少し時間かかったのは、英智の好走塁でした。キャッチャーの矢野が『すぐサードに投げる』っていう瞬時の判断が効を奏したものでした。その『瞬時に判断した英智の勇気』が4つ目」
先生  「そして最後の最後までストレートを待ち続けた、『タイロン・ウッズの勇気』が5つ目」
コーチ 「球児も勇気あったと思います。今日も高め狙った球が低目にいってしまったストレートがありました。あの球が一番怖かったはずなんですけどね、2アウト2塁3塁で逃げない球児」
先生  「あまりの真っ向勝負に、矢野がちょっと置いてけぼりになってしまってたんがかわいそうやったけど」
コーチ 「しゃあないですよ。球児vsウッズの最後の勝負は、もう二人だけの異次元の世界でしたから」
先生  「究極のストレート勝負の中で笑ったウッズ」
コーチ 「球児も155キロ何球も投げてましたしね」
先生  「それを楽しみきったウッズに軍配」
コーチ 「やけどほんまに紙一重でしたからね。インサイドの高いところにいってたら、空振り取れてました」
先生  「あの球をそこにコントロールせえっていう方が無理な話やろからな」
コーチ 「今日はウッズが楽しめたから、そこに行かなかったんですよね。ウッズの日だったんです、きっと」
先生  「だけど、タイロンの日ばっかりになることはないと思う」
コーチ 「そうですね。だって、球児やって久保田やってあんなにも頑張ってきましたから」
先生  「タイガースが今シーズン積み重ねてきた長くて濃密な時間はな、一生懸命頑張る人たちを絶対に裏切らへん」
コーチ 「だから、明日も明後日も今までどおり一生懸命やればいい」
先生  「ふつうにやったら、また凄い試合になってしまうのかも知れないけど、またきっと勝てるはず」
コーチ 「だから、今日はナイスゲームで」
先生  「今シーズンは、ナイスシーズンなんや!!」

コーチ 「だけどぼくたちタイガースファンは」
先生  「アニキの胴上げが見たいんです!!」
コーチ 「だから神様」
先生  「明日は阪神、勝てますように」


神様  「わかりました」


コーチ 「え? 先生今、何か聞こえませんでした?」
先生  「う、うん。聞こえたで、聞こえたでー!!!!」


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posted by コーチ at 03:02| Comment(0) | TrackBack(12) | □ 藤川 球児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月11日

この三日間を忘れない

最初に断っておきたいことがあります。
とても長くなりました。
この三連戦のことを自分のために記録しておきたいと思いました。
だからとても長くなりました。

最後までお付き合い頂ければ、幸いです。

コーチ

********************


もちろん、グラウンドで戦っていた選手たちはは徹頭徹尾そうだったのだろうと思う。
「何が何でも勝つ」

だけど、得点が入ったら手をバンバン叩いて大喜びし、90%の主観と10%の客観で監督という仕事を全うしているように見える岡田彰布の10%の客観にはしっかりと「今日は負けてもええんや」という意識が宿っていたように思う。

久保田と球児と赤星を休ませたる。

「別に今の首位にこだわる必要はあらへん。最終的に首位やったらええんや」

先発投手を大方の予想通り下柳先輩できたところ。さらに二番に浜中を入れてきた一見斬新に見えるオーダーに、言葉は悪いが「捨て試合」を感じた。付け加えるとぼくはその「捨て試合」の印象を好意的にとらえていた。

ここ数試合の下柳先輩の投球内容。そして現在のジャイアンツ打線の力量を考えて、もちろん抑えてほしいとは思うのだけど、客観的に見れば打ち込まれる可能性の方が圧倒的に高かった。ジャイアンツは決死の覚悟で高橋尚。

甲子園でのヤクルト戦。グライシンガー相手の試合で、下柳先輩が中盤に大量失点をした試合のような、10点近く差のつく可能性も十分に孕んだゲームを岡田さんは覚悟しているように思えた。
「それでもかまわん、今日はシモが投げることが大事」
なんとなく、そんな印象を感じたのだった。

前日、結果的に裏をかいた形になって安藤が快投を演じた。
第三戦も、本当にこの試合だけ勝ちにいくなら、中四日で能見だったろうと思う。さらに、キャッチャーも野口に代える。高橋尚がふつうのピッチングをしたとして、得点の標準的な予想ラインは2点3点だと思う。

第一戦でダーウィンや久保田をいとも簡単にとらえて見せたジャイアンツ打線。これをまともに2失点に抑えようとすればJFKが三イニングずつ投げるしかない。

だけどそんなことは当然非現実的な話で、
要するに今のジャイアンツ打線を(特に東京ドームで)抑えるにはまともではほぼ不可能。それほどに凄い並びだ。
ならば、先発投手を相手が準備していなかった投手に、さらにキャッチャーのリードもかえてしまう。
二重のアドリブを必要とさせるくらい負荷をかけなければ、しんどい。

しかし、先発投手は下柳先輩。順番なのだからそれでいい。今日は勝てなくていい。
だけど、次以降なんとか復調してもらうために、唯一一年間ローテーションを守り苦しいチーム状態から支えてきた下柳先輩がこの日のマウンドに立つことは絶対に必要で、それで打たれてもかまわない。もしかして高橋尚が全然ダメなとき、チャンスがあるかも知れないし。
そうやって送り出したような気がした。

そして「二番、浜中」。この「二番」に意味付けはないと思った。
前回の対戦で浜ちゃんが高橋尚からホームランを打っているのはスタメンの一つの理由だっただろうけど「二番」の理由ではない。「二番」なのは赤星ありきの話だと思った。

おそらくは、第一戦の本塁上でのクロスプレーの影響があったのだろう。二戦目の赤星は、結果うんぬんではなく。スイングのスピードが明らかに鈍っていてた。ライトに引っ張れるイメージは皆無。
「休ませたらな」
ということで、「浜ちゃんでいってみるか」「この間ホームランも打ってるし」
打順は「二番があいてるから二番」。
飽くまで打線のリズムは壊さない。
関本を二番に上げて、矢野を八番に下げ浜中を七番に入れる。
浜中ありきの打線としてはこれが最も自然だろうが、チームとして今動かすことにストレスが生じるならば、
空いてるとこにいれといたらええ。負けてもええんや。

1番鳥谷、2番浜中、3番シーツ。この並びを見てぼくは可笑しかった。ギラギラとした闘志をぶつけ合い激しく一点を取り合い、激しく一点を守りあった「天王山」一、二戦。
その印象とは遥かにかけ離れた「のん気さ」を感じさせる並び。
3番打者タイプが三人ならぶ、しかし、3番打者としては皆それぞれに不足のある顔ぶれ。
全員初球を打って3球で一イニングを終えてしまう可能性もある並びだ。
しかし同時に「のん気だなぁ」って許せてしまうような顔ぶれ。

「是が非でもこの試合落とせない」というオーダーにはとても見えず、そのことにとても好感を持った。

ところが、
プレイボール直後、高橋尚が投じた二球目から状況は怒涛の変化を見せる。


1回表。

今シーズン初めての中四日で高橋尚。ジャイアンツとしてはもちろん「何が何でも落とせないゲーム」なのであった。
先発投手の人数が足りなければ、当然エースを中四日で。
1番の鳥谷に対して初球はアウトローのストレート。「ヒサノリボール」と呼んでもいいような、長い槍を低い位置でまっすぐに突きその先端がベースの角を横切るボール。それが決まって1ストライク。
この一球だけ見れば「ヤバイ。高橋、デキはいい」そう判断してもおかしくなかった。
しかし、二球目の変化球がやや甘く入る。

こういう時にあまり何も考えないで打席に立つタイプの鳥谷の真骨頂。平気な顔で素直にバットを出していく。
左中間にライナーが、二塁打に。

高橋尚。前回のナゴヤドーム。
丁寧に、丁寧に。強くウッズを警戒することで自らの稼動域を少し狭めてしまったように見えたドラゴンズ戦のノックアウト。
「丁寧さ」と「大胆さ」今日の課題はきっとそのバランスだっただろう。しかし両極の分かりやすさを課題としているのではなく、それが「バランス」であるところが難しい。鳥谷のヒットが高橋尚の意識を「もっと丁寧」にむかわせてしまったと思った。

二番、浜中を迎えたところで、実況のアナウンサーが言った。
「さぁ二番浜中です。いったいどんな攻撃をしかけてくるんでしょうか?」

確かに、ノーアウト1塁だったら少し気になるところだけど、ここは打つしかない。
で、おそらくは浜ちゃんに「打つ」以外の作戦はよっぽどのことがない限りないと思う。
ホームランバッターと期待され入団してきた選手が、プロ野球以前に二番に配置されることはまずなく、特に浜ちゃんは入団以降もスラッガー畑を歩んできた人なので、バントさせたりエンドランかけたりは少し不自然だ。

基本「のん気」な浜ちゃんはここでも「のん気なイメージ」で二番と対峙しているように見えた。
赤星の打席に見られる「進塁打を!」という強い気持ち。そういうものはこの浜ちゃんの打席にはない。
だけどそれがいいところ。持ち味をいかんなく発揮して、
「二番って右方向とかに打つよね」
外の高目に抜けた変化球を右向いてオリャって振った打球がライト前へ。

ノーアウト1塁3塁でシーツ。

カウント2−2からインコースに厳しいストレート。ボール球だったけど、通常の「高橋尚vsシーツ」の対戦時であれば、
シーツが「まったく手が出なかっただけなのに、悠然と見送っていたフリで素知らぬ顔でする」そんな球だった。
で、結局次の球を打ち上げて悔しがったりするのが通常。しかし、この球をシーツが本当に悠然と見送った感じがした。
そして、2−3から、ストライクゾーンに同じ球。

詰まりながらもレフト前へ。1点先制。

シーツがあのコースのストレートをヒットゾーンへ飛ばした、という事実はタイガースに大きな勇気を与えたと思う。
この試合を勝つ条件の必須事項だった「もしかして高橋尚の状態が物凄く悪い場合」。その場合のように見えるアンディの先制打だったと思う。


さらにノーアウト1塁3塁でアニキ。
ここでアニキは軽打ではなく強打だった。
あと一点とれば勝てるという打席でアニキが見せる「軽く当ててレフト前へ」または、「レフトフライ、センターフライで一点」。そういう打ち方をする打席ではなかったということだと感じた。

勝つにはたくさん点がいる。初回に二点では少ない。
大量リードで久保田と球児を休ませる、そういう気持ちの強振に見えた。

高橋尚が投じたインコースのボールを強振するアニキ。
バットが真っ二つ。ボールがセカンドの木村拓の方へ転々と。
三塁ランナーの浜ちゃんはもちろんゴー。赤星だったら当然セーフの打球。
だけど浜ちゃんだったからあそこでライト前に打てたとも言える。
出場機会の減っていた浜ちゃん、中途半端な走塁でタッチアウト。
突っ込みもせず、挟まれることもできず。
「らしさ」と言えば「らしさ」かな。
赤星ではなく浜中が二番に入っていることをいろんな意味で表現してくれる浜中が少し可笑しかった。
これまでの二試合の中で湧かなかった感情。
「のん気さ」の注入。

1アウト1塁2塁で桜井。
桜井は横浜戦からずっと状態が悪い。
野生の肉食動物のような瞬発力で相手投手の決め球をファールにしていた姿にかげりが見える。
一戦目はそれでもゲームの流れが桜井の鈍った感覚を瞬間的に呼び覚ました。

しかし、それは一時的なもの、現在は桜井が一軍選手として始めて経験している「スランプ」の真っ最中だ。
外のまっすぐにファールチップで三振。
調子がふつうであれば少なくともいい当たりのファールになっていたであろうボール。かなり深刻に見えた。

続くみっちゃんは初球の変化球を打ち損じて内野フライ。

高橋尚がなんとか1点で凌いだ、タイガース初回の攻撃だった。
大量点になるかならないかはやはりフォアボール。
ノーアウト1塁3塁の場面でアニキを攻めたこと。それが一失点でおさめた要因だと思った。


1回裏

下柳先輩の調子が悪かったのか、ジャイアンツ打線の重圧が凄いのか、おそらくはその両方。
打順を開幕オーダーに近い形に戻し、さらに矢野謙、木村拓を二番、八番に配置するという、
機能すれば「何十点も取れる打線」を組んだジャイアンツ。
連敗脱出の起爆剤として、ということもあっただろうが、スンヨプが打つこと前提で純粋にこの並びは怖い。
「打ちやすくして」→「打つ」のバランスが物凄く高い次元でバランスが取れている。


1 高橋由  超、打つ人 「ホームラン打たれたらダメ」があとを打ちやすくする。
2 矢野謙  雰囲気のある人。 「なんとかしようが」強くいい作用をもたらす。
3 小笠原  打つもできるし、打ちやすくも出来る。万能。ものすごい。
4 李    超、打つ人。
5 二岡   超、打つ人。
6 阿部   天才
7 ホリンズ 全部強打してくる。
8 木村拓  得点できなくても9番までまわす仕事とかをできる選手。特に右打席がイヤ。


先頭の高橋由。初球の空振りが「ホームランを打てるスイング」。
もうこれだけで大変だ。フォアボール。
続く矢野謙。バントしてきてくれたらラクだったけど、やっぱりヒッティング。
打席に矢野謙の間にワイルドピッチで高橋由はセカンドへ。
ランナー二塁になって、右方向へ打ちにいく矢野謙。
その打ち方をして膝元のスライダーを打つとあれがフェアグランドに飛ぶ。
三遊間を詰めていたシーツをあざ笑うかのような強いゴロが三塁線を抜けていく。
二番打者として最高のタイムリーヒット。
さらに小笠原が詰まりながらセンター前へ。あっさり逆転。
スンヨプには、ライトへボールが燃えだしそうな猛ライナー。
続く二岡にフォアボールで満塁。
天才阿部に初球の難しいシュートを簡単にセンター犠牲フライで3点目。

先頭の高橋由と二岡に出したフォアボールは、局面的には絶対フォアボールがダメなところ。
ジャイアンツサイドから見ればこれ以上ない完璧な攻撃だった。
この後ホリンズにホームランでも出れば、いや贅沢は言わない。
ホリンズ木村拓のどちらかが出塁して9番まで回れば、2回もまた高橋由から。
勝利はほぼ手中に収めるという場面だった。
記録的大敗も覚悟した。

だけど、もしかしたら大丈夫かも、そう思えたのは
阿部に犠牲フライを打たれた直後の下柳先輩の姿だった。
初球を打たれた。もうこれ以上点をあげられないと投げ込んだシュートをいとも簡単にセンターへ。

打球を目で追うことなく、下を向いて溢れ出てくる感情と正対しているように見えた。
その姿で本塁のベースカバーへ走っていく下柳先輩。

「悔しくて仕方ない」を隠そうともしない男がその気持ちと正対し、それごと投球をするようになった。
続くホリンズに初めて「狙った空振り」を取れた。絶対に木村拓で抑えて、2回を9番からにしたい場面。
粘られはするもどうにかこうにか木村拓を打ち取った。

初回、3失点。
よく3点で耐え抜いたと思う。ホリンズ、木村拓に対する投球は見事の一言。


2回表

シーズンオフのテレビ番組などで高橋尚がよく「お調子者役」を演じているのを見かける。
ただ、マウンドの彼にその姿はまるでない。それは本来的に「お調子者」ではないからだと思う。
本来的にお調子者に見えた、例えば元木とか、打席や守備時のちょっとした仕草にそういうものが出ていたように感じる。

「お調子者」だけど「仕事はしっかりできる」、このバランスに「かっこいい」を感じる人なのだと思う。

もちろんそれはとてもかっこいい。しかし本来的にお調子者でない人が、そこで道化て見せるというのは、サービス精神という一面プラスで「弱さの隠蔽」という面もあると思う。

ゆえに大事なのは「仕事」だ。彼の仕事は当然、ピッチング。
それが思うように行く時、弱さを前に道化ることのできる部分。
他者に気を配ったり、自己批評が強かったりそういう部分がより力を添えて、好投を呼ぶ。
「みんなの力になれている」「やれている自分」そこで乗っていけるのだと思う。

しかし、その「仕事」が少しうまくいかない時、本来的なお調子者なら、別にたいして気にならないことなので悪循環を招くこともないのだけど、高橋尚が気配りと、自己批評の強い人だとすれば、そこで対面する「己の弱さ」。
「みんなに申し訳ない」「何やってんだ、オレ」が自らを苦しめる。

ただそれがあったからこそ、
それほど目立った特徴があるわけではない左投手が、「エース」と呼ばれるまでになったのかも知れない。
とても好きな投手なのだけど、今は敵。
「お調子者、高橋尚」は諸刃の剣だ。そこを攻めたい。

「いけるかも」と思わせたら、やられるし、
「何やってんだオレ」と思わせたら、攻略できる。

7番から始まる二回表、得点できなくてもいい。
少なくとも「いけるかも」と思わせないことが大事なイニングだった。

先頭の矢野輝は、初球の甘い球を打ちにいってライトフライ。
双方共にミスで1アウト。まだ「いけるかも」ではない。

続く関本。気配りと自己批評。似たタイプの選手だと思う。ただ、先に憂鬱を蹴散らしたのは関本。
真ん中よりに入ってきたまっすぐを、バチーン!とレフト前へ。素晴らしい打球だった。

シーズン後半に入ってからの関本はこういうリードされて苦しい場面で、レフトにヒットを打つことがよくある。
強い気持ちで真正面からチームの憂鬱と対峙している証拠だろう。
高橋尚に「いけるかも」と思わせない、このイニングのミッションは完了。

それどころか「ダメかも」と思わせられる可能性のある強烈なライナーだった。

下柳先輩が送って、2アウト2塁。

このところ送りバントの成功率が非常に高いのは、バントの質だけではない。先日代走で出た狩野、横浜戦での藤本に象徴される一塁ランナーのスタート。これが徹底してチームの中に浸透しているように感じる。誰が言い出したわけでもないだろう。
『走塁に関する金本談話』がもたらした、余剰の効果だ。
関本は狩野や藤本の走塁を見て「あ、オレもああやってやろう」と思っていたに違いない。

下柳先輩のバントはやや強いゴロ。ダッシュしてきた高橋尚の前へ。一瞬セカンドに投げようとする高橋。
しかし、その時関本はもう二塁ベース付近まで到達しているのだった。タイミング的にアウトになる可能性があるバントだったかは微妙だが、クロスプレーになっててもおかしくはない場所。
楽々とバントが決まる、チームみんなでやってきたことがしっかり実を結んだ場面だった。

スコアリングポジションで鳥谷。さぁ、打てるか。

打球は三遊間へのゴロ。内野安打のコースだった。
それを取りそこなった二岡。それを見るや吉竹コーチがゴー!!!

二岡がキャッチしていれば、瞬時にサードベースに戻る必要がある中での関本の走塁。ギアをローからトップへ入れ直すも、
もともと足が速くない関本。ギアチェンジはスムーズではない。

二岡が本塁へいいボールを投げてアウトにした。

しかしここでジャイアンツ側のファインプレーは、レフトの矢野謙がかなり早い段階で「ホーム!!」と二岡に指示を出していたところ。
二岡は後ろ向きなので、関本が走ったかどうかは確認できない。一瞬でも隙があればホームインだった。
さらに基本、ローテンションの二岡。ああいう送球はハイテンションで投げたほうがアウトになりやすい。
イメージだけど。
今日のレフトは谷ではなく、矢野謙。
谷と二岡のローテンションコンビだったらあれはアウトにならなかったかもしれない。矢野謙のハイテンションに乗せられて、二岡が「ちょっとテンションあがってしまいました」というようなキレのある動き。

一生懸命走ってくる関本と、必死でブロックする阿部。
双方にとてもいいプレーだった。

ひとまず、高橋尚は「いけるかも」と思えないままイニングを終了する。


2回裏。

阿部の犠牲フライのベースカバー。
「悔しい」と真正面から対峙し、その後のホリンズ、木村拓を悔しい気持ちをそのままに抑えきった下柳先輩。

1回を8番で終了できたことによる。高橋尚から。
しっかり投げて1アウト

「悔しい」を全部吐き出して、それが落ち着きへと変化していった。

1アウトで高橋由。
2ストライク目のワンバウンドのボール球を高橋がハーフスイングの空振り。
こういう空振りが明暗を分ける結果ともなる。先に「いけるかも」を手にしたのは下柳先輩の方だった。
高いバウンドのセカンドゴロを前に出てきて関本がジャンピングスロー。
ファインプレー。
直前の本塁突入の際に見せた関本のダッシュ力のなさ。
これは先天的な筋力の問題なので仕方がない。ジャンピングスローなど、瞬発力を必要とするプレーは関本は本来的に得意なタイプではないのだ。
だけど物凄く練習すれば、あんな風に守れるようになるんだ、と体の大きな内野手に拍手。

2アウトで矢野謙。

チーム事情で今は一番を打っているが、日本球界を見渡して最も優れた二番打者はやはりドラゴンズの井端だと思う。
井端はこういう試合の、こういう場面で本当に必ず出塁する。
打率や出塁率など目に見える数字では判断しきれないとてつもない力を持っているのが井端。

技術的に見て矢野謙はもちろん井端ほどの怖さはない。しかし何かやりそうな雰囲気がある。
その雰囲気込みで非常にイヤな場面、しかもカウント1−3。
ヒット性のあたりだったがセンターライナー。

結果的に三者凡退に抑えきった。
ハイライトは高橋由の2ストライク目のハーフスイング。
振らせた下柳と、振ってしまったヨシノブ。
ホリンズの空振りに続いて、本日二球目の「よし」と思える空振りだった。


3回表。

ストイックに自分を追い込む投手が、いい調子で投げ続ける時、いとも簡単にアウトになるのが「のん気」な打者だ。
ただ、調子が悪く、自問自答をしながらという時に最も投げにくいのもまた「のん気」な打者。
勝負の調和点が見えづらい。

二番、のん気浜中。
そういう「投げにくさ」が高橋尚にあっただろうか。
ど真ん中に力のないストレート。それを浜中が完璧に運ぶ。レフトへ大アーチ。

赤星がシビれるような勝負を制しての出塁。シーズンをトータルで考えると絶対に必要なシーンだ。
だけども、この日このイニングに限って言えば、
「のん気な人」を先頭で迎えるよく分からない感じは高橋尚を苦しめたと思う。

アニキはやはり状態の悪いのだろう。高橋尚が「よし」と思い切れない球を空振り三振。
桜井は大スランプの兆候。
初球のアウトコース高目のストレートは、
あれよりも100倍難しい黒田のストレートをバックスクリーンにホームランしたコース。
それをファールにしてしまう。2ストライクを取られてからも、これまでファールにできていたボールが、フェアゾーンに飛んでしまう。頑張れ桜井。自らの力でこの苦しいところを突破してほしい。

クリーンナップは三人続けてアウトにするも、その前に大ホームラン。

本来的なお調子者なら、三人続けてアウトにできたことで乗っていけるのだろうけど、ヒサノリはホームランを反省してしまう人だ。
「いけるかも」にはならなかった。


3回裏

「むっちゃ悔しい」を「落ち着き」へと消化させた下柳先輩。
もちろん絶好調とまではいかないが、「悪くない」という状態へは戻っていた。
そしてその下柳先輩を矢野輝が支える。

先頭3番小笠原。

小笠原は打ち取ることが本当に難しい打者。丁寧に丁寧に投げて、最後にいい当たりが正面をつくとか、際どい球がストライクと判定されて見逃し三振とか、どっちが勝ちでもどっちが負けでもないような勝負を挑む必要がある。

この打席の中で何球かファールがあったが、それは下柳先輩の復調がファールにさせているのだと感じた。
フェアゾーンに入れられない。だけど、いい当たりのセカンドライナーとかにもなってくれない。
苦しいところ。最後は根負けして四球。

4番 スンヨプ。
得点は2−3。ジャイアンツのリード。
当然だけどホームランを打たれたら負ける場面だった。
しかし、一打席目のヒットを打つ前の様子などを見ていると
「四番」というものを大事にしたいという気持ちが強く出すぎている気配を感じる。
前日までの、来た球に反応してどーん!!というような雰囲気がない。そういう時に攻めていくことができた矢野輝。見事な配球だった。

インコース、顔の近くのシュート。甘く入ったらどーん!!だけど、よく投げさせた。
下柳先輩もそれに応える。そして、その後外を待っているだろうところへもう一球インコース。
いいリードだと感じた。しかしそれが、真ん中へ。
顔の前へのシュートの残像、それプラスで「四番を守る」という僅かな消極性。
それが圧倒的に打者が上の勝負で、セカンドゴロを打たせたのだと思う。
いい当たりだったがダブルプレー。

ふつうの打線と対峙しているのなら、これで完全に乗っていけたと思う。
しかし東京ドームにおけるジャイアンツ打線は世界一凄まじいのだった。
「甘く入ったらホームランになる」その可能性は、本当に苦しい。

2アウトランナーなしで二岡。
ここで二岡が初球をブンッと振ってくる。東京ドームにおける攻撃の仕方を熟知したスイングだと思った。
空振りになっても、その空振りが四球を呼ぶ。
守る場合の「見せ球」。直前のイスンヨプに投げたシュートなどがズバリそれだが、
打ち取るにあたってその見せ球は随時使われる。
この打席二岡の空振りは、それとは逆の「見せ振り」に見えた。
下柳先輩が投球に入る前に一呼吸つく、さぁ投げよう。投球動作に入った時に、必ずその「見せ振り」が意識のどこかに棲んでしまう。
そのスイングの軌道にあわせないように必死にそこから外そうとする投球は、すでに自分のペースではない。

二岡の圧力が四球を呼ぶ。下柳先輩、流れに乗れない。
続く阿部のショートゴロがイレギュラーして鳥谷がファンブル。
リズムが悪い。

2アウト1塁2塁でホリンズ。

ここは、矢野だった。矢野、ナイスリード。
カウント2−2からインコースに沈むボールをホリンズに楽々と見送られる。
落ちる球をジャイアンツ打線の中で最も振りやすいホリンズに、その落ちる球が全く通用しない。
動揺しただろう。
しかし、矢野「大丈夫、もう一球こい!」
慎重になりすぎるといい結果を招かない場面で、矢野は大胆だった。
ストレート勝負だけが大胆なのではない。
あれほど余裕を持って見切られた球をもう一度要求する勇気。

ホリンズ空振り三振でこの回無得点。

大ベテランバッテリー、渾身の無失点だった。


4回表

自信を持ちきれないままマウンドを守るジャイアンツのエース高橋尚。

先頭の高橋光信、続く矢野をどうにか。
完全に「ヒサノリの勝ち」ではないアウトにして2アウト。
関本に勝って終われれば、5回から復調する可能性もあった。

前回の打席でも関本が活路を見出すレフト前ヒット。
さらに本塁突入と、守りでもファインプレー。
関本に分があるこの勝負、非常に重要だった。

ジャイアンツとしては8番で切りたい。
タイガースから見れば、これ以降のゲームも考える必要があるので、
総合的に見て、下柳先輩を続投させるかどうかというところだけど、
ジャイアンツとしては当然続投させてほしかっただろう。
いつだって大量点寸前の雰囲気なのだ。

その続投のために、ここは絶対に関本を出してはいけない。
特に長打が出れば確実に代打が出てくる。

という勝負の高橋尚vs関本。

結果は関本。
「あいこ」の決着ではない、完全に関本が勝利した四球だった。
カウント2−3からコース高さともに完璧な変化球。空振りの可能性が非常に高い球だった。
それをしっかり見送られた高橋尚。
見送った関本。

長打ではなかったが、高橋尚の精神状態を考えればスコアリングポジションにランナーがいるのと同義といえる場面。
岡田監督、動く。

代打だった。

打席に入る機会は非常に少ない狩野だったが、ベンチでの佇まいが非常に良いというのは以前も書いた通りだ。
だから、打てるってもんでもないだろうけど、狩野は打った。

通常の高橋尚であればほとんど来ないような高目に浮いた変化球。
それをしっかり呼び込んでライトへ打った狩野の見事な打撃。
打球はライト戦を転々とし、関本は「当然ホームまで」と思って走っている。

2アウトランナーなしの大勝負を制した関本と、狩野の佇まいに賭けた岡田監督。
そして出場機会のない中で、しっかりと準備をしていた狩野の日々の姿勢。
語り草となった『金本談話』以降の走塁改革。その全てがあいまってこの一点をうんだ。

みんなで取った一点だ。

下柳先輩は3回3失点。よくぞ踏ん張ったと讃えたい。
相手打線とここ最近の調子、さらに井川が抜けてマークされている度合いを考慮すれば、この内容は6回2失点に十分匹敵すると思う。

ナイスピッチング!とは言いにくいけど、だけどナイスピッチングと小さく言いたい。


4回裏

ジャイアンツ戦において大変なのは当然攻撃よりも守備だ。
どうやって失点を最小限に食い止めるか。
よく「守備から攻撃のリズム」みたいなことを言うが、この試合に関しては逆。
「攻撃から守備へのリズム」を作って、なんとか守りたい、そんな試合になっていた。

関本と狩野が作ったリズムにダーウィンが呼応する。

先頭は8番木村拓。

8番から始まるイニングは是が非でも先頭をアウトにしたい。
9番が送りバントをできるか、流れのまま2アウト目の打者になるか、この差は試合を決めかねない大きさになる。

内容はどちらでもよい。
ダーウィン、とにかく木村拓を打ちとって1アウト。
流れのまま、高橋尚が三振。
そして、怖い怖いヨシノブを2アウトランナーなしで迎えることに成功し、最後はアウトローへズバッと速球。見送り三振。

三者凡退。
勝てるかもしれない、初めてそう思った。


5回表

攻撃から守備へ、そして守備から攻撃へ。
いいリズムを重ねてゆく。

先頭の浜中がのん気に振って内野安打。ここに来て「ラッキーボーイ」の雰囲気。
そんなキャラクターだったっけ?笑
三遊間に飛んだゴロ。ショートの二岡が深い位置で取ってテンションが低いまま送球。
送球は確実だが、テンションが低いぶんセーフだった。
ノーアウト一塁だけどここはバントなし。
高橋尚にとって一番対峙しにくい「ノビノビ野球」。シーツも(この時は)ノビノビ。ナイスバッティングの二塁打。

緊張感が先行するビッグゲームにおいて、
この「ノビノビ感」は、フッと息をついて肩の力をぬくためにいい効果をもたらしたのではないだろうか。

ノーアウト2塁3塁。勝ち越すのに絶好の場面でアニキ。
カウント0−2から、際どいコースの球にストライクの判定。
ニコッと笑ったアニキ。ベンチでは岡田監督も笑っていた。
レフトスタンドでは「わっしょいわっしょい」のお祭りの中、その笑顔とわっしょいがいいバランスで融合し、
高橋尚を「いけるかも」と思わせることなく、最後のボールへと誘った。

ど真ん中のスライダー。強振したアニキの打球はあっという間にライトフェンスに衝突した。

2点勝ち越し。本当に強い、そう思った。

そして、極度のスランプの兆候を見せる桜井に岡田監督は思い切って代打、葛城をコールする。
もうこうなったら絶対に久保田と球児を休ませる、そう決めたのだと思った。
普段のゲームならここで桜井が打てなくてもいい、打席に立って感じる中で復調していくことが理想。
岡田監督はずっとそうやって来た。そうやって桧山は復調したんだ。
シーツだって今岡だって矢野だって鳥谷だって赤星だって浜中だってそうだった。

この試合をふつうにものにすることだけを考えればきっとそのまま桜井を出していたと思う。
だけど大差で勝つためには、ピッチャーが代わって最初の打者。
その打者こそ鍵だった。確率で考えれば昨日も試合を決めるホームランを打ってる葛城。

今日はもう絶対に大差で勝つ。大差で勝って久保田と球児を休ませる。
可能性があるとすれば今しかない。
「何が何でも」
それがこの場面の「代打、葛城」なのだと感じた。

しかし、高橋尚に代わって登板した福田がそれを封じる。
二軍落ちから再登録されての気持ちの入ったナイスピッチング。

大差で勝とうとしにいくことは、当然力みが産まれこの試合の勝率そのものは下げると思う。
だけどそれは関係ない。大差で勝ちにいくことが必要なイニングだった。紙一重で福田が好投。

勢いで飲みこみにいった岡田采配に対して、底力で封じたジャイアンツ。

素晴らしい攻防だった。


5回裏

「大差で勝ちにいく」というギャンブルを失敗したタイガース。
サッカーで言うとリスクを犯して両サイドが上がっていって攻撃をしかけたような場面。
しかしディフェンスの福田にボールを奪われた。

カウンター攻撃に入ったジャイアンツ。

先頭の矢野謙が2ナッシングに追い込まれるも、ユニフォームに掠ったデッドボールで出塁。
いい選手だなぁ。

ディフェンシブハーフの矢野謙がボールを繋ぐ。

小笠原が粘り勝ちのフォアボール。

トップ下がフォアードへいいパス。
しかしこの試合消極的なプレーが目立つ大型フォアード、イスンヨプがシュートを放つも決められない。
ゴールキーパーがシュートを弾く。しかし、こぼれ球を二岡が押し込んでゴール。

そんな攻撃で一点差だった。

1アウト2塁3塁で阿部。

ここでビッグプレーが飛び出す。真ん中高目のストレートを強振した阿部の打球は、強いゴロとなって人工芝のグラウンドで前進守備をとるファーストの葛城の右横を襲った。
ダイビングでそれに反応する葛城。
ミットに当てるも弾いてしまう。
しかし、弾いて方向が変わった打球に、同じくダイビングでその打球に反応していた関本が反応。捕って立ち上がってファーストをアウト。

一二塁間を抜かれていれば逆転されていた場面。
抜かれなかっただけでなくアウトまで増やした。

ギャンブルを失敗した後、同点で止めたタイガースの守り。
凄いゲームだ。


6回表

福田が好投を続ける。
代打藤本、鳥谷、浜中を三者凡退。

攻撃終了時点で、2番浜中のところに渡辺を入れる。
久保田、球児を休ませる可能性をまだ見ていると感じた。


6回裏

ピッチャーは渡辺。
先頭の脇谷のフラフラとしたフライをアニキがファインプレー。
「何が何でも」やっぱり引っ張っていたのはこの人なんだろう。

代打の大道もライトフライ。また2アウトランナーなしで高橋由にまわる。
第二戦で梨田さんが「1番の谷が孤立してるように見える」といったのが的を得ていると感じた。
この日もそう。8番が出塁できないと、1番の高橋由が活きない。
そしてホームラン警戒の四球。

2番矢野謙。追い込まれてからしっかり振って粘ってこられたが、最後は力勝負でファーストファールフライ。

渡辺、ナイスピッチング。


7回表

先頭のシーツ。
バットが折れてサードゴロ。この後の件については、とてもイヤな気持ちになった。
なんでこのゲームでこんなことが起きるのか分からない。
「ボンヤリしてて、内側を走ってただけ」と思いたいけど・・・

もしわざとで「メジャーでは当然のプレー」だとか言うならば、残念だけど帰国してもらったほうがいい。
「ダサい」が分からない者は、日本の野球には必要ない。自分がファースト守ってるときにいっつも気にしてることだし。
それを相手の選手にやってしまうことの「ダサさ」。一番かっこ悪い行為だ。

ボンヤリしてただけなら、もっときちんと謝る。それがこの国で当然のことだ。
シーツの悪いところを出さず、なるべくいい部分が出るような使い方をみんなでしてきただけにね、凄く残念だった。

それにしても原監督の形相は凄かった。岡田監督の「天然」の物言いが癇に障ったのだろうけど。
あんなにも重厚なストレスを抱えて毎日を過ごしてるのかと、少なからず心配になる表情だった。
とにもかくにもその後の展開で「報復」が行われなくて本当に良かった。
原監督の最もかっこいい部分だと思う。そしてスンヨプが大事に至らなくて本当に良かった。

(追記:この件に関しては、球団の代表レベルの謝罪で社会的な解決を見た模様。もう、いろいろ考えたくないし、アンディしっかりな!)


どこか釈然としない中で、しかしゲームは進行する。


西村が疲れていた。
もう、あれだけフル回転できたのだ。それも仕方ないだろう。
アニキはなんとか打ち取るものの、葛城には制球が定まらず四球。
6番に入った赤星にインコースの速球をライト線へ。

前日、非常にスイングが鈍っていた赤星。いつもよりも3時間長いだけの休憩だったが、それでも随分違うものなのだろうか。
確かに西村の球にも力がなくなっていたが、よく打った。さらに一塁から一気にホームを狙うつもりでいつでも走る阪神の選手。
葛城も大きく三塁をオーバーランするが、ここは吉竹コーチのナイス判断で、ストップ。

ベンチで岡田監督、もう喜んでいた。
切り替えてるとかそういうのじゃない。チャンスが広がって嬉しいから喜んでいる。
極端に素直なのだと思う。
原監督、羨ましいだろうなぁ。「極端に素直」はやろうと思ってやれるものでもないし。

そして、矢野が打つ。
インローのストレート。通常の西村の速球であれば、あんな打球は打てなかっただろう当たり。
超前進守備のレフトの横を左中間にゴロで抜けていく。
二塁から生還した赤星と本塁上で待っていた赤星が手を合わせる姿が「チーム」だった。
セカンド塁上で矢野、ガッツポーズ。

2点リードになった。


7回裏。

2点リードで江草。
このままリードを保ち、8回に追加点をとって久保田、球児を休ませたい。

小笠原はファーストゴロ。
しかしスンヨプをフォアボールで歩かす。


二岡。
初戦でも8回に同点ホームランを打ったのが二岡だった。
二岡はだいたいいつでも自分の力を発揮できるのだろう。
序盤で下柳先輩相手に見せたホームランスイング。
これがいい角度にボールと衝突し、右中間へ。

またホームランで同点になった。
点を取ったら、取り返す。今のジャイアンツ、本当に強い。


8回表。
投手は豊田。代打、桧山からの攻撃。

豊田のフォークボールが素晴らしかった。
豊田の手元を離れた時は、打者の肩辺りの高さ。
それがホームベース近くでワンバウンドしようかというところまで落ちる。
それと低目に制球されたストレート。交互に投げられたら三球三振でもちっともおかしくないボールだった。
しかし、桧山がなかなかアウトにならない。
ピッチャーがあれだけの球を投げるのにバッターが粘れることを見ている人もやっている豊田も桧山も
当たり前と感じているように見えた。

最後は、再び物凄い落差のフォークボールを桧山が辛うじて当てるもののセカンドフライ。
いい勝負だった。

さすがにシーツでは豊田が上回る。
一球もバットに当てられず、注文どおりフォークボールで空振り三振。
あれをファールにしていた桧山がいかに凄いかということを思い知る。

豊田vsアニキ
ジャイアンツサイドから見れば、当然ホームランだけは打たれてはならない場面。
だけども外の変化球一辺倒でレフト前にコツンというのも困る。
ランナーが出ただけで「わっしょいわっしょい」東京ドームが甲子園へ変貌する様を前々日とこの試合で痛感している。
逃げ腰になった瞬間に得点が入る試合。攻めなければならない。

初球インサイドへフォークボール、空振り。
そして二球目だった。
もう一球インコースへストレートをボール球で。
投げミスをすればライトスタンドへ猛アーチもあるボール。あそこに投げれたことで勝負あり。
その軌道からまたストンと落とす。
バットには当てるもののアニキの打球は力なくスンヨプの前へ。

豊田、完璧な内容でタイガースの勢いを一旦止めた。


8回裏

同点の8回で橋本。
何が何でも休ませる。監督はまだそう考えていたのだろうと思う。

先頭は途中から守備で入った調子の悪い谷。
落ちるボールの制球が定まらない中ショートゴロでワンアウト。

ここまで何とか7点で抑えている背景には、
やはり高橋由の前にランナーを出していない。しかも先頭バッターでもない。
というところが大きかったと思う。

1アウトランナーなしで高橋由。
1ストライク、2ストライクを続けて非常に角度のあるストレート。
素晴らしいボールだった。
その残像がある中、落ちるボールで打ち取りたかったが、いまいちいいコースに決まらない。
余裕を持って見切られて四球。

1アウト1塁で矢野謙。
1点取れば、9回は上原がいる。当然バントの場面。矢野謙この場面で萎縮。バントは小フライに。
キャッチャーの右横にフラッと上がった高さのないフライ。矢野輝が瞬時に反応してダイビング。
ファインプレーで進塁を阻止した。

2アウト1塁になって小笠原。
タイガースに流れが来ているようでいて、橋本にはまだ余裕がない。
一軍に再登録されてからほとんど投げていないのだ無理もない。
そこへ来て、ビッグゲームの同点で8回。対峙するのが小笠原。
だけど頑張れ、なんでもいいから抑えてくれ橋本。
初球はストレート。
ここで小笠原が非常にイヤな空振りをした。

ほとんど対戦したことがないであろう小笠原。
高橋由に対する攻め方を見て、短い時間で対策を練る。ストレートに角度がある。
思っているより低い場所を振ってみよう。この辺かな?と決めてブンッ。
非常に余裕があった。
そして次の変化球をヒットにされる。
「さすが」を感じた打席。ジリジリとジャイアンツが実力による圧力をかけてくる。

2アウト1塁2塁でイスンヨプ。
この試合四番に入ってどこか消極性が出ていたイスンヨプ。
その消極性を矢野が見事に見切って攻める、三球目まで徹底してインサイドに中腰。
その後は、いいコースに来てくれるだろうと信じて全球落ちる球。
決してコントロールされたボールではなかったが、矢野と橋本の気持ちの強さが、
スンヨプの腰を浮かせた。
鳥谷の後方へ力のないフライ。

ここでの1点が勝負を分ける場面。
病み上がりの橋本を矢野が引っ張りに引っ張って気力で防いだ。


9回表

ジャイアンツがチャンスで勝ち越せなかった直後。
前の試合で決勝打の葛城、前の打席でライト戦に強い打球を打っている赤星。
さらにタイムリーを打ち試合終盤好守の光る矢野というタイガースとしては非常に期待の持てるこの回。

8回を完璧な内容で凌いだ豊田は、9回、一球も投げミスをしなかった。
その集中力と、集中を投球へと変えられる技術は圧巻。
葛城は当てるだけで精一杯のショートゴロ。
赤星はストレートを強く振りにいって豊田を威圧するも、
2ストライクからファールを打つことにかけては日本一うまい赤星が連続の空振りで三振。
乗っている矢野もバットに当たらない。

ジャイアンツに来て苦労もした百戦錬磨のパリーグを代表するストッパーは、このゲームしぶい光を強く放った。あんなピッチングしたら誰も打てない。


9回裏

橋本がふつうに投げれていれば続投だったと思うが、やはり苦しかった。
ここまで、久保田と球児を休ませることをずっと念頭においてやってきた。
それはこの後の9連戦が二回続く日程を見越してのことだったと思う。
7−7の同点で9回まで来て、もう一度考えてみる。
ここで勝とうとしない方が、むしろ良くない。
苦渋の選択だっただろうが、勝ちにいくには久保田しかいない。

頼んだ久保田。偉いよ久保田。

9回に投げるのは久し振りの久保田。
しかも東京ドーム。相手がいきなり二岡。

2年前、タイガースのストッパーは久保田だった。
東京ドームで二岡に、連日のサヨナラホームランを打たれた試合があったっけ。
しかも大連投の中この巨人打線との対戦で相当疲れているように見えた久保田。
二岡をフォークボールでショートゴロ。
なんでもいい。本当によく抑えた。

続く阿部はホームラン警戒でフォアボール。仕方ない。

1アウト1塁で古城。
1点取ればもちろんサヨナラ。当然送りバントに来るジャイアンツ。
いつもの球威がない中、明らかにストライクのコースをボールと判定されてさらに苦しくなる久保田。
カウント0−2。
ここで原監督が古城を呼び寄せ長い耳打ち。
もう全てを口頭で確認しておこうということだろう。曖昧なまま策を取ることを避けた。
全てを明らかにして古城を打席に立たせる。さすがにあんなにもひどい状態だったジャイアンツをここまで持ってきた名監督だ。
2ストライクとなってスリーバント、これを古城が見事に決める。
ベンチに帰ってきた古城を讃えるジャイアンツベンチ。
あの頃こんなシーンを東京ドームで見ることはなかった。
ホームランをいっぱい打てるから強いんじゃない。スリーバントを決めた古城を全員で讃えることができるから強いんだ。

2アウト2塁。非常にいい雰囲気で脇谷。
通常の久保田の球威であれば力で抑え込める可能性が高い。しかし、調子ははっきりと悪い。

だけど、本当に気持ちの入ったストレートに脇谷のバットが出てこない。
矢野のミットがズバン!と鳴って、久保田は久し振りの9回を無失点で切り抜けた。
久保田は本当に強くなった。
久保田は本当に強くなったよ。


10回表

その久保田の気持ちを、非常に感じるタイプの関本が先頭。
打順としては非常にいいところから始まった。

ジャイアンツは上原。どうしても落とせないゲーム。
両チーム決め手のないまま12回までいくようなら最後まで上原。そんな心積もりではないかと思った。

矢野謙が目測を誤ったこともあったが、関本の打球がセンターの前に落ちた。
確かに記録にはならないエラーかも知れない。ただ、それ以上にこの日関本がしてきた数々のプレー。
下柳先輩が四苦八苦する中で、その憂鬱を切り裂くレフト前のヒットも、間一髪ジャンピングスローでアウトにしたファインプレーも、逆転を防いだ一二塁間のダイビングキャッチも、
狩野のヒットで追いついた場面。その前にツーアウトランナーなしから際どい球を選びに選んで出塁した気持ちも、
ボテボテの三塁ゴロで一塁にヘッドスライディングしたのも、
全部あったから、ヒットになったのだと思った。

この試合のMVP、勝っても負けても絶対に関本だ。

ノーアウト1塁で藤本。もちろんバント。
一度失敗するも、しっかり決めて関本を2塁へ。ナイスバントだった。

鳥谷はこの三連戦、一回り大きくなったのではないだろうか。
それまでの四球。上原、渾身の投球に明らかに圧されていた。
確かに上原も疲れている。この三連戦の前、ナゴヤドームでも延長戦だった。
そこでも2イニング力投していた上原。
だけどこの場面、そういうものを超えた戦いだった。強く気持ちを持てたほうが勝つ。
追い込むまでは上原が勝っていた。しかし、追い込まれてからの鳥谷、凄まじい集中力で上原と対峙する。

真ん中高目のストレート。
うまく打とう、きれいに打とうとして打てる球ではなかった。
強い気持ちをバットに乗せて、心と体全部を使って振り切らなきゃ前には飛ばなかったはず。

鳥谷は、振り切った。

強いライナーがセカンドの頭を越え、前進守備の外野手の間を抜けていった。
三塁まで達した鳥谷が見せた強い表情。感情をそのまま表現して振り切ることの強さを実感している表情だった。

1アウト三塁で藤原。

藤原と言えば、ナゴヤドームでの連続エラーが語り草。
今思えば、岡田監督があそこで藤原をファーストに入れたのは、
葛城と藤原でファーストの併用を考えていたからではないかとも思う。
報道等で知らされていなかったが、林クンの状態は当時から相当悪かったはずで、代役についても考えながらゲームを進めていたのではなかっただろうか。

結果的にみっちゃんが一気にチャンスをものにしてファーストの一人におさまった。
だけど藤原だって、その可能性が十分にあった選手だ。
守備もどこでも守る。代走もある。代打でバントもある。
なんでもやってきた藤原の珍しく「打て」の場面。

岡田采配の素晴らしい点は、こういうところで絶対「スクイズ」の予感をさせないところだ。
相手チームにはされてもいいけど、自分のチームには絶対させない。
「ええからしっかり振って来い」
2ストライクまではまったく打てる感じのない空振りだった。
だけど、3球ストライクを取るというのは本当に難しいのだ。
策によって一球見送ったりがなく、「迷いなく三球振る」をしてくる打者は誰だって打つ可能性が上がる。

藤原の気持ちもまた、あの上原を凌駕した。

高校野球みたいなヒット。アウトコース高目の見送ればボールのストレート。
文字通り「くらいついっていった」藤原の打球は、ライトの前に落ちた。

ナゴヤドームでの出来事はもうみんな忘れたよ。
「藤原」を形容する冠はこれから、「あの上原を打った男」だ。
おめでとう。

延長に入り、上原から2点をもぎ取った。
さぁ、球児。


10回裏

球児が打たれる可能性がある球があるとすれば、それは高目を狙ったストレートがベルト付近にいってしまったボール。
人差し指と中指で強烈にスピンをかけ球を浮かしにいっている高いストレート。
それが低くいくということは、少しだけ指にひっかかり過ぎて、スピンがかかりきっていないということ。
球速は同じでも球道が、「ふつうの速球」になる。
その球でももちろん凄いのだけど、
そもそも球児のストレートに合わせてボールを上から見て打とうと準備している打者が振ったバットとその球が衝突しやすい。
初戦で矢野謙が打ったレフトへのヒットはまさにそのボールだった。

先頭は代打の清水。ジャイアンツ打線の中で最もストレートを打つことがうまい打者。
しかも大型補強期間中、不遇の扱いを受けてきた一番の被害者だ。
「ここ一番で」とてもイヤなバッターだった。
初戦は桧山が、二戦目は葛城が決めた。苦労してきた選手が怖かった。

高目を狙ったストレートが高目にいかない、
清水がその球を逃さずジャストミートでセンターへ運んだ。

疲れていないわけがない。
いつもの球が投げられない中、ランナーのいる場面で高橋由にまわった。
その初球。
また高目を狙った球がベルト付近へ。
それをヨシノブが強振。鋭いファールが一塁線を襲う。

球児がファールされるとき、そのほとんどは振り遅れて左打者なら三塁のファールスタンドに入っていくファールだ。
一塁線に火の出るような当たりでファールされたシーンはほとんど見たことがない。

なりふり構わず、もう、フォークボールだった。
絶対に勝ちたい。絶対に勝ちたい。
全力投球のストレートが万が一真ん中のベルト付近へ行ってしまった時、ホームランの可能性は十分にあった。
変化球ならホームランを打たれない。だから変化球。
自らを研ぎ澄まし、切なく思えるほど真摯な姿勢で球児は「勝利」へ向かおうとしていた。
高橋由をフォークボールで三振。

続く矢野謙の打席でワイルドピッチでランナーをセカンドに進めるもフォークボールで三振。

2アウトになった。

2アウトランナー2塁で小笠原。
小笠原とは、なんと勇敢な打者だろうか。

確かに球児は変化球主体の投球をしていた。
しかし、初球から変化球のタイミングで待つことは即ちストレートで打ち取られる可能性を意味する。
そしてその瞬間ゲームセットなのだ。
初球は変化球に合わせて、それ以降ストレートのタイミングで、そんなことで対応できるボールではない。
重々承知の上で、小笠原は勇敢がギャンブルを仕掛け、それに勝利した。

初球の外に抜けたフォークボール。レフト前へ。
変化球だけを打ちにいった打球だった。
一点差。

2アウト1塁。代走に鈴木尚。
盗塁は関係ない。バッターを抑えるだけ。
球児も矢野もそういう姿勢だった。

極度の集中が長い間合いとなって、スンヨプがそれを嫌った。
審判がタイムをかけ、投球動作に入りかけた球児がボールをフェンスに投げつける。

それほどに、それほどに集中しているのだ。
あんなにも優しくて泣き虫な球児が怒っている。勝ちたいから。勝ちたいからだ。

解説の中畑は球児を讃える形容としてこんなことを言っていた。
「コンスタントにこの速さのボールを投げ続けることが凄い。マシンのようだ」

違うぞ中畑。球児が凄いのはそんなところじゃない。
ゲームの最後にチームメイト全員の気持ちを真正面から背負って、それをボールに乗せる150キロだからだ。
マシンにそんなことできないよ。

下柳先輩が悔しくてかんだ唇も、矢野がダイビングで捕球したキャッチャーフライも、関本の数々のファインプレーも、久保田の心で投げたストレートも、橋本がなんとか無失点で切り抜けた時の安堵の表情も、浜中のホームランも、シーツのタイムリーも、
代打を出された桜井の気持ちも、
あの場面で持った鳥谷の思いを、藤原の思いを、
休む予定だっただろうが出場すれば、会心の当たりでチャンスを広げ、ホームに帰ってきて葛城と手を合わせた赤星の表情を、
どんなにつらくともチームを引っ張り続けるアニキの姿を、
全部引き受ける勇気があるから球児は打たれない。

球児はこの場面では絶対に打たれない。

最後のバッターは二岡で、最後はやっぱりストレートだった。
外のボール球、思わず手が出た二岡。必死に止めにかかるも回ってしまう。


マウンドで球児が下から拳を突き上げ、
大激戦は幕を閉じた。

天王山の東京ドーム。三戦三勝。

もしも全てのゲームが逆の結果になっていたとしても、ぼくは満足していたように思う。
原監督がジャイアンツに帰ってきて、本当に野球が面白くなった。
その強いジャイアンツと九月にこんなゲームを三試合も。しかも首位攻防戦。

それだけで幸せだった。

これが野球。これがプロ野球。
季節が移り変わろうとする頃に訪れたこの三日間。
ぼくはこの三日間を、絶対に忘れない。


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posted by コーチ at 13:10| Comment(8) | TrackBack(1) | □ 藤川 球児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月10日

男・藤川球児


男は時として、身を挺して大切なものを守らねばならない。
信じられた男は、全責任を自分で背負う覚悟を決めた。


カウント2ストライク1ボール。
打席に高橋由伸、マウンドには藤川球児。

インコースにストレート。高橋がそれをバックネットへファール。
球児が矢野のサインに首を振って投げたストレートだった。

ファールが飛び、しばしの間が訪れる。矢野は下を向き考えを整理しているようだった。球児もまたマウンドで大きく息をはき来るべき勝負球へ神経を研ぎ澄ます。

ここで矢野が立ち上がった。マウンドの方へ駆け寄った。ファールの後即座に立ち上がったわけではなかった。数秒の間があって、「うん。よし行こう」葛藤の末立ち上がったことが読み取れる「間」だった。

自分の出したサインと球児が投げたいボールが合致しなかった場合にイヤな予感がしたのだろう。球児はそのサインに首を振るだろうか。振ってくれたらまだいい。「いや、ここは矢野さんを信じよう」投げたくなかったボールを「投げるべきだから」投げて、抑えられる場面ではない。

相手は高橋由。ビッグゲームのクライマックス。この三連戦、いろんなことが起きた。最後の最後に「あってはならない、まさか」が起こりうる流れは常に孕んでいた。

このまま最後の投球に向かうわけにはいかない。夏の東京ドーム三連戦。「球児、お前に任せる」矢野はおそらく、そのことを伝えにいったのだ。その意はもちろん、「球児、おまえを信じてる」。

小さなわだかまりが大きな結果を生む可能性があった。年上の女房、矢野輝弘はその小さなわだかまりを「信じること」で払拭した。

時として男は、身を挺して大切なものを守らねばならない。
信じられた男は、全責任を自分で背負う覚悟を決めた。
「オレが、守る」
「オレが、守る」
「オレが、守る」

マウンドで球児が覚醒していった。
大切なものを守るため、あふれ出てくる不安や邪念を大いなる意思で封印し己との戦いに勝利した。

カウント2−1から、一球ファールを打たれた5球目。
その気持ちを賭して、球児はモーションに入った。


男が放った光は、インコースのストレート。
高橋のバットは、空をきった。
空振りの三振。


年上の女房はその瞬間、大きく拳を握った。
マウンドの男は小さくしかし強く拳を握った。

責任を果たした男のみが持つ誇りを抱き、
堂々とマウンドから降りてくる若き大黒柱に、

自分を信じてくれた年上の女房は感情を体いっぱいで表現し駆け寄ってきた。

その表情に、男は少しだけ、安堵の笑みを見せたんだ。

男、球児。家族を守る。


スコアは2−2の引き分け。
夏の東京ドーム大一番。引き分けにて、さらに混沌は進んだ。


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posted by コーチ at 02:13| Comment(4) | TrackBack(1) | □ 藤川 球児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月05日

球児、還る。

先生  「球児が、球児がー!!!」
コーチ 「ね・・・」
先生  「いっぱい空振り取った、ストレートでいっぱい空振り取った!!!」
コーチ 「でした・・・」
先生  「なんや、コーチ泣いてんのか? オレより先泣くなんか反則やぞ!!」
コーチ 「いいじゃないですか。たまには先に泣かしてください」
先生  「センチメンタルすぎるぞ!!コーチ、センチメンタルすぎるぞ!!!」
コーチ 「よかった、本当によかった・・・」
先生  「コーチ!!!」
コーチ 「はい」
先生  「球児、最離陸開始や」
コーチ 「そうですね」

先生  「矢野のリードもよかったなぁ」
コーチ 「やっぱりまだ不安があったんでしょうね。アレックスに対してカーブから入りました」
先生  「ストレートしか待ってなかったアレックスは完全に打つ気なしの見送りやった」
コーチ 「カウント1−0からのストレート一本に照準を合わせて構えてました」
先生  「矢野が出したサインは」
コーチ 「裏をかかない、誰もが投げると思ったストレート」
先生  「このストレートを全部ファールされたスワローズ戦」
コーチ 「二日休んだ球児は、そのスワローズ戦の憂鬱を」
先生  「真正面から断ち切った」
コーチ 「二球目の予告ストレート」
先生  「アレックスが空振り」
コーチ 「球児も矢野も『よし、いける』って思ったでしょうね」
先生  「カウント2−0でストレートと変化球両構えを取らざるをえない場面を作った」
コーチ 「一球ストレートを外に投げて、カウント2−1、矢野はストレートで決めにいった」
先生  「ストレートで空振りの三振を取ることが、これからの球児の背中を押す」
コーチ 「頑張れ、球児」
先生  「やけど、決めにいった高目のストレートをファールされてしまう」
コーチ 「シーツが取れるかも、って飛球でしたけど、取れなくて結果的に良かったですよね」
先生  「確かにそうやな」
コーチ 「決めにいったストレートを当てられたことで、変化球を混ぜる選択をした矢野」
先生  「『絶対アウトにする』ということを優先したんやと思う」
コーチ 「だけど、カウント2−1からのカーブが外れて2−2」
先生  「初球のカーブを見送って、二球目のストレートを空振りしたアレックス」
コーチ 「五球目のカーブを見送った後の六球目、矢野が出したサインは」
先生  「ストレート」
コーチ 「アレックスのバットが空を切り」
先生  「弾丸ストレートが矢野のミットへ、ズバーン!!」
コーチ 「ストレート、空振り三振!!」

先生  「やけどまだまだ気は抜かれへんかった」
コーチ 「次の廣瀬はこの三連戦とても好調でしたからね。少し調子を崩してた、栗原や新井や前田よりも、対球児としてはカープサイドから見て最もいいバッターやったと思います」
先生  「ミートするのうまいしな」
コーチ 「廣瀬に対して、初球はストレートで入りましたがそれが外れてボールになります」
先生  「スワローズ戦やったらここで間違いなく変化球でストライク取りに行ってた。真中に打たれたヒットとかこのパターンやったしな」
コーチ 「カウントを取りにいくところでストレート投げるのが怖かったんですよね。そのくらい球が走ってなかった」
先生  「やけど、おそらくはアレックスに二球空振り取れたことで」
コーチ 「矢野は信じたんでしょう。多少リスクはあっても、球児の完全復活を最重要事項において配球を組み立てた」
先生  「カウント0−1からの二球目」
コーチ 「ストレートでした」
先生  「しかし、好調の好打者廣瀬それをバックネットへファール」
コーチ 「いやなファールでしたね」
先生  「打てる可能性のあるファールやった」
コーチ 「それでも矢野はストレートを投げさせた」
先生  「『球児来い、大丈夫や』」
コーチ 「カウント1−1から、ストレート」
先生  「これもファール」
コーチ 「空振りは取れないものの、カウント2−1と追い込んで決め球」
先生  「ここ最近、ここで投げるストレートをことごとくファールされてた球児に」
コーチ 「矢野が要求したボールは」
先生  「ストレートやった」
コーチ 「ズバーン!!」
先生  「ズバーンの瞬間、矢野、ガッツポーズやったな」
コーチ 「まだ2アウトやのに」
先生  「それほど大きな意味のある、ストレートでの空振り三振やった」
コーチ 「終わってみれば、最大の難関廣瀬を」
先生  「全球ストレートで仕留めることができた」
コーチ 「球児が、球児へと還ってくる」

先生  「やけど、2アウトランナーなしで石原」
コーチ 「確かにそんなに怖いバッターじゃないんですけど」
先生  「似てるんよな、スワローズの福川と」
コーチ 「同じキャッチャーですし。得意なコースとか、決めうちしてくるとことか。三塁線に引っ張られた福川の打球が頭を過ぎりました」
先生  「ひとまず矢野は初球をカーブで入ってストライクを取った」
コーチ 「一呼吸入れようって感じでしたね」
先生  「1ストライク取ってからいざテイクオフへ準備完了や」
コーチ 「二球目はストレート」
先生  「これは、ファール」
コーチ 「三球目もストレート」
先生  「これはボール」
コーチ 「カウント2−1になって、いよいよ決め球」
先生  「確率的には低目に落ちる球が最も高かったと思う」
コーチ 「ここまで一球も投げてなかったですしね」
先生  「やけど、矢野が要求したボールは」
コーチ 「やっぱり」
先生  「高目のまっすぐやったんや」
コーチ 「そして三度目の」
先生  「ズバーン!!!!!」

コーチ 「三者連続、ストレートで空振り三振!!!!!」

先生  「球児自身が投げ込んだ、その弾丸ストレートに乗って」
コーチ 「低い位置を猛スピードで加速し」
先生  「そして再び」
コーチ 「球児は大空へと飛び立った」
先生  「自分を信じた矢野さんに、自分を信じて投げ込んだストレートで」
コーチ 「球児は球児へと還っていった」
先生  「夏の夜の出来事です」


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posted by コーチ at 23:31| Comment(5) | TrackBack(2) | □ 藤川 球児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月03日

球児とて神様ではないのだから

「JFKの登板過多が心配だ」
春先からずっと言われ続けたことだった。

後半戦開始にジェフがいなかった。
幸い軽症だったのか、絶好調ではないにしろ、
復帰してからウィリアムスは7割くらいの出来であるように見える。
10割が物凄いので7割でも得点は取られないけど、
絶好調ではないことは投球内容が示している。

そして、球児の絶不調。

やはり疲れだろうか。あるいは病気か何かで体調が悪かったのか、まさか肩か肘に故障があるのか。

球児がストレートで空振りが取れない。

一昨日投げた試合は一球もそれがなかった。
ガイエル、リグス、宮本、宮出。

そして昨日。
真中、福川、度会、青木、田中。

ストレートの空振りは青木の打席で、たまたまインハイにいったボールだけだった。狙ったコースの狙った空振りではない。

真中、福川、度会。
失礼な物言いになるが、井端、福留、ウッズとの対戦ではなかったのだ。
そこで空振りの取れない球児。

スワローズベンチはそのことに気づいていたのだろう。
先頭の真中は高目のストレートをファールしたあと、変化球を待っていた。
「今の藤川はストレートを続けることができない」
カーブかフォークボールか分からなかったが、高めに入った変化球をジャストミートのライト前。
続く福川には空振りを取りにいったストレートをファールされ、やはり変化球で決めにいくも、それを見送られる。そして、もう一度同じコースにストレートで通常ならこれで三振なのだが、際どいコースをまた見極められて、再度空振りを取りにいったストレートを三塁戦に引っ張られた。

ノーアウト二三塁。絶体絶命のピンチで度会の打球は関本のファインプレー。ストレートをファールされてフォークボールが高目に浮いた球だった。

そして最大の難敵青木を迎えるところで、球児が復活したかに思えたのは、やはりストレートで空振りを取れたからで、ぼくはこの時泣いていた。

しかし、矢野は「1点与えて、1アウト取りにいく策」を選んだ。1点もやらずに勝ちきるなら、三振を狙いにいく場面。それならば高目のストレートだっただろうというところで、外にフォークボール。引っ掛けさせてセカンドゴロを狙った細心の配球だった。結果、注文どおりセカンドゴロ。しかし、この時点で1点差。なおもランナー三塁。高目のストレートは、打者青木を考えると打たれる可能性があると矢野が判断したのだと思う。ぼくもその考えには賛成だった。

最後の打者田中には、初球、二球目とストレートで入る。
これは投手が藤川球児である場合のみ実現可能な「ストレートと分かってストレート」という組み立ての中でのストレートではなかった。

裏をかいてのストレート。さらに二球目はファールされる。

ツーナッシングと絶対的に有利なカウントで、
甲子園は「あと一球」のコールがこだました。

敢えて言う。
サンテレビの解説が本当にひどかった。
真弓と中田良。
球児がもがき苦しむ投球を前にして「藤川は本当に凄い」という話しかしない二人。目の前をよく見てみろ、と。

正直、つらくて見てられなかった。
無数のジェット風船が激しく揺れる甲子園のマウンド。
ストレートを余裕を持ってファールされる球児。
「抑えて当たり前」が、どれほどの重圧だったか。
昨年終盤の猛烈なラストスパートは、
ヒーローインタビューで泣いた球児からだったってみんな知ってる。
一昨年、優勝が決まった瞬間、一目をはばからず号泣していたってみんな知ってる。
そんな気持ちを持った若者なんだよ。
どれほどの強さを持って、その重圧を受け入れたか。
解説者なら、代弁してやれよ!!


だけどあの場面は球児しかいないんだ。
エースだから。
だから「球児頑張れ」と思って、お祈りするしかない。
球児、頑張れ。
球児、頑張れ。


ツーナッシングからストレートを見られて、カウント2−1。
決め球は、変化球だった。
あんなにも力んで手元を狂わせた球児が投じたボールはホームベースの手前で大きくワンバウンドした。田中が空振り。矢野が後逸。


そして、
ゲームセット。


取り越し苦労であってくれたらな、と思う。

「抑えて当たり前」も、調子が良ければ心地良くあることもあるかもしれない。しかしもし、調子が下降線であるとするならば、球児は果てしなく思い重圧を背負ってマウンドに立たなければならない。

球児とて人間。27歳の若者なんだ。
投げる球はストレートとフォークボールとカーブ。誰もが知ってる誰もが見たことある球を、右腕から投げている。
神様じゃないんだ。

広島で、ストレートで空振りの三振が取れますように。

ぼくは、祈る。
posted by コーチ at 03:02| Comment(5) | TrackBack(1) | □ 藤川 球児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月03日

球児のストレートはなぜ打てないか

コーチです。
奥さんの質問に答えました。
これは、野球経験者ではない方、共通の疑問ではないかと感じましたので、
今日はそのことを書いてみます◎

コーチ 「昨日の杉山、調子良かったなぁ。調子いいと杉山のストレートって分かってても打てへんのよなぁ」
奥さん 「はい!質問」
コーチ 「はい、質問どうぞ」
奥さん 「分かってても打てへんストレートと、分かってたら打てるストレートは、何がどう違うの?」
コーチ 「なるほどぉ」
奥さん 「超、むずかしい」
コーチ 「超、むずかしいなぁ」
奥さん 「なぁなぁ、どう違うの?」
コーチ 「いろいろ説明せなあかんねねんけどな」
奥さん 「うん」
コーチ 「まず、バッティングっていうのは、けっこう無意識な部分が多いねんな」
奥さん 「うん」
コーチ 「ここや!と思ったところを目がけてバットを振るわけ。でも、ここや!と思ったところにボールがけぇへんかったらどうなる?」
奥さん 「バットに当たらへん」
コーチ 「それが空振りやねん。あえてカタカナを使うと空振りのメカニズムやねん」
奥さん 「別にカタカナ使わんくてもいいよ」
コーチ 「そうやな、その通りやな」
奥さん 「ほんで、ほんで」
コーチ 「だから、言うたら、杉山の調子がいい時のストレートは“一般的なストレート”ではないねん」
奥さん 「アナーキーってこと?」
コーチ 「まぁ、アナーキーってことやわ」
奥さん 「無秩序なストレートって、なんか、かっこいいなぁ」
コーチ 「野球やってた人はプロの選手じゃなくても、相当な数の球を打つ練習してきてんな」
奥さん 「うん」
コーチ 「だから無意識のうちに“この速さのストレートの軌道はこんな感じ”っていう感覚が頭の中にインプットされてしまってるねん」
奥さん 「なるほど」
コーチ 「で、“その感覚を超えた球”が来ても、ほとんどのバッターはどうしても“その感覚”でバットを振ってしまうから、空振りしたりファールになったりするねんな」
奥さん 「“ノビがある”とか“キレがある”とかってそういうことなん?」
コーチ 「そうそう。いくら速いボールでも地球には引力があるから、落ちながら進んでるねんけど、その落ち方が思ってるより少ないのが、調子いいときの杉山の球」
奥さん 「でもね」
コーチ 「うん」
奥さん 「球児くんの球は、もうむっちゃ速いってバレてるけど、なんで打たれへんの?」
コーチ 「もうあれやねん」
奥さん 「うん」
コーチ 「球児くんの球を打とうと思ったら、もう、思ってるとこと全然違うところを振らなあたらへんねん」
奥さん 「全然違うところ」
コーチ 「思ってるよりも、ほんまは無茶苦茶上にボールが来てるねん。だから、そこを狙って振ればええちゃええねんけど、そんな打ち方練習できひんから、誰も打たれへんわけ」
奥さん 「なんか凄い。球児くんかっこいい!!」
コーチ 「で、思ってるのと違うってもう少し言うと」
奥さん 「うん」
コーチ 「例えば、うんこしようと思って急いでトイレ座ったらな、便座上がってて、便器にズボッてはまってしまうときあるやん?」
奥さん 「あるある」
コーチ 「あれが、フォークボールとか、チェンジアップとかの空振りのイメージと近い」
奥さん 「座れるはずやった場所に、便座がない・・・」
コーチ 「思ってるより遠いねん」
奥さん 「なるほど、分かりやすい。じゃあ球児くんのストレートは?」
コーチ 「それは、その全く逆で」
奥さん 「うん」
コーチ 「もう、完全に便座見えてるねん。間違いなくそこにあるねんけど」
奥さん 「うん」
コーチ 「ほんまはもっと上にある感じ」
奥さん 「そんなん、困る!!」
コーチ 「困るやろ。やけど、ちゃんとうんこしようと思ったら、見えてる便座の場所より上で、止まってせなあかん、じゃないとちゃんと便器に入らへん」
奥さん 「むっちゃ難しい!!」
コーチ 「だから、球児のストレートは打ちにくいねん」
奥さん 「じゃあ、スライダーは?」
コーチ 「スライダーは、うんこしようと思った瞬間、ヒョイッって便器がよこにずれて、はみ出してしまう感じ。それがスライダーをひっかけて内野ゴロのイメージ」
奥さん 「スライダー、むっちゃいややぁ」
コーチ 「だから、スライダー投げるピッチャー多いねん」
奥さん 「でもやっぱり、一番難しそうなんは、球児くんの球っぽい」
コーチ 「その通りやと思うよ。完全にそこやと思った場所で、意図的にうんこせなあかんわけやから」
奥さん 「勇気いるし」
コーチ 「そんなことしたことないから、できひんもんね」
奥さん 「球児くん凄いなぁ」
コーチ 「で、杉山も球児くんの球に近いから、凄い打ちにくいねんで」
奥さん 「杉山くんもかっこいい!!」


ということで、
「どうして球児の球は打てないか」という解説でした(笑)
汚くてごめんなさい(謝)


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posted by コーチ at 08:18| Comment(7) | TrackBack(2) | □ 藤川 球児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月30日

藤川粘土様

先生  「ジャーン!!」
コーチ 「え?何ですかそれ?え?またですか?」
先生  「作ってん」
コーチ 「作ってんって、また、この間も作ってたじゃないですか」
先生  「粘土様2号や!!」
コーチ 「その面長の表情は・・・」
先生  「藤川粘土様!!」
コーチ 「なんで・・・」
先生  「前から、球児も粘土で作りやすそうやと思ってたんや」
コーチ 「まぁ、なんとなく分かりますけど」
先生  「さぁ、お祈りするで」
コーチ 「は、はぁ」
先生  「コーチ!!しっかりして!!」
コーチ 「は、はい」

(藤川粘土様を布団に寝かせる)

先生  「ふーじかーわー!!粘土様ー!!」
コーチ 「粘土様ー!!」
先生  「粘土様ー!!」
コーチ 「粘土様ー!!」
先生  「恐れながら粘土様!!どうか球児の体調を!!回復させてあげてください!!」
コーチ 「絶対に、絶対に投げたいに決まってるんです!!」
先生  「一年間、あんなにも頑張ってきたんです!!」
コーチ 「一番大事な試合、投げさせてあげたい!!」
先生  「ですから粘土様!!」
コーチ 「球児の体調を!!」
先生  「球児の体調を!!」
コーチ 「回復させてあげてください!!」
先生  「お願いします!!」
コーチ 「甲子園のマウンドに!!」
先生  「22番を!!」
コーチ 「甲子園のマウンドに!!」
先生  「22番を!!」
コーチ 「球児を!!」
先生  「球児を!!」
コーチ 「マウンドに上げてやってください!!」
先生  「お願いします!!」
コーチ 「お願いします!!」
先生  「嗚呼、粘土様ー!!」
コーチ 「粘土様ー!!」
先生  「粘土様ー!!」
コーチ 「粘土様ー!!」
先生  「嗚呼・・・」
コーチ 「藤川粘土様が・・・」
先生  「今岡粘土様のもとへ・・・」
コーチ 「今岡粘土様が・・・」
先生  「藤川粘土様の・・・」
コーチ 「頭をなでていらっしゃる!!!!」

・・・ よく頑張ってるね、今日も頑張ろうね ・・・

先生  「嗚呼・・・」
コーチ 「今岡粘土様が・・・」
先生  「お話しになられた!!」
コーチ 「お話しになられた!!」

・・・ ぼくも打つからね ・・・


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posted by コーチ at 07:25| Comment(3) | TrackBack(2) | □ 藤川 球児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月29日

藤川球児、背番号は22

先生  「ちょっと前にさ、あれ流行ってたやん」
コーチ 「何ですか?」
先生  「故障とかで出らへんくなった選手の背番号をみんな帽子に書いたりとか」
コーチ 「ありましたね」
先生  「今はまぁ、もう誰もせんようになったけど」
コーチ 「はい」
先生  「昨日おとといの試合って、みんな“22”を背負って野球やってたよな」
コーチ 「“22”が常にマウンドにいました」
先生  「“22”がいない日だからこそ、ずっと“22”がおるって」
コーチ 「なんか、ほんまに素晴らしいです」
先生  「安藤も杉山も、1イニングでも自分が長く投げたい」
コーチ 「“22”が無失点で切り抜けてきたイニングに対する感謝」
先生  「それは、ほんまに感じたよな」
コーチ 「ほんでまた、JFK言うて3人一緒にくくられるから当たり前みたいになってますけど」
先生  「はい」
コーチ 「3人が仲良くない場合だってありますよね、ほんまは」
先生  「その可能性はほんまはあることやと思う」
コーチ 「でも、もう完全にないことになってるし」
先生  「実際、完全にない」
コーチ 「信頼関係ってほんまはそんな簡単な問題やないと思うんですよ」
先生  「確かにせやな。久保田も、自分から友達作るのうまいタイプじゃないし」
コーチ 「一人、オーストラリア人やし(笑)」
先生  「そんなもん関係ないねんけど、でも、難しいことを」
コーチ 「当然のようにやっている3人」
先生  「JFKの凄さは防御率だけやないってか、そのほんまの連帯感が防御率につながってつんやろしな」
コーチ 「二人とも“22”のこと大好きですからね」
先生  「ヒーローインタビュー、最初はえ?って思ったけどな」
コーチ 「ジェフと久保田って、いい選択でしたよね」
先生  「せやねん。昨日の試合って、どんな試合やったってタイトルつけるとしたら」
コーチ 「はい」
先生  「『“22”不在の試合』やろ?」
コーチ 「シーズン終わって振り返るときには、そう呼ばれてるでしょうね」
先生  「その象徴としての、ジェフと久保田って抜群やもんな」
コーチ 「ほんまです」
先生  「“22”不在の試合を連勝したことによって」
コーチ 「はい」
先生  「より一層“22”の存在感がました」
コーチ 「確かに」
先生  「楽しみやな、ドラゴンズ戦」
コーチ 「ほんまに。僅少差の終盤、先発、ここまで6回を2失点に抑えた井川に代打」
先生  「球場全体が思う、マウンドへ上がる次の投手の姿」
コーチ 「そしてアナウンス」
先生  「阪神タイガース選手の交代をお知らせします。ピッチャー、井川に代わりまして、藤川、ピッチャー藤川、背番号、22・・・」
コーチ 「もう、出てきただけで勝ちますね。こんなもん、球児が出てきただけで勝ちます」
先生  「本物の“22”の登場」
コーチ 「沸き立つ甲子園」
先生  「沸き立つ甲子園!!」
コーチ 「もう、球児、最高です!!」
先生  「ほな改めて!!」
コーチ 「はい!!」
先生  「背番号22の存在感に」
コーチ 「みんなの感謝をこめて」
先生  「乾杯!!」

kyuji830.jpg
“22”不在のマウンドに、
“22”はずっと存在していたんだ。


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posted by コーチ at 11:28| Comment(0) | TrackBack(1) | □ 藤川 球児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月23日

野球町、心のMVPは、当然球児!!

先生  「コラー!!テレビ、コラー!!」
コーチ 「先生、どうしたんですか?」
先生  「球児を飛ばすな、球児を!」
コーチ 「そうですね。スポーツニュースで、軒並み藤川の映像流れなかったですね」
先生  「前半は清原対松坂の男の対決」
コーチ 「後半は、石井、岩瀬、そしてクルーンという磐石の継投」
先生  「球児が出てけえへんやないかー!!」
コーチ 「ほんまに、球児も調子はあんまよくなかったですけど、ええピッチングしてましたけどね」
先生  「球児凄いねんぞ!球児凄いねんぞ!」
コーチ 「その通りです。ずっと見てるもんはそのことよう分かってます」
先生  「球児の投げてるとこ見て思ったんや」
コーチ 「はい」
先生  「贔屓目抜きで、ほんまに凄いことがおきてたんやで」
コーチ 「何ですか?」
先生  「キャッチャーの谷繁がな」
コーチ 「はい」
先生  「全球ストレートでいこうとしてた」
コーチ 「そうですね。のっけから2人目の川崎の決め球まで、全部ストレートでした」
先生  「12球連続ストレートや」
コーチ 「確かに凄いですわ」
先生  「でも、球児ちょっと気負ってる感じやってコントロールもいつもより悪かったし、キレもマックスじゃなかったからな、けっこうファールされたんや」
コーチ 「それでやむなくフォークボール投げて三振とったって感じでしたもんね」
先生  「せやねん。シブシブ、フォーク投げてるねん」
コーチ 「で、フォーク投げたら簡単に三振取る」
先生  「でな、最終回のクルーンのときに谷繁がどういう配球するか注目してたんや」
コーチ 「はい」
先生  「そしたら、ふつうにフォークボール混ぜてるねん」
コーチ 「そうでしたね」
先生  「“やむをえずフォーク”と“ふつうにフォーク”谷繁が、どっちを上に見てるかってことや」
コーチ 「紛れもなく、球児です」
先生  「レギュラーシーズンでの対戦で、球児は谷繁に“むっちゃ凄いやつ”って思わせとったってことや」
コーチ 「うちのクルーンも凄いけど、クルーンじゃちょっと難しい。でも、阪神の藤川やったらストレートだけでいけるかも知れない」
先生  「今の野球、ストレートだけでアウトにできるピッチャーっていうのが一番の夢なんやないやろか?」
コーチ 「そうですね。それこそ、夢の球宴です。とてもオールスター的な魅力や思います」
先生  「クルーンでも石井弘寿でもあの松坂でさえも、最初から頭にないねん」
コーチ 「松坂は対清原限定でしたからね」
先生  「しかも一球限定や」
コーチ 「ところが球児は、全球ストレート勝負を挑んだ」
先生  「そのこと自体が物凄く価値のあることやと思うねん」
コーチ 「てことで、夢の球宴第一戦のMVPは」
先生  「もちろん球児!!そしてそれをアシストした谷繁!!」
コーチ 「ほしたら改めて」
先生  「おう」
コーチ 「5万人の安心をもたらす、快感ストレート」
先生  「現在の野球界で事実上最も速い球を投げる藤川球児に」
コーチ 「乾杯!!」

o-fl-050722-0801.jpg

野球町が選ぶMVPは満場一致で藤川球児

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posted by コーチ at 03:32| Comment(3) | TrackBack(7) | □ 藤川 球児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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