2007年08月22日

神様の継承

素直に一生懸命頑張る人を神様は裏切らない。


その時、彼は一握り短くバットを持っていた。
カウントは2ストライク1ボール。追い込まれていた。
走者は満塁。打席に背番号24。
高目の速いストレートを空振りしないための準備。

「あの頃」四番バッターだった、背番号24。
四番バッターには向いていなかった。だけど四番は彼しかいなかった。最弱時代の「あの頃」を支えた四番打者は今、
バットを短く持って打席に立っていた。

とにかくヒットが打てなかった。それでも監督は彼を使い続けた。
浜中が一軍に再登録された日。交代で二軍に行ったのは庄田だった。

それは皆がどこかに抱えた複雑な感情ではなかったか。
でもその複雑な気持ちを打ち消すかのように、マスコミが先頭に立って「ベンチは彼の野球に取り組む姿を評価している」「彼の存在感がベンチに必要なのだ」と、彼の一軍残留を擁護していた。
「背番号24はもう、終わってしまった」誰もがそう思いたくなかったからだ。

気が付けば彼を語るとき、「確かに結果は出てないけど」という注釈が必ずつくようになっていた。


カウントは2ストライク1ボール。
走者は満塁。彼はバットを一握り短く持っていた。

フォークボールだった。低目からボールのコースへ落とすことを狙ったボールだった。しかしボールは投手の思惑とははずれ、ベルト付近からやや低目へと沈んでいった。

長きに渡って彼の姿を見続けてきたみんなが知っていた。
真ん中低目。
そのコースは、打てる!!

打球はセンターへ高く舞い上がった。
風はフォロー。


神様は、素直に一生懸命頑張る人を裏切らない。


打球はバックスクリーンへと落下して、
神宮の夜に歓喜のメガホンが打ち鳴らされた。
一塁ベースを回ったところで彼は、
ポンポンと二回手を叩いて、少し笑った。


ダイヤモンドを一周してベンチ前。
全ての人が、ありったけの祝福で彼を迎えた。
みんな彼のことが大好きなんだ。


神様に守られた背番号24は昨日、
「神様」の称号を継承した。


代打の神様、桧山進次郎。
神宮の夜に産声を上げた。


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posted by コーチ at 10:28| Comment(2) | TrackBack(0) | □ 桧山進次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月28日

桧山のホームラン

タイガースのゲームにおいて、最も美しいもの、
それは、

桧山のホームランだと思う。

アニキの、ボールにバットが当たる衝撃で、ボールが焦げ付くようなホームランとも違い、
濱中や今岡が見せる、憂鬱も引き連れて大気を舞うようなホームランとも違う。
もちろん、
藤本やスペンサーが時折見せる、ボールが「スマイル」マークに見えるホームランとも違う。

桧山のホームラン。

トムソンガゼルやインパラような草食動物が見せる、一瞬の跳躍に近いか、
或いは、
新緑の雨上がりに、大空に描かれた虹のよう。

桧山のホームランは美しい。


その美しさの正体は。


その正体は「チームと桧山」というキーワードの中にあると思う。

たとえば、と、想像してみる。
学生時代、その多くの時間を過ごした友人9人がいるとする。
「卒業してからも、ずっと遊ぼうや」
そう言って、それぞれの道を歩んだ9人が、
卒業してからもその関係を保つことは、当然ながら難しい。

「それぞれの暮らしがあるし、しかたないよな」

そういう言葉で関係性は片付けられて、
年賀状が唯一の交流ということは、珍しいことではないと思う。

しかしそうならずに、
その関係性が持続する場合もある。

そのチームには必ず「求心力のあるリーダー」がいる。
ただそのリーダーがそのチームに対するモチベーションを持ち続けることも難しい。
だからリーダーだけで、いい状態のままチームは存続しづらい。
じゃあそこには誰がいる?

「リーダーにはならなくとも、そのチームを安定して愛し続ける人」

愛し続ける、その持続力に長けている人が必ずいる。

桧山進次郎。

彼はそういう人に見える。


桧山が放つライトスタンドへのアーチは、
チームを愛し続けた人が放った、
その長い時間がもたらした回答なんだ。


だからこそ美しく、
ぼくは桧山のホームランに魅了される。

甲子園の夜空、
逆風の浜風のはるか上を、
桧山が費やした気持ちが舞い、

ライトスタンドへ、着地する。

桧山がチームを愛してきたならば、
その時間は桧山を愛してくれる。

日本一になったとき、誰の胴上げが見たいって?

桧山の胴上げにきまってるんだ。


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posted by コーチ at 08:41| Comment(7) | TrackBack(1) | □ 桧山進次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月24日

桧山進次郎、6番を手中に収める

先生  「ヒノキー!!マウンテン!!ヒノキー!!マウンテン!!」
コーチ 「それは、またオリジナルな踊りですねぇ」
先生  「昨日、娘と考えたんや。ヒノキー!!マウンテン!!」
コーチ 「でも、桧山を、ヒノキとマウンテンに分けてるのは分かりにくいですよ。日本語と英語混ざってるから」
先生  「無罪モラトリアムや!!勝訴ストリップや!!桧マウンテンや!!」
コーチ 「椎名林檎!!」
先生  「せや、椎名林檎のエッセンスを織り交ぜて、きのうオレは応援することにしてたんや」
コーチ 「そうすることの意味をあまり感じません」
先生  「藤ブック!!藤リバー!!ナウ岡!!サイド岡!!」
コーチ 「もういいですよ。“ナウ岡”ってなんか間抜けでしょ。ほんで“サイド岡”て」
先生  「アツ・サイド岡」
コーチ 「もはや人名なのかすら分からないです」
先生  「ほんでな、コーチ」
コーチ 「はい」
先生  「昨日は一日中家族でこのことについて考えてたんや」
コーチ 「おそらく、先生の家庭だけで行われていた会話ですね」
先生  「でな、娘が凄いこと言いよんねん」
コーチ 「何ですか?」
先生  「朝青龍って、英語にするとな」
コーチ 「はい」
先生  「モーニング・ブルー・ドラゴンになるやろ?」
コーチ 「はい」
先生  「あんなに強いのに、“モーニング”って何かおもろいって、娘が言いよんねん」
コーチ 「娘さんまだ、ちっさいですよね」
先生  「せやねん。あんなちっさい子が“強いのに”“モーニング”って、ちょっと面白いって、そんなこといいよんねん!!」
コーチ 「確かに凄いですねぇ」
先生  「せやろ。自慢の娘や」
コーチ 「いやでも、どういう育て方したら、そんなセンス身につくんですか?」
先生  「ヒノキー!!マウンテン!!ヒノキー!!マウンテン!!」
コーチ 「あ、そういう踊りを一緒に考えるんですね(笑)」


先生  「それにしても、桧山やったな」
コーチ 「ほんま桧山でしたねぇ」
先生  「ここに来て桧山が、ようやく“6番”をものにした感じがあるな」
コーチ 「確かにそうですね。“今岡の後を打つ”っていうことを体で掴み取ったっていう感じがします」
先生  「あんなに、雰囲気変えてしまうバッターもちろん凄いねんけど、その後を打つバッターはやっぱり難しいよな」
コーチ 「ぼくね、高校時代5番打ってた時期あるんですけどね」
先生  「おお」
コーチ 「4番の子が、物凄いパワーヒッターやって、時々、信じられへんようなホームラン打つんですよ」
先生  「なるほど」
コーチ 「で、こう試合の空気がその信じられへんホームランの余韻の中、打席に立つわけです」
先生  「桧山もそんな打席、多かったよなぁ」
コーチ 「そういう時ってね、その余韻に惑わされたらあかん。自分は自分で変化球待って右中間とか思うんですけど」
先生  「おお」
コーチ 「どうしても、ホームランの残像が目に焼きついてて、ちょっとタイミング狂ってしまったりしたの思い出します。よう言われることですけど“開きが早くなる”とか、そうならんようにと思いすぎるとちょっとタイミング遅れて“ヘッドが下がる”とか、落ち着いてしっかり見ていこうと思っているところに甘いストレートが来て、でも手が出ないとかね」
先生  「コーチ、打てへん時の桧山みたいやな(笑)」
コーチ 「自分の前を打つバッターが、物凄い存在感やったときって、どうしてもその存在感を処理しながら打席を進めなあかんのですよね。やっぱり気になるから」
先生  「でも、いろいろ考えてやっぱり行き着くところは、アレやろ?」
コーチ 「そうです。“自分のバッティングをする”それしかないんですよね」
先生  「打とうと思ったらそうやわな」
コーチ 「でもそれはなかなか難しいことやと思うんで、スペンサーみたいに、見逃し三振覚悟で四球を取りにいったりするのも一つの方法論やとは思いますけど」
先生  「桧山はそのタイプやないからな」
コーチ 「はい。だから最近の一貫して早いカウントから打ちに行く桧山は、ほんまにいい感じやと思います」
先生  「今岡と自分の間の“間”みたいなもんを、自分のもんにしたって感じやな」
コーチ 「そうですね、今岡の存在感を処理しきってから、打席に立ててる感じがします」
先生  「で、そういうスタンスで打席に立ってる結果、3回の打席みたいなな」
コーチ 「11球投げさせて出塁」
先生  「ほんで、結果的に藤本のタイムリーが生まれて、“見事な繋ぎ役”を果たしたことになった」
コーチ 「桧山の“繋ぎ”は狙わなくていいんですよね。で、ヒットを打ちにいった結果、そういうものが生まれるっていうのも、体で掴み取った感じがします」
先生  「同様に、アツもそうやな」
コーチ 「はい。桧山が“今岡の後”というのを掴んだように、アツは“金本の前”というものをようやく掴めた感じです」
先生  「アツも結果的に繋げたらいい、っていういい意味の割り切りっていうかそういうのが出てきたもんな」
コーチ 「やっぱり自分の力が出し切れるようにするんが一番いいですもんね」
先生  「だから、昨日なんかは、アツと桧山と藤本の3人が大活躍した試合やわな」
コーチ 「はい」
先生  「そういう試合の“型”っていうもんが、ここに来てようやく見えてきた」
コーチ 「タイガース、まだまだ強くなってます」
先生  「で、アレよな。相手チームの先発が右投手のときのオーダー」
コーチ 「はい」
先生  「その場合は、アツや桧山があのスタンスで打っていくと、けっこうあっさり負けてしまうこともあるかも知れへん」
コーチ 「そうですね、そのリスクはありますよね」
先生  「でも、うまくいくと昨日みたいな、すごく厚みのある攻撃ができる」
コーチ 「はい」
先生  「うまくいくほう考えて、どんどん打っていったらええよな」
コーチ 「はい。ぼくもそない思います」
先生  「で、関本、スペンサーがスタメンの日は」
コーチ 「まったく違うチームカラーになる」
先生  「今岡がホームラン打った後、スペンサーが8球投げさせて三振して」
コーチ 「矢野も8球投げさせてセカンドゴロで」
先生  「打ちやすくなったところで藤本がセンター前にポトンと落として」
コーチ 「9番のところで代打アツ」
先生  「日本シリーズは、この2パターンで2勝ずつして日本一なれたら夢のようやな」
コーチ 「ほんまですねぇ・・・」
先生  「とにもかくにも、昨日は」
コーチ 「はい」
先生  「ヒノキー!!」
コーチ 「マウンテン!!」
先生  「ヒノキー!!」
コーチ 「マウンテン!!」
先生  「桧山が“6番”を手中に収めたことに」
コーチ 「乾杯!!!!」


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posted by コーチ at 07:46| Comment(8) | TrackBack(4) | □ 桧山進次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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