2007年08月11日

林クン進化の夏

林クンがライトのポジション争いに名乗りを上げた頃、
林威助はランディ・バースに似ていると書いた。

ゆったりとしたテイクバック、ボールを見る時の「間」。
何か「ゆとり」を感じさせるところが「バース的だな」と思ったのだ。


昨日のゲーム、横浜スタジアム初戦の3回表。
上園に代えて代打葛城という『動く岡田采配』がズバリはまったイニングだった。先頭打者はアニキで、初球インハイに来たところを睨みつける。結果、「THEアニキ」というような四球で出塁。Vシネマ四球。

で、林クン。

前の回で逆転の突破口を開いた林クンはこの打席、三振をしている。結果は三振なのだが、三振の内容が素晴らしかった。とにかくピッチャーに神経使わせるし、なかなかアウトにならない。

横浜先発のマッドホワイト―相川のバッテリーは、アニキに投じた球と同じ球を初球に選択する。さすがの林クンもちょっとイラッと来てた様子。対アニキではこのあと全部外のボールだったのだが、対林クンで見せた相川の配球は、この後外のボールで意識を持たせたあと、もう一度インコースにいくというものだった。これを平然と見送る林クン。意図してのものではないだろうが「格上感」が漂っていた。

横浜バッテリー。昨日に限ってはアニキ以上に神経を使ってたのではないだろうか。

カウントは2−3まで進み、ここから林クンのファールショー。とにかく際どいコースの球、コースはやや甘くてもキレのある球は全部ファールになる。しかもスイングが当てにいってのものではなく、甘いコースにいくか、キレの悪い変化球がいくかすれば、ヒットになるスイングでファールになっている。

「振って粘れる左打者」

どこかで見たことあると思った。
おそらくは、福留孝介。

訂正したい。林クンは、バースと福留に似てる。
打つまでがバースで、打つ時が福留。
バースと福留は座標軸の違う場所にいて、林くんはそのちょうど真ん中あたりにいる。「福留的要素を含んだランディ・バース」これは、とにかく凄い。そしてアニキの精神力を間近で感じているのだ。

バース+福留+アニキ=打率4割ホームラン60本
という式が成り立つ。

そして鳥谷もまた、ここしばらく、ノーヒットながらその充実ぶりが素晴らしい。シーツの当たりで一気に一塁から帰ってきた走塁も素晴らしかったが、その前の四球も同等に素晴らしいものだった。
鳥谷の打席にもまた福留化を感じる。
できれば大きな殻を破って小笠原化してくれると面白いのだが、それはあまりに現実離れしているか。


ところで、今日の横浜の先発は秦投手でしょうか。秦ならたぶん、打てると思う。あまり馴染みのない投手だけど、門倉を全体的にスケールダウンしたような投手という印象。油断せず、ここ数試合の打撃をしっかり続けていれば、必ず打てる。

大事な大事な三日間。大量点に守られて杉山完投、目前で乱れて渡辺でピシャリ。くらい、で。
まぁ、そううまくはいかないものかな。


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posted by コーチ at 15:49| Comment(3) | TrackBack(0) | □ 林 威助 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月08日

「攻」と「防」〜夏の東京ドーム第一戦〜

「攻防」とは「攻める」「防ぐ」。

夏の東京ドーム第一戦。まさしく「攻防」。「攻」と「防」のせめぎ合い。

4回ウラ。1アウト1塁2塁。
投手、下柳。打者、阿部。
カウント0−1。初球は外の低目に逃げるスライダーだった。
2球目。下柳が投じたボールは完璧なコースのシュートボールだった。

「高目のシュートを打つこと」想像してみる。そのボールは顔面の方へボールがぐんぐん近づいてくるのだ。しかも、初球は外に逃げるボール。2球目顔の近くへシュート。タイガースバッテリー細心の配球だった。顔面目がけてボールが飛んでくる。

ここ二年、ライバルはいつもドラゴンズだった。そして勝負どころで神がかり的な活躍をしていた選手が世界一のショート井端で、ほんとに、井端だけは打ち取れるイメージが全くなかった。ちょうど今日から始まった、高校野球のその大会中。優勝を争うチームには信じられないような打率を残す選手がよく現れるが、まるでそういう打者のように井端は次元の違う神がかり的な活躍をして、その翌日スポーツ紙には「また井川背信投球」という見出しが躍っていたと記憶している。

いまだに思うが、あれは井川が悪いのじゃなくて、井端が凄いのだ。

4回ウラ。1アウト1塁2塁。
投手、下柳。打者、阿部。
顔の方近づいてゆくシュートボール。

顔面目がけて飛んできたように見えるように投げたシュートを、阿部は、ホームランにしてしまった。「神がかり」という言葉が頭を過ぎる。技術と気持ち、プラスアルファの何かが阿部のスイングの軌道をミクロの点にアジャストさせたのではないか、とそう思った。


堀内監督時代晩期。
阿部はファーストで起用されてることもあった。チーム状態も最悪な中、やりたくないポジションで出場せざるをえない自分。原監督になって、捕手に戻った。二年目の今年。捕手として堂々首位を行くチームを牽引している阿部。阿部とて順風なここ数年ではなく、そういうものが一挙に昨日のゲームに結実し、タイガースを翻弄する完璧なリードとあの信じられないホームランを産んだような、そんな気さえした阿部の活躍だった。


攻める巨人。


1アウトランナーなしになって、神宮での大活躍を受けてスタメンの7番矢野謙。ここでヒットを打たれたら、ガタガタと言ってしまっていてもおかしくなかった。しかし、タイガースバッテリーも繊細さを失わない。下柳、矢野の生命線。「繊細」によって好調の矢野を封じる。

防ぐ阪神。

2アウトランナーなし。打者は8番の木村拓。
2アウトから8番が出塁することは、9番までまわり、次のイニングを1番から攻撃できるという確率で考えても非常に大きな仕事なわけだが、この三連戦ほど集中した戦いになったとき、その出塁がゲームそのものの大きなバランスをかえていくこともよくある。
攻めている方は、そのバランスを自分の形へと調整し。防いでいる方は、そのバランスを崩すチャンスをえられる場面でもある。それが2アウトランナーなし、打席に8番。

木村拓の打った打球、高いバウンドで下柳の頭を越えていった。鳥谷が追いつくも、内野安打。

阿部の信じられない3ランの後、矢野謙、木村拓と連続でアウトにできていれば、ゲームのバランスがまた大きく揺れた場面でもあった。揺れて動くとその防壁は弱く崩れやすくなり、少し矢を放たれただけでも防壁は崩れ、守っていた『主導権』と呼ばれる目に見えない何かが音を立てて流れていってしまう。

木村拓の内野安打。阿部がもぎ取ってきた『主導権』それを守る防壁を『防壁』として機能させるだけでなく、より強固なものへと変えていった。貴重な一打だった。

押し戻す巨人。

次の門倉がアウトになってチェンジ。


5回表

対極的に4回の表を8番で終えてしまっていた阪神は、5回表下柳からの攻撃となる。万が一下柳が出塁しても、それはそれで投球に影響が出る可能性があり、出塁するも出塁しないも苦しい場面。
下柳、サード前のボテボテのゴロ。
余談だが、広島戦でアニキが見せた黒田の前へのピッチャーゴロはこの打球の強さと類似していた。やり切れない思いにとらわれる。
現状でアニキが「ヒットを打つ」という行為はとんでもなく高いハードルを蓄積してきた技術と強靭な精神性を併せ持った上でのみ乗り越えて放たれる、至極の芸術品であるように思う。ただ、片手でヒットを打ってきた人でもある。そういう時こそ彼は活躍する。そしてぼくらを魅了してやまないのだ。今日こそは。


1アウトで鳥谷。
ここまでタイガース打線が記録したヒットは3本。シーツのホームランと、鳥谷、関本が1本ずつ単打を放っていた。シーツが打ったボールは久し振りの先発で門倉が不安定だった立ち上がり、ど真ん中に入ったストレートを打ったものなので、配球うんぬんではない。問題は関本と鳥谷のヒットは両方ともフォークボールを打ったものであったことだった。

低目のフォークボールを見極めることに攻略の重点をおいていたと思われた昨日のタイガース。その準備を逆手にとって、阿部は低目のスライダーとシュートをうまく使い阪神打線を幻惑していた。

逆転した直後のイニング。1アウトでランナーがいないとはいえ打者鳥谷。非常に重要な場面だった。一つ間違えば右中間にライナーで持っていかれる。ここで阿部が勝つためのリードをしたのだった。鳥谷に対して、全球ストレート(だったと思う。シュートが混ざってたかもしてないけど・・・)。門倉の決め球フォークボールと、ここまで多投し、十分に効果を発揮していたスライダーを封印する。裏をかかれ続けた鳥谷も必死に抵抗するが、最後は芯の近くでとらえるものの、レフトへハーフライナー。レフトを越えるほど強い打球にならず、レフトの前で落ちるほど低い打球にならない。ポイントで攻め込んだ捕手阿部の見事なリードだったと思う。

2アウトで赤星。
苦境で赤星。
前のイニングで木村拓が補強した防壁、それをこのイニングさらに強化した阿部のリード。鳥谷赤星に回るイニングを三者凡退で終えてしまうことは、その防壁をますます強いものにかえてしまうことを、タイガースの中で最も意識する打者が打席だった。

しかし、カウントツーナッシング。赤星はいきなり追い込まれてしまうのだった。攻める阿部。しかし、ここから赤星のその本領がいかんなく発揮される。カウント2−0から、攻めの阿部は三球勝負で来た。決め球はストレート。もちろん赤星が、2−0からストライクのストレートにタイミングを合わせているわけもなく、これをファールでかわす。4球目は同じ軌道から落とす満を持してのフォークボール。これは赤星が見てボール。カウント2−1。

しかし赤星も混乱しただろう。何が来るのか全く分からない。阿部の素晴らしいリードだった。その中、次の球はスライダー。これを全てのボールをファールしようとしているように見えた赤星がファール。明らかに赤星はフォアボールを取りにいっていた。調子がいいときの赤星がこういう姿勢で打席に入ると、世界でも指折りのフォアボールゲッターになる。小さな体でそもそもストライクゾーンは小さく。超一流のファールを打つ技術と選球眼。そして赤星は今、調子がいい。

スライダーをファールしてカウント2−1から6球目。この赤星を打ち取るために最も確率の高い、低目のフォークボールを見極める意識のある赤星に、低目のストレートを見送らせて三振を取る配球。低目のストレート。これを赤星が見極めてボール。カウント2−2。よっぽどの球を投げなければアウトにできない。赤星を出してしまえば盗塁がある。盗塁が決まったとして、スコアリングポジションでホームランを打っているシーツというのは、絶対に避けなければならない場面だった。ゲームバランスはまだ流動的な状態なのだから。

2−2からの7球目。阿部が要求したボールは膝元のストレート。最もファールしずらいボール。しかし、ひとつ間違えばデッドボールもあるし、それを怖がって甘く入ればヒットも打たれるリスクも高いコースだ。渾身の気持ちで門倉はそこに投じた。見送った赤星。ストライクともボールともどちらとも取れるボールだった。「ボール」とコールされれば門倉と阿部ががっくり膝をついただろうし、「ストライク」とコールされれば赤星が天を仰いだだろう。

結果、赤星が天を仰ぐ。

攻める巨人。阪神は必死にそれに抵抗するが、徐々に徐々に巨人の攻めがデッドラインへと近づいていった。


5回ウラ。
前のイニングで木村拓が出塁したことによって、先頭は高橋由。
大事な大事な先頭打者。ホームランはもちろんのこと、ヒットを許しても「勝負あった」になるような場面だった。初球、スライダーが甘く入る。しかし、それを高橋が打ち損じてファールフライ。

巨人としてはあれほどまでに神経を使って赤星をアウトにとり、ゲームのバランスを動かないように保っただけに、その直後のこの簡単なアウトはそのバランスを崩すのではないかとひどく期待したのだった。

少し押し戻した阪神。

ここで不調の谷も簡単にアウトできれば、と思った矢先。
谷はセンター前にクリーンヒットを放つ。

逆に押し戻す巨人。

三者凡退で終われなかったことでタイガースとしては非常に苦しくなった。さらに迎える打者が絶好調の二岡であり、説明不要の小笠原である。

しかし、ここで二岡に対しての投球は完璧だった。もう、絶対に誰も打てないコースに全球を投じて三振に仕留める。一流対一流の攻防というものはこんなにも見ごたえのあるものなのか。

2アウトランナー1塁となって小笠原。外、外で攻めていく矢野輝と下柳。4球目のスライダーだった。いつものように強振する小笠原の打球はスイングの強さほどでもない強くも弱くもない打球だった。それがセンター方向へ転がっていく。

予め小笠原が引っ張りこんだ強い打球を警戒していたセカンドの関本。守備位置は一塁よりだった。意識的に逆をつかれた関本。いっぱいいっぱいのプレーではなかった。しかし余裕を持ったセカンドゴロでもなかった。セカンドでフォースプレーでしかアウトできない位置。しっかり捕って、しっかりトスしていては間に合わない。しかし、全力で取りにいって目一杯トスするような打球でもない。最も練習しづらい、難しい打球だった。関本はそこで必要なバランスを瞬時に見出し、見事にセカンドでアウトを取った。鳥谷とのタイミングがあわず、送球でエラーということも非常に起きやすかった場面。関本の守備力が、ジャイアンツを押し戻す。

高橋由のミスショットを谷がカバーしたジャイアンツ。
それを下柳の完璧な投球と、関本のファインプレーで押し戻したタイガース。


6回表

先頭はシーツ。
阿部のリードがここでも抜群の冴えを見せる。
カウントが2−3になった。初回のホームランもカウントは2−3からだった。シーツに瞬間的な力みが見えた。それは無意識が作用させるほんのわずかなものだったかもしれない。カウントが2−3になったことで「ホームラン」この言葉が少しだけ頭を過ぎったのではないか。
ここで阿部は真ん中低目へスライダーを要求する。ストライクかボールかギリギリのコースではなく、あえて真ん中へ。ホームランを打たれたボールの残像を利用する。打たれた球は真ん中のストレート、真ん中のスライダーは空振りが取れる。

シーツ、真ん中低目のスライダーで空振り三振。

ホームランを打たれたボールを見せ球に使う配球。昨日の阿部は神がかっていた。

続いて、アニキ。
アニキは苦しい。だけどこれまでも、どうやって打てばいいのか分からなくなるほど体の状態が悪いときに、一試合全く打てなかった後、次の試合でヒットを打つアニキの姿を何度も見た。今日はきっと打つ。

そして林クン。
カウント0−2から、変化球を思いっきり振りにいって空振り。そうだそうだ。林クンにはその空振りが必要なのだ。結果はまたまた阿部の好リードでセンターフライに打ち取られるも林クン浮上のきっかけを見た打席だった。

阿部がまたタイガースを押し戻したイニング。


6回ウラ。

1点も得点は入らなかったが、この回こそ、ビッグイニングだった。

先頭のスンヨプ。打たれた瞬間、うなだれた下柳。
ホームランだと思った。
懸命に背走する赤星。思ったほどには、打球が飛ばなかった。でも、かなり飛んでいた。
これも先ほどの関本のプレーと同様。いっぱいいっぱいでないからこそ難しい飛球。ジャンプ一番捕球に成功し、フェンスに激突しながらボールを離さなかった。赤星の超ファインプレー。

1アウトランナーなしで阿部。
このような状態になってしまった阿部は正直攻める場所が見当たらない。
フォアボール。これは仕方がない。


1アウトランナー1塁で矢野謙。
原監督はバントをしてきた。ダブルプレーは最もイヤな場面だった。押し込みながらも、そこからタイガースが生み出すファインプレー、ゲームバランスがなかなか定まらない。そこで少しでも隙を見せたくない。いい采配だと思った。

ところが、矢野謙のバントが下柳の正面へ転がる。猛然とダッシュする下柳。迷わず二塁を指し示す矢野輝。完璧なフィールディングで、二塁封殺。この時、誰も甲子園で下柳が暴投したことなど思い出さなかっただろう。それが集中なのだと思う。原監督が嫌ったダブりプレーよりも、もっとイヤな「ファインプレーでアウトを取られる」という結果。しかも進塁できず。

押し込まれても押し込まれても、タイガースが押し戻す。

しかし、昨夜の影のヒーローはここで打ったからヒーローなのだ。
8番木村拓。
矢野謙がバントで送った場合。ツーアウト二塁、次が門倉ということで、木村拓は敬遠してくるだろう。そこで代打大道。これが原監督のシナリオだったと思う。
下柳のファインプレーでそのシナリオを壊した。
しかし、その壊れたシナリオをもう一度蘇生させたのが、木村拓。
センター前にクリーンヒット。

代打、大道。

抵抗しても抵抗しても、押し返される。

その流れのまま、大道がレフトにクリーンヒットだった。走者は矢野。バントを失敗してランナーが入れ替わったことで走者の走力まで上がってしまっていた。完全にジャイアンツに押し切られてしまったところで、

アニキのあの返球。

矢野、渾身のブロックで1点を防いだのだった。

赤星の超ファインプレーを、阿部の存在感が三者凡退で終わらせなかった。リズムが壊れることを嫌ってのバントだった。下柳のファインプレーで流れを止めた。それでもその抵抗に真正面から立ち向かってくる木村拓がまた流れを呼び戻す。その流れに乗って決勝点が入りかけたものを、アニキと矢野で防いだのだった。

攻防とは「攻」と「防」

こんなすごいイニングをもう一度見れるだろうかといういうような、そんなイニング。


この後お押しつ押されつの厳しい攻防が繰り広げられた。
7回表に登板した巨人の西村は、久保田のような存在感でマウンドに君臨しタイガース打線を剛球でねじ伏せた。

7回ウラは、先頭の高橋由がヒットで出塁。しかし、谷がバントを失敗してくれた。タイガースがまたチャンスをえる。それでも代走の鈴木がスチールを決めて、ジャイアンツがそのチャンスをものにさせない。1アウト二塁二岡という非常に厳しい場面を渡辺が凌いだ。小笠原スンヨプと続いていくところで、江草。さすがの小笠原は際どいコースに全く手を出さず四球。そして、スンヨプを直球で三振に仕留めた江草。スンヨプに対して江草が始めて投じたインコースの直球が決め球だった。

8回表、豊田に代わって、代打の桧山の当たりは惜しい当たりだった。鳥谷も非常に切れのよかったフォークボールを再三ファールにして重圧をかけるも、豊田の渾身のストレートがまたどちらとも判定できるコースに投じられ見逃しの三振。赤星は迷っている間に手を出してしまったような、そんなスイングだった。阿部と豊田が押していたのだろう。

8回ウラ。投手、杉山。
先頭の(神様)阿部にヒットを許す。もうバントを失敗できない矢野謙にバントを決められ1アウト2塁。1アウト2塁でこの日阿部の次に怖い木村拓だった。1点取られたらその時点で負けだ。押せ押せのジャイアンツに対してニコニコ投げる杉山。木村拓を三振に斬る。代打清水との勝負を避け、代走から入った鈴木尚をセカンドゴロ。9回表に望みをたくす。

9回表。投手、上原。

抑えに転向してから、セーブのつく局面で失敗していない上原。
その上原に対して、シーツは先ほどの三振がよほど悔しかったのだろうか、「とにかく出る」ということだけを念頭においた打席を送る。ライト前にヒット。

バットを振れないアニキが暗中模索の中、苦悩のセンターフライ。

そして、林クンだった。
そうだよ。アニキが打てないときに打つんだよ。それがこれまでの多大なる出来事に対する恩返しになる。「林クン頼んだ」アニキはきっとそう思ってたよ。そこで打ってこそ、そこで打ってこそ「ありがとうございます」を行動で伝えることができるんだ。

林クン、本当によく打った。
桜井も気持ちが出たいい打席だった。
矢野の打球がもう少しだけ強くなれば、そう思った。
しかし、勝者は巨人。
本当に、強い者どうしがしのぎを削った、ギリギリの攻防の連続。
「決勝戦」の空気を感じた第一戦だった。

しかし、まだまだこれから。
昨夜、我らが岡田監督は言ったってね。「明日は打ちよるよ」。

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posted by コーチ at 14:05| Comment(0) | TrackBack(2) | □ 林 威助 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月02日

林クン、強なった!!

先生  「たとえばな、宇宙人が近畿地方に襲来してくんねや」
コーチ 「いきなり、何のたとえなんですか? さすがに戸惑います」
先生  「戸惑ってる場合やない。コーチは『宇宙人対策部隊の隊員』や」
コーチ 「だから、何の話なんですか?」
先生  「コーチは、宇宙人に対して『私たちに敵意はありません。友好的な関係を作りましょう。これが大阪名物のたこ焼きです。食後に京都名物の八ツ橋はいかがですか?』って、9人の精鋭部隊で伝える役割なんや」
コーチ 「は、はぁ」
先生  「その時にや」
コーチ 「ええ」
先生  「やっぱり宇宙人にはこちらの真意がなかなか伝わらへん」
コーチ 「そら、そうでしょうね」
先生  「差し出したたこ焼きが兵器やと思われて、逆に攻撃されたりとか、な」
コーチ 「大変です」
先生  「だけども『友好的である』ということを宇宙人に伝えなあかん。先頭から順番に、そいつのアイデアがあかんかったら、次。それもあかんかったら次」
コーチ 「そうですねぇ」
先生  「やけども、もう、どうしたって伝わりそうもないんや」
コーチ 「はい」
先生  「『投げやり』な気持ちになったりな、もう萎えてしもうたり」
コーチ 「なりますよね、そら」
先生  「その時、隊員のうちの誰かがその気持ちに流されてもうたら」
コーチ 「その時点で任務を放棄したも同然ですよね」
先生  「やけど『投げやり』は、人の持つ感情の中でも相当に強いエネルギーを持つもんや」
コーチ 「経験あります」
先生  「『無理かもしれん』『もう適当でええか』『どうせ無理やし』『いや、あかんあかん』『オレ、なんとかしたい』『うん、なんとかしたい』その心の格闘を隊員たちは続ける必要がある。それを続けな近畿地方の平和は守られへん」
コーチ 「確かに」

先生  「それが『10点差付けられてからのイニングで打席に立つということ』や」
コーチ 「やっと、野球の話になった(笑)」
先生  「安心した?」
コーチ 「安心しました」
先生  「絶対に投げやりにだけはなったらあかん」
コーチ 「当たり前のことのようやけど、それはムチャクチャ難しいことですもんね」
先生  「敢えて中盤の大差を付けられた後の局面から話したいんやけどな」
コーチ 「はい」
先生  「大差付けられて、相手はグライシンガー星人や」
コーチ 「宇宙人ちゃいます。アメリカ人です」
先生  「もともと、物凄いいいピッチャーなわけや。しかも調子も悪くない。10点差。正直、まず勝てん。打ち崩すことは、宇宙人と野球拳を楽しむくらいむつかしい」
コーチ 「どんな喩えなんですか(笑)」
先生  「大事なことは結果を先に考えんことや」
コーチ 「そうですね」
先生  「一人一人が、とにかく出塁していようとすること」
コーチ 「その結果、奇跡的な逆転が起きるかもしれない」
先生  「やけど、奇跡はあくまで『奇跡』やから起こそうと思って起こるもんでもない。『投げやり』になりそうな気持ちと必死に格闘して、緩みそうな何かに抵抗し続ける」
コーチ 「5回裏からの5イニング」
先生  「長い長い攻撃やった」
コーチ 「だけども」
先生  「この試合は、それをやり遂げたんや」
コーチ 「やり遂げたからといって『奇跡』に繋がるわけではないですけどね」
先生  「より遂げなかったら『奇跡』は起きん」
コーチ 「よう言われることですけどね、『明日もゲームがあるから、きちんとしとかなあかん』みたいなこと」
先生  「言われるなぁ」
コーチ 「もちろん間違ってはないと思うんですけど、微妙に違う気がするんですよ」
先生  「どういうことや?」
コーチ 「やっぱり大事なことは『現在』やと思うんですよ。『現在10点差で負けてる打席』でする格闘がね、結果的に『明日のゲーム』に繋がっていく。『明日ありき』じゃなくて、やっぱり時間軸に対しては従順に、『現在』を起点として『未来』がある」
先生  「なるほど。よう分かる」
コーチ 「『明日ありき』にしてしまうことは、やっぱり心のどこかに『諦め』を棲まわしてしまうことだと思うんで」
先生  「10点差の打席は、ほんまに様々な邪念との格闘やからな」
コーチ 「よう最後までやり遂げましたよ、ほんま」
先生  「そうやって粘ってると、まぁピッチャー代えてくれたんもあるやろうけども、最終回にその格闘を超えた、何かが変化した打席が訪れたもんな」
コーチ 「ですね」
先生  「邪念の発生しえない打席や」
コーチ 「みんなであのイニング作ったんですよね」
先生  「精神面ではこれ以上ないくらいハードな打席を、グライシンガー相手に送ってた人たちが」
コーチ 「技術面でグライシンガーよりも劣る投手と対面した時に」
先生  「精神面はそのままで、技術面の負荷が軽くなった」
コーチ 「その結果の四連打でした」
先生  「厳しい試合になったけど、ゲーム中に一つの結果が見えたことで、それこそ」
コーチ 「『結果的に』より明日に繋がった」
先生  「グライシンガー続投で、そのまま終わってたとしても」
コーチ 「十分な内容みんな打席を過ごしてましたから」
先生  「心の中に『諦め』を棲まわさなかったことが、より『明日』に繋がる内容でゲームを終われることに繋がったんよな」
コーチ 「そうや思います」
先生  「7点取られた直後の5回裏。関本のセンターライナーがまず良かった」
コーチ 「前の打席で負の流れを作った責任も感じてたんでしょうね」
先生  「いろんな気持ちが交錯する中、それでも己を律しセンターへ打ちに行った見事なスイングやった」
コーチ 「あと、特に目立ったんが林クンでした」
先生  「10点差以降、2打数2安打やもんな。まぁ結果ではないんやけども」
コーチ 「特に、グライシンガーから打った7回のレフト前ヒット。これはムチャクチャ強い気持ちで放ったヒットでしたよね」
先生  「アニキが切り拓いた空気の中ではなかったし」
コーチ 「まったく動いていない空気を、林クンは自分の力だけを信じて突破しました」
先生  「あのヒットは林クンをまた一つ大きく強くしたヒットや」
コーチ 「最終回にタイムリーも打って」
先生  「桜井も連続タイムリーやった」
コーチ 「ここはアニキが繋いだ、よく経験している『アニキが打ちやすくしてくれた場面』ではありましたが」
先生  「二人とも易しい球じゃなかったしな」
コーチ 「吉川が悪かったわけじゃないですよ」
先生  「林クンと桜井の集中力が上回った」
コーチ 「そして『そこで1点取っても…』という場面での」
先生  「アニキの激走」
コーチ 「林クンと桜井があんな顔して打席に立ってなかったら、さすがのアニキも自重した場面やったかも分かりません」
先生  「ノーアウトやし、それでも全くおかしくないところやから」
コーチ 「やけど、林クンと桜井がアニキを走らせた」
先生  「ええ攻撃やったよな、ほんま」

コーチ 「スワローズにしてみたら、このグライシンガーの試合で勝てなかったらもう今シーズン終わりみたいな試合やったんですよね」
先生  「今年は3位に入ればいいけど、それにしてももう後がない」
コーチ 「というゲームで、最後はチームと似たような状況の石川が、そういうピッチングしてきましたから」
先生  「後続が打てなかったんはしゃあない」
コーチ 「野口、藤原、狩野と三者三振でしたけど、非常に内容のいい三振でした」
先生  「最後までしっかりやり遂げたよな」

コーチ 「敗因というか、これはスワローズの勝因と言う方が正確やと思いますけど」
先生  「おう」
コーチ 「まず同点で迎えた2回裏、関本の打席でエンドランを仕掛けてのダブルプレー」
先生  「ノーサインでダブルプレーとは意味合いが違うからな」
コーチ 「チャンスを拡大するための打席やったらあそこはノーサインなんですよね。あそこは絶対に下柳先輩までまわして、3回に鳥谷からスタートするためのエンドランやった」
先生  「併殺だけは絶対に避けたかったからのエンドラン。ならば、窮屈でも一二塁間に向かってゴロを打つ打ち方をせなあかん」
コーチ 「これは関本に限ったことではないと思うんですけどね」
先生  「おう」
コーチ 「少しだけチームに隙があったんやと思います」
先生  「ボテボテのセカンドゴロを打ちに行く気構えみたいな、な」
コーチ 「『ヒットになるかも』じゃエンドランは失敗するんですよ。すでに『打つこと』だけに集中できない状態がエンドランという意味ですから」
先生  「とにかく一二塁間にゴロを転がそうとすること、それが結果的にライト前に抜けるか、変化球やってタイミング崩れたけど、うまくバットの先っぽに引っかかってセンター前に落ちるかみたいな」
コーチ 「結果は後から付いてくるもの。このイメージがエンドランの鉄則です」
先生  「それが、少しだけ曖昧になってたんやろな」
コーチ 「いい当たりだったけど併殺打」
先生  「試合が動いたのは直後やったよな」
コーチ 「3回表、先頭の青木がその隙を大きく広げていくかのようなヒットでした」
先生  「これも遡ると2回の攻撃で宮本が出塁したものをそのまま残しておけたことによって、グライシンガーまでまわったからこその、青木からやもんな」
コーチ 「『2回を9番で終えること』って立ち上がりからガンガン打てた場合を除いては、ほんまに大事なことなんですよね」
先生  「で、青木から始まって、その青木が見事に出塁」
コーチ 「田中がきっちり送ってクリーンアップ」
先生  「ラミレス倒れて、ガイエルのファーストゴロが」
コーチ 「イレギュラーしたんは仕方ないにしても、その後、下柳先輩のベースカバーと関本の送球の呼吸が合わなかったことには、二回裏に見せた『少しの隙』が関係していたと思います」
先生  「下柳先輩は悪い投球やなかったけどな」
コーチ 「一度チグハグになってしまったら、打ち取った当たりがポテンヒットになるんですよね」
先生  「さらにこのイニングもリグスと宮出のポテンヒット以外も宮本と福川がしっかりフォアボールを選んで9番まで回して終わってる」
コーチ 「スワローズの攻め方としては完璧でした」
先生  「タイガースが山本昌を攻略できるときと似てるもんな」

コーチ 「4対1になったところで3回裏、当然下柳先輩からスタートしてしまうわけで」
先生  「この時点でもう、かなり苦しかった」
コーチ 「赤星がフォアボール選んだシーンは素晴らしかったですけどね」
先生  「スワローズの完璧な攻めが上回ったな」
コーチ 「試合が決定した5回表は、ガイエルに微妙なデッドボールの後、リグスをダブルプレーで打ち取ったんですよ」
先生  「赤星が見せた姿勢同様、下柳先輩もほんまに丁寧な投球やった」
コーチ 「ところが、ここで昨日から凄い気迫で向かってくる宮本が」
先生  「打つんよな」
コーチ 「一度広げて付け込んだ相手の隙がふさがりかけた瞬間でした」
先生  「で、もう一度広げたところで、宮出がしっかり乗っていく」
コーチ 「しぶといライト前でした」
先生  「7番の宮出が出塁したことで、下柳先輩に力みが出てしまった」
コーチ 「『8番で切らな、また次の回青木から始まってまう』」
先生  「前後裁断なはずやけど、先のこと考えるほうが無理な話やからな」
コーチ 「微妙に手元が狂って、福川にデッドボール」
先生  「あぁ、また9番までまわってもうた」
コーチ 「チーム全体のその気持ちがグライシンガーの打球を絶妙のセーフティバントのように転がし、あのプレーを呼んだと思います」
先生  「あれよあれよの7失点」
コーチ 「切り拓いた人宮本、打ちやすくした人宮出、流れに乗った人グライシンガー、打った人田中、ラミレス」
先生  「完璧な得点やったな」
コーチ 「殊勲の宮本と、宮本を中心に大きく重圧をかけ続けたスワローズの攻撃でした」
先生  「ただ、や」
コーチ 「はい」
先生  「この状況からタイガース打線は必死になって己との格闘をはじめ、それをやり遂げたわけや」
コーチ 「渡辺、桟原もナイスピッチングでした」
先生  「初戦のタイガース、二戦目のスワローズ。互いにいい勝ち方をして、まさしく五分や」
コーチ 「タイガースが大きな波に乗り切れるのか。スワローズが首の皮一枚踏ん張るのか」
先生  「明日の試合、とても楽しみやな」
コーチ 「今日の後半の打撃を続けてたら、きっといい結果に繋がると思います」
先生  「せやな」
コーチ 「グライシンガーよりもいいピッチャーはいませんし」
先生  「なんとか打って勝ちたいな!」
コーチ 「実はJFK休めてますし(笑)」
先生  「ボーグルソンがナゴヤで見せたような投球して、6回まで抑えて、久保田とジェフと球児が投げる」
コーチ 「打つほうは、今日みたいな気持ちでおったら点取れます」
先生  「負ける気がしない!」
コーチ 「では景気づけに」
先生  「打倒、宮本スワローズ!!」
コーチ 「乾杯!!」

先生  「アニキへの恩返しはまだまだこれからやで〜!!」

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posted by コーチ at 00:55| Comment(6) | TrackBack(1) | □ 林 威助 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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