2007年09月15日

大守備戦の果てに

取りつ取られつの第一戦と打って変わって、大守備戦となった第二戦。

強風の浜風と激しい通り雨の降る序盤、その浜風がタイガースに味方をした。神様にお祈りしたもん。通じたのかな。

タイガースの先発投手は安藤。インコースのシュートを完全に見切られカウントを悪くする苦しい立ち上がりだった。さらに「勝ちに行こう」とする強く気持ちの出た安藤に対し、それをセーブするかのように黙って淡々とリードをする矢野のリズムが噛み合わず、安藤が少し苛立っているように見えた。

確かに安藤が好投する時は「なんとなく打った内野ゴロ」というような「安藤が抑えた!」という印象ではないアウトを積み重ねていくことが必須条件。投手が勝ったのでも、打者が負けたのでもない「なんとなく」のアウト。2年前にリリーフから先発に転向した安藤は、先発として投げるようになった当初、全ての打者を完全に封じようとするリリーフ時のピッチングスタイルが抜け切らず、なかなか先発投手としてのリズムがつかめなかった。

強く気持ちの出た今日の安藤は、その失敗をする可能性が確かにあったと思う。ただ、矢野という捕手は勇気があるというか、頑固というか、「全部抑えにかかっても後でしんどなるだけやし、ふつうにいこ」とばかりにローテンションでアウトコースにミットを構え続ける。「ここに投げれなどうせ打たれる。だから投げろ」そんな感じ。冷たいと言えば冷たいが、それが正解なのだから、そうする。試合終了後に満面の笑みでマウンドへ向かう矢野の表情が印象的なので矢野のリードはそういう温かみに溢れたリードと思いがちだが、それは違う。矢野の本領はこういった、頑固一徹「勝つために一直線でむかうリード」。ただ、そこへ向かうためのプロセスを省くので、安藤が何か納得いかないまま投球していた序盤3回まで。大ピンチの連続だった。大ベテラン捕手に敢えて課題を挙げるならば、この「投手が矢野の考えを受け入れやすくして気持ちよく投げれるようにするプロセス」に気を遣ってほしいな、というところだけど、それはそもそもの人間性が左右する部分なので、仕方ないことなのかも知れない。

逆に野口のリードは優しい。見てるぶんにも気持ちがいい。基本は「よーしいいぞ」だ。「いいぞ〜上園」「いいぞ〜能見」。調子の悪いときでも、ピッチャーの力が最大限ひき出るようにピッチャーに寄り添い、優しく引っ張ってあげる。投手が萎縮して力を出し切れないままマウンドを降りるということは矢野がマスクを被るよりも少ないと思う。だけど、今日のようなシビアな投手戦の大事な場面で、野口が優しく見えないようにしていた、その日投手が抱えている欠陥が浮き彫りになってしまう可能性がある。そうなってしまった時に野口のリードは脆さが出るのか。

そこが出ないように週一回にしてるのかな。と考えてみたり。

矢野がレギュラーであるという理由が今日、本当に良く分かる、そんな矢野のリードぶりだった。


初回。

先頭の井端は打ち取るものの、荒木に非常にイヤな見逃されかたをする。そして粘られ、センター前へ。さらに盗塁を許し、ノリにもシュートボールを簡単に見切られ結果フォアボール。1アウト1塁2塁でウッズという初回から試合が決まってしまうようなピンチを迎えた。ドラゴンズの先発は小笠原。先日のナゴヤドームで15三振を喫している、ふつうに投げられるとほとんど打てないピッチャーだ。ホームランを打たれたら、雨でコールドゲームを期待するしかないような局面で、しかし噛み合わない安藤、矢野のバッテリー。カウントを悪くして、「ここに投げろ」と構えられた矢野のミットからボール二個ぶんシュートして入った、ど真ん中のストレート。その球をウッズが見逃さないわけがなく、大飛球が右中間の上空へ舞った。

正直、諦めた。「うわっ」と言って、天を見上げた安藤。天井を見上げたぼく。

神様が風を吹かせてくれたかな。甲子園以外の球場だったら絶対にホームランだった打球。ナゴヤドームであっても、もちろんホームランだし、東京ドームだったら何かの看板に直接当たって賞金がもらえるような特大のアーチになるべき飛球。強風が押し戻してセンターフライ。桜井のグラブにボールがおさまり甲子園が大きくどよめいた。

さらに5番森野。森野は「オレが打つ」という強い気持ち。矢野は「ここに投げろ」とローテンションでアウトコースに変化球を要求。それほど調子のよくない安藤が強気で攻めていってたならば、森野の発する熱量と安藤の熱量がかみあって、バチーン!と右中間へいかれてたかもしれない。結果、森野がその球をひっかけてセカンドゴロダブルプレー。

ウッズのホームランをセンターフライにした神風と勝負師矢野のナイスリードで、初回の大ピンチを凌ぎ切った。大量点も覚悟で無失点を取りにいった、矢野の大いなる勇気に拍手。

対して攻撃陣は、昨日に引き続き両サイドをやや広めに取る球審と、そこに寸分の狂いもなく投げ込む小笠原に手も足も出ない。鳥谷がデッドボールで出塁するも、2番の浜ちゃん、3番シーツと完全に打ち取られてしまう。そして4番のアニキを迎えたところで、小笠原−谷繁のバッテリーは『対金本用』のカーブでレフトフライ。初回、ドラゴンズペースだった。

そして2回表。
なかなか噛み合わない安藤−矢野バッテリー。矢野は確かに「簡単に打ち取れる場所」へ向かっていたが、そこへたどり着くまでに省かれているプロセスの真っ最中。ビョンと谷繁に連打を浴び、たちまち大ピンチ。さらに藤井が送りバントで、ドラゴンズが9番小笠原はアウトでも、2アウト2塁3塁で井端勝負、という明解な勝負に来ているところ、半分パスボールのワイルドピッチで進塁を許す。ノーアウト2塁3塁。

打順は下位だけど、どうしようもないくらいの大ピンチだった。流れの悪いバッテリー。この場面の藤井で一点取られれば、チャンスが残って井端に回る。そういう場面で井端は必ず打つ。井端が打つと、下手すると満塁でウッズに回る。「優勝」という二文字が遠のいてしまうかに見えた2回表。


全員野球とは、こういうことを言うのだ。
そのことを思い知った。ノーアウト2塁3塁、当然タイガースは前進守備の体系を取る中で、藤井の打った打球はショートの左を襲う痛烈なゴロだった。それを鳥谷が瞬時に反応してダイビング。三塁ランナーをしっかり牽制して一塁をアウト。大ファインプレーで一点を凌ぐ。バッテリーがうまくいってないならば、その時はみんなで守ろう。鳥谷がチームを救う。

このプレーが流れを大きく変えた。少し苛立っているように見えた安藤に、「安藤さん、まだまだこれからっすよ」という、少しはにかんだ鳥谷の笑顔は、気持ちをほぐす意味でとても大きかったのではないかと思う。

さらに、続く9番小笠原の打席で矢野が安藤に少し歩み寄る。それ以降の森野やビョンに対する投球の練習だったのかも知れない。この試合、初めてインサイドにストレートを続けた矢野。そこに気持ちよく投げていく安藤。そしてフォークボールで三振。安藤が取りたかった形でアウトを取らせる。

そして2アウト2塁3塁で井端。
もともと藤井が送って、小笠原が凡退してこの形になる予定だったのだが、その過程が大きく狂って結果的にタイガースの流れで井端を迎えることとなった。

がっちり噛み合った安藤−矢野の攻め方は完璧。しかし、こういう場面での井端は球界屈指の打者なのだ。得点圏打率は確かにチャンスでの強さを計る目安にはなるが、『どうしてもここで一点』という時の打率ではない。10点差で勝ってる試合で2アウト2塁とかいう場面も含まれるので、それは飽くまで目安だ。『どうしても一点という場面での打率(出塁率)』、全試合くまなく見てなければ算出する術がないので分からないけど、井端はその打率が間違いなく高い。若しくは次の打者以降が打ちやすくなるような、相手投手の全球種を投げさせてフォアボールで出塁するとか、そういうことができる打者。

安藤が投じた完璧なフォークボールを、井端は泳ぎながらもミートしてセンター方向へ。抜けていれば2点だった。しかし紙一重で関本が好捕。井端しか打てないような、しぶとい打球を、阪神の「しぶとい人」関本がファインプレー。

大量点の可能性も十分にあった、というかほとんどノックアウト寸前だった安藤が土壇場で復活し、鳥谷、関本のファインプレーで無失点。少しずつタイガースに流れが来るかに思えた。

しかし2回ウラの小笠原が完璧。桜井は外のまっすぐでズバッと見逃しの三振。みっちゃんはインサイドのまっすぐで詰まらせてレフトフライ。矢野は「まったく打てないときの矢野」に戻って三振。

この小笠原の投球から、投手戦のスイッチがバチン!と入った音がした。

3回表
噛み合った安藤と矢野。ひとまず荒木を打ちとって、ノリに対してアウトローのまっすぐで見逃しの三振を取る。安藤の気持ちのいいアウト。そしてウッズをセンターフライ。少しだけタイミングを外して外野フライでアウトにする。この時期まで阪神がウッズを抑えてこれた
象徴的な打ち取り方によるアウト。安藤もようやく流れに乗る。

3回裏
関本、安藤倒れて、2アウトで鳥谷の一二塁間のゴロ。
荒木のファインプレーで三者凡退。大守備戦の様相を呈してきた。

4回は表裏ともに両投手の好投。

5回もともに三者凡退で終わるのだけど、最後の打者の打ち取り方に大きな差があった。

5回表。
マウンドに安藤、2アウトランナーなしで井端。
カウント2−0とあっさり井端を追い込んでから、やはり井端は2−3までカウントを持ってくる。いいリズムになってきたところ、井端を出塁させたくない。カウント2−3から難しいコースをファールにされた後、安藤−矢野のバッテリーの呼吸がバチッと合う。「ここは力勝負」。技術を駆使して出塁を取りに来る井端に対して真っ向勝負を挑んだ安藤と矢野。瞬間それに圧された井端のタイミングが狂う。ショートゴロでスリーアウトだった。

5回裏。
前回に引き続き素晴らしい内容でここまで来た小笠原。しかし得点が入りそうで入らない味方の攻撃と、あまりに完璧すぎる内容にそろそろ綻びが出てもおかしくない頃ではあった。
2アウトランナーなしで関本。やや真ん中よりに入ったストレートを関本がジャストミートする。打球がレフトの正面に飛んでアウトにはなったが、その時の小笠原が示した反応が過剰だった。関本が打った瞬間「やられた!」と大きくレフトへ振り向いた小笠原。得点を与えない投球ではなく、気が付けばランナーを許せない、そんな投球に追い込まれているのではないのかと感じた。

最初から良かった小笠原。最初全然ダメだったけど、矢野の大ギャンブルがはまって、急激に良くなった安藤の投げあい。苦しんでいたのは小笠原だった。


6回
先頭の荒木の打球が赤星不在の布陣の中、最も弱い右中間へ飛ぶ。「赤星だったら」という打球、それが2塁打に。一転大ピンチになった。しかし続くノリが、それはミスではなのだが安藤を楽にしてくれる。勝負を分けた場面だったと思う。ノーアウト2塁という場面でノリ。カウント1−3となって、安藤は非常に苦しかった。しかし次の球をノリがセカンドゴロにしてくれる。近鉄時代のフルスイングを封印した練習生からの今シーズン。ノリの一年間がこの場面での『進塁打』を選択したのだと思う。気持ちは良く分かる。だけど、ここは近鉄時代のフルスイングが怖かった。安藤からすると、攻め入られそうな場面で、アウトを一つくれたという印象だったか。少し楽になって1アウト3塁でウッズ。ここは途中から敬遠でフォアボール。敬遠が不服だった安藤が気のない球で歩かせたことに怒りを見せる矢野。終始今日はそれがはまった。
「そうだ安藤、待ちにまった勝負の場面はこれからだぜ」
矢野の怒りの号砲とともに、ここから安藤エンジン全開。
1アウト1塁3塁で森野。全球速い球を要求する矢野。それを完璧にコーナーに投げ分けた安藤。森野を三振に取った。2アウトとなってビョン。森野と同じように投げれば、森野より怖くない。結果は詰まってライトフライ。

序盤から攻めて攻めてというピッチングをしていれば、この局面での森野、ビョンというところでこのピッチングをする余力はおそらくなかったと思う。矢野の大ギャンブルに、それによって亀裂が生じそうになった時の鳥谷のビッグプレー。それで安藤が落ち着いたことによって矢野のリードが抜群にはまった結果となった。6回を無失点。立ち上がりを考えれば信じられないような結果だったがそれが結果だった。「バッテリーも含めたプロ野球の守備」。十分に堪能できた首位攻防戦だった。

そしてゲームはその直後に動く。

5回の最後、関本のレフトライナーで異常な反応を示した小笠原。加えて6回表の攻撃で、またまた得点できなかったことによって完璧な投球の中追い込まれた小笠原。このイニングがチャンスだった。

先頭は安藤の代打に野口。
やや甘く入ってきたストレート。野口が気持ちで合わせにいった。右中間よりの打球。迷わず二塁へ走る野口。ヘッドスライディングで二塁打。

大ピンチの連続を凌いで凌いで無失点で来た中盤。攻撃はさっぱりで、甲子園はどんよりとしていたのだった。その重苦しい空気に頭から突っ込んでいった野口。暗く大きな塊に風穴をあけた。代走に赤星がコールされ、甲子園はようやく「甲子園」となった。

鳥谷がなんとかバントを決めて1アウト3塁。

打席に浜ちゃん。
気持ちと体がちぐはぐだった浜ちゃんの歯車を、野口がかみ合わせたのかもしれない。あの顔で打席に立ってる時、それは打つ時の浜中だ。

初球、大ファール。

前の回でノリが見せた「進塁打を」という小さなプレーに身をおく意識。この打席の浜ちゃんにその類の意識は全く存在しなかった。「外野フライで一点」その意識が全くない中で打席に立つ浜中は、マウンドの小笠原にどう映っていただろうか。そうなんだ。このワンチャンスをモノにするためにチームとしてずっとやってきたこと。それは小さく一点取りにいくことではない。この局面で、ただ己を信じ、全力でバットを振り切ることだ。それこそがタイガースの野球。昨日の球児とウッズの勝負だってそうだった。小さく守りきろうなんて考えてない。そこで思いっきり投げること、それをやり続けることが自分たちの野球。浜中が打った初球の大ファールは、まさにそれを体現していた。迷いなく振り切って、大きな目で小笠原を睨みつける浜中。

浜中と甲子園に飲み込まれた小笠原。ここまで見せていた完璧なコントロールがきかなくなる。吸い込まれるように真ん中に投げてしまったストレート。迷わず振り切った浜中の打球は、左中間に舞い上がった。初回にウッズのホームランを押し戻してくれた風が、今度は打球を運んでいく。

技術を超えた浜中の2ランホームラン。

チームみんなで守って取った、大きな大きな2点だった。


7回表
そして久保田のメモリアル登板。新記録。
そうだよ、MVPは久保田しかいないんだよ。

1アウトから代打の上田にヒットを許し、続けて代打の堂上兄に粘られ四球、しんどい場面で井端だった。

あれはもう、久保田の一年間全部で投げ込んだストレート。打たれるわけがない。真っ向勝負でダブルプレー。偉大な金字塔に自ら花を添えた。


7回裏
ピッチャー代わって石井。
久本は、明日だな。

浜ちゃんが打ったので負けてられない桜井がヒット。
藤本送りバントの場面でストライクが入らない石井。ストレートのフォアボールでノーアウト1塁2塁になった。

ここでまた、深みのある岡田采配。
矢野に強攻策。

もちろん、ストライクを取るのに苦しんでいる石井に、アウトを簡単にあげないことで、ここ最近の四球連発押し出しの可能性を狙ったこともあるだろう。さらに、1塁2塁の送りバントは失敗の可能性も比較的高く、失敗した場合にドラゴンズに流れがいってしまうというリスク。打たしてダブルプレーと、送りバント失敗、どちらが確率が高いかはどちらとも言い切れない。

ただ、そういう分かりやすい理由だけではないのではないかと感じた。

7回。2点差。ノーアウト1塁2塁で矢野に強攻させる意味。これは「2点を守りきるための強攻策」ではなかったか。8回、9回。もちろんジェフと球児。ジェフは休み明け、球児は昨日の今日。どちらも不安を抱えてのマウンドだ。そこで在るべき矢野は、超強気の矢野なのだ。しかし、クールに安藤を引っ張ってここまできた終盤。送りバントをしてベンチに戻り、守りにつくのと、打とうとして(もちろんヒットが一番いいのだけれど)たとえアウトになっても、打とうとした矢野が守りにつくこと。ここで一点取りにいくよりも、一点取れなくても、矢野がこの場面で打とうとすることが勝てる確率が上がると判断したのではないか、そう思った。

結果この打席、矢野はレフトへの飛球に倒れる。
後続も抑えられ無得点に終わった。

だけど、8回のジェフはウッズの前にランナーを出したが、ウッズをダブルプレーに取ってそのイニングを全うした。

9回の球児も昨日の影を乗り越えて、三人で最終回を締めることができた。

直接関係しているかどうかは分からないが、結果は不安を抱えていたジェフと球児がしっかり抑えて勝ちきったゲームとなった。

先発の安藤が踏ん張って、「ここぞ」という場面で迷いなく振り切った浜中。その点をJFKで守りきるというタイガースの形でもぎとった勝利。

その中に神風があり、矢野のギャンブルがあり、チームを救った鳥谷のビッグプレーがあった。ノリの一年間が打たせた進塁打が無失点の鍵を握り、矢野に呼応した安藤が最後の最後で自らを解放しきってピンチを凌いだ。関本の打球に過敏に反応するまでに追い込まれた小笠原は、やはり甲子園に飲み込まれていった。そのきっかけを作った野口のヘッドスライディング、真正面からその気持ちを受け取った浜中のホームラン。久保田の2007年が井端を押し込み、7回の矢野への強攻策が、不安を抱えた8回のジェフ9回の球児を引っ張らせた。

この大一番でベストゲーム。
大守備戦の果てに、大きな大きな二文字が見えてくる。

優勝、栄光、歓喜。
その二文字は何でもいい。

確かにその言葉を見据え今日、大きく一歩前進したんだ。


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posted by コーチ at 19:56| Comment(4) | TrackBack(1) | □ 矢野 輝弘 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ドラゴンズが見せた、9回表「五つの勇気」

先生  「ゥゥゥゥゥナイスゲーム!!」
コーチ 「いやいやほんまに、手に汗握るってベタですけど、ほんまに手ビショビショでした」
先生  「結果的に負けてもうたけど」
コーチ 「これやから野球はほんまにおもろいんですよね」
先生  「東京ドームでジャイアンツがまた物凄いゲームやってのけたみたいやし」
コーチ 「9回に5点差追いついて、11回にサヨナラですよね。清水が決めたみたいです」
先生  「凄い! 凄いぞジャイアンツ!!」
コーチ 「なんか、今年のプロ野球の見方。見るべき姿勢っていうんですかね。そういうのをウッズと球児が教えてくれた感じでしたね」
先生  「せやなぁぁ」
コーチ 「9回表。マウンドには球児。ウッズ決勝タイムリーその直前の球をファールした時でした」
先生  「ウッズ、ええ顔で笑ってたんよな」
コーチ 「最高の投手と最高の打者との対戦が、優勝をかけた大一番の試合を決める局面で訪れたときに起こった、最高の勝負の中でのみ生まれるような、そんな笑顔に見えました」
先生  「ウッズ、楽しそうやったなぁ」
コーチ 「2アウト2塁3塁で自分と勝負してくれたこと。全部ストレートでそのストレートがほんまに凄い球であること。調子がよくてそれをファールできてる自分。さらにその場面は優勝の行方を左右する大きな大きな一球一球」
先生  「その舞台の主役を演じてるんやもん。嬉しくなってくるよな」
コーチ 「球児に対するリスペクトと、その球児と対峙している自分自身に対する『やれてる感』」
先生  「そこで思わずこぼれた笑みで」
コーチ 「直後にウッズが球児を打ちました」
先生  「今年、見てるもんて、そういう勝負なんやろな」
コーチ 「先日の東京ドームでの伝説の三連戦もそうでした」
先生  「凄すぎて、泣けてきて、最後には笑ってしまう。敢えて言おう、タイロン・ウッズ、最高な!!」
コーチ 「そのウッズ。生きるか死ぬかという場面で笑えるウッズを明日あさって、必死になって抑えにかかるんですよ。だからこそ面白い」
先生  「また凄い三連戦になるでー!!!」


コーチ 「というわけで、紙一重のところで敗れた大一番、振り返ってみましょうか」
先生  「せやな」

コーチ 「最初に言っておきたいことは」
先生  「おう」
コーチ 「今日は球審、むっちゃ良かったですよね」
先生  「せやな。外の低目かなり広めに取ってたけど、タイガースドラゴンズ関係なく広かったし、序盤から終盤までずっと一定してたし、分かりやすくてとても良かった」

コーチ 「で、そのジャッジにボギーはけっこう救われた面がありましたよね」
先生  「今日のボギーはやったら鼻息荒く投げてた」
コーチ 「でしたよね。3回表とか、井端をフォアボールで出して、その後の荒木の送りバントの処理した時に、ファーストに全力投球」
先生  「藤本も怖かったやろなぁ。150kmでファースト投げてくる人おらんもんな」
コーチ 「こんなボギー見たことあるぞ。って思ったら思い出したんですけどね」
先生  「いつや? 奥さんとキスするときか?」
コーチ 「ちゃいますよ。その時はもっと甘いです。ボーグルにゃんになってます(笑)」
先生  「ハハハ、おもろいおもろい」
コーチ 「あれですよ。リグスに満塁ホームラン打たれた日あったでしょう」
先生  「あった、あった。完全に勝ちゲームやったのに、一発で逆転されて、その後赤星が打って勝った試合や」
コーチ 「浜ちゃんがベンチに戻ってきて、葛城とすれ違いながら葛城が大きな存在になっていったのもこの頃でした」
先生  「せやな。満塁ホームラン打たれたあとな」
コーチ 「なんか怒り狂って、『わー!!』って泣きながら腕振り回してる子どもみたいに投げてたら、アッという間にそのイニング終わってた、みたいな」
先生  「確かに今日のボギーは最初っからそんな感じやったな」
コーチ 「『わー!!!』言うて」
先生  「とにかくブンブン腕回して投げてる感じ」
コーチ 「ボギーも素直な人なんでしょうね」
先生  「ちょっとバランス悪いけどな、『今日は大事な試合やから飛ばしていくぞ』って思ったらあんな感じになるんやろう」
コーチ 「この間東京ドームでホームラン打たれまくったんもあるでしょうし」
先生  「試合作ったし、ナイスピッチングよな」


コーチ 「で、スコアは0−1。阪神1点ビハインドで迎えた4回ウラでした」
先生  「円陣組んでたよな。鳥谷からやったし快投を続ける朝倉をなんとかしたかった」
コーチ 「先頭の鳥谷は、朝倉が物凄いピッチング続けて打ち取られるんですけど」
先生  「赤星が高いバウンドのファーストゴロ。ウッズとの競争で赤星の勝ちっていう内野安打で出塁」
コーチ 「1000本安打まであと1本になって、これは終盤のいい場面で出るぞーって物凄い期待しましたね」
先生  「せやな」
コーチ 「1アウト1塁。ゲームの中で大きなキーとなるシーツがダブルプレーを打つか繋ぐかというところ」
先生  「結果はレフトフライやったけど、内容は悪くなかったな」
コーチ 「ですね。ちゃんと右向いて打ちに行ってましたし、だけど朝倉のボールが速いしインサイドの厳しい球でしたから。ほんまは見送ってほしいんですけど、シーツは二個も三個も同時にできないですからね、『ライト打つ』って決めたら、それで頭いっぱいの感じでした」
先生  「やけど、それでいいんよな」
コーチ 「2アウト1塁でアニキ、という場面でも点は入るという象徴的なイニングともなりましたしね」
先生  「結果的にこの回4点入ったわけやけど、朝倉と谷繁のまず最初のミスは、アニキとの勝負を避けたことやったな」
コーチ 「結果フォアボールは問題ない場面なんですけどね、気持ち的に『勝負したるんや!!』っていうもんがなかったです」
先生  「で、一塁二塁になった時に初めて気づくねん」
コーチ 「あ、ここは甲子園やった」
先生  「『わっしょい、わっしょい』始まって、360度黄色のメガホンが揺れてる真ん中で」
コーチ 「一度逃げ腰になった朝倉は、『攻める』ということが分からなくなってしまいました」
先生  「桜井にカウント2−3からフォークボール」
コーチ 「この配球は谷繁が朝倉を苦しめたかな、と思いました。攻めなきゃいけない場面。1−3からのインサイドのまっすぐを桜井が空振りしてましたし、もう一球あのコースに朝倉は投げたかったかも知れないなぁと」
先生  「カウント2−3からのフォークボールを桜井がしっかり見てフォアボール」
コーチ 「調子もいい。打たれてないのに、360度の『わっしょい』に合わせて黄色のメガホンが揺れる中ピンチを迎えた朝倉」
先生  「葛城が大きく見える」
コーチ 「前の打席、ランナー一塁で引っ張りにいこうとし過ぎて引っ張り切れずダブルプレーだった葛城。ここはポイントを近くしてレフトにライナーを打つタイミングで待ってました」
先生  「非常にシュートが投げにくい」
コーチ 「外に甘いシュートが行ったら、左中間にライナーが抜けていくイメージが朝倉には過ぎったかも」
先生  「少なくともオレには過ぎってた(笑)」
コーチ 「360度の『わっしょい』の中で、塁上のランナーが一気にホームインしてしまうイメージが過ぎってしまったとすれば、もうどうしようもなく」
先生  「葛城、矢野に連続押し出し」
コーチ 「藤本にもカウント0−3まで行って」
先生  「その後、2−3になってから、藤本がしっかり粘った」
コーチ 「ファールする中で、『非常時の満塁』を『通常の満塁』へと変えていった藤本」
先生  「藤本は満塁には強いんや!!」
コーチ 「ピッチャーの足元を強く抜いて、二点追加」
先生  「昨日と似たような展開で一気に逆転。ええ雰囲気やったんよな、ここまでは」

コーチ 「でも、やっぱり簡単に優勝させてくれないですよね。ドラゴンズさすがですよ」
先生  「直後の5回表。先頭は井端やった」
コーチ 「ここの井端をボギーが抑えることができれば、かなり勝てる確率は高かったですけども、飛ばしすぎてちょっと疲れてきてたボギーの中途半端になったボールを井端があわやフェンスオーバーという二塁打」
先生  「さすがは井端やな。『ここ』っていうとこで、ほんまに出塁する」
コーチ 「だけど荒木が初球を簡単にサードゴロ」
先生  「オレ、ドラゴンズファンやったら、このサードゴロは凄く残念に思ったと思う」
コーチ 「ですね。赤星出塁の後の、シーツ初球ショートゴロダブルプレー並みの残念です」
先生  「で、ノリのとこで犠牲フライの一点で済ますんよな」
コーチ 「なんとかなるかも、って思いました」
先生  「だけどクタクタのボギーは、ウッズにヒットを打たれて、さらに森野にライトオーバー、完全にキレがなくなってもうた」
コーチ 「5回でしたから、継投も難しかったと思うんですよね。昨日杉山が4回でマウンドを降りたんは、チャンスが来てしまったから、あれはあれで自然やったと思うんですけど、逆転してあと1イニング抑えて交代ってとこでしたから。勝ち投手の権利の件もありますし」
先生  「4回2/3で交代させるのって、あそこまで打たれてからじゃないと不自然やもんな」
コーチ 「でまぁ、1点差に追いつかれて交代という自然な流れで、江草がピシャリ」
先生  「江草、ナイスピッチング!!」

コーチ 「で5回ウラから、今日の影のヒーローの登場です」
先生  「ずっと試合見てるドラゴンズファンならその予想はあったんかも知れんけど、阪神ファンはまさかあのピッチャーがヒーローになるとは思ってもみなかったもんな」
コーチ 「久本、快投」
先生  「阪神ベンチも久本に対する準備を怠ってたかな? ふつうに打てるやろう、と。やけど、ナメたらエライ目にあう。ええ教訓やで」
コーチ 「鳥谷の平凡なセカンドフライを荒木が落球したところから久本の快投が始まるんですよね」
先生  「赤星のバントをサードへ見事な送球」
コーチ 「あれ、ちょっとでもズレてたらセーフでしたから久本の大ファインプレーですよね」
先生  「で、一塁に赤星が残って、また1アウト一塁でシーツ」
コーチ 「ライトフライでしたけど、これも気持ちの出たスイングしてました。アウトになるんはいいんですよ。シーツは右向いて打ちにいけばいい」
先生  「2アウト1塁でアニキ。4点入った場面と全く同じになった」
コーチ 「抜け球が頭の近くにいくってハプニングもありましたけど、あれは抜けただけやししゃあないですよね、その後逆に久本がビビらんと腕振ってようスライダー投げました」
先生  「空振り三振で無得点」

コーチ 「6回表、ピッチャーは渡辺でした」
先生  「ええピッチングやった」
コーチ 「でね、優勝争いの真っ只中で、ちょっとのん気な話かもしれないんですけどね」
先生  「おう」
コーチ 「渡辺って新人王の権利ありますよね?」
先生  「せやなぁ。。5年目以内で、それまで投球回数が30イニング未満が条件やったと思う」
コーチ 「渡辺、今シーズンの春にプロ入り初登板でしたし」
先生  「上園もチーム事情で二軍行ったからなぁ。渡辺、アリよな」
コーチ 「シーズンの結果はまだ分からないですけど、少なくともタイガースが優勝争いを展開できている現状を踏まえて、その立役者はもちろんJFKってことになるじゃないですか」
先生  「せやな」
コーチ 「リリーバーがむちゃくちゃ大事な時代に、しっかり突入してるんですよね。それやったら、先発で何勝でもないし、何セーブでもないけど、貢献度で言うと、渡辺の活躍は先発ピッチャーの10勝に匹敵すると思うんですよ」
先生  「思う思う」
コーチ 「調べてみたら、今シーズンの渡辺の成績。投球回数や防御率、奪三振。もちろん投げてる場面が違いますけど、岩瀬と遜色ないんですよ。あの岩瀬とです!」
先生  「コーチ、ちょっと興奮してるなぁ(笑)」
コーチ 「優勝できて、で、渡辺が新人王取れたら最高やなぁと思ってね」
先生  「中継ぎ投手がもっと評価されていい、っていうことの革命的な選出、あってほしいなぁ」
コーチ 「思いますね」
先生  「というコーチの思いをさらに強くするような、ナベ君の快投で6回表は完璧やった」
コーチ 「ナベ君、ナイスピッチング!! やったんですけど、結果的にここで落合監督のファインプレー采配でしたね」
先生  「久本続投」
コーチ 「確かに2アウトランナーなしで久本に回ったんで、どうするかなぁと思ったんですけど、1点負けてる場面で代打出さないっていうのは勇気ありますよ」
先生  「そのイニング捨てるわけやからな」
コーチ 「最近のドラゴンズ中継ぎが不安定な面ありましたし、代えにくかったのもあるとは思うんですけど、久本と心中って凄い信頼です」
先生  「この勇気が紙一重の勝負をドラゴンズがものにした理由よな」


コーチ 「6回ウラは、久本ショー」
先生  「桜井、代打関本、矢野と、そうそう簡単に打ち取れない3人をあっさり三者凡退」
コーチ 「あの試合に似てるなぁと思ったんですよ」
先生  「桧山が代打で満塁ホームラン打った試合な」
コーチ 「そうそう。その時の江草」
先生  「久本がちょっと打てそうもない感じになってた」
コーチ 「凄かったです」
先生  「ところで、話が前後するんやけどな」
コーチ 「はい」
先生  「コーチは桜井スタメンで、浜ちゃん下げたんどない思った?」
コーチ 「ぼくは自然やと思いました」
先生  「理由は?」
コーチ 「仮に広島二戦目の大ホームランがね、アニキより前に打ったホームランであったか、昨日のアニキのホームランの後の打席で
出塁できてれば浜ちゃん今日だけじゃなくてしばらくスタメンやったと思います」
先生  「なるほど」
コーチ 「広島戦で代打で出た桜井のショートゴロは少しタイミングがズレただけで雰囲気は戻ってきてましたし、切り拓くという面ではやっぱり桜井に多くの打席を打たせたい感じはありますよね。どっちがなかなかアウトにならないかって言えば桜井やと思いますし」
先生  「桜井、もうちょっとやな」
コーチ 「頑張れ、桜井!!」
先生  「負けるな浜ちゃん!!」


コーチ 「というわけで阪神1点リードで7回表」
先生  「当然、久保田がマウンド。80試合目、タイ記録や」
コーチ 「先頭は井端でした」
先生  「また井端や、大変なことや、と思ってたら、久保田が完璧な内容で井端を抑えてしまって」
コーチ 「やったー!!!勝ったー!!!って思ったんですけど」
先生  「甘かったなぁ。強いは、ドラゴンズ」
コーチ 「荒木がしぶとくライト前」
先生  「セカンドフライ落球したんと、チャンスであっさりアウトになってしまったんを取り返すいいバッティングやったな」
コーチ 「でも、今日の久保田凄かった」
先生  「155キロ出てたしな。どーん!!っていうストレートでノリを完璧に抑えて」
コーチ 「やったー!!!勝ったー!!!って思ったんですけど」
先生  「やっぱり甘かった」
コーチ 「ここで今日の大ヒーローの出番です」
先生  「矢野の配球ミスでも、久保田の失投でもない完璧なインコースのストレートやった」
コーチ 「それを詰まってたんですけどね、タイロンの超絶のパワーと、巧みなバットコントロールで、バックスクリーンまで運ばれました」
先生  「いやいや、今年見たホームランの中で、正直一番ビックリした」
コーチ 「あれ、ホームランにするかぁってね。けっこう前ですけど、東京ドームで下柳先輩が阿部に打たれたホームランもビックリしましたけど」
先生  「顔の前のシュートをホームランにしたやつな」
コーチ 「やけど、飛距離が違うし、あそこまで飛ぶんですね。あのコース、あの打ち方で。ほんまにビックリしました」
先生  「久保田また泣きそうになってたけど、久保田全然悪くないで!!」
コーチ 「タイロン、凄すぎ!! しかも、二度と同じ打ち方できないような奇跡的な打法やし、気にせんでいいから!!」
先生  「最多登板新記録の試合は記録に花を添えれるといいな」
コーチ 「明日ですかね」
先生  「おそらく」

コーチ 「で、久保田がしっかり森野を抑えて7回ウラ」
先生  「久本がどんどん良くなる」
コーチ 「あと二試合。対久本も勝負のキーポイントですね」
先生  「現在のタイガースは集中状態に入るとよっぽどいいピッチングされない限り先発ピッチャー攻略するからな」
コーチ 「ジャイアンツ二戦目の久保とか、急激に調子が変動するとかじゃない限り、なんとかしてきてます」
先生  「カープ戦の二試合は脱力してたから置いといて」
コーチ 「昨日の高橋建、今日の朝倉。共に途中までナイスピッチングやったけど、突如乱れて、といゆうよりプレッシャーで乱してる感じですからね」
先生  「ドラゴンズも惜しみなく久本を投げさせてくるやろし、あと二試合に限って言うと、久本はウィリアムスやと思って打ちにいかなあかん」
コーチ 「ですね。そんじょそこらの中継ぎ投手じゃないんや、って意気込みでいかなまたやられてまいます」
先生  「まぁ何はともあれ、久本、ナイスピッチングやった」
コーチ 「敵であっても、脇役の大活躍は素直に嬉しいです」
先生  「何とか明日は中盤で久本を引きずり出して、打って勝ちたい。リベンジやで!!」

コーチ 「で、8回表。岡田さんは1点負けてる場面でジェフじゃなくて、橋本でした」
先生  「岡田さんはやっぱり勇気のある人やで。『そら延長の可能性もあったしな、あそこは橋本が抑えなあかんやろ』って感じや。1点負けてて、さらにハシケンは本調子じゃなかったのに、しっかり勝つこと考えてる」
コーチ 「同点になった時に、球児とジェフが控えてるって形は圧倒的に有利ですもんね。ドラゴンズは岡本に不安がありましたし、非常にいい継投やと思いました」
先生  「で、ハシケンが完璧に1イニング全うして」
コーチ 「ようやく、チームに合流しました」
先生  「おかえりハシケン、ナイスピッチング!!」

コーチ 「延長を見越して8回表にハシケン投げさせたんが、やっぱりはまった8回ウラ」
先生  「ドラゴンズは不安のあった岡本、タイガースは先頭赤星」
コーチ 「ここは行けるなぁ、と思ったら。赤星、完璧なセンター前ヒットでした」
先生  「1000本安打。おめでとう!!!!」
コーチ 「いい場面でメモリアルが出て、甲子園が一気に朝倉を飲み込んだ『わっしょいの蟻地獄』と化します」
先生  「シーツの送りバントはサインやな」
コーチ 「そうですね。8回ですし、何より赤星メモリアルのムードを潰してしまうことは、今後の戦いを考えてもあってはならないことでしたから」
先生  「メモリアルの時間を長く取ることが絶対条件というところで送りバント」
コーチ 「シーツは活き活きとバントを決めました」
先生  「おもろい人やな、ほんま」
コーチ 「そしてアニキ」
先生  「こういう場面で、ほんまにアニキは打つなぁ」
コーチ 「だからみんな憧れるんですよね」
先生  「赤星、小さい体でほんまによう頑張ってきたけのー。ワシからのプレゼントじゃけ!!!打法」
コーチ 「長いです(笑)」
先生  「痛烈なライト線の当たりが際どくファールになった後やって」
コーチ 「詰まらされたんですけど」
先生  「アニキの気持ちは」
コーチ 「打球をショートの後ろまで運んで」
先生  「メモリアルな空気の中」
コーチ 「赤星がホームを踏んで、同点」
先生  「アニキー!!!!」
コーチ 「赤星ー!!!!」
先生  「ほんまにええチームやなぁ。ほんまにほんまにええチームや」
コーチ 「ベンチで腕グルグル回してた監督の嬉々とした表情も良かったですし」
先生  「とにかく、岡本を打って同点に追いついた」
コーチ 「よっしゃ、もう1点というところで、岡田さんは甲子園と一緒に試合を決めようとしました」
先生  「桜井に代えて、桧山」
コーチ 「でしたけど、ここは岡本が意地を見せて2アウト」
先生  「最後は抜けたフォークボールが打ちにくいところにきてしまって三振やったな。打ち取られたんではなかったし、関本打てるぞ!って思ったら」
コーチ 「関本、会心のレフト前ヒット」
先生  「そして再度甲子園に『わっしょい』が始まって」
コーチ 「岡本がもうフラフラやったんですよね」
先生  「この試合唯一、阪神の選手に『おい』って思ったのは」
コーチ 「やっぱり矢野でした(笑)」
先生  「チャンスで初球から行くのも分かるんやけどな」
コーチ 「赤星メモリアルと、アニキのタイムリーのあと、関本が完璧に繋いでという二重三重の『わっしょい』の中で岡本が投げなあかん場面でしたしね。しかも岡本調子悪いし」
先生  「4回の朝倉と同じくらいしんどかったはずやもんな」
コーチ 「初球のフォークボール、引っ掛けてショートゴロ」
先生  「ストライクは入りにくいし、必ず甘い球来るって余裕持ってほしかったんはあったけど」
コーチ 「そういう矢野のお茶目な部分を読みきった谷繁のナイスリードということで!」
先生  「矢野、明日は頼むで!!」

コーチ 「で、同点の9回表、球児できました」
先生  「これはやっぱり延長になってウッズを見越してやろうな」
コーチ 「ですね延長になれば球児が2イニングの予定で、9番から始まる9回の最大の敵は1番の井端で、順調に抑えたとして10回に回ってくるウッズが怖い」
先生  「ということで球児、9回10回のうちどちらかで1点とって勝とうと、岩瀬の9回、10回で点が取れなくても、まだジェフを残している強みがあってしかも後攻。タイガースが有利な状況で9回表を迎えたわけやったけど」
コーチ 「あんな名勝負が待っているとは思いませんでした」
先生  「やねんけど、結果的にドラゴンズが球児を攻略できた最大の理由は、勇気やったな」
コーチ 「ですね。9回表、ドラゴンズが見せた『5つの勇気』です」
先生  「5つやな」
コーチ 「まず『ここが勝負、といきなり立浪を代打で出してきた落合監督の勇気』が一つ」
先生  「ほんで、その立浪が『初球の変化球を打ちにいった勇気』が二つ目」
コーチ 「さらに井端のバントの後、荒木が打てないのはしゃあないって、開き直って『ここや、と思った高さよりも随分高い場所を振った勇気』が3つ目。これが結果的に高いバウンドのサードゴロになってシーツの頭を越えました」
先生  「ノリのファーストゴロはみっちゃんがしっかり守って、得点を阻止」
コーチ 「挟んでアウトにするのに、少し時間かかったのは、英智の好走塁でした。キャッチャーの矢野が『すぐサードに投げる』っていう瞬時の判断が効を奏したものでした。その『瞬時に判断した英智の勇気』が4つ目」
先生  「そして最後の最後までストレートを待ち続けた、『タイロン・ウッズの勇気』が5つ目」
コーチ 「球児も勇気あったと思います。今日も高め狙った球が低目にいってしまったストレートがありました。あの球が一番怖かったはずなんですけどね、2アウト2塁3塁で逃げない球児」
先生  「あまりの真っ向勝負に、矢野がちょっと置いてけぼりになってしまってたんがかわいそうやったけど」
コーチ 「しゃあないですよ。球児vsウッズの最後の勝負は、もう二人だけの異次元の世界でしたから」
先生  「究極のストレート勝負の中で笑ったウッズ」
コーチ 「球児も155キロ何球も投げてましたしね」
先生  「それを楽しみきったウッズに軍配」
コーチ 「やけどほんまに紙一重でしたからね。インサイドの高いところにいってたら、空振り取れてました」
先生  「あの球をそこにコントロールせえっていう方が無理な話やろからな」
コーチ 「今日はウッズが楽しめたから、そこに行かなかったんですよね。ウッズの日だったんです、きっと」
先生  「だけど、タイロンの日ばっかりになることはないと思う」
コーチ 「そうですね。だって、球児やって久保田やってあんなにも頑張ってきましたから」
先生  「タイガースが今シーズン積み重ねてきた長くて濃密な時間はな、一生懸命頑張る人たちを絶対に裏切らへん」
コーチ 「だから、明日も明後日も今までどおり一生懸命やればいい」
先生  「ふつうにやったら、また凄い試合になってしまうのかも知れないけど、またきっと勝てるはず」
コーチ 「だから、今日はナイスゲームで」
先生  「今シーズンは、ナイスシーズンなんや!!」

コーチ 「だけどぼくたちタイガースファンは」
先生  「アニキの胴上げが見たいんです!!」
コーチ 「だから神様」
先生  「明日は阪神、勝てますように」


神様  「わかりました」


コーチ 「え? 先生今、何か聞こえませんでした?」
先生  「う、うん。聞こえたで、聞こえたでー!!!!」


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posted by コーチ at 03:02| Comment(0) | TrackBack(12) | □ 藤川 球児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月14日

シーツのポテンヒット

先生  「この間、コーチの店行った時にな」
コーチ 「はい」
先生  「明け方、ちょっとギャルっぽい女の子が店の前掃除しててんけど、あれどないしたん?」
コーチ 「あぁ、あれですか。あれは凄く嬉しかったんですよ」
先生  「嬉しいことやったんやな」
コーチ 「はい。あれね、前の日の晩、大雨降って、その子店の前で友達と雨宿りしてたんですよ。まぁ夜中によく来る子なんですけど」
先生  「それで?」
コーチ 「で、『連れの男に迎えに来てもらうし、雨宿りしてていい?』って言うから、『別にええよ』言うて」
先生  「『連れの男に迎えに来てもらう』リアルやなぁ?笑」
コーチ 「でしょ。待ってる間も、携帯電話でゲームしてましたわ(笑)」
先生  「リアル、リアル」
コーチ 「ほんでまぁ、その時にようさん煙草吸ってね、その辺にポイポイ捨ててたんを、明け方にぼくが掃除してたんですよ」
先生  「なるほど」
コーチ 「そしたら、たまたまその時、その子が通りかかってね、『お兄ちゃん、わたしやる』って凄い申し訳なさそうに、ほうきとチリ取りをぼくから奪ってね、掃除し始めたんですわ」
先生  「ふむふむ」
コーチ 「でね、ギャルっぽい女の子らって、昔で言う『ヤンキー』とはまた雰囲気が違うと思うんですけど、その子らってほんまに悪気がないことが多くてね」
先生  「分かる分かる」
コーチ 「ちょっと表現は難しいですけど、煙草一つ取ったら『そこに灰皿あるんやから、そこに捨てたらええやん』って大人は言うでしょうけども、それが難しいまま過ごしてきたから結果ギャルやって夜中にウロウロしてるわけでね、その子らだけの問題やない」
先生  「確かにその通り」
コーチ 「うまく言えないですけど、『煙草を灰皿に捨てる』っていうことと『彼女が彼女として存在する』っていうことは、大きく矛盾してることなのかな、とも思って、別に吸殻捨てていったりすることに腹も立たないんですけど」
先生  「アイデンティティっていうんかな? 大袈裟かも知れんけど、そうじゃないと『在れない』から、そう在っているという、って感じよな」
コーチ 「同じ意見です」
先生  「ほんで掃除し始めてんよな」
コーチ 「そうなんですよ。『ごめんなぁ。ウチら煙草捨てるの癖やねん』言うて、ふつうに謝ってくるから、『いや、別にそれは謝らんくてええけど、次から灰皿に捨ててくれたら嬉しいで』って言うたんですよ」
先生  「そしたら?」
コーチ 「そしたら、『うん、分かった!!』って、自分が捨てたものじゃないもんまで掃除してくれてね」
先生  「むっちゃかわいいやん!」
コーチ 「むっちゃかわいいんですよ。彼氏と何回も分かれて何回もより戻すんですけどね(笑)」
先生  「あるある」
コーチ 「その度、『別れた〜』って言って泣きながら報告来たり、『ヨリ戻った〜』ってむっちゃ笑いながら報告来たり忙しい子なんですけど、正直でかわいい子ですね」
先生  「やけど、正直過ぎてちょっと周りに流されやすいとこあるんよな」
コーチ 「そうなんですよ。この間も水商売始めた雰囲気あったんで、『向いてないからやめとき』って言うたんですよ。水商売自体が悪いことやとは思わないけど、彼女はその仕事をするには『いい子過ぎる』っていうか、そういう風に思って」
先生  「なるほどなぁ」
コーチ 「そしたらそれもこの間、『もう水商売辞めてん。今日、派遣のバイト登録してきた』って報告してくれてそれもむっちゃ嬉しかったですね」
先生  「ええ話やなぁ」
コーチ 「正直、ぼくも何か手ごたえありました。これで良かったんやなぁ、って思えて」

先生  「で、話しながら思ったんやけど、野球の話してええか?」
コーチ 「もちろん」

先生  「昨日の6回、シーツの打席やねんけどな」
コーチ 「赤星デッドボールの後、押し出し二つで逆転する途中ですよね」
先生  「ライト前のポテンヒット。結果的にあれは物凄く大きかった」
コーチ 「確かに」
先生  「で、あのヒットはレフトの方向向いて振ってバットの先っぽに当たってライト前にフラフラっと上がった打球ではなかったよな?」
コーチ 「そうですね。それとは逆の、ライトの方を向いて振ってボールの下をこすってしまったから、ああいう打球になったと思います」
先生  「前さ、シーツが自分で送りバントしに行ったように見えたときに、こんな話したよな」
コーチ 「8月の終わりの甲子園のカープ戦。杉山と黒田で、桜井が黒田を打った試合ですよね」
先生  「そうやった」


コーチ 「ところが」
先生  「シーツが初球のシュートにまんまと詰まってゲッツー」
コーチ 「交流戦までの阪神に戻りかけてました」
先生  「気持ちはあるねん。やけど『絶対打ったる』があまりに先行してしまうと、あんな簡単な配球にまんまとやられてまう」
コーチ 「紙一重なんですけどね」
先生  「シーツに出してほしい根性は赤星とは全く逆でな」
コーチ 「はい」
先生  「あの場面で『外に逃げる球を待つ』という根性や」
コーチ 「スライダーを待ってライトに向かって思いっきり振る。100点が右中間を抜くあたり、打ち損じてもライト前のポテンがあるかもしれない。仮にライトフライやファーストフライでもアニキまでまわる」
先生  「これは結果論やないでな。散々こんなシーン見てきてるわけやから、ダブルプレーを避けるのって消極的なやり方ばっかりやない。スライダー待って思いっきり右向いて打つのは十分に気持ちのある打撃やと思うもん」
コーチ 「それができるはずの選手ですからね」
先生  「赤星が走るまで待ったりとか、そういう気配りまでできる状態やないから、そんなことは言わん。ああいう場面はとにかく右向いて思いっきり振ってほしい」
8月30日 当ブログ記事『桜井を叫べ』より抜粋



先生  「シーツがまさにその打撃をしたと思って、オレはとても感動したんや」
コーチ 「よう分かります」
先生  「シーツの中にな『ランナー一塁でライト前のポテンヒットはアリ』って感覚はないと思うねん」
コーチ 「ないでしょうね」
先生  「でもむっちゃアリなわけやん。その場面でランナーはたいがい赤星。次のバッターはランナー二人おる場面でアニキや」
コーチ 「大チャンス過ぎます」
先生  「それを少し許せてきたんかな、思ってな」
コーチ 「はい」
先生  「さっきの、ギャルの女の子の話やないけど、素直になれたらいいこといっぱいあるって思うもん」
コーチ 「ですね」
先生  「その女の子の話で言うと、コーチがしてきた対応はほんまにええ方向に導いたと思う」
コーチ 「そう言ってもらえたら嬉しいです」
先生  「『叱られたり』『注意されたり』とかではない中で、『この人に悪いことした。嫌われたくない』って思って掃除したんやろから。最高やで」
コーチ 「ちょっと恥ずかしいですけど、そうやとすれば嬉しいです」
先生  「シーツにしてもそうで、なんぼダブルプレー打っても、ベンチは一切エンドランのサインを出そうとせんかった」
コーチ 「ほんま『初球から打て』ばっかりですもんね」
先生  「その中でシーツが『ライトへポテンヒットでもいい』ってメンタルを獲得できたとすれば、これは今日からの大事な大事な6連戦の中で大きな大きな戦力アップや」
コーチ 「まだそれが本物かは分からないですけど、期待できる昨日の打席でした」
先生  「ランナー一塁。右向いて思いっきり振った結果それがダブルプレーになっても全然かまわん」
コーチ 「はい」
先生  「アニキに繋ごうとする意識。それが間違いなく得点に繋がってくるんや」
コーチ 「そうですね。期待しましょう」
先生  「そしたら、今日からの甲子園、阪神タイガースの勝利を願って」
コーチ 「乾杯!!」


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posted by コーチ at 11:47| Comment(2) | TrackBack(0) | □ シーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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